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11 - 06 - 2023

やや強気
アドビ
やや強気
収益と収益性の軌道、そして強力な将来の1株当たり利益見通しを踏まえ、私は同社に強気で見ています。
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アドビ / ADBE / 強気:最新の2023年第3四半期決算・強み(競争優位性)分析と今後の株価見通し・将来性(Adobe)

ドノヴァン・ ジョーンズドノヴァン・ ジョーンズ
  • アドビ(ADBE)は2023年9月14日に2023年第3四半期決算を発表している。
  • 決算では、同社の力強い成長と収益性、並びに、同社プロダクトへの急速な需要増加傾向を示している。
  • それらを踏まえ、私の同社株式に対する見通しは「強気」である。

アドビ(ADBE)について

アドビ(ADBE)は9月14日、2023年第3四半期決算を発表し、売上高、および、コンセンサスの利益予想を上回る着地となった。

同社は、デジタル・メディア、デジタル・エクスペリエンス、デジタル出版&広告ソフトウェアを世界中に提供している。

アドビの売上高と収益性、そして1株当たり予想利益が好調であることから、アドビに対する私の見通しは「強気」である。

アドビ(ADBE)の概要

アドビの主要製品には、PhotoshopIllustratorInDesignAcrobatLightroomPremiere Proなどがある。

同社の最高経営責任者は、シャンタヌ・ナライエンであり、アップルやシリコングラフィックスで製品開発を担当した後、アドビに入社した。

同社は、セールスやマーケティング活動、パートナー・プログラムを通じて、新規顧客を獲得している。

モルドール・インテリジェンス(Mordor Intelligence)によると、アドビが事業を展開するデジタル・メディア市場規模は、2026年までに3,347億ドルに達し、2021年から2026年までの年平均成長率は11.9%になると予想されている。

また、アドビの主な競合他社は以下の通りである。

  • Corel:Illustratorと競合するCorelDRAW、Photoshopと競合するCorel Photo-Paint、Premiere Proと競合するCorel VideoStudio等、アドビの製品と直接競合するクリエイティブ・ソフトウェア製品を提供している。コーレルはバリュー重視の顧客をターゲットにしている。

  • Autodesk:同社のAutoCADとMaya製品は、デザインやエンジニアリングの専門家向けのアドビのクリエイティブツールと競合している。また、AutoCADは、アドビの技術図面用Illustratorと競合している。更に、Mayaはアドビのアニメーションやモデリングツールと競合している。

  • Nuance Communications:Nuanceは、Adobe Acrobatと直接競合するPower PDFのようなPDF、および、文書管理ソフトウェアを提供している。Nuanceは、自社プロダクトを、より手頃な価格のアクロバットの代替プロダクトと位置づけている。NuanceはOCR、スキャン、アクセシビリティ・ツールも提供しており、アドビ製品の一部と重複している。

  • Microsoft:Microsoft OfficeやPowerPointなどの製品を通じて、クリエイティブ・ソフトウェアやドキュメント・ソフトウェアでアドビと競合している。

  • Apple:Final Cut Pro、Logic Pro、Xcodeといった、アップルのクリエイティブ・プロ・アプリケーションは、アドビのクリエイティブ・ツールと競合している。

  • Google:ウェブベースのクリエイティブ・アプリケーションを提供しており、アドビの製品の一部と競合している。

  • Wondershare:アドビ製品の一部を低価格で提供する、クリエイティブ、および、PDFソフトウェアを作成している。

  • Affinity:アドビのCreative Cloudアプリケーションと競合する、手頃な価格のグラフィックデザインと写真編集ソフトウェアを提供している。

  • Canva:Canvaの無料グラフィックデザインツールは、PhotoshopやIllustratorの一部機能と競合している。

アドビ(ADBE)の最近の財務動向

四半期ごとの総売上高(Total Revenue)は増加し続けており、四半期ごとの営業利益(Operating Income)も増加傾向にある。

四半期別売上総利益率(緑色の線:Gross Margin Profit)は横ばい、四半期別総売上高に占める販売費および一般管理費の割合(茶色の線:Selling, G&A % of Revenue)は狭い範囲でわずかに変動している。

希薄化後1株当たり利益(赤色の線:Earnings Per Share)は、ここ数四半期で大幅に増加している。

(上記グラフのデータは全てGAAPベース)

一方で、過去12ヶ月間で、アドビの株価は87.56%上昇したのに対し、iシェアーズ・エクスパンデッド・テクノロジー・ソフトウェアETF (IGV)の株価は41.8%上昇した。

貸借対照表では、現金、および、現金同等物と短期投資が75億ドル、長期債務が36億ドルとなっている。

12ヶ月間のフリーキャッシュフローは76億ドルで、その間の資本支出は4億400万ドルであり、加えて、過去4四半期に17億ドルの株式報酬を支払っている。

アドビ(ADBE)のバリュエーションとその他の指標

以下は、同社に関連するバリュエーションの表である。

指標(直近過去12ヵ月)

企業価値 / 売上高

13.4

企業価値 / EBITDA

36.0

株価 / 売上高

13.7

売上高成長率

9.9%

純利益率

27.1%

EBITDAマージン

37.3%

時価総額

$256,630,000,000

企業価値

$253,210,000,000

営業キャッシュフロー

$8,030,000,000

一株当たり利益(完全希薄化後)

$11.11

予想EPS

$17.95

一株当たりフリーキャッシュフロー

$16.60

成長、利益、フリー・キャッシュ・フローに余裕のある前提を用いたディスカウント・キャッシュ・フロー法に基づくと、同社の株価は、現在の562ドルに対して、約523ドルで評価されることになり、現時点では過大評価されている可能性があることを示している。

40%ルールとは、ソフトウェア業界の経験則であり、売上高成長率とEBITDA成長率の合計が40%以上であれば、その企業は、ソフトウェア企業として、許容できる成長とEBITDAの軌道に乗っていることを示すものである。

アドビの直近の調整前40%ルールの計算値は、2023年第3四半期決算時点で44.6%であったため、下表の通り、この点で同社は非常に良好な業績を上げている。

40%ルール・パフォーマンス(調整前)

2023年度第3四半期

売上高成長率

9.9%

営業利益率

34.7%

営業利益率

44.6%

アドビ(ADBE)に関するコメント

2023年第3四半期決算を対象とした前回の決算説明会では、経営陣が準備していた発言の中では、以下の点が強調された。

・第3四半期の売上高が、前年同期比13%増の48億9000万ドルとなり、過去最高を記録した。

・デジタルメディアの第3四半期の売上高は、前年同期比14%増の35億9,000万ドル。

・Creative Cloudの売上高は、前年同期比14%増の29億1,000万ドル。

・ドキュメント・クラウドの売上高は、前年同期比15%増の6億8500万ドル。

・デジタルエクスペリエンス第3四半期の売上高は、前年同期比11%増の12.3億ドル。

・第3四半期末の残存履行義務(受注残高)は157億2000万ドルで、為替調整後では前年同期比13%増。

・第3四半期の営業キャッシュフローは18.7億ドル。

・期末の現金、および、投資残高は75.2億ドル。

・第3四半期に210万株を10億ドルで買い戻した。

・自社株買い枠は31.5億ドル。

・第4四半期の売上高ガイダンスは、49億7,500万ドル~50億2,500万ドル。

・Non-GAAPベースのEPSガイダンスは、4.10~4.15ドル。

・主な成長要因は、新規ユーザーの獲得、Creative CloudとDocument Cloudの採用、Adobe Experience Platform、Experience Cloudのネイティブアプリとのこと。

長期借入金はあるが、同社の財務状況は極めて良好で、流動性は潤沢で、フリーキャッシュフローの水準も非常に高い。

更に、アドビの40%ルールのパフォーマンスも素晴らしい。

今後の見通しとして、今年度の予想売上高成長率は10.1%であるのに対し、前年度の成長率は11.5%である。

株価の上昇要因としては、デジタル・メディア・パッケージにAIの要素が組み込まれ、ユーザーの導入が促進される可能性がある点である。

アドビの売上高と収益性の伸び、更に1株当たりの予想利益を考慮すると、私の同社への見通しは「強気」である。