半導体市場の現状と今後の見通し・将来性:半導体関連ETF上昇とアプライド・マテリアルズCEOの自社株式売却が示唆する未来
ダグラス・ オローリン- 半導体市場は成長を続けているが、戦略的に一時休息するタイミングに来ていると見ている。
- その理由としては、アプライド・マテリアルズ(AMAT)のCEOによる株式売却や高いバリュエーション等が懸念材料となっている。
- 過去22ヶ月間の株式市場は一貫して高いリターンを記録しており、一時的な休息が必要と考えられる。
※「サイタイム(SITM:SiTime)のSpectrum-Xに注目:消費者向け半導体市場の回復とエヌビディア採用理由を分析」の続き
半導体市場の今後の見通し: 戦略的休息のタイミング
本稿では、私がしばらく抱いていた半導体市場に関する見解を述べていきたい。
私は、再び半導体銘柄が一息つく時が来たと見ている。
ヴァンエック半導体ETF(SMH)やiシェアーズ・セミコンダクターETF(SOXX)は40~50%以上の成長を遂げており、エヌビディア(NVDA)の株式分割に向けた急騰は話題となっていた。
しかし、永遠に上昇し続けることはなく、半導体セクターの中で気になる点も幾つかある。
例えば、半導体製造装置(Semicap / Semiconductor Capital Equipment)の例を挙げると、アプライド・マテリアルズ(AMAT)CEOのゲイリー・ディッカーソン氏は最近、自身の株式の20%、約1億ドル相当を売却している。
これは彼が同社で働いている間で最大の売却となっている。
下記のグラフは、彼の売却回数、その後のパフォーマンス、そしてS&P 500との相対的なパフォーマンスに基づいてランク付けされている。
AMAT Returns:アプライド・マテリアルズのリターン
SPY Returns:SPDR S&P 500 ETFのリターン
Difference:差異
さらに、今がアプライド・マテリアルズと半導体製造装置関連銘柄にとって最良のタイミングと言えるかもしれないという、非常に興味深い将来の展望が見えてきたように感じる。
少し分かりにくいかもしれないが、ここで言いたいことは、厳しい比較対象(ハードコンプ)と高いバリュエーション(高い株価倍率)が組み合わさっているということである。
アプライド・マテリアルズ(および半導体製造装置市場の支出)は、2024年下半期に最良の比較対象を持ち、2025年上半期でも堅調な比較対象を持っている。
これは、2023年下半期と2024年上半期のメモリ支出および一般的な半導体製造装置市場が非常に悪かったためである。
2025年には半導体製造装置市場が強いと考えているが、2025年を迎える頃には、売上高成長が鈍化する恐れがあり、AI成長が過度に見込まれた状況と厳しい比較対象に対処し続けなければならないという懸念がある。
さらに、バリュエーションも史上最高水準にあるというのが現状である。
※上記のグラフの上段のチャート
Price / Earnings - P/E (NTM):今後12カ月間の予想PER
※上記のグラフの下段のチャート
EV / EBITDA (NTM):今後12カ月間の予想EV / EBITDA倍率
言うまでもなく、ヴァンエック半導体ETFやiシェアーズ・セミコンダクターETFも上昇しすぎており、ソフトウェアセクターに対する相対的なパフォーマンスは過去最高水準となっている。
そして、最近のソフトウェアの崩壊後、ウィズダムツリー・クラウド・コンピューティング・ファンド(WCLD)とiシェアーズ・エクスパンデッド・テクノロジー-ソフトウェアETF(IGV)は一時期、年間でほとんどプラスになっていなかった。
ソフトウェアは引き続き利益率と成長性に問題を抱えていると思うが、AIブームにおける上昇での利益確定とSaaSのようなパフォーマンスの悪い銘柄へのローテーションがTMT(テレコム・メディア・テクノロジー)内での資金流出を生み出している。
これらをまとめると、私は半導体セクターに対してかなり慎重に見ている。
ただし、これはあくまでも数カ月単位での見方であり、通年の見方ではない。
ゲイリー・ディッカーソン氏の自社株売却がその兆候だとすれば、この四半期は相対的にアンダーパフォームする期間となるだろう。
終焉を告げているわけではないが、これに季節的な弱さ(7月前半は歴史的に注意が必要)、利益確定、ゲイリー・ディッカーソン氏の自社株売却、エヌビディアの株式分割後の動向を組み合わせると、多くの理由から調整が必要になると考えており、実際にその時が来たと考えている。
そして、この私の見解をサポートする興味深い事実がある。
過去22ヶ月間の株式市場(2022年10月に底を打った時から)の動きを見ると、そのうち11ヶ月間はリターンが上位25%に入るほど非常に良好な成果を上げていた。
これは、株式市場が急速に回復し、大幅な利益が出ていた期間が多かったことを示している。しかし、ここで特筆すべき点は、これらの好調な月が過去のように業界全体が非常に悪かった月の後に続いているわけではないということだ。
過去には、最悪の月を経た後に市場が反動で大きく回復することが多かった。しかし、今回はそうではなく、特に悪い時期がなかったにもかかわらず、市場は一貫して高いリターンを記録している。
このように、今回の株式市場の上昇は、過去の悪い時期の反動ではなく、独自の要因で達成されていることが強調されるべきである。
メモリ市場は活況を呈し、半導体製造装置銘柄は素晴らしい結果を予想しており、エヌビディアは依然として勢いがある。
ただし、足元は、戦略的に一旦休息するタイミングのようにも見える。
私は他人が貪欲となっている時は、恐れる時であると考えている。
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