AMDの株価下落理由とは?最新の2024年第2四半期決算分析を通じて今後の株価見通しに迫る!

- 本稿では、注目の米国半導体銘柄であるアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の7月30日に発表された最新の2024年第2四半期決算の分析を通じて、株価下落の理由、並びに、今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
- AMDは、2024年度第2四半期の決算で売上高が市場予想を上回り、データセンターGPUの売上も成長を見せました。
- 2024年第3四半期の見通しでは、データセンターとクライアントセグメントの成長が期待される一方で、ゲームセグメントは減少が予測されています。
- MI300シリーズの売上拡大や新たなMI350シリーズの投入計画により、AMDはNVIDIAのBlackwellに対抗しつつ、システムレベルの統合を強化しています。
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の最新の2024年度第2四半期決算に関して
2024年度第2四半期決算
・調整後EPS:0.69ドル(ファクトセット予想:0.68ドル)
・売上高:58億4,000万ドル(ファクトセット予想:57億2,000万ドル)
2024年度第3四半期ガイダンス
・売上高:約67億ドル ± 3億ドル(ファクトセット予想:66億1,000万ドル)
・Non-GAAPベースの粗利益率:約53.5%(ファクトセット予想:53.5%)
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は、2024年7月30日に2024年度第2四半期決算を発表し2024年度の売上高の見通しを45億ドルと発表しています。
では、決算説明会の遣り取りで注目すべき点を幾つか見ていきましょう。
(原文)In summary, customer response to our multiyear Instinct and ROCm road maps is overwhelmingly positive and we're very pleased with the momentum we are building. As a result, we now expect Data Center GPU revenue to exceed $4.5 billion in 2024, up from the $4 billion we guided in April.
(日本語訳)総括すると、当社の複数年にわたるInstinctおよびROCmロードマップに対する顧客の反応は非常に良好で、私たちが築き上げている勢いに非常に満足しています。その結果、2024年のデータセンターGPUの売上高は45億ドルを超えると予想しています。これは、4月にガイダンスを行った際の40億ドルからの上方修正です。
※Instinct:AMDが提供する高性能コンピューティング向けのGPUブランドで、特にAIやデータセンター向けの用途に特化している。
※ROCm(Radeon Open Compute):は、AMDが提供するオープンソースのコンピューティングプラットフォームで、高性能なコンピューティング作業をサポート。
※データセンターGPU:データセンターで使用される高性能なグラフィックプロセッサユニット(GPU)で、AI処理や大規模データ処理に利用される。
四半期の売上が10億ドルを超えても、年間成長率としては大きなものではありません。そのため、下半期の成長は上半期を上回るものの、控えめなものとなっています。
(原文)Turning to our Data Center AI business. We delivered our third straight quarter of record Data Center GPU revenue, with MI300 quarterly revenue exceeding $1 billion for the first time. Microsoft expanded their use of MI300X accelerators to power GPT-4 Turbo and multiple copilot services, including Microsoft 365 Chat, Word, and Teams. Microsoft also became the first large hyperscaler to announce general availability of public MI300X instances in the quarter.
(日本語訳)データセンターAI事業について。データセンターGPUの売上は3四半期連続で記録を更新し、MI300の四半期売上が初めて10億ドルを超えました。マイクロソフト(MSFT)は、GPT-4 TurboやMicrosoft 365 Chat、Word、Teamsなどの複数のコパイロットサービスを稼働させるために、MI300Xアクセラレータの使用を拡大しました。さらに、マイクロソフトはMI300Xのパブリックインスタンスを一般に提供する最初の大規模ハイパースケーラーとなりました。
※MI300:AMDのデータセンター向けGPUの一つで、高い計算能力を持ち、AIや機械学習の処理に適している。
※GPU(Graphics Processing Unit):グラフィックス処理ユニットの略称で、コンピュータの画像処理を専門に行うプロセッサのこと。
※コパイロットサービス:AIを利用してユーザーの作業をサポートするサービスで、例としてはマイクロソフトのWordやTeamsでの支援機能が挙げられる。
※アクセラレータ:コンピュータの処理速度を高速化するためのハードウェアデバイスで、特にAIや科学計算で使用されることが多い。
※MI300Xアクセラレータ:AMDのMI300シリーズの一部で、特にデータセンター向けの高性能アクセラレータ。
※パブリックインスタンス:クラウドサービスプロバイダーが提供する一般公開されたコンピューティングリソースで、誰でもアクセス可能なサーバーインスタンスを指す。
※ハイパースケーラー:大規模なクラウドサービスを提供する企業で、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azure、Google Cloudなどが該当する。
(原文)As we look into the second half of the year, I think we would expect that MI300 revenue would continue to ramp in the third quarter and the fourth quarter. And we're continuing to expand both current deployments with our existing customers as well as we have a large pipeline of customers that we're working through.
(日本語訳)下半期に向けて、第3四半期および第4四半期にはMI300の売上がさらに拡大すると予想しています。既存の顧客との現在の導入を拡大し続けるとともに、多くの顧客パイプラインを進めています。
さらに、AMDはデータセンター事業は成長し、ゲーム事業は減少すると予想しています。
(原文)Now turning to our third quarter 2024 outlook. We expect revenue to be approximately $6.7 billion, plus or minus $300 million. Sequentially, we expect revenue to grow approximately 15% primarily driven by strong growth in the Data Center and Client segment. We expect Embedded segment revenue to be up and the Gaming segment to decline by double-digit percentage.
(日本語訳)2024年第3四半期の見通しに関しては、売上高は約67億ドル±3億ドルと予想しています。前四半期比で、売上高は約15%増加すると見込んでおり、これは主にデータセンターおよびクライアントセグメントの強力な成長に支えられています。エンベデッドセグメントの売上は増加し、ゲームセグメントは二桁の減少を予想しています。
※エンベデッドセグメント:組み込みシステムに関連する事業分野で、電子機器や製品に組み込まれる専用のプロセッサやコンピューティングユニットを扱う。
また、AMDは新しいMI350シリーズを発表し、Blackwellに対抗しています。
※Blackwell(ブラックウェル):NVIDIAが開発している次世代のGPUアーキテクチャのコードネームです。NVIDIAの製品ロードマップにおける新しい世代のGPUアーキテクチャであり、より高い性能と効率を提供することが期待されています。特に、AI処理やデータセンター向けの用途での利用が想定されており、AMDなどの競合他社もこれに対抗する製品を開発しています。
(原文)As we go into next year, I mean, one of the important things that we announced at Computex was increasing and expanding our road map. I think we feel really good about our road map. We're on track to launch MI325 later this year, and then next year, our MI350 Series, which will be very competitive with Blackwell solutions. And then we're well on our way to our CDNA Next as well.
(日本語訳)来年に向けて、Computexで発表した重要なことの一つは、ロードマップの拡大です。ロードマップについて非常に良い感触を持っています。今年の後半にはMI325を、来年にはBlackwellソリューションに非常に競争力のあるMI350シリーズを発売する予定です。また、CDNA Nextの開発も順調に進んでいます。
※MI325: AMDが開発中の次世代データセンターGPUで、MI300シリーズの後継機として位置づけられている。
※MI350: AMDの将来的なGPUシリーズで、競争力のある性能を提供し、特にNVIDIAのBlackwellに対抗する製品。
※Computex: 台湾で毎年開催される国際的なコンピュータ展示会で、最新の技術や製品が発表される場。
※CDNA Next: AMDの次世代コンピューティングアーキテクチャで、高性能コンピューティングやAI向けに開発されている。
加えて、システムレベルでの統合が進んでいるようであり、それはGB200に似ていますが、私は実際の性能はそれほど高くないと予想しています。
※GB200:エヌビディアのGrace Blackwell Superchipの一部として設計されており、高度なAIおよびデータ処理に向けた製品。
(原文)And then as we look at the 350 Series, what we're seeing and the reason we call it a series is because there will be multiple SKUs in that series that we'll go through the range of, let's call it, air-cooled to liquid-cooled. In spending time with our customers. I think there are people who certainly want more rack-level solutions, and we're certainly doing much more in terms of system-level integration for our products. You'll see us invest more in system-level integration.
(日本語訳)350シリーズを見ていく中で、それをシリーズと呼んでいる理由は、複数のSKUが存在し、空冷から液冷までの範囲をカバーするためです。お客様との対話の中で、ラックレベルのソリューションを求める声があることを確認しています。そこで、製品のシステムレベルでの統合に多くの投資を行っています。今後はシステムレベルの統合にさらに注力していく予定です。
以上からも、この四半期の内容は非常にクリアであるように見えます。ストーリーはAIの売上に焦点を当てていますが、AMDはそれなしでも機能できると思います。一方で、データセンター(Data Center)の利益率は改善を続けていますが、同セグメントの営業利益率(下記図において、Operating Income ÷ Net Revenue)が約26%に留まっていることは注目に値します。さらに、私はMI300は利益率の面でやや課題があると考えています。
(出典:2024年第2四半期決算資料より)
言い換えれば、彼らにはコスト優位性がないということです。また、粗利益率のガイダンスを見れば、ガイダンスの大部分は段階的な改善に基づいて説明できると思います。そして、私はこの点が大きな問題だと考えています。売上が約28億ドルに達しても、AMDはエヌビディア(NVDA)ほどAIアクセラレーターで多くの利益を上げていません。データセンターの収益の大部分は、CPUから得られていると考えられます。
これは良い結果ですが、よく考えるほど、AMDは中途半端な位置にいるように見えます。AMDは、より高い利益率を持つ性能の低いソリューションを提供するエヌビディアと、統合度の高いより安価なカスタムチップを提供するブロードコム(AVGO)の間に位置していおり、これは好ましい状況ではないように見えます。
足元、株価倍率はかなり改善しているものの、2025年に28%の売上成長を実現するためには、活気に欠けるアクセラレーターの売上ではなく、エンベデッド、ゲーム、CPU事業の回復が必要です。それでも、AMDの現在の予想EPSの約24倍という「バリュエーション」は悪くないようにも見えます。ただし、繰り返しとなりますが、残念ながら同社の同セグメントにおける競争上の立ち位置が好ましいとは言えません。
さらに、その他のアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、アドバンスト・マイクロ・デバイスのページにアクセスしていただければと思います。
アナリスト紹介:ダグラス・ オローリン / CFA
📍半導体&テクノロジー担当
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