【テクノロジー】コンフルエント(CFLT)の今後の株価見通しとは?最新の2024年第3四半期決算分析を通じて将来性に迫る!
コンヴェクィティ- 本稿では、注目の米国テクノロジー企業であるコンフルエント(CFLT)の10月30日に発表された最新の2024年度第3四半期決算分析を通じて、同社の目標株価、並びに、今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
- 最新決算は市場予想を上回り、前年同期比で26%の成長、EBITとFCFマージンの改善、そして通期ガイダンスの上方修正を達成しました。これにより、成長加速の兆しが示されています。
- ImmerockやWarpstreamの戦略的買収は、同社の柔軟性と先見性を強調しており、リアルタイムデータ分野での競争力を高める重要な一手となっています。
- Redpandaとの競争が激化する中、コンフルエントはBYOC(Bring Your Own Cloud)への移行やストリーム処理・分析への注力を通じて、2025年度までにアドレス可能市場の大幅な拡大が期待されています。
- Generative AI(生成AI)の可能性は注目されていますが、直近の成長は従来型のアプリケーションに依存しており、長期的な成果はAIエージェント技術の成熟度にかかっています。
コンフルエント(CFLT)の最新の2024年度第3四半期決算発表に関して
コンフルエント(CFLT)の10月30日に発表された2024年第3四半期決算は予想を上回る結果となりました。
四半期ベースの成長率は26%に達し、大型契約が成長を牽引しました。
Non-GAAPベースの営業利益率は6.3%、フリーキャッシュフロー(FCF)利益率も6%に改善しています。
ガイダンスの上方修正は、クラウド最適化の完了により、同社がハイパースケーラー(AWS等の大規模なデータセンターを運用し、クラウドコンピューティングサービスを提供する企業)と連携を深めたことを反映しています。
また、生成AI(GenAI)への期待と新製品のリリースが2025年度の成長見通しをさらに後押ししています。
コンフルエント(CFLT)の優れたビジョンと「Day-1 DNA」を持つリーダーシップ
コンフルエント(CFLT)の経営陣は、先進的で魅力的なビジョンを描き、SaaS分野で競争をリードし続ける力に優れています。
そのような「Day-1 DNA(企業が創業当初のような革新性や起業家的精神、迅速な意思決定力を持ち続けること)」を持つ企業は、パロアルトネットワークス(PANW)のように限られた存在です。
コンフルエントによる1億ドル規模のImmerock買収は、重要なストリーム処理分野での成長を加速させています。
さらに、同社は2024年9月にWarpstreamという新興企業を買収しました。
この企業は2023年8月に設立されたばかりで、買収交渉が非常に迅速に進められました。
この事例は、同社が新たなビジネスチャンスを素早く見極め、実行に移す力を持っていることを如実に示しています。
コンフルエント(CFLT)のWarpstream、BYOC、Redpandaについて
コンフルエント(CFLT)のによるWarpstreamの買収は、オブジェクトストレージ(データをオブジェクト単位で管理・保存するストレージシステムの一種)の技術革新よりも、BYOC(Bring Your Own Cloud)モデルに注目したものです。
BYOC(Bring Your Own Cloud)モデル とは、顧客が自分自身で管理しているクラウド環境(AWS、Azure、Google Cloud Platform等)に、ソフトウェアやサービスをインストールして利用する形態を指します。
このモデルでは、顧客がクラウド環境のインフラ管理を行いながら、ベンダーが提供するソフトウェアを活用できます。
この背景には、Warpstreamそのものよりも、競合のRedpandaへの対抗意識があったと考えられます。
RedpandaはCベース(CまたはC++)のエージェントを採用し、Kafka(オープンソースの分散型イベントストリーミングプラットフォームで、リアルタイムでデータを収集、処理、配信するシステムを構築するために使用される)のJavaベース設計に比べて10倍の性能・コスト効率を謳う主要な競合です。
ただし、この比較はコンフルエントのConfluent Cloud(CC)ではなく、オンプレミス型のConfluent Platform(CP)を基にしているようです。
また、RedpandaのBYOCモデルは、クラウドセキュリティの管理を重視する顧客に支持されています。
一方、コンフルエントのConfluent Cloud(CC)、スノーフレーク(SNOW)、Databricksなどの完全マネージド型サービスは、顧客データを自社クラウドで管理することで、顧客側のインフラ負担を軽減し、アップデートの迅速化や効率性を提供しています。
これに対して、BYOCはソフトウェアを顧客のクラウドアカウント内にインストールし、データをローカルで管理しながら、メタデータのみをベンダーと共有する仕組みです。
コンフルエントのWarpstreamの買収を通じたBYOCへの移行は、2024年6月に完全マネージド型に移行したDatabricksとは対照的です。
BYOCは特定のニーズには適していますが、セキュリティ面での信頼が高まるにつれて、完全マネージド型サービスが市場で主流となっています。
BYOCはクラウドインフラを活用しているものの、効率面ではオンプレミスに近い性質があり、完全マネージド型のようなマルチテナンシーや柔軟性を活かした高い経済性には及びません。
一方で、Confluent Cloudやスノーフレークのような完全マネージド型サービスは、これらの特性により優れたコストパフォーマンスを提供します。
コンフルエントのBYOC戦略は、Redpandaに対抗するための一手とみられ、特に基本的なKafkaワークロードを必要とする顧客層に向けたアプローチと考えられます。
コンフルエント(CFLT)が買収したWarpstreamのアーキテクチャ
コンフルエント(CFLT)が買収したWarpstreamのBYOC(Bring Your Own Cloud)モデルは、その独自のアーキテクチャを基盤としていますが、Redpandaとの競争には課題があります。
Warpstreamの設計はローカルVM(仮想マシン)ストレージ(データや情報を保存するための装置や仕組み)を使用せず、S3(Amazon Simple Storage Service)のようなオブジェクトストレージを活用しています。
VMストレージ とは、仮想マシンで使用されるストレージを指します。
VMは、物理サーバー上に仮想的なコンピュータ環境を構築する技術であり、ストレージはVMの動作に不可欠な要素です。
S3は、AWSが提供するオブジェクトストレージサービスで、スケーラブルで耐久性が高く、コスト効率に優れたクラウドストレージとして、データの保存や管理に広く利用されています。
オブジェクトストレージはコストが10分の1と非常に安価である一方で、遅延が大きく、スループット(あるシステムやプロセスが単位時間あたりに処理できるデータ量やタスク量)が低いという特徴があり、低遅延が求められるリアルタイムアプリケーションには適していません。
しかし、Warpstreamは、たとえば観測データのようなワークロードでは、ある程度の遅延を許容することで大幅なコスト削減が可能だと主張しています。
HTAP(Hybrid Transactional/Analytical Processing)システム(トランザクション処理と 分析処理の両方を同じデータベースまたはシステム上でリアルタイムに実行できるようにしたシステム)と同様に、Warpstreamは超低遅延を追求するのではなく、コスト効率を重視しています。
この大胆なアプローチにより、2023年には注目を集め、Redpandaと同様にBYOCを採用することで顧客の関心を引きつけています。
(出所:WarpstreamのHP)
コンフルエント(CFLT)はBYOC形式のConfluent Cloud(CC)をいつ構築するのか?
Warpstreamは高遅延・低コストのBYOC型ストリーミングを提供しており、低遅延・高コストのサービスとは異なる位置付けです。
しかし、この特性では、コンフルエント(CFLT)がRedpandaとの競争で直面している課題を十分に解消することは難しいです。
Redpandaは、Apache Kafkaに代わるメッセージストリーミングプラットフォームとして設計された競合のソフトウェア企業です。
分散システムとして、高スループットで低レイテンシなデータストリームの処理を行うことを目的としています。
そして、Redpandaは低遅延・高コストのデータストリーミングに注力しており、BYOCモデルを通じてConfluent Cloud(CC)と直接競合しています。
一方、Confluent Cloudは完全マネージド型のアプローチを採用しています。
Warpstreamの高遅延・未成熟な状況を克服するには、BYOC形式のConfluent Cloudバージョンを導入することがより顧客ニーズに合致する解決策となるでしょう。
WarpstreamはKafka互換であるものの、さらなる開発が必要です。
ただし、コンフルエントの傘下に入ったことで、その開発スピードが加速する可能性があります。
また、Warpstreamはコンフルエントのアナリティクス分野への進出を拡大させる可能性を秘めています。
これにより、Flink(リアルタイムデータ処理 と バッチデータ処理 の両方に対応する分散型のオープンソースストリーム処理フレームワーク)のリアルタイムデータ処理能力と組み合わせることで、市場規模を倍増させる展望もあります。
コンフルエント(CFLT)の2025年度の動向に注目!
2025年は、コンフルエント(CFLT)の市場戦略において重要な節目となる年であると見ています。
同社はガバナンス、ストリーム処理、Warpstreamといった新領域へ事業を拡大しましたが、これらが売上に本格的に寄与し始めるのは2025年度と見込まれています。
投資家は、製品リリース、マクロ経済の回復、顧客支出の増加が成長を再加速させる可能性に注目しています。
一方で、コネクトやイベントストリーミングの成長鈍化は課題として挙げられます。
なお、Flinkは現在、同社の売上の10%を占めるまでに成長を遂げています。
コンフルエント(CFLT)の需要を生み出すAIエージェントの可能性
コンフルエント(CFLT)の2025年度における成長加速は妥当と見られる一方で、生成AIの可能性に対する期待は、株主にとっては投機的でリスクが高い面もあります。
同社の年次カンファレンス後、市場のアナリストたちはAI分野での潜在力を評価し、特に生成AI向けのリアルタイムデータスタックの重要性を指摘しました。
しかし、同社が生成AIアプリケーションから恩恵を受ける可能性はあるものの、投資家は慎重な姿勢を維持すべきです。
短期的には、同社の収益は依然として従来型アプリケーションに依存しており、生成AIが直ちに売上の主力となる見込みは低いでしょう。
同社は、AIエージェントがマシン間通信の需要を増加させ、それが自社のリアルタイムデータシステムの需要拡大につながるとしています。
しかし、この予測は次の2つの仮定に基づいています。
1. AIエージェントの急速な普及:しかし、AGI(汎用人工知能)がまだ発展途上である現状では、この普及が急速に進むとは考えにくいでしょう。
2. コンフルエントのアーキテクチャへの依存:設備投資の傾向を考えると、コンフルエントのアーキテクチャが標準として採用される保証はまだ不透明です。
これらの不確定要素を踏まえると、コンフルエントの将来の成長には慎重な見極めが必要と言えるでしょう。
コンフルエント(CFLT)の長期的な課題と可能性
・コンフルエント(CFLT)とオクタ(OKTA)は、それぞれクラウドネイティブ分野のリーダーです。コンフルエントはデータストリーミング、オクタはアイデンティティ管理で優位性を持っています。
・コンフルエントのオープンソースモデルは、さらなる成長の可能性を秘めています。
・両社とも需要を開拓し、新たなユースケースを生み出すことで市場拡大を目指しています。
イベントストリーミングの成長率は、IAM(アイデンティティ・アクセス管理)の成長鈍化と似た傾向を示しており、コンフルエントは25%の成長率を維持していますが、カテゴリ全体の成長率は30%を下回ると見られます。
一方、CIO(最高情報責任者)はAI関連の予算を優先しており、非AI分野への支出は抑えられています。
コンフルエントは、成熟市場においてオクタと同様の軌跡を辿る可能性がありますが、AIに不可欠なデータ基盤への強い需要やストリーム処理の成長という大きな機会も控えています。
コンフルエント(CFLT)のバリュエーション
(出所:筆者作成)
コンフルエント(CFLT)の現在の株価(約30ドル)は、弊社算出のフェアバリューの上限(約38ドル)に近い水準です。
株式ベースの報酬(SBC)が売上高の39%を占めていることでバリュエーションが抑えられており、SBCを考慮したフェアバリューは37.76ドルとなっています。
しかし、SBCが25%に低下すれば、フェアバリューは42.48ドルまで上昇すると予想しています。
一方、2026~2029年の年平均成長率(CAGR)を25%から20%に引き下げた場合、フェアバリューは25.60ドルまで下がり、バリュエーションの下限に近づく可能性があります。
現在、フリーキャッシュフロー(FCF)からSBCを差し引いた利益率は-33%、EV/GP(企業価値対粗利益倍率)は13.7倍、Rule of X(成長率と利益率の合計)は15とされています。
これに対し、同業他社のギットラボ(GTLB)のRule of Xは48、マンデードットコム(MNDY)は90であるため、コンフルエントは割高に見えます。
Rule of Xの詳細に関しては、インベストリンゴのプラットフォーム上より、下記のレポートをご覧いただければと思います。
また、生成AI関連の成長はまだ数年先と見込まれており、パランティア・テクノロジーズ(PLTR)のように近い将来の成長機会が期待されているわけではありません。
このため、成長率が約20%にとどまる現状では、株価が調整を受けるリスクが指摘されています。
以上より、今後の同社の成長率には要注目です。
弊社が以前執筆した下記のレポートでは、3部作の構成でコンフルエントのテクノロジー面での競争優位性を詳しく解説しております。
もし、関心がございましたら、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上より、ご覧いただければと思います。
Part 1
Part 2
Part 3
2024年第2四半期決算とバリュエーション分析
その他のコンフルエント(CFLT)はに関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、コンフルエントのページにアクセスしていただければと思います。
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