10/08/2024

コストコ(COST)の今後の株価見通し:最新決算は好調も予想配当利回りは0.53%で配当金1.16ドルと低水準で割高?

a white car parked in front of a costco storeイアニス・ ゾルンパノスイアニス・ ゾルンパノス
  • 本稿では、コストコ・ホールセール(COST:予想配当利回り0.53%・配当性向26%・1株当たり配当金1.16ドル)の2024年9月26日に発表された最新の2024年度第4四半期決算発表と配当推移に関するトレンド、さらに、同社の財務パフォーマンスを詳細に分析していきます。 
  • そして、それらの分析を通じて、同社の目標株価、並びに、今後の株価見通しと将来性を詳細に解説していきます。
  • コストコ・ホールセールは、会員制の卸売型小売モデルを採用し、少数の商品を大量に仕入れて低価格で提供することで、国内外で高い売上を実現しています。
  • 2024年第4四半期の決算では、EPSが大幅に増加し、売上高も前年同期を上回る成長を示しましたが、株価のバリュエーションは割高であるように見えます。 
  • さらに、同社は強固な財務基盤と効率的な運営を維持しており、株主還元にも積極的ですが、インサイダーの売却が続いている点は投資家にとってリスク要因となる可能性があります。

コストコ・ホールセール(COST)の概要


レーティング:中立

バリュエーション:割高

リスクレベル:低リスク


セクター:小売

現在の株価883ドル

時価総額:3,913億ドル

弊社算出の一株当たり本質的価値:617.73ドル

安全余裕率(マージン):-42.95%

過去5年間の配当成長率:12.40%

前回配当落ち日: 2024年7月26日

前回配当支払い日:2024年8月9日

予想配当利回り:0.53%

過去5年間の売上高成長率:11.50%

過去10年間の売上高成長率:9.40%


関連用語

安全マージン(Margin of Safety):株式の本質的価値(本来の価値)とその市場価格との間にある差のこと。投資家はこの差を利用して、予想が外れた場合や市場の変動によるリスクを軽減するための「安全な余裕(マージン)」を確保する。例えば、本質的価値が100円の株が市場で80円で取引されている場合、その20円の差が安全マージンとなる。この差が大きいほど、投資のリスクが低くなるとされている。

売上高成長率:企業の売上高が前年と比べてどれだけ増加したかを示す割合で、企業の成長スピードや市場での競争力を評価するための指標。一般的にプラス成長が望ましく、高いほど企業の成長力が強いと言える。


足元の株価推移

(出所:筆者作成)

コストコ・ホールセール(COST予想配当利回り0.53%・配当性向26%・1株当たり配当金1.16ドル)は、会員制の卸売型小売モデルを採用し、少数の商品を大量に仕入れ、低価格で提供するビジネスを展開しています。同社は高価な商品陳列を排除し、倉庫内でパレットに積まれたまま商品を保管することでコストを削減。この独自の低コスト構造により、競合他社よりも低価格で商品を提供し、高い売上を実現しています。コストコは米国内で600以上、海外ではカナダ、メキシコ、日本、イギリスなどを中心に270の倉庫を運営し、国内の倉庫型クラブ市場で60%以上のシェアを占めています。

財務面では、コストコの投下資本利益率(ROIC)が16.01%、自己資本利益率(ROE)が31.39%と、安定した収益性を誇っています。配当株としても注目されており、配当利回りは0.53%と低水準も、2023年12月には特別配当として1株あたり15ドルを支払うなど、株主還元にも積極的です。最近の買収に関しては、特に大規模な動きは見られませんが、業務効率の向上と市場シェアの拡大を目指し、引き続き成長戦略を進めています。

そして、同社は2024年9月26日に2024年第4四半期決算を発表しています。


コストコ・ホールセール(COST)の最新の2024年度第4四半期決算発表に関して

コストコ・ホールセール(COST)の2024年9月26日に発表された、最新の2024年度第4四半期決算発表では、非経常損益項目を除くベースでのEPSを5.29ドルと報告し、前の四半期の3.78ドルや前年同時期の4.82ドルから大幅な増加を示しました。

1株当たりの売上高も、前四半期の131.54ドル、前年同時期の177.61ドルから179.10ドルに上昇し、業績の好調さと着実な成長を反映しています。

一方で、長期的なパフォーマンスを見ると、下記のチャートからも分かる通り、同社株の非経常損益項目を除くベースでのEPSの過去5年間の年平均成長率(CAGR)は15.40%で、過去10年間の年平均成長率は14.10%と継続して成長を実現していることが分かります。

しかしながら、最新の四半期の粗利益率は12.61%で、過去5年間の中央値と同水準ですが、過去10年間の最高値13.32%をわずかに下回る水準となっています。

また、過去10年間の自社株買い比率は-0.20%で、ほとんど自社株の買い戻しが行われていないことを示しています。

これは、足元のEPSの成長が自社株の買い戻しによるものではないことを意味しており、同社が株式の発行を増やしつつ、財務操作ではなく業務効率や売上の成長に注力していることを示しています。

今後の見通しとして、アナリストは同社の売上高が2025年には2,732億7,000万ドル、2026年には2,915億5,000万ドル、2027年には3,097億6,000万ドルに達すると予想しており、業界全体でも年率3~4%の成長が見込まれています。

また、来年度の予想EPSは17.79ドル、さらに再来年度には19.51ドルに達すると予想されています。

コストコ・ホールセールの次回の業績発表は2024年12月13日に予定されており、さらに詳細な業績や戦略が明らかになるでしょう。

非経常損益項目を除くベースでのEPS

(年間ベース:直近4四半期の合計値

(出所:筆者作成)


関連用語

EPS(Earnings Per Share、1株当たり利益):企業が一定期間内に得た純利益を、その期間中に発行されている株式の総数で割った値のこと。EPSは、株主が1株あたりどれだけの利益を得たかを示す指標であり、企業の収益力を評価する際によく用いられ、EPSが高いほど、一般的にはその企業が効率的に利益を上げていると判断される。

非経常損益項目を除くベースでのEPS(EPS without NRI):非経常的な収益や費用(例: 一時的な訴訟費用や災害損失)を除いた後の1株当たりの利益(EPS)。これにより、通常の業績をより正確に反映することが可能。

希薄化後EPS:既存株主にとって、潜在的に新しい株式が発行された場合(例: ストックオプションや転換社債の行使)に、1株あたりの利益(EPS)がどの程度薄まるかを考慮したもの。

1株当たり売上高:企業の総売上高を発行済株式数で割った値で、1株あたりが生み出す売上を示しており、企業の売上規模と株式の価値を評価するのに役立つ。

粗利益率:売上高に対する粗利益の割合を示す指標。企業が商品やサービスを販売した際に、売上から直接かかったコスト(売上原価)を差し引いて得られる利益の割合を計算する。粗利益率が高いほど、企業が商品やサービスから得られる利益が大きいことを意味する。

自社株買い比率:企業が自社の発行済み株式を買い戻した割合を示す指標。この比率は、過去の一定期間において企業がどれだけ自社株を買い戻したかを示しており、通常は1年間の比率として表される。具体的には、買い戻された株式数をその期間の発行済株式総数で割ることで計算される。高い比率は、企業が積極的に自社株を買い戻し、EPS(1株当たり利益)を押し上げる可能性があることを示唆している。

各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。

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コストコ・ホールセール(COST)の財務パフォーマンスに関して

コストコ・ホールセール(COST)の財務パフォーマンスを、投下資本利益率(ROIC)、加重平均資本コスト(WACC)、自己資本利益率(ROE)の観点から分析していきます。

同社の財務パフォーマンスは、高水準のROICからもその高い経済価値の創出能力がうかがえます。

現在のROICは16.01%で、WACCの10.13%を上回っており、着実にプラスの経済的な価値を生み出していると言えます。

また、過去5年間のROICの中央値は14.65%で、過去のWACCの中央値である6.83%を上回っています。

このROICとWACCの差は、同社が資本を効率的に活用し、資本コストを超えるリターンを生み出していることを示しており、財務の健全性と優れた資本配分の証といえます。

さらに、ROEは31.39%と過去10年で最高水準に達しており、強力な収益性と株主価値の向上を示しています。

全体として、コストコ・ホールセールがROICをWACCよりも高い水準で維持していることは、資本を戦略的に運用し、効率よく利益を上げていることを裏付けており、資本コストを大きく上回るリターンを提供する、魅力的な投資先であることを示していると言えます。

投下資本利益率(ROIC)加重平均資本コスト(WACC)の比較

(出所:筆者作成)


関連用語

総資産利益率(ROA: Return on Assets):企業が保有する全ての資産を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を総資産で割ることで算出され、ROAが高いほど、企業が資産を効率的に運用していることを示す。

自己資本利益率(ROE: Return on Equity):企業が株主の出資(自己資本)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を自己資本で割ることで算出され、ROEが高いほど、株主にとって効率的な運用が行われていることを示す。

投下資本利益率(ROIC: Return on Invested Capital):企業が投下資本(株主資本+負債)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算はNOPAT(税引後営業利益)を投下資本で割ることで算出され、ROICが高いほど、企業が効率的に資本を運用していることを示す。

ジョエル・グリーンブラット氏の資本利益率(ROC: Return on Capital):株主資本と長期負債の合計である資本に対して、どれだけの利益(NOPAT)を生み出しているかを示す指標。ROICと同様に、資本の効率的な運用を評価する。

加重平均資本コスト(WACC: Weighted Average Cost of Capital):企業が資金を調達する際に必要となる平均的なコストを示す指標で、株主資本と負債のコストを加重平均して求める。WACCが低いほど、企業の資本コストが低く、投資がより利益を生む可能性が高くなる。

各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。

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コストコ・ホールセール(COST)の配当に関して

コストコ・ホールセール(COST)の最近の配当成長は引き続き堅調で、1株あたりの過去3年間の配当成長率は13.50%、過去5年間では12.40%と高い水準を維持しています。

ただし、過去の配当増加は顕著ですが、今後3~5年の成長率は2.93%に鈍化すると予測されており、やや慎重な見通しが示されています。

さらに、小売業界全体と比べると、同社の予想配当利回りは0.53%と比較的低めで、株主還元よりも再投資や成長に重点を置いていることが反映されていますが、これは同社の歴史的な配当利回りの範囲(0.47%~1.23%)内に収まっています。

一方で、配当性向は26.0%と余裕があり、過去の最高値を大きく下回っているため、今後の配当増額や特別配当の余地が十分にあると言えるでしょう。

そして、実際に、2023年12月には15ドルの特別配当が支払われています。

また、コストコのEBITDA有利子負債倍率は0.68倍で、基準とされる2倍を大きく下回っていることからも、財務の健全性と低いリスクを示していると言えます。

基本的には、EBITDA有利子負債倍率は2倍以下であれば財務リスクが低く、4倍以上であれば財務リスクが高いことを示すとされています。

次回の配当の権利確定日は2024年10月24日と予想されており、安定した配当スケジュールが維持される見込みです。

そして、配当の権利確定日を無事通過することで、コストコ・ホールセールが財務健全性を保ちながら株主還元にも注力していることを確認できるでしょう。

予想配当利回り0.53%

配当性向26%

配当カバレッジ・レシオ3.8

過去5年間の配当成長率12.40%

EBITDA有利子負債倍率0.68

DPS(Dividend Per Share):1株当たりの配当金

(出所:筆者作成)

Dividend Yield:予想配当利回り

(出所:筆者作成)

Dividend Payout:配当性向

(出所:筆者作成)


関連用語

1株当たりの配当金:企業が株主に支払う配当金を、発行されている株式の総数で割った値。これにより、株主が保有する1株あたりに受け取ることができる配当金の金額が示される。

配当成長率:企業が過去数年間にどれだけ配当金を増加させたかを示す割合。配当成長率が高いほど、企業が株主に対して利益を還元する意欲が強いことを示す。

予想配当利回り:企業が次年度に支払うと予想される配当金を現在の株価で割った割合。投資家にとって、どれだけのリターンを配当として受け取ることができるかの見込みを示す。

配当性向:企業の純利益に対して、どれだけの割合を配当金として支払っているかを示す指標。計算は、配当金を純利益で割って算出され、配当性向が高すぎると、企業の成長投資に使える資金が減少する可能性がある。

EBITDA有利子負債倍率:EBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)に対する有利子負債の割合を示す。企業の有利子負債が利益によってどれだけカバーできるかを示す指標で、低いほど財務的な健全性が高いとされている。

配当カバレッジ・レシオ:企業の利益が、支払われる配当金をどれだけ上回っているかを示す指標。計算は、利益(通常は純利益かEBITDA)を配当金で割ることで算出され、配当カバレッジ・レシオが高いほど、配当が持続可能であると考えられている。

配当王:50年以上にわたり連続して配当を増やし続けている企業。これに該当する企業は、長期間にわたり安定した利益成長と配当支払いを維持していることを示している。

配当貴族:25年以上連続して配当を増やしている企業。これも安定した配当成長を実現している企業に与えられる称号。

各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。

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コストコ・ホールセール(COST)のバリュエーションに関して

コストコ・ホールセール(COSTの現在の株価は883.11ドルで、弊社算出の一株当たり本質的価値である617.73ドルよりも高い水準にあり、安全余裕率(マージン)がマイナス42.96%となっていることから、割高である可能性が示唆されています。

また、直近過去12カ月の実績ベースのPERは53.3倍で、過去10年間の最高値である55.29倍に近く、中央値の34.19倍を大きく上回っており、これも割高感を強めています。

さらに、予想ベースのPERは49.53倍で若干低いものの、依然として過去の平均に比べて高い水準です。

加えて、直近過去12カ月の実績ベースのEV/EBITDAは31.98倍で、こちらも過去10年間の最高値である33.32倍に近く、中央値の19.41倍を大きく上回っており、割高であるように見えます。

PBRも16.57倍で、過去最高の18.17倍に近づいており、過去10年間の中央値である8.15倍を大幅に上回っていることからも、簿価に対して高いプレミアムがつけられていることが示されています。

さらに、株価フリー・キャッシュフロー倍率は59.23倍で、過去10年間の中央値である33.83倍を大きく上回り、キャッシュフローの観点でも割高感が示唆されています。

それでも、市場のアナリストは同社の今後に期待を寄せており、3カ月前には847.09ドルだった目標株価の平均値は、現在では927.63ドルに上昇しています。

38人のアナリストも楽観的な見解を示しており、同社の成長に対する期待が継続しています。

しかし、現在のバリュエーション指標を見てみると、コストコ・ホールセールの株価が弊社算出の一株当たり本質的価値や過去のバリュエーション指標の平均を大幅に上回っていることも事実です。

そのため、今後の上昇余地は限られ、調整リスクがある可能性もあることから、市場の投資家は慎重な対応が求められるでしょう。

(出所:筆者作成)


上記グラフにおける関連用語

Price:現在の株価

Yiazou Value:弊社算出の一株当たり本質的価値

DCF (FCF Based):フリーキャッシュフローに基づくDCF法を用いて算出した理論株価

DCF (Earnings Based):収益に基づくDCF法を用いて算出した理論株価

Median P/S:株価売上高倍率の中央値ベースの理論株価

Perter Lynch:ピーター・リンチ氏のバリュエーション計算方法に基づく理論株価

赤線:上記の各バリュエーション手法により算出された理論株価の平均値


関連用語

実績PER(Price Earnings Ratio):過去1年間の実績ベースの1株当たり利益(EPS)に対する現在の株価の倍率。企業が過去にどれだけの利益を上げたかに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。

予想PER(Forward PER):予想される1株当たり利益(来年度のEPS予想)に対する現在の株価の倍率。将来の利益見込みに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。

PEGレシオ(Price/Earnings to Growth Ratio):PERを企業の利益成長率で割った指標。成長率を考慮した株価の割安・割高を判断するために使われ、一般的に1以下が割安とされる。

株価売上高倍率(Price to Sales Ratio, PSR):企業の売上高に対する現在の株価の倍率。売上高に対して株価がどれだけの価値を持つかを示す指標で、低いほど割安とされる。

株価フリー・キャッシュフロー倍率(Price to Free Cash Flow Ratio, P/FCF):企業がフリー・キャッシュフロー(営業キャッシュフローから資本的支出を差し引いた金額)に対する現在の株価の倍率。企業のキャッシュフロー創出能力に対して株価が割安か割高かを判断する。

EV/EBITDA倍率(Enterprise Value to EBITDA Ratio):企業価値(EV:株式時価総額+負債−現金)をEBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)で割った指標。企業全体の価値に対する収益力を評価するために用いられる。

PBR(Price to Book Ratio, 株価純資産倍率):企業の純資産(簿価)に対する現在の株価の倍率。株主資本に対して株価がどれだけの価値を持つかを示し、1倍以下だと市場での評価が純資産を下回っているとされる。

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コストコ・ホールセール(COST)のリスクとリターンに関して

コストコ・ホールセール(COSTのリスク・リターン評価分析では、投資家が投資決定を下す前に考慮すべきいくつかのポイントを取り上げたいと思います

まずマイナス面では、粗利益率が年平均1.1%減少しており、収益性に圧力がかかっている可能性があります。

また、株価は過去10年の最高値付近にあり、PBRやPERも歴史的な高水準に達しているため、株価が割高である可能性があります。

さらに、最近のインサイダーによる同社株式の取引傾向を見てみると、足元では8件の売却が行われ、合計12,374株が売却されましたが、買い付けは一切なく、インサイダーによる同社株式の今後の見通しへの信頼が揺らいでいる可能性を示唆しています。

さらに、昨年は売上高の成長速度が鈍化しており、今後の収益に影響を与える可能性があります。

しかし、プラス面では、同社は財務的には非常に健全で、アルトマンのZスコアが9.53と高く、倒産リスクはほぼゼロに近いことが示されています。

加えて、ベネシュのMスコアも-2.59で、財務操作のリスクが低いとされています。

さらに、営業利益率が拡大しており、業務効率も向上しています。

ただし、予想配当利回りは過去10年で最低水準に近づいており、配当収入を重視するインカム投資家にとってはあまり魅力的な水準ではないかもしれません。

全体的に見て、コストコ・ホールセールは安定した財務基盤と効率的な運営を持っていますが、現状の株価の高さや利益率の低下といったリスクを、その強みと併せて慎重に評価する必要があるでしょう。


関連用語

財務レバレッジ:企業が負債をどれだけ活用して資産を増やしているかを示す指標。高い財務レバレッジはリスクを伴うが、うまく活用すればリターンが増加する可能性もある。 目安は業界によって異なるが、一般的には2~3倍が理想とされ、高すぎると財務リスクが高まるとされている。

アルトマンのZスコア:企業の財務健全性を評価するための指標で、特に倒産リスクを予測するのに用いられる。複数の財務指標を組み合わせて計算され、Zスコアが低いほど倒産リスクが高いとされる。目安としては、3.0以上は安全、1.8未満は倒産リスクが高いとされている。

ベネッシュのMスコア:企業が財務報告において不正行為や収益の過大計上を行っている可能性を評価する指標。スコアが高いと、財務操作のリスクが高いとされ、-2.22以下で不正の可能性が低いとされている。

ピオトロスキーのFスコア:企業の財務健全性や成長性を評価するための指標で、9つの財務指標に基づいてスコアが付けられる。スコアが高いほど、財務状況が健全であると評価される。目安としては、7〜9は財務状況が非常に健全、4〜6は平均的、0〜3は財務上の懸念がある可能性が高いとされている。

インタレスト・カバレッジ・レシオ(利息カバレッジ比率):企業が稼いだ利益(通常は営業利益)が、支払わなければならない利息に対してどれだけ余裕があるかを示す指標。計算式は、営業利益 ÷ 利息費用。目安としては、2倍以上が望ましいとされ、これは企業が利息の2倍以上の利益を稼いでいることを意味し、財務的な余裕があると評価される。逆に、1倍以下だと、利息の支払いが困難になる可能性があり、財務リスクが高まる。

ベンジャミン・グレアム:現代のバリュー投資の父と呼ばれる著名な投資家であり、経済学者。「証券分析」や「賢明なる投資家」などの著書を通じて、企業の本質的価値に基づいて株を割安に買うというバリュー投資の概念を広めた人物。彼の投資哲学は、リスクを抑えつつ堅実なリターンを得ることを目指し、多くの投資家に影響を与えている。

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コストコ・ホールセール(COST)のインサイダー(内部関係者)による売買に関して

コストコ・ホールセール(COST)の最近のインサイダー取引状況を見ると、過去1年間にわたり取締役や経営陣による同社株式の売却が続いていることがわかります。

直近過去3カ月ではインサイダーによる同社株式の買い付けは確認されていない一方で、8件の売却が確認されています。

過去6カ月間でも同社株式の買い付けは確認されていない一方で、9件の売却がありました。

そして過去12カ月間では、買い付けが確認されていない一方で、売却が26件に上ります。

このような動きは、インサイダーが自社株の保有を減らしている傾向を示していると言えます。

ただし、インサイダーの同社株式の保有比率はもともと低く、0.52%にすぎません。

一方、機関投資家の同社株式の保有比率は68.81%と高く、コストコの長期的な見通しに対するプロの機関投資家の強い信頼を示しています。

インサイダーの継続的な売却は一部の投資家にとって警戒材料となるかもしれませんが、プロの機関投資家による高い保有比率は強い支持を意味しています。

市場の投資家は、コストコ・ホールセールへの投資を検討する際には、これらの要素と業績や市場状況を合わせて考慮し、判断する必要があるでしょう。

インサイダー(内部関係者)による売買

(出所:筆者作成)


関連用語

インサイダーによる自社株式の保有比率:企業の経営陣や役員、主要株主(一般的に10%以上の株式を保有する人)が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。インサイダーが多くの株式を保有している場合、彼らが企業の将来に自信を持っていると見なされることが多い。

機関投資家による株式の保有比率:投資ファンドや保険会社、年金基金などのプロの機関投資家が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。機関投資家の保有比率が高いと、その企業が市場で信頼されていると判断されることがある。


コストコ・ホールセール(COST)の流動性に関して

コストコ・ホールセール(COSTの直近営業日の1日の出来高は1,476,402株で、直近2カ月の平均出来高である1,852,673株を下回っています。

これは、最近の取引活動が減少していることを示しており、流動性がやや低下している可能性があります。

同社のダークプール指数(DPI)は46.76%となっており、取引の約半分が取引所外のダークプールで行われていることがわかります。

この50%程度のダークプールでの取引活動は、プロの機関投資家が市場への影響を抑えながら、同社の大口取引を目立たない形で行っている可能性を示唆しています。

こうした状況を踏まえると、同社の流動性は通常の取引には十分であるものの、足元の出来高が平均を下回っているため、やや流動性が低下している可能性が考えられます。

また、ダークプールでの取引割合が目立つことから、プロの大口機関投資家の関心が高まっており、今後の流動性や価格の安定性に影響を与える可能性があります。

以上より、引き続きコストコ・ホールセールの出来高やDPIの動向を注視することが、同社の今後の流動性を評価する上で重要と言えるでしょう。


関連用語

ダーク・プール(私設取引所):株式などの金融商品が公開市場(例えば証券取引所)ではなく、非公開の場で取引されるプラットフォームのこと。ダーク・プールでは取引の内容(注文の価格や数量)が一般に公開されないため、大量の株式を売買する際に市場に与える影響を最小限に抑えることができる。主に機関投資家が利用し、取引の透明性が低い点が特徴。

ダーク・プール指数(DPI):ダーク・プール(私設取引所)内において、同社株式がどの程度取引されているかを示すものであり、注目すべき指標の1つである。


アナリスト紹介:イアニス・ゾルンパノス氏

イアニス・ゾルンパノス氏は、詳細なビジネス分析を通じてデューデリジェンス・プロセスを向上させることを目的とした株式市場調査プラットフォーム、「イアゾウ・キャピタル・リサーチ」の創設者です。

以前はデロイトとKPMGで外部監査と内部監査、並びに、コンサルティング業務に従事しておりました。ゾルンパノス氏は、公認会計士資格を保有し、ACCAグローバルのフェロー・メンバーでもあります。更に、英国の一流ビジネススクールで学士号と修士号を取得しております。

ゾルンパノス氏のその他の配当関連のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、ゾルンパノス氏のプロフィールページにアクセスしていただければと思います。

その他のコストコ・ホールセール(COSTはに関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、コストコ・ホールセールのページにアクセスしていただければと思います。

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