やや強気ダイナトレースダイナトレース / DT / 強気:最新の2024年2Q決算・強み(優位性)分析と今後の株価見通し・将来性(Dynatrace)
- ダイナトレース(DT)は世界中の企業にマルチクラウドのセキュリティソリューションを提供しているテクノロジー企業である。
- 同社は2023年11月2日に2024年第2四半期決算を発表しており、売上高、利益、フリー・キャッシュ・フローを堅調に増加させている。
- ファンダメンタルズと今後の低金利環境の可能性から、私は同社株式に対して「強気」に見ている。
ダイナトレース(DT)について
ダイナトレース(DT)は11月2日、2024年第2四半期決算を発表し、売上高とコンセンサス利益の予想を上回る着地となった。
同社は世界中の企業にIT運用を自動化するマルチクラウド・セキュリティ・ソリューションを提供しているテクノロジー企業である。
同社のトップライン(売上高)成長率と利益実績は上昇傾向にあるため、2024年に資本コストが低下する可能性がある同社株式に対して、私は「強気」に見ている。
ダイナトレース(DT)の概要と市場
ダイナトレース(DT)は、米国マサチューセッツ州ウォルサムに本社を置くソフトウェア・インテリジェンス企業である。
同社はマルチクラウド環境向けのセキュリティプラットフォームを提供しており、顧客は同社のプロダクトを通じて、IT運用の近代化と自動化、ソフトウェアの開発とリリース、ユーザーエクスペリエンスの向上を実現することができる。
CEOのリック・マコーネル氏は2019年から同社に在籍している。
マコーネル氏はテクノロジー業界で25年以上の経験を持ち、アカマイ・テクノロジーズ(AKAM:Akamai Technologies)、ヒューレット・パッカード(HPQ)、Compaqなどの企業でリーダーシップを発揮してきた。
ダイナトレースは、アプリケーションとマイクロサービスのモニタリング、ランタイム・アプリケーション・セキュリティ、インフラモニタリング、ログ管理と分析、デジタル・エクスペリエンス・モニタリング、デジタル・ビジネス分析、クラウド自動化など、フルスタックのソリューションを顧客に提供している。
また、加えて、導入、コンサルティング、トレーニングサービスも提供している。
フォーチュン・ビジネス・インサイトのレポートによると、世界のクラウドセキュリティ市場規模は 2021年に 292億6000万ドルと評価され、 2022~2029年の年平均成長率は 18.1%を示し 、2029年には1060億2000万ドルに成長すると予測されて いる。
実際に、COVID-19の大流行により、クラウドセキュリティソリューションの導入が加速し、クラウドベースのソリューションに対する需要が大幅に増加している。
また、サイバー犯罪の高度化、サイバースパイ活動、新たなサイバー攻撃の発生などの要因によって、市場は予測期間中に力強い成長を遂げると予測されている。
また、クラウドベースのソリューションの採用、ハイブリッドクラウドの台頭、DevOpsの効率化も市場の成長を後押しすると予想される。
以下のリストは、クラウドセキュリティ市場の主要企業とその関連製品・サービスに関してである。
- Fidelis Cybersecurity:同社は、パブリック、プライベート、ハイブリッドのクラウド環境に自動化されたセキュリティとコンプライアンス監視を提供するクラウドセキュリティプラットフォーム、Fidelis CloudPassage Haloを提供。また、その保護を拡大するために、さまざまなネットワーク・セキュリティ・ソリューションも提供。
- Qualys(QLYS:クオリス):オンプレミス、パブリッククラウド、ハイブリッドクラウドのあらゆる環境で実行されるワークロードに対して、自動化されたセキュリティ可視化とコンプライアンス監視を提供するコンプライアンス・ソリューションを提供。
- Palo Alto(PANW:パロアルト):オンプレミス、パブリッククラウド、ハイブリッドクラウドのあらゆる環境で実行されるワークロードに対して、自動化されたセキュリティ可視化とコンプライアンス監視を提供するクラウドワークロード保護ソリューションを提供。
- Symantec:オンプレミス、パブリッククラウド、ハイブリッドクラウドのあらゆる環境で実行されるワークロードに対して、自動化されたセキュリティ可視化とコンプライアンス監視を提供するCASBソリューションを提供。
- Tenable(TENB:テナブル):オンプレミス、パブリッククラウド、ハイブリッドクラウドのあらゆる環境で稼働するワークロードに対して、自動化されたセキュリティ可視化とコンプライアンス監視を提供する脆弱性管理ソリューションを提供。
- Trend Micro(4704 JP:トレンドマイクロ):オンプレミス、パブリッククラウド、またはハイブリッドクラウド環境で実行されるワークロードに対して、自動化されたセキュリティ可視化とコンプライアンス監視を提供するハイブリッドクラウドセキュリティソリューションを提供。
- Zscaler(ZS:ゼットスケーラー):オンプレミス、パブリッククラウド、ハイブリッドクラウドのあらゆる環境で実行されるワークロードに対して、自動化されたセキュリティ可視化とコンプライアンス監視を提供する高度な脅威防御ソリューションを提供。
ダイナトレース(DT)の最近の財務動向
四半期別総売上高(水色の線:Total Revenue)は成長軌道を維持しており、四半期別営業利益(青色の線:Operating Income)は直近四半期で最高水準となっている。
また、四半期別売上総利益(水色の線:Gross Profit)は顕著な伸びを続けており、四半期別販売費および一般管理費(青色の線:Selling General & Admin Expenses)は、比較すると、足元、伸びが緩やかになり始めており、これは良い兆候であると見ている。
また、希薄化後1株当たり利益(青色の線:EPS)はここ数四半期、前期比で増加傾向にある。
(上記グラフのデータはすべて百万USD単位・GAAPベース)
また、過去12ヶ月で、同社の株価は57%上昇したのに対し、iシェアーズ・エクスパンデッド・テクノロジー・ソフトウェアETF (IGV)の上昇率は67%であった。
ダイナトレース(DT)のバリュエーションとその他の指標
以下は、同社に関連するバリュエーションの表である。
指標(直近過去12ヵ月) | 値 |
企業価値 / 売上高(予想) | 11.4 |
企業価値 / EBITDA(予想) | 40.3 |
株価売上高倍率(実績) | 12.8 |
売上高成長率(予想) | 21.9% |
純利益率 | 13.1% |
EBITDAマージン | 12.5% |
時価総額 | $16,800,000,000 |
企業価値 | $16,170,000,000 |
営業キャッシュフロー | $353,170,000 |
一株当たり利益(完全希薄化後) | $0.57 |
予想EPS | $1.11 |
一株当たりフリーキャッシュフロー(予想) | $1.14 |
成長、利益、フリー・キャッシュ・フローに余裕のある前提を用いたDCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)に基づくと、同社の株価は、現在の57.1ドルに対して、約54.8ドルで評価されることになり、潜在的に今後のアップサイドが既に現在の株価に織り込まれている可能性が示唆されている。
また、40%ルールとは、ソフトウェア業界の経験則であり、売上高成長率とEBITDA成長率の合計が40%以上であれば、その企業は、ソフトウェア企業として、許容できる成長とEBITDAの軌道に乗っていることを示すものである。
下表のように、同社の直近の調整前40%ルールの計算値は、2024年第2四半期決算時点で31.9%であった。
40%ルール・パフォーマンス(調整前) | 2023年第3四半期 |
売上高成長率 | 21.9% |
営業利益率 | 10.0% |
合計 | 31.9% |
ダイナトレース(DT)に関するコメント
市場のアナリストとの直近の決算電話会議において、経営陣は次のように述べている。
- 収益の伸び:総収益は前年比24%増の3億5,200万ドル。サブスクリプション収入は前年比26%増の3億3,400万ドル。
- 受注残:ARR(年間経常収益)は前年比24%増の13億4,000万ドル。
- 予約:新規ARRは予想を上回る5,900万ドル。160の新規顧客を獲得。
- 経費:営業利益率ガイダンスを125bps引き上げて27%としながらも、GSIパートナーシップ、販売能力、需要創出への投資を増やす予定。
- キャッシュ・フロー:第2四半期のフリー・キャッシュ・フローは3,400万ドル。直近過去12ヵ月のフリー・キャッシュ・フローは3億3,000万ドルで、売上高の25%。
- バランスシート:現金7億200万ドル、有利子負債はゼロ。
- 国際事業:サンパウロ、シドニー、チューリッヒの新地域でクラウド関連ビジネスを拡大した。
- トレンド:経営陣は、オブザーバビリティ(可観測性)とアプリケーション・セキュリティに対する要求が高まっていると見ている。
- 顧客はベンダーを統合し、同社プラットフォームを標準化している。同社は、Grail上のログやアプリケーション・セキュリティ分析のような新製品の牽引力を高めている。新しいDPSの価格モデルも人気を集めている。
- アナリストが同社首脳に様々なトピックについて質問したところ、経営陣は、現在のマクロ環境では既存顧客は拡張に慎重な姿勢を崩していないが、オブザーバビリティ・ソリューションに対する需要と可視性の高まりを示す新規顧客の獲得に牽引され、同社は好調な第2四半期を実現できたと回答した。
- 同社は下半期に向けてパイプラインの成長が続くと見ており、将来の成長に備えるために営業採用への投資を増やし始めた。
- 同社のAPM、インフラ、ログ、AIにまたがる広範なオブザーバビリティ・プラットフォームは、大規模で複雑な環境下で反響を呼んでおり、新規顧客の獲得につながるアーキテクチャ上の意思決定を促進している。
- 最適化が進む一方で、同社のサブスクリプションモデルは、より良いオブザーバビリティによって効率性の向上を可能にする位置づけにありながら、顧客の利用状況の変化から同社を守るのに役立っている。
今後の見通しとして、経営陣は通期の売上高ガイダンスを前年比21~22%増の14億~14億2000万ドルに引き上げ、サブスクリプション収入のガイダンスを22~23%増の13~13.4億ドルに引き上げている。
また、通年のフリーキャッシュフローのガイダンスを3億1,300万~3億2,000万ドル(売上高利益率の22~23%)に引き上げた。
さらに、一株当たり利益は増加傾向にあり、フリー・キャッシュフローもかなり好調である。
私のDCF法に基づくバリュエーションでは、今後のアップサイドが、現在の株価に十分に織り込まれている可能性を示唆しているが、同社の今後の成長と利益パフォーマンスは加速しているのは事実である。
そのため、私は、2024年にかけて資本コストが下がる可能性があるダイナトレースに「強気」で見ている。