エクイニクス(EQIX)とデジタル・リアルティ・トラスト(DLR)の将来性:注目のAI・データセンター関連銘柄の強みに迫る!
コンヴェクィティ- 本稿では、エクイニクス(EQIX)とデジタル・リアルティ・トラスト(DLR)の比較を通じて、注目のAI・データセンター関連銘柄のテクノロジー上の強みと競争優位性、そして、両社の将来性を詳しく解説していきます。
- エクイニクスは高品質な接続を提供するキャリアホテルに強みがあり、一方でデジタル・リアルティ・トラストは大規模インフラ向けのホールセール型データセンターに注力しています。
- 2023年のAIブームにより、AIトレーニングのためのホールセール型データセンターの需要が増加し、大規模施設を持つデジタル・リアルティ・トラストはエクイニクスよりも恩恵を受けました。
- エクイニクスは、大規模インフラと優れた相互接続サービスを組み合わせる新しい戦略を打ち出しており、AI推論が日常のアプリケーションにさらに組み込まれるようになれば、競争力を高める可能性があると見ています。
エクイニクス(EQIX)とデジタル・リアルティ・トラスト(DLR)の比較
エクイニクス(EQIX)はデータセンターを所有・運営しており、主にデータ管理を外部委託したい企業に対してサーバーラック(サーバーを設置するための金属製の棚やフレーム)やキャビネット(サーバーラックを囲む箱型の収納設備)を貸し出しています。これにより、顧客は電力供給、冷却、セキュリティ、ネットワーク接続といった複雑な作業から解放されます。 エクイニクスはキャリアホテル(複数の通信事業者が相互接続するためのデータセンターで、高速で信頼性の高い接続が可能)に特化しており、都市部に位置するネットワーク中立の施設(特定の通信事業者に依存せず、複数の事業者が自由に接続できるデータセンターのこと)で、インターネットサービスプロバイダー(ISP)同士の相互接続を提供することで、他に類を見ない接続性を実現しています。
一方、デジタル・リアルティ・トラスト(DLR)はホールセール型のデータセンターサービスを提供し、クラウドサービスプロバイダーなどの顧客に対して広大なスペースと電力を提供しています。その施設は、広いスペースや電力の確保が容易な都市外に位置しています。
エクイニクスは高級な都心のマンションのように、小規模なサーバースペースを高価格で提供し、優れたネットワーク接続を誇ります。一方、デジタル・リアルティ・トラストは郊外の一軒家のように広いデータスペースを提供する一方で、接続性についてはそれほど重視していません。
SASE(Secure Access Service Edge:ネットワークセキュリティとWANサービスを統合したクラウドベースのアーキテクチャ)ベンダーはキャリアホテルの利点からエクイニクスを選ぶ傾向があります。ハイパースケーラー(AWSのような大規模なクラウドインフラを持ち、膨大なコンピューティングリソースを提供できる企業)はデジタル・リアルティ・トラストを利用するものの、クラウドアクセスのためにエクイニクスのエッジPoP(通信ネットワークの端に設置されたアクセス拠点で、ユーザーに近い場所にあるため低遅延でサービスを提供)やオンランプ機能(クラウドサービスなどに直接接続するためのインフラ機能で、高速で安全なアクセスを提供)も併用しています。
AIが変えるデータセンター業界とエクイニクス(EQIX)とデジタル・リアルティ・トラスト(DLR)への影響
2021年から2022年にかけて、ハイパースケーラーはホールセール型データセンター(大規模なスペースと電力を必要とする企業向けに提供されるデータセンター)を過剰に拡大し、その結果、空室が増え、ホールセール顧客に依存していたデジタル・リアルティ・トラスト(DLR)のような貸し手に影響を及ぼしました。 2023年には、生成AIの成長によりデータセンター業界が活気を取り戻し、ホールセールプロバイダーが恩恵を受ける形となりました。AIのワークロードには大規模なインフラが必要で、これはデジタル・リアルティ・トラストの施設に適しています。ハイパースケーラーは追加のホールセールスペースを求め、価格や稼働率も上昇しました。新しい施設の建設には時間がかかるため、多くのデータセンターがAI対応に改修されました。
一方、キャリアホテルやリテールコロケーションに注力しているエクイニクス(EQIX)は、AIブームの恩恵をあまり受けていません。AIのトレーニングには大きな電力が必要であり、それはエクイニクスの施設には適していないため、ホールセール型が有利です。AI推論に関しても、エクイニクスにとってはまだ不確定な部分があります。推論処理にはある程度のレイテンシ(データが送信されてから相手に到達するまでの時間遅延のこと)が許容される必要がありますが、もし生成AIが低レイテンシを求める従来のビジネスアプリに組み込まれれば、エクイニクスの価値が高まる可能性もあります。しかし現時点では、AIデータセンターのわずか3%しか推論用途に使われておらず、エクイニクスへの恩恵は限られています。
エクイニクス(EQIX)の変わりゆくデータセンター業界への対応
エクイニクス(EQIX)は、2022年の生成AIブームをきっかけにホールセール分野への拡大が求められています。そのため、同社は2017年に導入したxScaleデータセンター(同社が提供する、大規模クラウドプロバイダーであるハイパースケーラー向けの専用データセンター)の拡大を進めており、クラウドサービスプロバイダー(CSP)やハイパースケーラー向けに、AIワークロード対応として100メガワット以上の供給を目指しています。同社の264のデータセンターのうち20施設がxScaleですが、新しい施設の建設には18~24カ月かかるため、2024年第2四半期に71メガワットをリースしたデジタル・リアルティ・トラスト(DLR)に対し、エクイニクスのリース量は17メガワットにとどまっています。
ハイパースケーラーの選択肢と課題
すべてのハイパースケーラーがデータセンターをリースしているわけではありません。アマゾン(AMZN)やグーグル(GOOG/GOOGL)は既存市場では自社でデータセンターを建設し、新興市場で需要がまだ確立されていない場合に限りリースを行っています。
例えば、AWSは2011年にサンパウロでリースを行いましたが、その10年後には自前のセンターを建設しました。 マイクロソフト(MSFT)はAzureの規模拡大のためにリースを利用していましたが、生成AIに注力する現在では自社での建設を優先しています。オラクル(ORCL)や小規模なクラウドプロバイダーは主にリースを利用しています。
エクイニクス(EQIX)には課題があります。具体的には、AWS、グーグル、マイクロソフトは自社でデータセンターを建設することが多く、デジタル・リアルティ・トラスト(DLR)やブラックストーン(BX)といった競合他社はホールセールの経験が豊富という点です。
しかし、エクイニクスのxScaleはキャリアホテルと統合されており、他社にはない低レイテンシ・高帯域の接続性を提供しています。これはAI推論やリアルタイム分析において大きな強みとなります。一方、デジタル・リアルティ・トラストはこうした統合型の接続性を持たないため、コストや運用の複雑さが増すことになります。 エクイニクスの統合型アプローチは競争力の向上につながる可能性がありますが、AI推論が広く普及するまでにはまだ2年ほどかかると見られています。
アナリスト紹介:コンヴェクィティ
2019年に設立されたコンヴェクィティは、AI、サイバーセキュリティ、SaaSを含むエンタープライズ(企業)向けテクノロジーを扱うテクノロジー企業に関する株式分析レポートを提供しています。セールス・チャネルや分析対象企業の経営陣との関係に依存する投資銀行や証券会社のアナリストとは異なり、対象企業のプロダクト、アーキテクチャー、ビジョンを深掘りすることで投資家に付加価値の高い、有益な情報の提供を実現しています。
当社のパートナーであるジョーダン・ランバート氏とサイモン・ヒー氏は、「最新のテクノロジーに対する深い洞察」、「ビジネス戦略」、「財務分析」といったハイテク業界におけるアルファの機会を引き出すために不可欠な要素を兼ね備えております。そして、特に、第一線で活躍する企業やイノベーションをリードするスタートアップ企業を含め、テクノロジー業界を幅広くカバーすることで、投資家のビジビリティと長期的なアルファの向上に努めています。
ジョーダン・ランバート氏 / CFA
ランバート氏は、テクノロジー関連銘柄、および、リサーチとバリュエーションのニュアンスに特別な関心を持つ長年のハイテク投資家です。ランバート氏は、CFA資格を取得した後、2019年10月にコンヴェクィティを共同設立しており、新たな技術トレンド、並びに、長期的に成功する可能性が高い企業を見極めることを得意としています。
サイモン・ヒー氏
ヒー氏は、10年以上にわたってテクノロジーのあらゆる側面をカバーしてきた経験を生かし、テクノロジー業界における勝者と敗者を見極める鋭い洞察力を持っています。彼のテクノロジーに関するノウハウは、ビジネス戦略や財務分析への理解と相まって、コンヴェクィティの投資リサーチに反映されています。コンヴェクィティを共同設立する以前は、オンラインITフォーラムでコミュニティ・マネージャーを務め、ネットワーク・セキュリティ業務に従事していました。ヒー氏は、ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンを卒業し、商学士号を取得しております。
また、コンヴェクィティのその他のテクノロジー関連銘柄のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、コンヴェクィティのプロフィールページにアクセスしていただければと思います。
インベストリンゴでは、弊社のアナリストが、高配当関連銘柄からAIや半導体関連のテクノロジー銘柄まで、米国株個別企業に関する動向を日々日本語でアップデートしております。そして、インベストリンゴのレポート上でカバーされている米国、及び、外国企業数は250銘柄以上となっております。米国株式市場に関心のある方は、是非、弊社プラットフォームよりレポートをご覧いただければと思います。
※インベストリンゴ上のいかなるレポートは、投資や税務、法律のアドバイスを提供するものではなく、情報提供を目的としています。本資料の内容について、当社は一切の責任を負いませんので、あらかじめご了承ください。具体的な投資や税務、法律に関するご相談は、専門のアドバイザーにお問い合わせください。