10/02/2024

強気
ギガクラウド・テクノロジー
強気
私はギガクラウド・テクノロジー(GCT:GigaCloud Technologies)を卸売業界のアマゾン(AMZN)と捉えており、その強みは、長年にわたって中国やベトナムの低コストで高品質な製造業者やサプライヤーとの長期的な関係を築いてきた点にあります。
【前編】ギガクラウド・テクノロジー(GCT)の株価下落理由:Grizzly Researchの空売りレポートの影響に迫る!

body of water beside cityローレンス・ フラーローレンス・ フラー
  • 本稿では、Grizzly Researchによる空売りレポート後に株価が急落している注目の中国企業、ギガクラウド・テクノロジー(GCT:GigaCloud Technologies)の株価下落理由と将来性を詳しく解説していきます。
  • ギガクラウド・テクノロジーの株価は急上昇と急落を繰り返しており、Culper ResearchやGrizzly Researchといった空売り勢のレポートによる疑惑と反論が株価に大きな影響を与えています。
  • 同社は大型商品のB2Bソリューションを提供する急成長中の中国企業であり、財務状況も良好で、自己株買いプログラムを開始しています。
  • 私はGrizzly Researchの空売りレポートの主張には誤りがあると考えており、特にウェブサイトのトラフィックに関するデータの解釈が間違っていると見ています。

ギガクラウド・テクノロジー(GCT:GigaCloud Technologies)の株価下落の理由は?

今年の初めにギガクラウド・テクノロジー(GCT:GigaCloud Technologies)を知ったとき、株価は現在とそれほど変わらない水準でしたが、その後の展開で株価は一時倍以上に上昇し、その後半分以下にまで下落しました。

この激しい値動きは、初見ではあまり信頼感を抱けるものではありませんでした。

同社は急速な成長と優れたファンダメンタルズで、2024年第1四半期の決算発表後に株価が45ドルまで上昇しましたが、それが結果として弱点ともなったようです。

空売り勢が同社の成功に目を付け、売上高の信憑性に疑問を呈し、経営陣を詐欺行為で非難したのです。

発端は昨年9月、空売りファームであるCulper Researchが発表したレポートでした。

このレポートにより株価は18ドルから7ドル未満に急落しましたが、その後経営陣が独立した調査を行い、虚偽の主張だと強く反論しました。

その結果、株価は数か月にわたり反発し、最高で52週高値の45.18ドルに達しました。

しかし今年5月、Grizzly Researchという別の空売りレポートを執筆するリサーチ会社が同様のレポートを発表し、以前の主張を繰り返しつつ新たな疑惑も追加しました。

その影響で株価は先週、15.61ドルまで急落しました。

現在、空売りポジションは約580万株に達しており、発行済み株式(3,140万株)の18.5%、流通株式(2,150万株)の27.2%に相当します。

そして、この状況が最終的に大規模なショートスクイーズにつながる可能性は高いと私は考えています。

※ショートスクイーズとは、空売りしていた投資家が株価の急上昇によって損失を避けるために株を買い戻さざるを得なくなり、その結果、さらに株価が上昇する現象。

私の調査では、空売り勢の主張は誤りであり誤解を招くもので、ギガクラウド・テクノロジーは成長著しい企業であり、優れた業績を上げています。

そのため、現在の株価は大きく過小評価されていると思います。

(出所:Stockcharts)

ギガクラウド・テクノロジー(GCT:GigaCloud Technologies)のファンダメンタルズ

ギガクラウド・テクノロジー(GCT:GigaCloud Technologies)は株式市場では比較的新しい企業ですが、CEOで創業者のラリー・ウー氏は、大型商品のエンドツーエンドB2Bソリューションで世界的な重要企業になるべく、10年以上にわたってこの事業を築いてきました。

同社は「サプライヤー・フルフィルド・リテイリング・モデル(Supplier Fulfilled Retailing model)」を採用し、製造業者から小売業者や再販業者、最終的には消費者に至るまで、大型商品のサプライチェーンを効率化しています。

その中心的な存在が「GigaCloudマーケットプレイス」というeコマースプラットフォームで、主にアジアの製造業者と、米国やヨーロッパの再販業者を結びつけています。

このプロセスは、製造業者の倉庫から最終顧客の玄関先までを一律の料金で届ける点で非常に競争力があります。

同社は2019年1月にこのマーケットプレイスを立ち上げ、小売業から卸売業への転換を進めてきましたが、この転換が空売り筋による誤情報の原因となっています。

それにもかかわらず、ここ5年間で目覚ましい成長を遂げ、売上は2019年の1億2,200万ドルから2023年には7億300万ドルに急増しました。

(出所:Seeking Alpha

今年の売上は10億ドルを超え、1株当たり利益は2.95ドルと予想されており、その結果、予想ベースのPER(下記のグラフのPEを参照)は6倍未満となっています。

年末が近づく中、来年のコンセンサス予想に基づくPERは約4倍に近づいています。

同社は倉庫スペースの長期リースを除いては借金がなく、バランスシートには2億ドル以上の現金を保有しています。

そのため、経営陣は9月末から開始する4,600万ドルの自社株買いプログラムを発表しました。

今年と来年のフリーキャッシュフローは1億ドルを大幅に超える見込みですが、時価総額はわずか7億7,000万ドルです。

(出所:Seeking Alpha

私は、この株価は来年のコンセンサス予想である3.76ドルに対し、15倍の倍率を用いて少なくとも50ドル(現時点の水準から約2倍の上昇)の価値があると考えています。

同社は景気循環に左右される業界に属し、主に家具の卸売および物流を行っているため、市場の平均よりも低い倍率を適用していますが、それでもビジネスモデルの効率性は抜群で、借金がなく、莫大なキャッシュを生み出しています。

そして、現在の株価と50ドルとの間にある唯一の障害は、Grizzly Researchによって同社と経営陣が受けた評判の悪化だと思います。

そのため、彼らの主張が払拭され、投資家が同社の事業に対する信頼を取り戻すのは時間の問題であると考えています。

ギガクラウド・テクノロジー(GCT:GigaCloud Technologies)に関するGrizzly Researchによる空売りレポート

この90ページにも及ぶ長いレポートは、ギガクラウド・テクノロジー(GCT:GigaCloud Technologies)が「関連会社のペーパーカンパニーを隠して重要な指標を水増ししている、いわゆる中国発の詐欺である」と主張し、「怪しい活動」によって「驚異的な財務状況」を作り出していると述べています。

しかし、その内容は4つの重要なポイントに集約され、それらについて私は反論したいと思います。

確かに、創業者兼CEOは中国人で、経営陣の4人中3人も中国出身です。

ただし、COOを除く全員が本社のあるカリフォルニアに住んでおり、COOだけが同社の中国での物流拠点のために中国に常駐しています。

新たに暫定CFOに就任したエリカ・ウェイ氏は、最近ファイナンス担当副社長から昇進しました。

彼女は1年前にPwCで監査サービスのシニアマネージャーとして10年のキャリアを経てギガクラウド・テクノロジーに入社し、同社が最近行った2つの戦略的買収を現金で完了させる上で重要な役割を果たしました。

経営陣が中国人であることとビジネスが詐欺であることの関連性は見当たらず、むしろこれは中国企業に対するネガティブな感情を煽るための意図があるように思われます。

ギガクラウド・テクノロジー(GCT:GigaCloud Technologies)のウェブサイトのトラフィックと成長ストーリーの矛盾

Grizzly Researchの最初の主張で最も目立つのは、ギガクラウド・テクノロジー(GCT:GigaCloud Technologies)のウェブサイト(gigab2b.com)のトラフィックに関する誤りです。

今年5月時点で「月間訪問数は約50件に過ぎない」と主張しています。

Grizzly Researchはまた、IPOが行われた2022年6月の訪問数が1,000件程度だったとしても、同社の報告する売上には合わないとしています。

もしこれが本当に訪問数を意味しているならば妥当な指摘かもしれませんが、実際に彼らが用いているデータは「ウェブサイト検索数」であり、「訪問数」ではありません。

そのため、IPO時に1,000件以上のスパイクが発生したのは、新たに上場した小型株として注目されたからであり、実際にウェブサイトで取引を行う商業顧客(買い手や売り手)の数とは無関係です。

Grizzly Researchが根拠として使用した下の図は、検索エンジン市場分析会社Semrushのもので、「オーガニック検索トラフィック(Organic Search Traffic)」の58が訪問数ではなく検索数を示しているのは明らかです。

もしそうでなければ、誤った主張を支えるために意図的にミスリードしようとしたとしか考えられません。

(出所:Semrush

私は、GigaCloudマーケットプレイスのトラフィック状況を確認するためにSemrushのアカウントを開設しました。

ウェブサイト検索数ではなく正確に訪問数を調査したところ、全デバイスからの訪問数は18万8,400件(下記の図における「All devices: 188.4K」)で、Grizzly Researchの主張する「約50件」とは大きく異なる結果が得られました。

(出所:Semrush

さらに、今年3月に記録された71,800件から、5月には18万8,000件以上に増加しており、これは大きな成長を示しています。

また、7月のピークである23万8,700件からは若干減少していますが、これは2023年11月にNoble Houseを買収したことで、ビジネスがより季節性の影響を受けるようになったためです。

(出所:Semrush

このように、ウェブサイトトラフィックについての大きな誤りに基づき、Grizzly Researchは「関連会社のペーパーカンパニーを使い、自社と取引を行って市場の成長を誇張している」という仮説を立てています。

つまり、月間訪問数が約50件であるにもかかわらず2億ドル以上の四半期売上を説明する唯一の方法は、詐欺を行っているということです。

しかし、Grizzly Researchは誤った前提を基にしており、このことが次の主張の信頼性を損なうと私は考えています。

次章では、ギガクラウド・テクノロジーの未公開の関連会社とされるペーパーカンパニーの存在や、サービス関連売上高の誤表記による成長の水増しの疑い、さらに、インサイダー取引と米国監査の欠如による疑念に関して詳細に分析し、目標株価を含め、同社に対する私の見解を詳しく解説していきます。

※続きは「【後編】ギガクラウド・テクノロジー(GCT)の将来性:目標株価は50ドルで足元の株価下落は押し目買いのチャンス?」をご覧ください。


アナリスト紹介:ローレンス・フラー

ローレンス・フラー氏は、1993年にメリルリンチ証券でファイナンシャル・コンサルタントとしてキャリアをスタートしました。その後、ファースト・ユニオン・ブローカレッジ、モルガン・スタンレー証券、INGグループで同職を務め、30年以上にわたり個人投資家顧客の投資ポートフォリオを管理してきました。

その後、2005年には長期的な目標であったFuller Asset Management LLCを設立し、独立を果たしました。さらに、2013年より米国金融ニュースサイトSeeking Alphaにて、米国投資家に対してマクロ経済・投資リサーチの提供を開始しており、現在では14,000人以上のフォロワーを獲得しております。

フラー氏は、ノースカロライナ大学チャペルヒル校を卒業し、政治学の学士号を取得しております。

また、フラー氏のその他の米国マクロ経済関連のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、フラー氏のプロフィールページにアクセスしていただければと思います。


インベストリンゴでは、弊社のアナリストが、高配当関連銘柄からAIや半導体関連のテクノロジー銘柄まで、米国株個別企業に関する動向を日々日本語でアップデートしております。そして、インベストリンゴのレポート上でカバーされている米国、及び、外国企業数は250銘柄以上となっております。米国株式市場に関心のある方は、是非、弊社プラットフォームよりレポートをご覧いただければと思います。

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