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10 - 02 - 2024

強気
ギガクラウド・テクノロジー
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私はギガクラウド・テクノロジー(GCT:GigaCloud Technologies)を卸売業界のアマゾン(AMZN)と捉えており、その強みは、長年にわたって中国やベトナムの低コストで高品質な製造業者やサプライヤーとの長期的な関係を築いてきた点にあります。
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【後編】ギガクラウド・テクノロジー(GCT)の将来性:目標株価は50ドルで足元の株価下落は押し目買いのチャンス?

ローレンス・ フラーローレンス・ フラー
  • 本稿では、足元の株価が下落傾向にある注目の中国企業であるギガクラウド・テクノロジー(GCT)に対するGrizzly Researchによる空売りレポートの真相、そして、同社の将来性に迫ります。
  • Grizzly Researchは、ギガクラウド・テクノロジーが関連ペーパーカンパニーを通じて売上を水増ししていると主張していますが、これらの会社は過去の関係に基づくものであり、現在のビジネスには関係が無いように見えます。 
  • また、Grizzly Researchは、ギガクラウド・テクノロジーが配送に関する売上を不正に計上していると指摘していますが、ギガクラウド・テクノロジーはFASB基準に従って正確に売上を報告しているように見えます。 
  • Grizzly Researchによる空売りレポートには誤りが多く、さらに、ギガクラウド・テクノロジーは今後も堅調な成長が見込めることからも、私の同社に対する目標株価は50ドルとしています。

※「【前編】ギガクラウド・テクノロジー(GCT)の株価下落理由:Grizzly Researchの空売りレポートの影響に迫る!」の続き

ギガクラウド・テクノロジー(GCT:GigaCloud Technologies)の未公開の関連会社とされるペーパーカンパニーについて

Grizzly Researchは、"Steve Roger Digital Consultation LLC"や"General Sherman International Inc."といった疑わしい名前の「ペーパーカンパニー」が、正規の商業顧客を装い、ギガクラウド・テクノロジー(GCT:GigaCloud Technologies)の従業員によって密かに設立され、その多くが中国国籍者に管理されていると主張しています。

これにより、ギガクラウド・テクノロジーは自社と取引を行い、売上高を水増しし、GigaCloudマーケットプレイスのウェブサイト上での活動を偽装しているとされています。

Grizzly Researchが元従業員にインタビューしたとされる内容によれば、少なくとも25社のペーパーカンパニーが存在し、その一部はGrizzly Researchの図表に記載されていますが、インタビューに登場する元従業員の名前は一切明かされていません。

まず、これらの会社は未公開ではなく、秘密裏に設立されたわけでもありませんし、現在ギガクラウド・テクノロジーと関連しているわけでもありません。

数年前、ギガクラウド・テクノロジーが複数のオンライン店舗(ウェブサイト)を持つ小売業として運営していた際には関連がありましたが、現在の卸売モデルではその関係はなくなっています。

(出所:Grizzly Research

"Steve Roger Digital Consultation LLC"は、ネバダ州の法人記録によると、2013年にComptree Inc.によって小売店舗として設立されました。

Comptreeはギガクラウド・テクノロジーとは無関係のオンライン家具販売業者でした。

同じ頃に"General Sherman International Inc."も設立されました。

Comptreeのようなオンライン小売業者は、さまざまな商品ラインを販売するため、または一部のサイトでの悪評によりAmazonなどから停止されるリスクを避けるために、複数の店舗(ウェブサイト)を運営することが一般的でした。

そのため、複数の関連商品を扱う店舗を持つのは通常の業界慣行です。

ギガクラウド・テクノロジーは2014年12月14日にComptreeとその所有する全ての店舗を買収しました。

これにより、これらの店舗はペーパーカンパニーではなく、未公開でもなく、買収後に関連会社となり、元・現ギガクラウド・テクノロジー従業員が主要な代理人を務めていました。

また、ギガクラウド・テクノロジーが小売業を行っていた当時、従業員が店舗を設立することに不審な点はありませんでした。

しかし、同社は2019年に卸売業モデルに転換した際にこれらの関係を解消し、現在ではギガクラウド・テクノロジーの従業員がこれらの会社や他の再販業者の代理人を務めていることは無いように見えます。

これらの会社は引き続きGigaCloudマーケットプレイスで再販業者として活動している可能性はありますが、現在ではギガクラウド・テクノロジーと関連はなく、Grizzly Researchが主張するように売上高を水増ししている25〜100社という数は、該当月のユニーク訪問者数13,700人に対してはごく一部です。

Semrushによるユニーク訪問者数(Unique Visitors)は13.7K(13,700の略)となっており、下記の通り第2四半期末に同社が報告した8,000以上の買い手と売り手の合計と一致しています。

(出所:Semrush

Grizzly Researchは、下記の図を用いて、正当な買い手や再販業者をペーパーカンパニーや未公開の関連企業とし、通常の取引と比べて商品やサービスの総市場価値を水増ししているかのように疑念を抱かせようとしています。

しかし、これは全く理にかなっていないように見えます。

どちらにせよ、注文が行われ、顧客が支払い、その後商品が届けられるだけです。

これでどうやって総市場価値や売上高を水増しできるのでしょうか?

もしGrizzly Researchが未だに誤ったウェブサイト訪問データに固執しているのであれば別ですが、それ以外では説明がつかないように見えます。

(出所:Grizzly Research

5月のウェブサイト検索数(58件)を実際の訪問数(188,400件)と混同している時点で、Grizzly Researchに対する信頼性は失われていると思います。

これが単なるミスであったとしても、その調査能力には疑問が残ります。

そのミスをさらに拡大して、正当な店舗を未公開の関連ペーパーカンパニーとして売上高を水増ししていると主張するのは、さらに問題です。

しかし、この空売り攻撃はここで終わらず、Grizzly Researchはギガクラウド・テクノロジーの売上全体の28%を占める「サービス関連売上高(Service Revenues)」セグメント、つまり商品の輸送に関する部分にまで言及しています。

ギガクラウド・テクノロジー(GCT:GigaCloud Technologies)のサービス関連売上高の誤表記による成長の水増しについて

Grizzly Researchは、ギガクラウド・テクノロジー(GCT:GigaCloud Technologies)がラストマイルのサービス関連売上高を誤って表示し、成長を水増ししていると非難しています。

具体的には、ギガクラウド・テクノロジーがフェデックスFDX)やユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)といった第三者の物流会社に配送を依頼し、その全額を顧客への売上高として計上していると主張しており、コストを売上高に見せかけて売上を大きく見せているとしています。

Grizzly Researchはこのスキームを以下の図で説明しています。

(出所:Grizzly Research

しかし、Grizzly ResearchはFASB会計基準(ASC 606)で定められた収益認識基準について十分理解していないようです。

この基準は、企業が「元請け(プリンシパル)」として取引を行っているのか、「代理(エージェント)」として取引を行っているのか、また売上をどのように正確に記録すべきかを規定しています。

元請けの場合、顧客に請求した総額を売上として報告し、代理の場合は顧客に請求した金額からフェデックスやユナイテッド・パーセル・サービスのような下請け業者への支払いを差し引いた純額を売上として報告します。

(出所:Price Waterhouse Coopers)

元請けは顧客に商品を渡す前にその商品の管理権を持っていますが、代理にはそれがありません。

この点は、Price Waterhouse Coopersによる図にも示されています。

元請けは在庫リスクを負い、商品やサービスの価格設定に裁量を持ち、提供する責任を負います。

この基準に基づくと、ギガクラウド・テクノロジーはその多くの取引において元請けとして行動しており、サービスの価格を決める権限を持っています。

そのため、ギガクラウド・テクノロジーはフルフィルメント(顧客からの注文を受けてから商品を出荷・配送し、顧客に届けるまでの一連のプロセス)にかかる費用を売上として計上し、下請け業者への支払いを費用として記録しています。

つまり、売上を誤って表記したり水増ししたりしているわけではなく、それにもかかわらずGrizzly Researchは、昨年1億ドルを超えた同社の売上の正当性に疑問を投げかけているのです。

ギガクラウド・テクノロジー(GCT:GigaCloud Technologies)が大半の貨物をペーパーカンパニーに輸入しているとされる件

Grizzly Researchは、輸入データを根拠に、ギガクラウド・テクノロジー(GCT:GigaCloud Technologies)が中国からの貨物の半分以上を関連会社やペーパーカンパニーに送っていると主張しています。

その理由として、これらの会社が「独立した商業企業としての実体が不十分」と述べています。

最大の輸入業者であるJ&A Internationalは、2021年にコロラド州で設立され、登録代理人は中国籍の郭強(Guoqiang Lai)氏だとしていますが、これは部分的に事実です。

Grizzly Researchはさらに、Y&H International Inc.とImmortal Brands Management Co.を2番目と3番目の輸入業者として挙げ、両社の登録代理人が中国人であるため疑わしいとしていますが、これらの会社は米国で設立されています。

この3社はすべてギガクラウド・テクノロジーに関連するペーパーカンパニーで、「倉庫や従業員、運営拠点がない」としており、これによってギガクラウド・テクノロジーが「輸入に関わる怪しい企業」を利用して「自由にコストや売上を帳簿上で操作」し、「驚異的な財務状況」を実現していると説明しています。

(出所:Grizzly Research

しかし、ここでもGrizzly Researchの問題点は、ビジネスや関係者について十分に調査せずに結論を出し、それに合わせた話を作っていることです。

J&A International LLC、Y&H International Inc.、Immortal Brands Management Co.は、米国でギガクラウド・テクノロジーの商品を受け取っているわけではありません。

これらはペーパーカンパニーでも関連会社でもなく、正当な企業であり、「フォワーダー」と呼ばれる存在です。

フォワーダーは、今回の場合はアジアの倉庫から米国への商品輸送を手配する役割を持っています。

彼らはルートの最適化、通関手続きの処理、輸送の追跡、貨物保険の手配、コスト計算といったサービスを提供し、顧客に代わって商品の輸送や保管を手配するため、「倉庫や従業員、運営拠点がない」のは当然です。

つまり、フォワーダーは他の企業のために商業貨物の輸送を行い、ギガクラウド・テクノロジーもその顧客の一つに過ぎないのです。

(出所:Bloomberg

例えば、Y&H Internationalは25年以上にわたり、海運、陸運、鉄道、航空輸送に精通した国際フォワーディング企業として活動し、7000社以上のグローバルビジネスパートナーと180名以上の従業員を抱えています。

この会社はギガクラウド・テクノロジーよりも長い歴史を持ち、ギガクラウド・テクノロジーの傘下で運営されるペーパーカンパニーではありません。

倉庫や従業員、運営拠点が主に中国にあるのは、中国から米国への輸送のためにそのサービスが利用されているからです。

ギガクラウド・テクノロジー(GCT:GigaCloud Technologies)のインサイダー取引と米国監査の欠如による疑念について

Grizzly Researchは、ギガクラウド・テクノロジー(GCT:GigaCloud Technologies)に注目する最初の理由として、5月から6月にかけて行われた積極的なインサイダー取引を挙げています。

経営陣が詐欺行為が明るみに出る前に利益を得ようとしたのではないかと主張しています。

また、同社が監査を中国の会計事務所(KPMG Huazhen LLP)に依頼している点も、正当性に対する疑念を深める要因だと述べています。

確かに、CEOのラリー・ウー氏は5月と6月にかけて100万株以上を売却しましたが、これは彼の持株の約10%に過ぎません。

率直に言えば、私なら資産の分散のためにもっと売却していたかもしれませんが、彼の売却理由も理解できます。

株価が彼の考える適正な水準に達したからであり、私もその見解に同意します。

また、この売却はモルガン・スタンレーが2か月にわたり行ったもので、彼が特定のタイミングや価格を狙って行ったものではありません。

ギガクラウド・テクノロジーが米国の監査法人を利用していないことについても、それは完全に同社の決定によるものではありません。

米国の監査法人による監査を受けるためには、公開企業会計監視委員会(PCAOB:Public Company Accounting Oversight Board )の定めた特定の条件を満たす必要があります。

ギガクラウド・テクノロジーは昨年夏に外国私企業(Foreign Private Issuer)の資格を放棄し、それ以降は米国企業と同様の報告・開示義務を負うようになり、米国の一般会計原則(GAAP)に基づいて報告しています。

経営陣も現在、物流上の理由で中国にいるCOOを除いて全員がカリフォルニアに住んでいます。

一方で、競争上の優位性を保つために、多くの従業員を中国本土に残していますが、そもそも、すべての従業員を米国に移すことは、その優位性を失うことにつながります。

とはいえ、将来的にギガクラウド・テクノロジーが米国の監査法人を利用しないというわけではありません。

最近の出来事を踏まえ、経営陣も米国の株主にとって透明性と信頼性が向上することを理解しているでしょう。

最終的には、株主基盤を大幅に拡大し、バリュエーションを劇的に向上させるために必要なことだと思います。

それと同時に、現時点での同社のバリュエーションは私の見解では不合理であり、空売りの根拠がGrizzly Researchのレポートに基づいているのであれば、それらの空売り投資家の立場は非常に危ういものだと言えるでしょう。

ギガクラウド・テクノロジー(GCT:GigaCloud Technologies)に対する結論:目標株価は50ドル

私はギガクラウド・テクノロジー(GCT:GigaCloud Technologies)を卸売業界のアマゾン(AMZN)と捉えており、その強みは、長年にわたって中国やベトナムの低コストで高品質な製造業者やサプライヤーとの長期的な関係を築いてきた点にあります。

これは現在では再現できない大きな優位性です。

同社の健全なバランスシートと優れた買収戦略により、今後も売上高と利益を20%以上の成長を続けられると見込んでいます。

さらに、これまでの成功は米国の住宅市場が低迷する中で達成されたもので、これから金利が下がり、金融環境が緩和し、FRBの利下げサイクルが始まることで住宅市場が回復すれば、ギガクラウド・テクノロジーのビジネスにとって新たな大きな追い風となるでしょう。

以上を踏まえ、同社に対する私の目標株価は50ドルとしています。


アナリスト紹介:ローレンス・フラー

ローレンス・フラー氏は、1993年にメリルリンチ証券でファイナンシャル・コンサルタントとしてキャリアをスタートしました。その後、ファースト・ユニオン・ブローカレッジ、モルガン・スタンレー証券、INGグループで同職を務め、30年以上にわたり個人投資家顧客の投資ポートフォリオを管理してきました。

その後、2005年には長期的な目標であったFuller Asset Management LLCを設立し、独立を果たしました。さらに、2013年より米国金融ニュースサイトSeeking Alphaにて、米国投資家に対してマクロ経済・投資リサーチの提供を開始しており、現在では14,000人以上のフォロワーを獲得しております。

フラー氏は、ノースカロライナ大学チャペルヒル校を卒業し、政治学の学士号を取得しております。

また、フラー氏のその他の米国マクロ経済関連のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、フラー氏のプロフィールページにアクセスしていただければと思います。


インベストリンゴでは、弊社のアナリストが、高配当関連銘柄からAIや半導体関連のテクノロジー銘柄まで、米国株個別企業に関する動向を日々日本語でアップデートしております。そして、インベストリンゴのレポート上でカバーされている米国、及び、外国企業数は250銘柄以上となっております。米国株式市場に関心のある方は、是非、弊社プラットフォームよりレポートをご覧いただければと思います。

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