Part 3:AIバブルはいつまで続く?終焉は?注目のユニコーンCoreWeaveのIPO(新規上場)が市場の株価に与える影響に迫る!
ダグラス・ オローリン- 本稿では、AIバブルの今後の見通しと注目のユニコーンであるCoreWeaveのIPO(新規上場)が米国市場の株価に与える影響を解説していきます。
- 足元では、AI投資に対する批判が増えているが、短期的な投資収益率(ROI)だけに焦点を当てることは誤りであり、長期的な視点で見るべきだと考えます。
- 歴史を振り返って見ると、新しい技術に対する批判は常に存在するが、長期的にはテクノロジーが社会に大きな影響を与えることが多く、AIも例外ではないと見ています。
- そして、CoreWeaveのような新しいクラウド企業が今後の資本サイクルのカタリストとなり、AI関連のバブルがさらに拡大する可能性があると考えています。
※「Part 2:AI(人工知能)の進化が社会にもたらす影響とは?インターネットとAIの進化の歴史を比較し、今後のAIの発展の可能性に迫る!」の続き
AI投資に対する批判と、テクノロジーに反対することがなぜ無意味か?
最近、これまであまり見られなかったAI投資に対する「批判」が出てきました。ここでは、環境問題に関してはここでは触れず(勿論重要ですが)、主に投資収益率(ROI)の観点に焦点を当てて話を進めていきたいと思います。まず、Sequoia Capital(セコイア・キャピタル)が最近発表した「AIへの6000億ドルの問い(AI‘s $600B Question)」という記事に触れたいと思います。この中で、AIテクノロジーは、どこからリターンを得ることができるのかが問われています。
※Sequoia Capital(セコイア・キャピタル):アメリカの大手ベンチャーキャピタル会社です。1972年に設立され、主にスタートアップ企業や成長企業に投資しており、テクノロジー分野で特に多くの成功を収めています。セコイアは、Apple、Google、Oracle、Airbnb、WhatsAppなどの有名企業への初期投資で知られており、世界中のベンチャーキャピタル市場で重要な役割を果たしています。
(日本語訳)AIバブルが臨界点に達しつつあります。今後の展開を見極めることが重要です。
まず、最初に指摘したい点は、AIには50%の粗利益が必要だという誤った前提があることです。また、この記事の著者が、この記事を投稿する1年弱前に「2000億ドルの問い(AI‘s $200B Question)」を提起していたことにも注目すべきです。私の考えでは、ROIは数年で実現するのではなく、数十年をかけた巨大な資本サイクルの中で実現されるものだと思います。
さらに言えば、次には1兆ドルというさらに大きな数字が登場することを予測できます。しかし、ROIの観点からは理にかなっているとしても、ドルオークションやメタ・プラットフォームズ(META)のマーク・ザッカーバーグが「バブルは時間とともに価値のあるものを生み出す」と言っている点を考慮すると、人間の非合理性が論理を超えることは十分に考えられます。確かに、大規模な資本形成バブルが生じる可能性はありますが、ただ大きな数字を指して「これは意味がない」と言うだけでは通用しないでしょう。
簡単に言えば、ROIの問題は理解できますが、短期的なROIが悪いからといって、人間の非合理性が大きなプロジェクトを止めるわけではないということです。インターネットや光ファイバーは社会にとって大きな利益をもたらしましたが、投資としては成功しなかった例だと言えます。また、テクノロジーの変革による大規模な社会的変化については、常に強い関心が持たれてきたことも言えます。
冷戦時代の防衛費やNASAの予算を見てください。防衛企業以外にROIがあったと言えるでしょうか?下記のチャートからも分かる通り、1960年代の宇宙競争の際に、アメリカは国家予算の4%をNASAに投入しました。これは科学の進歩に大きく貢献しましたが、ROIが十分に得られたとは言えません。国家がこれだけの予算を投じたのは、安全保障への恐れや他国に遅れを取ることへの不安があったからです。この恐れは、現在のAI競争において中国との間でもすでに生じていると言えるでしょう。
NASAの米国予算における割合
人間が「何かを成し遂げたい」という欲望に逆らうのは愚かです。特に、機械の神を創り上げようとする者たちにとっては。多くのAIラボはその使命に狂信的で、自分たちが何をしているのかほとんど気にしていません。AGI(汎用人工知能)がすべての過ちを許すと信じ、恐れに駆られた狂信者たちは他者をゲームに引き込もうとし続けています。これは、そうしないリスクがあまりにも大きいためです。
さらに、予測の歴史を振り返ると、新しい技術が普及する過程で批判者が現れるのは常にあることです。AIに批判者がいることは、むしろ良いことだと思います。1982年に「パソコンなんて本当に必要なのか?」という疑問の声が聞こえていましたが、それは間違いでした。
本当に家庭にコンピューターは必要なのでしょうか?
自動車革命の際には、「馬なしの馬車なんて流行るわけがない」と考えられていました。
そして、もちろん、これまでで最も興味深い例は下記の通りです。
(原文)A winner of the Nobel Prize in Economics, Paul Krugman wrote in 1998, “The growth of the Internet will slow drastically, as the flaw in ‘Metcalfe’s law’—which states that the number of potential connections in a network is proportional to the square of the number of participants—becomes apparent: most people have nothing to say to each other! By 2005 or so, it will become clear that the Internet’s impact on the economy has been no greater than the fax machine’s.”
(日本語訳)ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマンは1998年にこう書いています。「インターネットの成長は急激に鈍化し、『メトカーフの法則』の欠陥が明らかになるだろう。この法則は、ネットワーク内の潜在的な接続数が参加者数の二乗に比例すると述べているが、実際にはほとんどの人が互いに言うべきことがないからだ!2005年頃には、インターネットが経済に与える影響はファクスと同程度でしかないことが明らかになるだろう。」
新しいテクノロジーには批判者がつきものですが、短期的には彼らが正しいこともあります。社会的な変化には時間がかかります。しかし、長期的に見れば、進歩に逆らうのは賢明ではありません。なぜなら、テクノロジーと人間(そして機械)の創意工夫は常に道を見つけるからです。
なぜウェブは理想郷にはならないのか
とはいえ、この物語が涙なしに終わるとは思えません。私は以前からバブルに論理を適用することの難しさについて述べてきましたが、まさにこれがその典型だと思います。しかし、ここがポイントです。もしこれがバブルであるならば、それは過去の約9000億ドルのテレコムバブルを超える規模になるでしょう。
そうです、AIへの投資はさらに巨大化します。そして、今、その道筋が見え始めました。私たちは狭い道を進んでいますが、AI競争の性質を変える可能性のある重要なカタリストが見えてきました。
AIバブルの今後の見通し
「AI(人工知能)バブルはいつまで続くのか?果たして終焉は来るのだろうか?」という声を耳にしますが、これまでのこのAIバブルの奇妙な点の一つは、それが限られた空間で進行していることです。米国の超大手の5つのテクノロジー企業がメインで参加しており、彼らはさらに多くの資金を投入する用意があります。これは閉ざされたオークションのようなもので、参加者は限られており、サプライチェーン以外の参加はほとんどありません。
しかし、もっと多くの投資意欲が存在することは明らかです。投資資金は投入の機会を待ち望んでおり、テクノロジーへの依存が少なく、資本集約的なビジネスに賭けることを求めています。独占市場が存在する場合、バブルの発生は非常に難しいですが、ついに私が探していたもの、つまりこのバブルを支える資本形成への直接的なパイプラインが見えてきました。インターネットバブルのように広範な参加を実現するにはどうすれば良いでしょうか?それには金融資本が広く参加する手段が必要です。1999年にはインターネット株がその手段でしたが、今日は5人の上流階級の集まりに過ぎません。これらへの参加を広げるためにはどうすれば良いでしょうか?私はそれが「ネオクラウド」になると考えています。
ネオクラウドとは、その名の通り、新しいクラウドのことです。AWSなどの従来のクラウドとは異なります。この分野で先頭に立っているのがCoreWeaveで、元ハイパースケーラーのGPUクラウド企業です。彼らのIPO(新規上場)は、この資本サイクルにおいて重要な瞬間となるでしょう。もしCoreWeaveが高いバリュエーションで取引されれば(例えばEBITDAの25倍以上で)、多くの企業がこの市場に参入し、供給が増え、IPOや資金調達を目指すことになるでしょう。
CoreWeaveのビジネスは技術的な要素が多いですが、不可能ではありません。標準的な構成でGPUを稼働させ、プロビジョニングソフトウェアを開発し、そのGPUを人々にレンタルするというビジネスです。ハイパースケーラーはネオクラウドから購入していますが、十分に良いGPUを構築できれば、次世代のGPUへの投資は非常に早く回収できるでしょう。
※ネオクラウド:従来の大手クラウドサービス(例えばAWSやGoogle Cloud)に対抗する新しいクラウドサービスのことを指す。これらは特定のニッチ市場や新しい技術に特化しており、特にGPU(グラフィックス処理ユニット)を活用した高性能コンピューティングに焦点を当てている。
※CoreWeave:特にGPUを利用したクラウドコンピューティングサービスを提供する企業で、現在はスタートアップ(未上場企業)として成長を続けている。まだ上場はしておらず、従来のハイパースケールクラウドプロバイダーから独立して、特定のニッチ市場や新しい技術に特化したサービスを展開している。
※プロビジョニングソフトウェア:ITリソースやサービス(例えば、サーバーやストレージ、ネットワークなど)を自動的に設定し、ユーザーに提供するためのソフトウェア。これにより、ユーザーは必要なリソースを簡単に利用でき、手動での設定作業が不要になる。クラウドサービスでは、ユーザーがリソースを要求すると、このソフトウェアがリソースを割り当て、準備を整えて提供する。
※ハイパースケーラー:巨大なデータセンターを持ち、大規模なクラウドサービスを提供する企業を指す。これらの企業は、大量の計算リソースを効率的に管理・運用し、世界中の顧客にクラウドコンピューティング、ストレージ、ネットワーキングなどのサービスを提供している。代表的なハイパースケーラーには、Amazon Web Services (AWS)、Microsoft Azure、Google Cloudが含まれる。
私たちはすでにプライベート市場で需要を目の当たりにしており、例えば暗号通貨のマイナーたちが迅速に方向転換しているのを見ています。私が以前インタビューしたアプライド・デジタル(APLD)も、可能な限り迅速にGPUクラウドにシフトしようとしています。これは、本来なら悪いビジネスであるはずですが、実際には良いビジネスになっています。資本はその空白を埋めるように集まり続け、最終的には資金調達コストに見合った平均的なリターンが得られるまで投資が続くでしょう。現状ではまだそうなっていませんが、ネオクラウドを運営する上で最も困難な部分は資金を調達することです。これは、バブルを加速させる要因となり得ると私は考えています。
ネオクラウドは次のステージに向けた完璧なツールであり、今後ますます重要な役割を果たすでしょう。彼らが上場企業として成功を収めれば、この低い参入障壁を持つビジネスに次の投資の波が押し寄せるでしょう。資本の参入障壁が低ければ、供給が供給を上回るまで資本は積み上がり続けることが予想されます。そして、ネオクラウドは加速剤となり、その役割を果たす可能性があります。私の推測では、今後のCoreWeaveのIPOが株式サイクルの次のステージに向けたカタリストとなる可能性が高いと見ています。
それまでの間は注意が必要です。ハイパースケーラーの資本支出欲は、さらに多くの資本が投入されることを示唆していますが、真の狂気はCoreWeaveのIPOが成功した後に始まると見ています。しかし、もしIPOが失敗すれば、次にGPUを購入する企業が現れないかもしれません。
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