戦争が起きると株価はどうなる?イスラエルとイランの中東戦争悪化と米国内港湾労働者のストライキが米国株へ与える影響を探る!
ジェームズ・ フォード- 本稿では、アメリカが足元で直面する2大リスク、「港湾労働者によるストライキ」と「イスラエルとイラン間の中東戦争の悪化」の米国株式市場への影響を詳しく解説していきます。
- さらに、「戦争が起きると株価はどうなる?」という市場の疑問に答えた上で、私のマクロポートフォリオにおけるポジショニングに関しても解説していきます。
- アメリカでは港湾労働者がストライキを開始し、労働環境の改善とAIからの保護を求めています。
- 同時に中東での緊張が高まり、市場が大きく反応しており、軍事・防衛関連銘柄が注目されています。
- 戦争が株式市場に与える影響は過去の事例からも見られ、特に軍事関連企業が利益を上げる中、投資機会を冷静に見極めることが重要でしょう。
米国株式市場が直面するリスク
もしここ2日のニュースを見逃していたら、アメリカは内外で戦争状態にあります。
10月1日、全米の港湾労働者が大規模なストライキを開始し、労働環境の改善とAIからの保護を求めました。
その数時間後、中東情勢の激化の中、イスラエルによるレバノンへの爆撃映像がインターネットに広まりました。
市場も強く反応し、ナスダックは2%下落する一方、原油は急騰し、金価格も新高値を記録しました。
政治が市場に影響を与えるのは事実です。市場は合理的で基本的な原則に従って動くと私たちは信じたいですが、実際には市場は人間が作り出したものであり、人間は完璧ではなく、しばしば予測不能です。
だからこそ、私は投資家として意思決定をする際に、常にマクロ経済を重視しています。このため、1年以上前に「エンド・オブ・ザ・ワールド・ポートフォリオ(EOWポートフォリオ)」を立ち上げ、さらに、マクロポートフォリオにも注力してきました。EOWポートフォリオとマクロポートフォリオは、私が複数運用するポートフォリオの一部であり、EOWポートフォリオの足元のパフォーマンスや銘柄の詳細は下記のレポートをご覧ください。
【2024年8月】EOWポートフォリオ・アップデート:2024年度第2四半期決算後に注目の米国株とは?
しかし、いずれにせよ、今は慌てる時ではありません。The Pragmatic Investor(投資の実践的なアプローチを重視する投資家)として、私たちが得意とすることを行うべき時だと考えています。冷静に事実を見極め、最善の行動を選ぶべきでしょう。
そして、本稿の内容は下記の通りです。
・最近の港湾ストライキの影響
・AI時代への移行についての私の考え
・戦争が株式に与える影響
・第三次世界大戦は起こらないと考える理由
・戦争から「利益」を得るために私が保有している株
・マクロポートフォリオ最新情報:戦争の荒波から資産を守る方法
港湾労働者のストライキ、何が起こっているのか?
火曜日、東海岸と湾岸で約4万5千人の港湾労働者が、国際港湾労働組合(ILA)と米国海運同盟との交渉が決裂したことを受けてストライキに入りました。
なぜ彼らはストライキをしているのでしょうか?
主な理由はテクノロジーとAIの影響です。彼らは将来の変化を感じ取っています。実際、中国の港が完全に遠隔操作で稼働し始めているのを目の当たりにしているのです。
そのため、これが経済に及ぼす差し迫った影響と、AIによる長期的な変化の両方について考える必要があります。
経済への影響
運輸・倉庫業界はストライキの影響を直に受け、港に関わる約10万人の労働者が一時解雇や労働時間の短縮に直面する可能性があります。ニューヨークやニュージャージーなど、影響を受けた港周辺の地域経済も収入や生産の大幅な減少に見舞われるでしょう。
バナナ、自動車部品、家具といった重要な商品の遅れも発生しますが、数日程度のストライキであれば対処可能です。しかし、1週間以上に及ぶ混乱が続けば、産業全体に連鎖的な影響が広がり、1日あたり数十億ドルの損失が発生する可能性があります。
それでも、インフレが急激に加速する可能性は低いでしょう。企業が初期のコスト増を吸収することが予想されますが、長期的な混乱が続けば、一部の商品の価格には影響が出るかもしれません。
今後どう展開するのでしょうか?
最も可能性が高いのは、ジョー・バイデン大統領、またはその時の担当者が「職場復帰命令(Back-to-Work Legislation)」を発動することです。これは、大統領が国家の健康と安全を守るために、最大80日間ストライキを一時停止させる権限を持つものです。
では、長期的にはどうなるのでしょうか?
シンプルに言えば、AIへの移行を避けることはできません。アメリカはイノベーションを受け入れるか、取り残されるかのどちらかです。それが痛みを伴う人もいるでしょうが、それこそが「創造的破壊」と呼ばれる理由です。
戦争が株式に与える影響
イスラエルはレバノンへの「限定的な」軍事侵攻を開始し、数日間の空爆を経て、ベイルートへの攻撃も含め約1万人の兵士を国境に展開しました。
イスラエル軍はレバノン側の村の住民に避難を呼びかけており、この紛争の激化は、長年続くイスラエルとイラン支援の武装組織ヒズボラとの対立が背景にあります。
最近、イスラエルがベイルート郊外でヒズボラの指導者ハッサン・ナスラッラ氏を暗殺し、レバノン全土のヒズボラの通信網を攻撃したことで、さらに緊張が高まっています。
戦争に対して感覚が麻痺しつつある自分が怖いです。人類にとって戦争は良いことではありませんが、一方で、その様な戦争下でも投資を継続せざるを得ないというのも事実です。
地政学的な出来事と株式市場の反応
(出所:LPL Research、S&P Dow Jones Indices、CFRA)
いつもながら相関関係が因果関係を意味するわけではありませんが、過去の「市場ショック」とその後の展開を見ていくことで、いくつかの結論を導き出すことはできます。
平均すると、市場はショック後に5%下落し、イラクのクウェート侵攻では最大16%の下落が見られました。
市場が底を打つまでに平均22日、回復するまでには47日かかりました。
というわけで、選挙に向けて再び市場が過去最高値を目指す準備が整うようにも見えます。
第三次世界大戦のコスト
もちろん、全面的な世界大戦が勃発するようなシナリオが例外にはなりますが、その可能性は低いと考えています。
皮肉に聞こえるかもしれませんが、現実的に見て、世界大戦では利益を得ることは難しいでしょう。
利益が生まれる状態は、現在のように、中東やウクライナといった世界各地で小さな紛争が多発している状況です。
どの超大国も、全面的な攻撃を仕掛けるほど愚かではないと思います。
とはいえ、軍事関連企業はこうした状況から利益を得続けており、紛争が続くことで世界の動きにも大きな影響を及ぼしています。
私の「EOWポートフォリオ」は、まさにこれからの状況で利益を得るために構成されており、その中にはBAEシステムズのような銘柄が含まれています。
同社は、私が注目した時点からすでに30%上昇しており、市場が下落した昨日も上昇していました。
今後数週間でさらに防衛関連銘柄を追加する予定ですので、ぜひご注目ください。
マクロポートフォリオの最新情報:逆張りトレード
では、ここからは、私のマクロポートフォリオのアップデートを共有したいと思います。株式、金、原油、暗号資産の動向を確認していきましょう。
さらに、「逆張り」のマクロトレードアイデアもお伝えします。
私のマクロポートフォリオの詳細はこちらからご覧いただけます。
まずは金から見ていきましょう:
(出所:Trendpsider)
金を買う理由は変わらず健在です。価値の保存手段であり、銀行が買い集めていて、足元の戦争も追い風となっています。
しかし、今回の動きは「ニュースで売り」のようにも見えます。そして、金は今後数カ月でピークをつけた可能性が高いと考えています。その理由は以下の通りです:
・フィボナッチの2倍の拡張に到達
・RSIの弱気ダイバージェンスと買われすぎの状態
・MACDが下向きに転じている
ただし、長期的にはまだ保有を続けるつもりです。
(出所:Trendpsider)
次に原油ですが、安値付近で少し買い増ししました。戦争のニュースで上昇したものの、まだ大きな期待を抱ける状況ではありません。過去2年間のレンジ内にとどまっていますが、最終的にはブレイクアウトすると期待しています。
(出所:Trendpsider)
最後に、S&P500についてですが、多少の売りが出ており、5450ドルまで下げる可能性もありますが、年末までに6000ドルまでの上昇を期待しています。
第4四半期は流動性が豊富な期間になるでしょう。
(出所:Steno Research、Bloomberg、Macrobond)
また、FRB(連邦準備制度)がディスカウントウィンドウの利用を通常化するなど、さらなる流動性供給策を講じる可能性もあります。
さらに、米国経済はしばらくの間、強さを維持し、不況を回避する可能性が高いと見ています。
そう考えると、現在の金利水準は適切でないかもしれません。
(出所:Trendpsider)
経済データが強い結果を示せば、もう1回の50ベーシスポイントの利下げの可能性を再評価する必要があり、2年物の利回りはさらに上昇するかもしれません。
チャートを見ると、大きな強気ダイバージェンスが形成されており、上昇に向けた基盤ができつつあるようです。
つまり、ここでは債券をショートするのが良いということになります。
今日はここまでです!コメント欄で、是非、皆さんのご意見をお伺いできればと思います。
アナリスト紹介:ジェームズ・ フォード
ジェームズ・フォード氏は、エコノミストとして、過去10年に渡り、世界市場の分析に従事してきました。そして、自らを「実践的な投資家」と位置付け、資産を継続的に維持・拡大させることを目的とした、分散されたポートフォリオの構築に重点を置いています。
主に、「グローバル・マクロ」、「ハイテク」、「コモディティ」、「暗号通貨」関連銘柄に焦点を当て、ファンダメンタル分析、並びに、テクニカル分析を用いた企業分析を提供しております。
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