インテル(INTC)株は買い時?最新の2024年第3四半期決算分析を通じて、今後の株価見通しに迫る!
ウィリアム・ キーティング- 本稿では、注目の米国半導体銘柄であるインテル(INTC)の10月31日に発表された最新の2024年第3四半期決算分析を通じて、「インテル株は買い時なのか?」という質問に答えるべく、同社の今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
- インテルは、次世代のプロセッサー「Panther Lake」や「Nova Lake」の生産を大部分社内に戻しつつも、一部のタイルはTSMCに外注している状況です。
- 「Lunar Lake」のメモリパッケージングの影響で粗利益率が圧迫されており、AIPC市場向けに販売量を増加させたことで、さらに全社の粗利益率に負担がかかっています。
- 2025年には外部委託がさらに増える見通しであり、インテルは自社の生産体制を強化しつつも、ファウンドリ事業の成長には依然として課題があることが浮き彫りになりました。
※「インテル(INTC)の株価は10年後も堅調?最新の2024年第3四半期決算は苦戦で雲行きは怪しい?」の続き
インテル(INTC)のPanther Lakeについて
数週間前、インテル(INTC)が20A(インテルが開発していた半導体製造プロセス技術で2ナノメートルのプロセス技術のこと)を見送り、Arrow Lake(インテルが開発している次世代のプロセッサーアーキテクチャのコードネーム)でのTSMC(TSM)への外注を継続することが発表されました。
そして、Panther Lake(インテルが開発している将来のプロセッサーアーキテクチャのコードネームで、Arrow Lakeの次世代に位置付けられている)も同様にTSMCの外注を続けることがわかりました。
この情報は、最新の2024年第3四半期決算説明会における、以下の率直な質問への回答から得られたものです:
(原文)I do. Yeah. I have a question on Panther Lake, Pat. So, I know that it's coming back in-house, but we do still hear that most tiles are still being outsourced.
(日本語訳)質問があります。Pat、Panther Lakeについてですが、社内生産に戻ると聞いていますが、依然として多くのタイルが外部委託されているとも聞いています。
(原文)Can you speak to that? Is that a change? Or was that always the plan? And I guess when you look at Nova Lake on the desktop side, is it still being dual tracked, meaning that there is still an option that it could be outsourced? Or is it guaranteed to be brought back in-house?
(日本語訳)この点についてご説明いただけますか?これは計画変更なのか、それとも当初からの方針だったのでしょうか?また、Nova Lake(Panther Lakeの次世代に位置する製品)のデスクトップ版については、外部委託の可能性がまだ残っているのか、それとも完全に社内生産に切り替わる予定なのでしょうか?
そして、この質問に対するインテルの回答は下記の通りでした:
(原文)Panther Lake, some tiles would be external, but the majority of the millimeter square in the package are back internal. More than 70-plus percent of the silicon area is back in-house.
(日本語訳)Panther Lakeについては、一部のタイルが外部委託されていますが、パッケージ内のシリコン面積の70%以上が社内生産に戻っています。
(原文)So, the majority of Panther Lake wafer capacity by a good margin is coming back inside for Intel. Nova Lake, we definitely have some SKUs that we're looking at continuing to leverage externally, but the large majority of Nova Lake and more of the additional tiles have come back in-house as well. So, we still have some flexibility in the Nova Lake product, but the large majority of that is committed to the Intel Products -- or Intel Foundry. So, overall, we are absolutely executing on the bringing wafers home strategy that we've laid out
(日本語訳)つまり、Panther Lakeのウエハー生産能力の大部分はインテル社内での生産に切り替わっているということです。Nova Lakeについても、一部のSKUで外部委託を検討しているものの、ほとんどのタイルと追加構成は社内生産に戻っています。Nova Lake製品には多少の柔軟性を残しつつも、大部分がインテル製品やインテル・ファウンドリで生産される予定です。全体として、「ウエハーの内製化」戦略は確実に進んでいます。
Panther Lakeだけでなく、Nova Lakeも同様です。
本来インテルが目指す方向とは異なる状況であることから注意をそらすように、インテルのゲルシンガーCEOは決算発表でTSMCを二度にわたって称賛しています。
(原文)That said, TSMC has been a great partner. Clearly, Lunar Lake has demonstrated the strength of the partnership and one that we'll use selectively in our product lines for the future.
(日本語訳)とはいえ、TSMCは素晴らしいパートナーです。Lunar Lakeを通じてこの強固なパートナーシップが証明されており、今後も製品ラインに応じて選択的に活用していく予定です。
(原文)We continue to really value the relationship, right, with TSMC.
(日本語訳)私たちはTSMCとの関係を引き続き非常に重視しています。
インテル(INTC)のLunar Lakeの粗利益率への影響
今回の決算発表では、インテル(INTC)のLunar Lakeの設計が粗利益率に与える影響について、非常に直接的な質問によって興味深い情報が明らかになりました。
(原文)I guess there are two issues impacting your PC gross margins. One, the wafer outsourcing and the other, you said packaging of the memory.
(日本語訳)PCの粗利益率に影響を与える要因として、ウエハーの外部委託とメモリのパッケージングがあると思います。
(原文)I'm just curious how much of an impact that memory packaging is having on your gross margin. I suppose that helps your ASPs, but I guess it hurts your gross margin percent. So, just curious to know how much of an impact that's having. And then maybe for Pat, architecturally, why do we need to, I guess, combine memory in one package? And is this something that's going to be ongoing? Or is it just a one-off with, I guess, Lunar and Meteor Lake? Thank you.
(日本語訳)メモリのパッケージングが粗利益率にどれくらい影響しているのか気になります。この施策は平均販売価格(ASP)にはプラスになる一方で、粗利益率のパーセンテージにはマイナスに働いているのではないでしょうか。その影響がどれほどか教えていただけますか? また、Patにお聞きしたいのですが、なぜメモリを1つのパッケージに統合する必要があるのでしょうか? これは今後も続く施策なのか、それともLunar LakeやMeteor Lakeだけのものなのでしょうか?
これに対するインテルのジンズナーCFOの回答は下記の通りです。
(原文)Yeah. And just to be clear, it's exclusive to Lunar Lake but not Meteor Lake. And it's having a pretty meaningful impact, a significant impact on Lunar Lake's gross margins. And originally, we were like a third of the volume in terms of our expectations next year on Lunar Lake when we recognized how important the AIPC market would be and how good this part was competitively.We pushed the volume significantly up. And so, that has put some reasonable pressure on the gross margins for the total company.
(日本語訳)そうですね。確認ですが、これはLunar Lakeに限定されており、Meteor Lake(インテルが開発した第14世代のプロセッサーアーキテクチャのコードネームで、特にモバイル向けに設計されている)には該当しません。この施策はLunar Lakeの粗利益率にかなり大きな影響を及ぼしています。当初、来年のLunar Lakeの販売量は全体の3分の1程度と予測していましたが、AIPC(AIパーソナルコンピューティング)市場の重要性や、この製品の競争力の高さを考慮して、販売量を大幅に増やしました。その結果、全社の粗利益率にも一定の圧力がかかる状況になっています。
その後、ゲルシンガーCEOが状況をさらにわかりやすく説明してくれました。
(原文)Yeah. And maybe architecturally, the second half of that question, Lunar Lake was initially designed to be a niche product that we wanted to achieve highest performance and great battery life capability, and then AIPC occurred. And with AIPC, it went from being a niche product to a pretty high-volume product. Now, relatively speaking, we're not talking about 50 million, 100 million units, but a meaningful portion of our total mix from a relatively small piece of it as well.
(日本語訳)そうですね、ご質問の後半についてですが、Lunar Lakeはもともと、最高のパフォーマンスと優れたバッテリー持続時間を備えたニッチ製品として設計されていました。しかし、AIPCの登場により、Lunar Lakeはニッチ製品から一気に高いボリュームを持つ製品へとシフトしました。規模としては5000万台や1億台といったレベルではありませんが、全体の製品構成において重要な割合を占めるようになったのです。
(原文)So, as that shift occurred, obviously, this became a bigger margin implication, both for Lunar Lake and for the company overall. But we were very pleased to have the option to scale Lunar Lake and higher volume because of the momentum energy around the AIPC category. That said, a volume product and a volume industry like the PC industry, you don't want to have volume memory going through that channel. It's not a good way to run the business.
(日本語訳)このシフトにより、Lunar Lakeだけでなく会社全体の粗利益率にも大きな影響が出ることになりましたが、AIPCの勢いを受けてLunar Lakeの生産量を拡大できたことは喜ばしいことです。ただし、PCのような量産市場では、大量のメモリをこのチャンネルで処理するのはビジネスとして最適な方法ではありません。
まるで失敗のようですが、なぜ今になってこの話が出てきたのでしょうか?
おそらく、2025年にインテルの状況が改善しない理由を説明するために、今のうちに少しずつ手の内を明かし始めているのでしょう。
これは私の推測だけでなく、言ってみればインテル自身の発言からも明らかです。
(原文)As our mix of outsourced products and CCG grows in calendar year 2025, and we ramp Intel 18A to support Panther Lake, gross margin expansion could be muted, particularly in the second half.
(日本語訳)2025年には外部委託製品とCCGの比率が増加し、Panther LakeをサポートするためにIntel 18Aの生産を拡大することで、特に後半には粗利益率の向上が抑えられるかもしれません。
インテル(INTC)のファウンドリパッケージングの成長鈍化
ある市場のアナリストが鋭い質問で、なぜインテル(INTC)のファウンドリパッケージングの成長が思うように進んでいないのかを問いかけました。
(原文)So, my question is, given the tightness in the packaging industry right now, I would have thought we would see more interest in your packaging services. So, I'm just curious as to why we are not seeing that. Is it because it's -- I guess there must be some nuances of using your packaging with the TSM wafers. I'm just curious as to why we are not seeing more interest.
(日本語訳)質問ですが、現在パッケージング業界が逼迫している状況を考えると、御社のパッケージングサービスへの関心がもっと高まっているはずだと思っていました。それが見られないのはどうしてでしょうか?TSMCのウエハーと御社のパッケージングを組み合わせる際に、何か難点があるのでしょうか?なぜ関心が高まらないのか気になっています。
そして、この質問に対するインテルからの回答は下記の通りです。
(原文)Well, I'd say we do see significant interest in this area. And moving your supply chain, though, is complicated and takes qualification time. And many of these designs were first designed on CoWoS, and now they're looking at Foveros, and then they're looking at the unique technologies that we have like EMIB as well. So, we actually see very good momentum in that area.
(日本語訳)この分野には確かな関心が集まっていますが、サプライチェーンの移行には複雑な手続きや認証に時間がかかります。多くの設計がまずCoWoS(TSMCが開発した2.5Dパッケージング技術)で始まり、次にFoveros(インテルが開発した3Dパッケージング技術)や当社独自のEMIB(インテルが開発した2.5Dパッケージング技術)といった技術を検討する流れです。ですから、この分野には非常に良い勢いが見られています。
(原文)Now, those aren't as revenue-producing as wafer design, so they're not nearly, right, as large in size. But the pipeline of activities is very strong. And the quarter-on-quarter improvements we saw were largely driven by advanced packaging. Most of the external revenue that we'll see, which will be nicely up year on year as we go into '25, in the external foundry will be advanced packaging.
(日本語訳)ただ、ウエハー設計ほどの収益を生むわけではないので、規模はそれほど大きくありません。しかし、活動のパイプラインは非常に充実しており、四半期ごとの改善も高度なパッケージングによるものが大きいです。外部ファウンドリの収益は年々増加し、2025年には高度なパッケージングが大きく貢献する見通しです。
つまり、インテルの高度パッケージングは有望な選択肢ではあるものの、それがもたらす収益は、インテルが外部ファウンドリ収益として求める規模に比べればわずかなものに過ぎないということでしょう。
インテル(INTC)の株価動向
決算後の株価動向を説明するのは、科学というよりアートに近いと言えます。
表面的には、インテル(INTC)は期待通りの結果を出し、わずかに予想を上回る業績と控えめな上方修正を行いました。
もし他の企業なら、この程度で株価が上昇することはないでしょう。
しかし、インテルの株価はすでに大きく下落しており、さらに下がる余地が少ない状態です。
インテルが何か大きな問題を報告しない限り、プラスの反応が得られるだろうと思います。
また、Gaudiの不調については、インテルがデータセンターの加速分野で確かな足場を持っていないという市場の既成認識がすでにあるため、「それがどうした?」という反応にとどまったようです。
インテル(INTC)の最新決算に対する結論
今回のインテル(INTC)の決算発表で最も注目すべきは、Q&Aセッションでの鋭い質問の数々でした。
今回明らかになったのは、欠陥密度の数値を過信してはいけないこと、2025年にはインテルの外部委託がさらに増加すること、Lunar Lakeが事実上の失敗であること、そして2025年はインテルにとって改善ではなくむしろ悪化する可能性が高いという現実です。
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