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11 - 29 - 2024

インテル(INTC)は本当にやばいのか?米国CHIPS法により78億6,000万ドルの助成金を獲得もその真相に迫る!

ウィリアム・ キーティングウィリアム・ キーティング
  • 本稿では、「インテル(INTC)はやばいのか?」という疑問に答えるべく、足元のCHIPS法に基づく助成金獲得の背景と詳細の分析を通じて、同社の将来性を詳しく解説していきます。
  • インテルは、米国のCHIPS法に基づき、78億6,000万ドルの助成金を獲得し、1,000億ドル規模の半導体製造拡大プロジェクトを支援する計画です。 
  • 助成金の総額は当初提示された額より少なく、30億ドルが「セキュアエンクレーブ」プログラムに充当されたため、当初計画との差額が生じています。 
  • インテルは、これらの投資を通じて10万人以上の雇用を創出し、最先端半導体の米国内製造能力を強化することを目指していますが、一部の内容には懐疑的な見解も示されています。

インテル(INTC)はやばいのか?米国CHIPS法の詳細とは?

インテル(INTC)は2024年11月26日、米国のCHIPS法に基づき、78億6,000万ドルの助成金を受け取ることが決定したと発表しました(詳細はこちら)。

(日本語訳)インテルとバイデン・ハリス政権、米国CHIPS法に基づく78億6,000万ドルの助成金を正式決定

(日本語訳)この助成金は、インテルがアメリカ国内での半導体製造拡大と技術分野でのリーダーシップ強化を目的に計画している1,000億ドル規模の投資を支援するものです。

(出所:インテルのプレスリリース

この金額は、今年3月にジョー・バイデン大統領が関係者とともにインテルのオコティーヨキャンパスで行った発表イベントで示された85億ドルより、約10億ドル少ない金額となっています。

このイベントに関しては、下記のレポートにおいて詳しく解説しておりますので、関心がございましたら、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上より併せてご覧いただければと思います。

インテルによれば、この差額の理由は、以前割り当てられていた「セキュアエンクレーブ」プログラム(デバイスやシステム内で高度なセキュリティを提供するために設計された技術や仕組み)の設立に必要な30億ドルが、今回のCHIPS法の助成金から充当されることになったためだと説明しています。

(原文)The final total award is less than the proposed preliminary award due to a congressional requirement to use CHIPS funding to pay for the $3 billion Secure Enclave program.

(日本語訳)最終的な支給額が当初案より少なくなった理由は、議会の指示でCHIPS法の資金から「セキュアエンクレーブ」プログラムの30億ドル分を賄う必要があったためです。

インテルは、この議会の要請が当初の計画に変更を加えたものであるかのように説明していますが、これは今年9月24日にインテル自身が説明した内容と明らかに矛盾しています(詳細はこちら)。

(原文)SANTA CLARA, Calif., September 16, 2024 – The Biden-Harris Administration announced today that Intel Corporation has been awarded up to $3 billion in direct funding under the CHIPS and Science Act for the Secure Enclave program. The program is designed to expand the trusted manufacturing of leading-edge semiconductors for the U.S. government.

(日本語訳)カリフォルニア州サンタクララ、2024年9月16日 — バイデン・ハリス政権は本日、インテルが「セキュアエンクレーブ」プログラムのために、CHIPS法および科学法に基づき最大30億ドルの直接助成金を受け取ることが決定したと発表しました。このプログラムは、米国政府向けの最先端半導体の信頼性ある製造能力を拡大することを目的としています。

(原文)The Secure Enclave award is separate from the proposed funding agreement that Intel reached with the Biden-Harris Administration in March of this year to support the construction and modernization of semiconductor commercial fabrication facilities under the CHIPS and Science Act.

(日本語訳)「セキュアエンクレーブ」に対する助成金は、今年3月にインテルがバイデン・ハリス政権と締結した、CHIPS法および科学法に基づく半導体製造施設の建設や設備更新を支援するための資金提供契約とは別枠のものです。

つまり、30億ドルの「セキュアエンクレーブ」プログラムの助成金を、3月に約束された85億ドルに加算して計算すると、インテルには36億4,000万ドル、つまり当初提示された額の約30%が不足していることになります。

予想どおり、インテルの資金提供に関するプレスリリースは非常に前向きで楽観的な内容で、多くの称賛が盛り込まれています。

CEOのパット・ゲルシンガー氏は「すべてが順調に進んでいる」とコメントしています。

(原文)With Intel 3 already in high-volume production and Intel 18A set to follow next year, leading-edge semiconductors are once again being made on American soil

(日本語訳)インテル 3はすでに大量生産が進んでおり、来年にはインテル 18Aもそれに続く予定です。これにより、最先端の半導体が再びアメリカ国内で製造されるようになっています。

もちろん、これは事実とは異なります。インテルの最先端製品は依然としてTSMC(TSM)の高度なプロセスノードに大きく依存しています。

もし台湾が密かに「米国領」として指定されていない限り、ゲルシンガー氏の主張は間違いです。

また、ゲルシンガー氏は、この投資を通じて1万人以上の雇用を支援する計画についても改めて強調しています。

(原文)As previously announced, Intel’s planned U.S. investments, including projects beyond those supported by CHIPS, support more than 10,000 company jobs, nearly 20,000 construction jobs, and more than 50,000 indirect jobs with suppliers and supporting industries.

(日本語訳)これまでに発表されたように、インテルが計画している米国内での投資(CHIPS法の支援対象外のプロジェクトを含む)は、1万人以上の社内雇用、約2万人の建設関連雇用、さらにサプライヤーや関連産業を通じた5万件以上の間接雇用を支える予定です。

この計画は、ここ数か月の間にインテルが米国内で解雇を進めてきた1万人以上の従業員にとって、特に屈辱的なものに感じられるかもしれません。

もしかすると、来年には彼ら全員が職場に戻れるなんてことがあるのでしょうか?

いずれにしても、プレスリリースは全体的にポジティブな内容でまとめられていましたが、2024年11月25日にインテルが提出した8-Kには、まったく異なる現実が記されています。

8-Kとは、アメリカの証券取引委員会(SEC: Securities and Exchange Commission)に提出される公式な報告書の一つで、企業が重要な出来事(マテリアルイベント)や取引を投資家に通知するために使用される書類です。

そこに記載された条件や条項を見ると、インテルが今にも事業を閉じるのではないかと思わせる内容です。

そこで、次章では、インテルの8-Kを詳しく見ていきます。

※続きは「インテル(INTC)の倒産リスクとは?新たに提出された8-Kは経営権の変更や倒産リスクにも言及!」をご覧いただければと思います。

また、インテルが2024年10月31日に最新の2024年第3四半期決算を発表した直後に下記の分析レポートも執筆しておりますので、関心がございましたら、併せてご覧いただければと思います。

加えて、インベストリンゴのアナリストであるダグラス・ オローリン氏イアニス・ ゾルンパノス氏も、2024年10月31日に発表された最新の2024年第3四半期決算後にインテルに関する下記のレポートを執筆しておりますので、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上より、ご覧いただければと思います。

ダグラス・ オローリン氏

イアニス・ ゾルンパノス

その他のインテル(INTC)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、インテルのページにアクセスしていただければと思います。

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