04/22/2025

キンダー・モルガン(KMI)配当推移と将来性分析:予想配当利回り4.32%・配当性向101%・配当金0.2925ドル

sunsetイアニス・ ゾルンパノスイアニス・ ゾルンパノス
  • 本稿では、注目の米国上場高配当株であるキンダー・モルガン(KMI:予想配当利回り4.32%・配当性向101%・1株当たり配当金0.2925ドル)の2025年4月16日に発表された最新の2025年度第1四半期決算と配当推移の分析を通じて、今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
  • キンダー・モルガンは米国テキサス州ヒューストンに本社を構える北米最大級のエネルギーインフラ企業であり、長期契約に基づく安定的な収益構造と天然ガス輸送での高いシェアを強みとしています。
  • 財務面では粗利益率やEPSが堅調に推移している一方、ROICがWACCを下回っており、経済的価値創出には課題が残っています。また、配当性向が100%を超えており、財務的な持続性には注意が必要です。
  • 現在の株価は各種バリュエーション指標で割高感があり、インサイダー売却の動きも見られるため、投資判断には流動性や成長見通し、リスク指標などを総合的に検討することが重要です。

キンダー・モルガン(KMI)の概要


セクター:石油・ガス

現在の株価:27ドル

時価総額:602.2ドル

過去5年間の配当成長率:3.50%

次回配当落ち日:2025年4月30日

次回配当支払い日:2025年5月15日

予想配当利回り:4.32%

過去5年間の売上高成長率:5.20%

過去10年間の売上高成長率:-2.00%


関連用語

売上高成長率:企業の売上高が前年と比べてどれだけ増加したかを示す割合で、企業の成長スピードや市場での競争力を評価するための指標。一般的にプラス成長が望ましく、高いほど企業の成長力が強いと言える。


足元の株価推移

(出所:筆者作成)

キンダー・モルガンKMI:予想配当利回り4.32・配当性向101%・1株当たり配当金0.2925ドル)は、米国テキサス州ヒューストンに本社を構える、北米最大級のエネルギーインフラ企業です。同社は約79,000マイル(約127,000キロメートル)のパイプラインと139のターミナルを保有または運営しており、天然ガス、ガソリン、原油、二酸化炭素(CO₂)などの輸送を行っています。また、ターミナルでは再生可能燃料、石油製品、化学品、植物油などの保管と取り扱いを行っており、エネルギー供給網の中核を担っています。

同社のビジネスモデルの特徴は、収益の約95%を長期契約や手数料ベースの取引から得ている点にあります。これにより、商品価格の変動による影響を最小限に抑え、安定したキャッシュフローを確保しています。特に、同社は米国で消費される天然ガスの約40%を輸送しており、LNG(液化天然ガス)輸出やデータセンターのエネルギー需要の増加に伴い、今後も需要の拡大が見込まれています。

配当については、現在の予想配当利回りは約4.3%で、四半期ごとの支払いが行われています。同社の安定したキャッシュフローと高い配当利回りは、配当株としての魅力を高めています。

そして、同社は2025416日に2025年第1四半期決算を発表しており、本稿では同社の最新の決算と財務パフォーマンス、並びに配当推移を詳しく分析していきます。


🚀お気に入りのアナリストをフォローして最新レポートをリアルタイムでGET🚀

イアニス・ ゾルンパノス氏はバリュー・インカム関連、並びに、テクノロジー銘柄に関するレポートを毎週複数執筆しており、プロフィール上にてフォローをしていただくと、最新のレポートがリリースされる度にリアルタイムでメール経由でお知らせを受け取ることができます。

さらに、その他のアナリストも詳細な分析レポートを日々執筆しており、インベストリンゴのプラットフォーム上では「毎月約100件、年間で1000件以上」のレポートを提供しております。

そのため、ゾルンパノス氏の最新レポートに関心がございましたら、是非、フォローしていただければと思います!


キンダー・モルガン(KMI)の最新の2025年度第1四半期決算発表に関して

キンダー・モルガンKMI)は、2025416日に発表された最新の2025年度第1四半期決算において、収益の大幅な改善を報告しました。非経常項目(NRI)を除いた1株当たり利益(EPS)は0.32ドルとなり、前四半期の0.30ドルから増加し、収益性の向上を示しています。前年同期と比較しても、NRIを除いたEPSは0.319ドルと安定しており、経済の変動にもかかわらず堅調な推移を見せています。

1株当たりの売上高も1.909ドルに増加しており、過去4四半期を通じてプラスのトレンドが続いています。過去5年間で、同社のNRIを除いた年間EPSは年平均成長率(CAGR)12%を達成しており、10年間では5.3%のCAGRとなっており、収益面での力強い上昇傾向がうかがえます。

また、当四半期の粗利益率は54.3%で、過去5年間の中央値である53.12%をやや上回っており、コスト管理の効率性と事業運営の好調さを示しています。株式の自社買い戻しについては、過去1年間で自社株買い比率が-0.10%と控えめな水準にとどまっていますが、過去5年間では0.50%となっており、発行済株式数の削減によってEPSの改善に寄与しています。この戦略はEPSを押し上げ、株主価値の重要な推進要因となっています。

今後の見通しとしては、2025年末までに売上高が165億4,431万ドル、2027年には189億641万ドルまで増加するとの強気な予測が出ています。業界全体の今後10年間の成長予測も堅調であり、同社の戦略と合致しています。次年度の予想EPSは1.285ドル、翌年度には1.446ドルと見込まれています。

そして、次回の決算発表は2025年7月17日を予定しており、今後の業績や成長見通しをさらに明らかにする重要なタイミングとなるでしょう。

非経常損益項目を除くベースでのEPS

(年間ベース:直近4四半期の合計値

(出所:筆者作成)


関連用語

EPS(Earnings Per Share、1株当たり利益):企業が一定期間内に得た純利益を、その期間中に発行されている株式の総数で割った値のこと。EPSは、株主が1株あたりどれだけの利益を得たかを示す指標であり、企業の収益力を評価する際によく用いられ、EPSが高いほど、一般的にはその企業が効率的に利益を上げていると判断される。

非経常損益項目を除くベースでのEPS(EPS without NRI):非経常的な収益や費用(例: 一時的な訴訟費用や災害損失)を除いた後の1株当たりの利益(EPS)。これにより、通常の業績をより正確に反映することが可能。

希薄化後EPS:既存株主にとって、潜在的に新しい株式が発行された場合(例: ストックオプションや転換社債の行使)に、1株あたりの利益(EPS)がどの程度薄まるかを考慮したもの。

1株当たり売上高:企業の総売上高を発行済株式数で割った値で、1株あたりが生み出す売上を示しており、企業の売上規模と株式の価値を評価するのに役立つ。

粗利益率:売上高に対する粗利益の割合を示す指標。企業が商品やサービスを販売した際に、売上から直接かかったコスト(売上原価)を差し引いて得られる利益の割合を計算する。粗利益率が高いほど、企業が商品やサービスから得られる利益が大きいことを意味する。

自社株買い比率:企業が自社の発行済み株式を買い戻した割合を示す指標。この比率は、過去の一定期間において企業がどれだけ自社株を買い戻したかを示しており、通常は1年間の比率として表される。具体的には、買い戻された株式数をその期間の発行済株式総数で割ることで計算される。高い比率は、企業が積極的に自社株を買い戻し、EPS(1株当たり利益)を押し上げる可能性があることを示唆している。

各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。

関連コラム

配当株投資関連の専門用語と重要指標一覧


キンダー・モルガン(KMI)の財務パフォーマンスに関して

キンダー・モルガンKMIの財務パフォーマンスを、投下資本利益率(ROIC)と加重平均資本コスト(WACC)の観点から分析していきます。

まず、同社の現在のROICは4.80%であり、WACCの7.73%を下回っています。また、過去5年間における同社のROICの中央値は4.58%で、同期間のWACCの中央値である6.59%を一貫して下回っており、経済的価値の創出に課題があることが示唆されます。

この差は、投下資本に対して十分なリターンが得られておらず、資本配分や事業運営の効率性に何らかの問題がある可能性を示しています。自己資本利益率(ROE)は8.49%となっており、徐々に上昇している点は、自己資本に対するリターンの改善を反映しています。

しかしながら、ROICが継続的にWACCを下回っていることから、株主にはある程度の利益がもたらされているものの、企業全体としての経済的価値創出には疑問が残ります。同社にとっては、ROICとWACCの差を縮小することが株主価値の向上や持続的成長の実現において極めて重要であり、そのためには事業効率の改善や資本配分戦略の見直しが求められるでしょう。

投下資本利益率(ROIC)加重平均資本コスト(WACC)の比較

(出所:筆者作成)


関連用語

総資産利益率(ROA: Return on Assets):企業が保有する全ての資産を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を総資産で割ることで算出され、ROAが高いほど、企業が資産を効率的に運用していることを示す。

自己資本利益率(ROE: Return on Equity):企業が株主の出資(自己資本)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を自己資本で割ることで算出され、ROEが高いほど、株主にとって効率的な運用が行われていることを示す。

投下資本利益率(ROIC: Return on Invested Capital):企業が投下資本(株主資本+負債)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算はNOPAT(税引後営業利益)を投下資本で割ることで算出され、ROICが高いほど、企業が効率的に資本を運用していることを示す。

ジョエル・グリーンブラット氏の資本利益率(ROC: Return on Capital):株主資本と長期負債の合計である資本に対して、どれだけの利益(NOPAT)を生み出しているかを示す指標。ROICと同様に、資本の効率的な運用を評価する。

加重平均資本コスト(WACC: Weighted Average Cost of Capital):企業が資金を調達する際に必要となる平均的なコストを示す指標で、株主資本と負債のコストを加重平均して求める。WACCが低いほど、企業の資本コストが低く、投資がより利益を生む可能性が高くなる。

各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。

関連コラム

配当株投資関連の専門用語と重要指標一覧


キンダー・モルガン(KMI)の配当に関して

最新の四半期において、キンダー・モルガンKMI)は1株当たり配当金(DPS)を0.2875ドルから0.2925ドルへとわずかに引き上げました。過去5年間の配当成長率は3.50%であるのに対し、直近3年間の成長率は2.20%と低下しており、成長の鈍化が見受けられます。

現在の予想配当利回りは4.32%で、過去10年間の中央値である5.71%を下回っており、過去と比較すると相対的に低い水準にあります。また、配当性向は101.0%となっており、利益を上回る配当が支払われていることから、強固なキャッシュフローに支えられていない限り、持続可能性に懸念が残ります。

さらに、同社の負債比率を示すEBITDA有利子負債倍率は5.41であり、一般的に健全とされる4.0を超えているため、財務リスクが高まっており、債務返済能力に対する懸念も指摘されています。この水準のレバレッジは理想的とは言えず、収益が減少した場合に課題が生じる可能性があります。

今後3〜5年間の配当成長率は2.49%と予測されており、引き続き緩やかな成長が見込まれています。次回の権利落ち日は2025年4月30日に予定されており、四半期ごとの配当であることから、次の権利落ち日は2025年7月30日前後(平日である場合)になると予想されます。

予想配当利回り4.32%

配当性向:101%

配当カバレッジ・レシオ:1.01倍

過去5年間の配当成長率: 3.50%

EBITDA有利子負債倍率:5.41倍

DPS(Dividend Per Share):1株当たりの配当金

(出所:筆者作成)

Dividend Yield:予想配当利回り

(出所:筆者作成)

Dividend Payout:配当性向

(出所:筆者作成)


関連用語

1株当たりの配当金:企業が株主に支払う配当金を、発行されている株式の総数で割った値。これにより、株主が保有する1株あたりに受け取ることができる配当金の金額が示される。

配当成長率:企業が過去数年間にどれだけ配当金を増加させたかを示す割合。配当成長率が高いほど、企業が株主に対して利益を還元する意欲が強いことを示す。

予想配当利回り:企業が次年度に支払うと予想される配当金を現在の株価で割った割合。投資家にとって、どれだけのリターンを配当として受け取ることができるかの見込みを示す。

配当性向:企業の純利益に対して、どれだけの割合を配当金として支払っているかを示す指標。計算は、配当金を純利益で割って算出され、配当性向が高すぎると、企業の成長投資に使える資金が減少する可能性がある。

EBITDA有利子負債倍率:EBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)に対する有利子負債の割合を示す。企業の有利子負債が利益によってどれだけカバーできるかを示す指標で、低いほど財務的な健全性が高いとされている。

配当カバレッジ・レシオ:企業の利益が、支払われる配当金をどれだけ上回っているかを示す指標。計算は、利益(通常は純利益かEBITDA)を配当金で割ることで算出され、配当カバレッジ・レシオが高いほど、配当が持続可能であると考えられている。

配当王:50年以上にわたり連続して配当を増やし続けている企業。これに該当する企業は、長期間にわたり安定した利益成長と配当支払いを維持していることを示している。

配当貴族:25年以上連続して配当を増やしている企業。これも安定した配当成長を実現している企業に与えられる称号。

各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。

関連コラム

配当金とは?配当金の詳細と仕組みを徹底解説!

配当株投資のメリットとリスクとは?

インカム・高配当株投資家として成功するためには?米国株高配当銘柄から成るポートフォリオのメリットと作り方を徹底解説!

50年以上連続して増配する米国株配当王の一覧・ランキングと投資を検討する際に考慮すべきポイントを徹底解説!

最新のバフェット銘柄:ウォーレン・バフェット氏がポートフォリオに保有する株式一覧と投資哲学、最新の注目銘柄を徹底分析!

配当株投資関連の専門用語と重要指標一覧


キンダー・モルガン(KMI)のバリュエーションに関して

キンダー・モルガンKMIの現在の株価は27.10ドルで、弊社算出の一株当たり本質的価値である17.05ドルよりも高い水準にあり、安全余裕率(マージン)が-58.94%となっていることから、割高である可能性が示唆されています。

予想PER(株価収益率)は21.25であり、過去10年間の中央値である25.40を下回ってはいるものの、依然として利益に対しては割高な評価といえます。直近12ヶ月のEV/EBITDA倍率は15.47で、こちらも過去10年の中央値12.44を上回っており、過去の水準と比べて高いバリュエーションが示されています。

その他の主要な評価指標に目を向けると、直近のPSR(株価売上高倍率)は3.88であり、10年中央値の2.84を上回っています。これは売上高に対しても市場評価が高いことを示しています。PBR(株価純資産倍率)は1.97で、10年中央値の1.28より高く、純資産に対してプレミアムがついている状況です。また、P/FCF(株価フリーキャッシュフロー倍率)は20.01で、過去10年の中央値18.89をやや上回っており、フリーキャッシュフローに対しても割高であることが分かります。

市場のアナリストの目標株価の平均値は30.77ドルとされており、現在の市場価格よりやや高く、一定の上昇余地があると見られています。しかしながら、現時点の指標を踏まえると、同社の株価は過去の平均や本質的価値と比較してプレミアムが付いており、新規投資家にとっては安全余裕率が限られているといえます。同社への投資を検討する際には、これらの乖離や市場環境を慎重に考慮することが重要でしょう。

(出所:筆者作成)


上記グラフにおける関連用語

Price:現在の株価

Yiazou Value:弊社算出の一株当たり本質的価値

DCF (FCF Based):フリーキャッシュフローに基づくDCF法を用いて算出した理論株価

DCF (Earnings Based):収益に基づくDCF法を用いて算出した理論株価

Median P/S:株価売上高倍率の中央値ベースの理論株価

Perter Lynch:ピーター・リンチ氏のバリュエーション計算方法に基づく理論株価

赤線:上記の各バリュエーション手法により算出された理論株価の平均値


関連用語

安全マージン(Margin of Safety):株式の本質的価値(本来の価値)とその市場価格との間にある差のこと。投資家はこの差を利用して、予想が外れた場合や市場の変動によるリスクを軽減するための「安全な余裕(マージン)」を確保する。例えば、本質的価値が100円の株が市場で80円で取引されている場合、その20円の差が安全マージンとなる。この差が大きいほど、投資のリスクが低くなるとされている。

実績PER(Price Earnings Ratio):過去1年間の実績ベースの1株当たり利益(EPS)に対する現在の株価の倍率。企業が過去にどれだけの利益を上げたかに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。

予想PER(Forward PER):予想される1株当たり利益(来年度のEPS予想)に対する現在の株価の倍率。将来の利益見込みに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。

PEGレシオ(Price/Earnings to Growth Ratio):PERを企業の利益成長率で割った指標。成長率を考慮した株価の割安・割高を判断するために使われ、一般的に1以下が割安とされる。

株価売上高倍率(Price to Sales Ratio, PSR):企業の売上高に対する現在の株価の倍率。売上高に対して株価がどれだけの価値を持つかを示す指標で、低いほど割安とされる。

株価フリー・キャッシュフロー倍率(Price to Free Cash Flow Ratio, P/FCF):企業がフリー・キャッシュフロー(営業キャッシュフローから資本的支出を差し引いた金額)に対する現在の株価の倍率。企業のキャッシュフロー創出能力に対して株価が割安か割高かを判断する。

EV/EBITDA倍率(Enterprise Value to EBITDA Ratio):企業価値(EV:株式時価総額+負債−現金)をEBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)で割った指標。企業全体の価値に対する収益力を評価するために用いられる。

PBR(Price to Book Ratio, 株価純資産倍率):企業の純資産(簿価)に対する現在の株価の倍率。株主資本に対して株価がどれだけの価値を持つかを示し、1倍以下だと市場での評価が純資産を下回っているとされる。

各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。

関連コラム

PER(株価収益率)とPBR(株価純資産倍率)とは?PERとPBRの詳細と目安を徹底解説!

PERはマイナスになることがあるのか?PERの詳細と目安を徹底解説!

PER(株価収益率)100倍の銘柄は買うべき?PERの考え方を徹底解説!

株価売上高倍率(PSR)とは?株価売上高倍率の詳細と目安を徹底解説!

配当株投資関連の専門用語と重要指標一覧


キンダー・モルガン(KMI)のリスクとリターンに関して

キンダー・モルガンKMIのリスク・リターン評価分析では、投資家が投資決定を下す前に考慮すべきいくつかのポイントを取り上げたいと思います。

同社は現在、いくつかの財務上の課題に直面しており、慎重な検討が求められます。同社は、粗利益率および営業利益率のいずれにおいても長期的な低下傾向が続いており、平均して年率それぞれ1.8%、1.7%の減少が見られます。この傾向は、コスト管理や価格戦略における非効率性が存在し、将来の収益性に悪影響を及ぼす可能性を示唆しています。

さらに、過去3年間における1株当たり売上高の減少は、成長や市場シェアの維持に課題があることを示しています。配当性向は101%と高水準であり、利益以上の配当を支払っていることから、配当の持続可能性に対する懸念が生じます。

加えて、過去3ヶ月間に289,461株のインサイダー売却が行われており、これは短期的な業績見通しに対する信頼が欠けている可能性を投資家に印象づける要因となるかもしれません。さらに、投下資本利益率(ROIC)が加重平均資本コスト(WACC)を下回っている点も、資本の活用効率に課題があることを示しています。

一方で、いくつかの指標にはポジティブな面も見られます。ピオトロスキーのFスコアは7と、財務状態が健全であることを示しており、ベニッシュのMスコアも財務操作のリスクが低いことを示唆しています。しかしながら、アルトマンのZスコアは1.12で「財務危機ゾーン」に分類されており、今後2年以内に財務不安や破綻の可能性があることも警戒すべき点です。

投資家の皆様は、これらのリスク要因とともに財務健全性の指標や将来的な事業運営上の課題を十分に考慮した上で、同社への投資判断を行う必要があるでしょう。


関連用語

財務レバレッジ:企業が負債をどれだけ活用して資産を増やしているかを示す指標。高い財務レバレッジはリスクを伴うが、うまく活用すればリターンが増加する可能性もある。 目安は業界によって異なるが、一般的には2~3倍が理想とされ、高すぎると財務リスクが高まるとされている。

アルトマンのZスコア:企業の財務健全性を評価するための指標で、特に倒産リスクを予測するのに用いられる。複数の財務指標を組み合わせて計算され、Zスコアが低いほど倒産リスクが高いとされる。目安としては、3.0以上は安全、1.8未満は倒産リスクが高いとされている。

ベネッシュのMスコア:企業が財務報告において不正行為や収益の過大計上を行っている可能性を評価する指標。スコアが高いと、財務操作のリスクが高いとされ、-2.22以下で不正の可能性が低いとされている。

ピオトロスキーのFスコア:企業の財務健全性や成長性を評価するための指標で、9つの財務指標に基づいてスコアが付けられる。スコアが高いほど、財務状況が健全であると評価される。目安としては、7〜9は財務状況が非常に健全、4〜6は平均的、0〜3は財務上の懸念がある可能性が高いとされている。

インタレスト・カバレッジ・レシオ(利息カバレッジ比率):企業が稼いだ利益(通常は営業利益)が、支払わなければならない利息に対してどれだけ余裕があるかを示す指標。計算式は、営業利益 ÷ 利息費用。目安としては、3倍以上が望ましいとされ、これは企業が利息の3倍以上の利益を稼いでいることを意味し、財務的な余裕があると評価される。逆に、1倍以下だと、利息の支払いが困難になる可能性があり、財務リスクが高まる。

ベンジャミン・グレアム:現代のバリュー投資の父と呼ばれる著名な投資家であり、経済学者。「証券分析」や「賢明なる投資家」などの著書を通じて、企業の本質的価値に基づいて株を割安に買うというバリュー投資の概念を広めた人物。彼の投資哲学は、リスクを抑えつつ堅実なリターンを得ることを目指し、多くの投資家に影響を与えている。

各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。

関連コラム

配当株投資関連の専門用語と重要指標一覧


キンダー・モルガン(KMI)のインサイダー(内部関係者)による売買に関して

キンダー・モルガンKMI)における過去1年間のインサイダー取引の動向を見ると、継続的に売却が行われており、売却は15件、購入はわずか2件にとどまっています。過去6ヶ月間では9回の売却と1回の購入、直近3ヶ月間においては5回の売却があり、購入は一度も行われていません。このことから、同社の取締役や経営陣の間で弱気な見方が広がっていることがうかがえます。

また、インサイダー保有率は13.25%で、これは経営陣が企業に対して一定の持分を持っていることを示しており、通常は他の株主と利害が一致しやすいとされています。しかしながら、このような売却傾向は、短期的な業績や株価バリュエーションに対する懸念を示している可能性があります。

一方、機関投資家による保有比率は66.42%と比較的高く、大口投資家が同社の長期的な成長性に一定の信頼を寄せていることを示しています。それでも、インサイダーによる売却の多さは潜在的な投資家にとって警戒すべきサインであり、その背景にある理由や、最近の業績、戦略の動向についてさらに詳しく調査することが求められるでしょう。

インサイダー(内部関係者)による売買

(出所:筆者作成)


関連用語

インサイダーによる自社株式の保有比率:企業の経営陣や役員、主要株主(一般的に10%以上の株式を保有する人)が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。インサイダーが多くの株式を保有している場合、彼らが企業の将来に自信を持っていると見なされることが多い。

機関投資家による株式の保有比率:投資ファンドや保険会社、年金基金などのプロの機関投資家が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。機関投資家の保有比率が高いと、その企業が市場で信頼されていると判断されることがある。


キンダー・モルガン(KMI)の流動性に関して

キンダー・モルガンKMI)は、最近の取引量から見ても、高い流動性と活発な取引が行われていることが確認できます。直近営業日では、取引量が22,874,119株に達し、過去2ヶ月間の1日あたり平均取引量である14,318,236株を大きく上回りました。これは、投資家の関心が高まっており、取引の活発化や流動性の向上、さらにはボラティリティの上昇が見込まれる状況を示しています。

また、同社のダークプール指数(DPI)は58.75%となっており、DPIが50%を超えている場合、一般的にダークプールでの買いが多いと解釈されます。ダークプールとは、大口取引が主に行われる非公開の取引所であり、DPIが58.75%であることは、同社における取引のかなりの割合が場外で行われていることを意味し、これは機関投資家による関心の高さや戦略的な買い集めを反映している可能性があります。

このように、取引量の増加とDPIが50%を超えていることから、同社の市場では高い流動性が確保されており、取引の執行がスムーズに行える環境が整っていると考えられます。この状況は、機関投資家はもちろん、個人投資家にとっても、同社への新規参入やポジションの解消を効率的に行う上で好ましい環境です。ただし、取引が活発である分、価格の変動リスクもあるため、その点には注意が必要でしょう。


関連用語

ダーク・プール(私設取引所):株式などの金融商品が公開市場(例えば証券取引所)ではなく、非公開の場で取引されるプラットフォームのこと。ダーク・プールでは取引の内容(注文の価格や数量)が一般に公開されないため、大量の株式を売買する際に市場に与える影響を最小限に抑えることができる。主に機関投資家が利用し、取引の透明性が低い点が特徴。

ダーク・プール指数(DPI):ダーク・プール(私設取引所)内において、同社株式がどの程度取引されているかを示すものであり、注目すべき指標の1つである。


🚀お気に入りのアナリストをフォローして最新レポートをリアルタイムでGET🚀

イアニス・ ゾルンパノス氏はバリュー・インカム関連、並びに、テクノロジー銘柄に関するレポートを毎週複数執筆しており、プロフィール上にてフォローをしていただくと、最新のレポートがリリースされる度にリアルタイムでメール経由でお知らせを受け取ることができます。

さらに、その他のアナリストも詳細な分析レポートを日々執筆しており、インベストリンゴのプラットフォーム上では「毎月約100件、年間で1000件以上」のレポートを提供しております。

そのため、ゾルンパノス氏の最新レポートに関心がございましたら、是非、フォローしていただければと思います!


📢 知識は共有することでさらに価値を増します!

✨ この情報が役立つと感じたら、ぜひ周囲の方とシェアをお願いいたします✨


アナリスト紹介:イアニス・ゾルンパノス氏

📍バリュー&インカム・テクノロジー担当

ゾルンパノス氏のその他の配当関連のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、ゾルンパノス氏のプロフィールページにアクセスしていただければと思います。


インベストリンゴでは、弊社のアナリストが「高配当銘柄」から「AIや半導体関連のテクノロジー銘柄」まで、米国株個別企業に関する分析を日々日本語でアップデートしております。さらに、インベストリンゴのレポート上でカバーされている米国、及び、外国企業数は「250銘柄以上」(対象銘柄リストはこちら)となっております。米国株式市場に関心のある方は、是非、弊社プラットフォームより詳細な分析レポートをご覧いただければと思います。