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07 - 07 - 2024

やや強気
メルカドリブレ
やや強気
同社の営業利益率は2028年までに35%に達する可能性があり、私のDCFモデルを用いた計算に基づけば、同社株式のフェアバリューは2,300ドルから2,500ドルという結果となっている。
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メルカドリブレ(MELI)最新の2024年第1四半期決算まとめと財務&強み(競争優位性)分析と今後の株価予想・将来性

ダニル・ セレダダニル・ セレダ
  • メルカドリブレ(MELI)は、時価総額840億ドルのオンライン電子商取引エコシステムおよびラテンアメリカ最大のフィンテックプラットフォームであり、アルゼンチン、ブラジル、メキシコを含む18か国で運営されている。
  • 同社の2024年度第1四半期決算の結果発表後、ウォール街の予想は全体的に大幅に増加していないが、私の見たところではビジネスは順調に成長している。
  • 同社のフィンテック部門であるMercadoPagoは、運用資産総額とクレジットポートフォリオの大幅な増加により、高品質な成長を牽引している。
  • 同社の営業利益率は2028年までに35%に達する可能性があり、私のDCFモデルによる計算に基づけば、1650ドルの現在の株価水準に対して、同社株価のフェアバリューは2,300ドルから2,500ドルという結果となっている。

メルカドリブレ(MELI)の最新の2024年第1四半期決算に関して

初めてメルカドリブレMELI)について耳にする場合、少し説明させていただきたい。同社は時価総額840億ドルの電子商取引エコシステムであり、ラテンアメリカで最大のフィンテックプラットフォームである。アルゼンチン、ブラジル、メキシコを含む18か国で運営されている。消費者と販売者のすべての取引を安全に処理する安全なショッピングカートソフトウェアを持ち、650万人以上が利用する人気のある選択肢となっている。さらに、MercadoPagoは個人にデジタルアカウント、デビットカード、オンライン決済、保険、貯蓄手段、投資、個人信用枠を提供するだけでなく、商業者への決済処理ソリューションも提供している。

2024年5月2日に発表された最新の2024年第1四半期決算の結果を見ると、メルカドリブレの総売上高は約43億ドルで、前年から36%増加していることがわかる。特に興味深いのは、ブラジルとメキシコで同社の流通取引総額(GMV)が前年比約30%増加したことである。これは「ユーザー体験の向上、戦略的インフラ投資、成功したマーケティング活動」によるものであると、経営陣が決算発表でコメントしている。なぜこれが興味深いかというと、MercadoLibreがすでにラテンアメリカで主要なプレーヤーであるという事実を理解することが重要であり、その上で、わずか一年でこれほどの流通取引総額の成長を遂げたことは驚異的であるからである。

(出典:メルカドリブレのIRより)

※Gross Merchandise Volume (FX-Neutral YoY Growth) :流通取引総額(為替影響を除いた前年比成長率)

※Items Sold (YoY Growth):販売商品数(前年比成長率)

※Unique Active Buysers (MM):ユニークアクティブバイヤー数(百万)

同社の広告部門およびフィンテック部門であるMercadoPagoも顕著な成長を遂げた。特に、アクワイアリング事業(主にクレジットカードやデビットカードの決済処理を提供する業務)、クレジットポートフォリオ、総決済額(TPV)が著しく成長し、総決済額は前年から133%増の19億ドルに達した。総営業利益率は前年同期比で395ベーシスポイント低下し約12.2%となったが、純利益は3億4400万ドルに増加し、前年同期比で71.14%の増加を記録し、コンセンサス予想を大幅に上回った。

しかしながら、同社が第1四半期の結果を発表した後、市場のアナリストの評価はやや複雑であった。次の2024年第2四半期の予想については、上方修正と下方修正がほぼ同程度に行われており、全体として大幅な増加は見られなかった。これは、アナリストがメルカドリブレの第2四半期の報告について特に楽観的ではないことを示唆している。

私の意見では、同社にはアナリストが評価すべき重要なポジティブな要素があると考えている。

まず、営業キャッシュフローの成長軌道には感銘を受けている。純利益からのスムーズな移行であることを考えると、同社の営業キャッシュフローは前年のほぼ2倍になっており、これほどのキャッシュフローの成長を生み出せるということは、同社の運営が非常に効果的であることを示している。これは、潜在的な投資家にとって非常に重要な特性であると私は考えている。

(出典:メルカドリブレのIRより)

※Net cash provided by operating activities:営業活動による純キャッシュフロー

第二に、最近の利益率の低下に対する一部の懐疑的な見方にもかかわらず、同社の投資プロジェクトが実を結び、売上高の成長に寄与していることが明らかになってきている点である。

私は、経営陣がユーザー体験の向上と急成長エリアへの戦略的投資に注力している点を評価している。そして、私は、今後、経営陣が期待しているように、ピークシーズン中に得られる知名度を活用して、より多くのインタラクションを生み出すことができると見ている。加えて、広告事業も全ての市場で着実に流通取引総額を拡大することで成長軌道を維持するはずである。

第三に、メルカドリブレのフィンテック部門であるMercadoPagoは、将来の四半期においてさらに質の高い(すなわち、利益を生む)成長を促進するはずであると見ている。最新のIR資料によると、同社のフィンテック部門の月間アクティブユーザー数(MAU)は前年比で38%増加しており、ブラジルが成長を牽引している。また、アルゼンチンも高インフレの中でMercadoPagoの強力な価値提案によって良好な勢いを示している。総運用資産額は前年比で90%増加し、ブラジルとメキシコは倍増、アルゼンチンも年間および四半期ベースで強い成長を示している。クレジットポートフォリオは前年比で46%拡大し、クレジットカードポートフォリオは特にブラジルとメキシコで132%増加している。ペソの減価によりアルゼンチンのクレジットポートフォリオは前年比で43%減少したが、四半期ベースでは再び成長を始めており、これも良い兆候である。私が見る限り、MercadoPagoはメキシコとブラジルでのアクワイアリング事業とクレジットポートフォリオの成長を通じてその強みを維持することに注力している。したがって、同社のフィンテックセグメントの成長はさらに加速する可能性が高いと見ている。ラテンアメリカの特定の地域での大きなマクロ経済の課題が同社の成長を阻止していない点も評価でき、マクロ経済環境の安定化がさらなる成長を促進する可能性があると考える。

第四に、メルカドリブレはMeli Másプログラムを通じて物流ネットワークを強化し、効率性を向上させることを目指しており、特に、ラテンアメリカ最大の電子商取引プラットフォームは配送能力の強化を目指している。私の見解では、物流プロセスの最適化を通じて同社の利益率も数四半期にわたって改善されるはずである。これらの利益率が安定することで、営業利益の成長が加速することを期待でき、それはまだ株価に織り込まれていない可能性が高いと見ている。

また、公平を期すために、すべてのウォール街のアナリストが同じ見解を持っているわけではないことを指摘しておきたい。Jefferiesのアナリストは2024年5月にメルカドリブレに「買い」の評価を付け、同社の売上高が2021年のピーク時と比較して2024年末までに3倍になると予測している。Jefferiesは目標株価を2,000ドルに上方修正し、2024年の収益予測を10%、2026年の予測を15%引き上げている。

まずは市場のコンセンサスに注目し、今後数年間の最も現実的な展開を反映するよう調整していきたい。売上予測のみを用い、それを最終的な基準とする。なぜなら、このアプローチは保守主義の原則に沿っており、同社は2012年以来売上予測を外したことが一度しかないからである。

EBITマージンについては、予測期間(2028会計年度末)までに35%のマージンにスムーズに移行すると予想している。他の主要な数値、例えばD&A(減価償却費および償却費)の売上に対する比率やCAPEXの売上に対する比率は、歴史的な標準に沿ったものとなる。また、モデル内の実効税率(Tax Rate)は徐々に過去の水準(25%)に戻る予定である。以下は現段階での計算結果である。

(出典:FinChat

Revenue:売上高

Revenue % Chg:売上高増加率

EBIT:利払前・税引前利益

EBIT Margin:EBITマージン

Tax Rate:実効税率

NOPAT:利息控除前税引後営業利益

NOPAT Margin:NOPATマージン

D&A:減価償却費および償却費

D&A / Revenue:減価償却費および償却費 / 売上高

Capex:設備投資

Capex / Revenue:設備投資 / 売上高

Chg NWC:運転資本の変動

Chg NWC / Revenue:運転資本の変動 / 売上高

Unlevered FCF (UFCF):アンレバードFCF

UFCF % Chg:UFCF増加率

PV of UFCF:UFCFの現在価値

Sum of PV of UFCF:UFCFの現在価値の合計

DCF評価モデルにおける割引率の計算部分に移ると、メルカドリブレの現在の借入金利を約8%と仮定し、4.39%のリスクフリーレートとの大きな乖離は地理的リスクによるものとする。さらに、市場リスクプレミアム(MRP)は通常の5%を上回り7.9%とする。これは、投資家が高いリターンを得るためにアメリカ以外の株式を選択しなければならないという理論的な期待があるためである。その結果、WACC(加重平均資本コスト)は15.4%となる。これは高すぎるように思えるかもしれないが、この会社はまだ急成長しており、大きなリスクが伴うことを忘れてはならない。

次に難しい仮定となるのは、ターミナルバリューの計算である。私が使用しているFinChatのテンプレートモデルでは、EV/FCF比率(企業価値 / フリー・キャッシュフロー比率)のみ使用可能であり、その指標によると、同社は現在非常に割安に見える。COVID期間が長期的な視点を歪めているが、現在の15倍の倍率(今日のアマゾン(AMZN)は44倍)では、昨年のうちにバリュエーション倍率が大幅に下落したことを示している。そして、私はこの倍率が同社の利益率の改善とともに上昇すると考えている。利益率が改善されれば、FCFの見通しがより明確になり、市場がそれを評価するはずである。したがって、2028会計年度末までにEV/FCF倍率を20倍に設定している。

これらの予測から、同社の株式が割安であると見ている。足元、株価が20%以上上昇したにもかかわらず、現在の割安度は50.5%に達しており、これはかなり水準である。以上を踏まえると、DCF評価モデルにおける目標株価は2,400ドル近く(Implied Share Price:2,395.5)となり、Jefferiesの5月の予想である2,000ドルを大きく上回ることを示唆している。

(出典:FinChat

Exit Multiple EV/FCF:企業価値 / フリー・キャッシュフロー倍率の出口倍率

Terminal Value:ターミナルバリュー

PV of Terminal Value:ターミナルバリューの現在価値

Cumulative PV of UFCF:アンレバードFCFの累積現在価値

Net Debt:純負債

Equity Value:株式価値

Shares Outstanding:発行済み株式数

Implied Share Price:推定株価

Current Share Price:現在の株価

Implied upside / (Downside):推定上昇率(下落率)

したがって、私の結論にご賛同いただけるのであれば、同社のEBITマージンに関する私の仮定にも同意いただけるはずである。これに対して異なる見解を持っているならば、同社は長期投資としてはリスクが高すぎるかもしれないが、いずれにせよ、投資判断を下す前には、自分自身で十分な調査を行うことをお勧めする(これは常に行うべきことである)。

メルカドリブレ(MELI)に対する私の仮説が間違っている可能性は?

本日の仮説に対するいくつかの非常に重要なリスクを無視すべきでないことを認める。まず、特にアルゼンチンペソが減価する場合、為替変動がメルカドリブレ(MELI)の財務結果に影響を与え、利益率の拡大に対する私の期待を揺るがす可能性がある。同様に、借り手がローンの返済に苦労する場合、同社の貸付業務はコストの増加と信用品質の悪化というリスクに直面する可能性がある。また、その他の要因として、支払いセクターにおける激しい競争が顧客獲得に対する支出の増加を必要とし、成長が遅くなる可能性がある。これにより、私が上述のDCF(ディスカウントキャッシュフロー法)において仮定したコンセンサス売上高とEBITの数値が結論を完全に支持しない可能性がある。

正直に言うと、私の評価モデルにおける最大のリスクは、同社の将来の営業利益率に関する仮定から来る。もし、2028年までに利益率が35%ではなく20%で安定すると仮定した場合、他のすべての要因が同じままであれば、同社の割安性は消えるであろう。これが、利益率が2028年末までに20%にピークを迎えると仮定した場合の公正価値(フェアバリュー)計算の結果であり、Implied Share Price(推定株価)は、上述の2,395.5から1,600.6へと大幅に下落することとなり、これは現在の株価水準と同じ水準となる。

(出典:FinChat

メルカドリブレ(MELI)への結論

上記のリスクにもかかわらず、私はメルカドリブレ(MELI)の戦略的軌道と最近の四半期における事業の勢いに非常に楽観的である。同社はラテンアメリカ市場を可能な限り多く獲得するために多大な投資を行っている。環境は非常に競争的であるが、最近の成長率から判断すると、同社はほとんどの分野で目標を達成しているように見える。これは長期的な成長見通しにとって非常に重要である。

私は、同社がキャッシュフローのプラスを維持しており(営業キャッシュフローが急速に拡大している)、その規模にもかかわらず高い成長率を示している点を評価している。さらに、ラテンアメリカは今後数年間で大幅な成長が期待されており、同社がそのプロジェクトを最大化するための堅固な基盤を提供している。私のDCF評価モデルによると、同社は現在50.5%の割安であり、この大幅な割安は無視できないものであるが、いくつかのリスクを伴う仮定に基づいていることを強調したい。私は、2028年末までに同社が35%の営業利益率を達成できると考えている。この急速な利益率の拡大が他の要因の比較的保守的な仮定とともに実現すれば、同社の株価は次の数四半期で2,300ドルから2,500ドルに達する可能性がある。

また、私のテクニカル分析では、同社に対して強気の見通しを示している。さらに同社株式の季節性に関しては、過去10年間で7月が最も利益を上げた月であったため、今年の7月も好調であることが期待される。この短期的な見通しは長期的な見解と補完されている。週足チャートでは重要な抵抗レベルを突破する必要があるが、52週移動平均線をしっかりと上回っているため、全体的なトレンドは強気のままである。

(出典:TrendSpider

以上より、私は、足元のメルカドリブレ長期上昇トレンドが続くと見ており、そのため、同社株式の今後の見通しに対して「強気」で見ている。

Thank you for reading!

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アナリスト紹介:ダニル・ セレダ

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