強気メタ・プラットフォームズPart 2:メタ・プラットフォームズ(META)のAI投資は順調?生成AI「Llama」のオープンソース化戦略と将来性に迫る!

- 本稿、Part 2では、メタ・プラットフォームズ(META)のAI投資、自社の生成AIモデルであるLlamaプロジェクトのオープンソース化を含めた収益化の可能性、並びに、その将来性について詳しく解説していきます。
- メタ・プラットフォームズのLlamaプロジェクトは、1000億ドル以上の資金規模に対応する収益化戦略が必要です。そのためのアプローチとして、SaaSや企業向けソリューションが考えられます。
- 同社はLlamaを消費者向けアプリケーションや企業向けソリューションに活用し、開発者エコシステムを育成しながら、ガバナンスやアライメントサービス、強化された機能を通じて収益を得ることができます。
- 収益化の選択肢としては、アルファベットのAndroidバンドルを模倣したり、Databricksやパランティア・テクノロジーズのような戦略を採用する、もしくは、新しいアプローチを模索することが考えられますが、初期の直接的な収益は企業セグメントから得られる可能性が高いでしょう。
- メタ・プラットフォームズは、APIベースの「Llama-as-a-Service」を提供し、超大規模モデルへの手頃なアクセスを企業に提供することで、オープンソースモデル市場を統合することもできるかもしれません。
※「メタ・プラットフォームズ(META)自社LLM「Llama」のオープンソース化の狙いは?他社のLLMと徹底比較!」の続き
メタ・プラットフォームズ(META)のLlamaの収益化とオープンコアの可能性
前回のメタ・プラットフォームズ(META)に関するレポートでは、LlamaをAndroidに例えていましたが、プロジェクトの資金が100億ドルを超えた今、この比較はあまり適切ではなくなっています。必要な資金がさらに1,000億ドルを超えると予想されている中で、メタ・プラットフォームズは早急にLlamaの収益化(マネタイズ)を進める必要があるでしょう。
簡単な方法として、Llamaをインフラストラクチャ・アズ・ア・サービス(IaaS)として提供し、消費者向けのアプリケーションをソフトウェア・アズ・ア・サービス(SaaS)として位置づけることが考えられます。これらのアプリケーションには、レコメンデーションエンジンや広告プラットフォームが含まれ、これが主要な収益源になる可能性があります。さらに、メタ・プラットフォームズはAIエージェントを開発しており、ユーザー向けアプリの利便性を向上させ、広告主がキャンペーンを最適化できるようにすることで、広告費の増加を狙っています。
この二本柱の戦略により、複数の収益源が生まれる可能性があります。Llamaをオープンソース化することで、アルファベット(GOOG/GOOGL)のAndroidのように開発者コミュニティを活性化させることができますが、メタ・プラットフォームズはプレミアムサービスやエンタープライズ向けの機能を通じて収益化をコントロールすることも可能です。同社はすでに主要なクラウドプロバイダーと提携しており、LlamaはApache 2.0ライセンスを使用していますが、200万ユーザーを超えるベンダーはメタ・プラットフォームズと商業利用権について交渉する必要があります。
そして、下記の通り、メタ・プラットフォームズには収益化の選択肢が主に3つあります。
1. アルファベットがAndroidにGMSをバンドルするように、Llamaをバンドルする。
2. オープンコア2.0戦略を採用し、Llama自体はオープンソースにしながら、エンタープライズ(企業)向けの重要なコンポーネントをクローズドソースのSaaSとして提供する。
3. その他の新たなアプローチを模索する。
消費者向けには、開発者にメタ・プラットフォームズの広告プラットフォームの使用を義務付けることが考えられますが、アルファベットのGMSに相当する収益モデルを見つけることがカギとなります。エンタープライズ向けには、Llamaのアドオンやカスタマイズされたバージョンを販売することも可能です。これは、DatabricksやモンゴDB(MDB)が採用しているモデルに似ています。
さらにメタ・プラットフォームズは、Llamaを活用したアプリケーション向けに安全性やガバナンスのツールを提供し、AIモデルがさらに複雑化する中で、将来的な収益を狙うことができます。トレーニングコストが増加する中で、Llamaの収益化は今後数年間の重要な課題となるでしょう。
シナリオ:インテリジェンス(知能)の爆発
自動化されたAIの研究が進むことで、アルゴリズムの進歩が加速し、1年以内に計算能力が5桁以上も向上する可能性があります。インテリジェンスの爆発が終わる頃には、AIシステムは人間をはるかに超える知能を持つようになっているでしょう。
関連用語
Llama: Meta(旧Facebook)が開発した大規模言語モデル(LLM)で、自然言語処理のタスクに利用される。
オープンコア: 基本機能は無償のオープンソースとして提供され、追加の機能やサポートが有償となるビジネスモデル。
オープンソース: 誰でも自由に利用、改良、再配布できるようにソースコードが公開されているソフトウェア。
クローズドソース: ソースコードが非公開で、利用者が改変や再配布できないソフトウェア。
インフラストラクチャ・アズ・ア・サービス(IaaS): 仮想サーバーやネットワークなどのインフラをオンラインで提供するクラウドサービス。
ソフトウェア・アズ・ア・サービス(SaaS): ソフトウェアをクラウド経由で提供し、インストール不要で利用できるサービス形態。
Apache 2.0: オープンソースソフトウェアのライセンスの1つで、商用利用や再配布が許可されている。
GMS: Googleモバイルサービスの略で、Googleのアプリやサービスを提供するモバイルプラットフォームの一部。
アドオン: ソフトウェアに追加して機能を拡張するプラグインやモジュール
AIの今後の展望とメタ・プラットフォームズ(META)の将来性
AIが近い将来、AGI(汎用人工知能)レベル5に到達することはないだろうという見方が一般的です。もし到達した場合、人間の労働を完全に代替することになり、メタ・プラットフォームズ(META)のオープンソース戦略も変わるかもしれません。小規模なモデルは引き続きオープンソースとして公開する可能性がありますが、最も優れたモデルは非公開にするでしょう。他の企業も、これほど強力なモデルを無償で提供することはなくなると考えられます。
収益の面では、現在の消費者向けAIの標準料金はChatGPT Plusに代表される月額20ドルです。もしメタ・プラットフォームズが個人向けエージェントをユーザー4億人に月額10ドルで提供した場合、総市場規模(TAM)は4800億ドルに達します。コンバージョン率が1〜2%であれば、収益は約48億〜96億ドル程度になるでしょう。広告ベースで収益化を図る場合、北米やヨーロッパのユーザー1人当たりの広告収入(ARPU)を200ドルから400ドルに倍増させる可能性もありますが、発展途上国では収益性が不透明です。
そして、Llamaを本格的に収益化するためには、企業向けにAPIアクセスを提供することが重要です。メタ・プラットフォームズは大規模なモデルを手頃な価格で提供することで、あらゆる規模の企業にとって魅力的な選択肢となるでしょう。例えば、Llama 3.1 405Bモデルの推論にはH100が2基必要で、そのコストは約10万ドルです。今後、より大規模なモデルを推論する場合、このコストは100万ドルにまで上昇するかもしれません。APIベースで「Llama-as-a-Service」を提供することで、企業は自社でモデルをホストする必要がなくなり、非常に魅力的な選択肢となるでしょう。メタ・プラットフォームズは専用の推論チップを使うことで、計算コストを10倍に上乗せしても、エヌビディア(NVDA)のGPUを使ったパブリッククラウドよりも安価に提供できるでしょう。
大規模言語モデルの利用動向を正確に予測することは難しいですが、Llamaの人気は高まっており、メタ・プラットフォームズはマルチモーダル対応や次世代アーキテクチャで競合をリードし、オープンソースモデル市場で優位に立つ可能性があると見ています。
関連用語
Llama 3.1 405Bモデル: メタ・プラットフォームズが開発した大規模言語モデル(LLM)「Llama」のバージョンで、4050億(405B)のパラメータを持つ非常に大きなAIモデル。言語処理の高度なタスクに使用される。
H100: エヌビディアの高性能GPU(グラフィックス処理ユニット)で、AIモデルの学習や推論など、大量の計算処理が必要な作業に使用される。
推論チップ: AIモデルが学習した内容をもとに、実際のタスク(推論)を処理するための専用の半導体チップ。通常のCPUよりも効率的にAIの計算を行える。
GPU: グラフィックス処理ユニットの略で、主に画像処理に使われますが、AIや機械学習の大量計算にも利用される。
パブリッククラウド: インターネットを通じて不特定多数のユーザーに提供されるクラウドサービスで、データ保存や計算リソースをオンデマンドで利用できる(例:AWS、Google Cloud)。
マルチモーダル: 複数のデータ形式(テキスト、画像、音声など)を統合して処理できるAIモデルのこと。
メタ・プラットフォームズ(META)とLlamaの将来性に対する結論
メタ・プラットフォームズ(META)のLlamaモデルはオープンソースAI市場を牽引しています。AGI(汎用人工知能)の将来は不透明ですが、メタ・プラットフォームズはサブスクリプションや広告、企業向けAPIを活用して収益化が可能でしょう。コスト効率の良いAPI提供と強力な研究基盤により、リードを維持することが期待されますが、LLMの収益化や市場の動向はまだ不確実な部分があるようにも見えます。
アナリスト紹介:コンヴェクィティ
2019年に設立されたコンヴェクィティは、AI、サイバーセキュリティ、SaaSを含むエンタープライズ(企業)向けテクノロジーを扱うテクノロジー企業に関する株式分析レポートを提供しています。セールス・チャネルや分析対象企業の経営陣との関係に依存する投資銀行や証券会社のアナリストとは異なり、対象企業のプロダクト、アーキテクチャー、ビジョンを深掘りすることで投資家に付加価値の高い、有益な情報の提供を実現しています。
当社のパートナーであるジョーダン・ランバート氏とサイモン・ヒー氏は、「最新のテクノロジーに対する深い洞察」、「ビジネス戦略」、「財務分析」といったハイテク業界におけるアルファの機会を引き出すために不可欠な要素を兼ね備えております。そして、特に、第一線で活躍する企業やイノベーションをリードするスタートアップ企業を含め、テクノロジー業界を幅広くカバーすることで、投資家のビジビリティと長期的なアルファの向上に努めています。
ジョーダン・ランバート氏 / CFA
ランバート氏は、テクノロジー関連銘柄、および、リサーチとバリュエーションのニュアンスに特別な関心を持つ長年のハイテク投資家です。ランバート氏は、CFA資格を取得した後、2019年10月にコンヴェクィティを共同設立しており、新たな技術トレンド、並びに、長期的に成功する可能性が高い企業を見極めることを得意としています。
サイモン・ヒー氏
ヒー氏は、10年以上にわたってテクノロジーのあらゆる側面をカバーしてきた経験を生かし、テクノロジー業界における勝者と敗者を見極める鋭い洞察力を持っています。彼のテクノロジーに関するノウハウは、ビジネス戦略や財務分析への理解と相まって、コンヴェクィティの投資リサーチに反映されています。コンヴェクィティを共同設立する以前は、オンラインITフォーラムでコミュニティ・マネージャーを務め、ネットワーク・セキュリティ業務に従事していました。ヒー氏は、ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンを卒業し、商学士号を取得しております。
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