【Part 2:テクノロジー】マンデードットコム(MNDY)のmonday Work Managementとは?
コンヴェクィティ- 本編は、注目の米国テクノロジー企業であるマンデードットコム(MNDY)の将来性を詳細に分析した長編レポートとなり、10の章で構成されています。
- 具体的には、マンデードットコムの最新の決算分析、競争優位性、4つの主要製品カテゴリーの進展、AI開発、そして最後にバリュエーション分析について詳しく解説していきます。
- そして、本稿【Part 2】では、同社の2013年の創業時に初めてリリースした主力製品であるmonday Work Managementに関して詳しく解説していきます。
- monday Work Managementは、ノーコードとローコードの柔軟な機能を備え、中小企業から大企業まで幅広い顧客に支持されており、競合他社に対して優位性を持つ評価を獲得しています。
- 同社は、エンタープライズ市場での地位を確立するために、基幹システムとの統合やAIによる自動化機能の強化を進め、システム・オブ・レコード(SOR)への進化を目指しています。
- mondayDBのような新機能は、大規模ワークフローを管理する能力を向上させ、SPM(戦略的ポートフォリオ管理)ツールとしての地位を築く可能性を示唆しています。
※「【Part 1:テクノロジー】マンデードットコム(MNDY)の将来性は有望?最新の2024年第3四半期決算分析を通じて、今後の株価見通しに迫る!」の続き
前章ではマンデードットコム(MNDY)の最新の2024年第3四半期決算発表の詳細な分析、並びに、同社のようなワークマネジメントプラットフォームが人気な理由を詳しく解説しております。
本稿の内容への理解をより深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上にて、前章も併せてご覧ください。
monday Work Managementとは?
monday Work Managementは、マンデードットコム(MNDY)が2013年の創業時に初めてリリースした主力製品です。
レビューサイトG2での評価は4.7と高く、ClickUpと同等でありながら、スマートシート(SMAR)の4.4や次世代の「Excelキラー」として注目されるAirtableの4.6を上回っています。
この高い評価は、中小企業(SMB)から大企業に至るまで幅広い層に受け入れられていることを示しており、マンデードットコムがClickUpやAirtableといった新興競合や、老舗のスマートシートに対して優位に立てる競争力を持つことを物語っています。
12,664件のMondayワークマネジメントに関するレビュー
(出所:G2.com)
このプラットフォームは、ノーコードおよびローコードの機能を備えており、ユーザーがワークフローを自動化したり、多様な業界(金融や建設など)に対応するアプリケーションを構築したりすることを可能にしています。
ClickUpが主に中小企業向けに支持を集めている一方で、monday Work Managementはその分野で互角の競争を繰り広げるだけでなく、スマートシートを上回る評価を得ています。
これにより、使いやすさと機能性のバランスを追求した設計の強みが際立っています。
特に、既存の自動化ツールを活用してルーチン業務を効率化する一方、プロジェクト全体や企業レベルでの調整機能も提供している点が、大きな強みといえます。
このように、monday Work Managementは柔軟性と実用性を兼ね備えた、バランスの取れたプラットフォームとして高く評価されています。
マンデードットコムの経営陣は、プラットフォーム上で部門間をまたぐワークフローを増やすことに注力しています。
これは、組織内での定着度を高める重要な指標と考えられているためです。
現在、同社は日々3,300万件もの部門間ワークフローが稼働しているとしています。
この数値は、今後同社が組織内で欠かせない存在となり、代替が難しくなることを示す好材料と言えるでしょう。
また、monday Work Managementには、広範なWork OS(企業やチームが仕事を効率的に管理し、コラボレーションを促進するためのプラットフォーム)の一部として特定のチームのニーズに応える「monday Marketer」などの製品も含まれています。
このモジュール型のアプローチにより、柔軟性を確保しながらも、使いやすさを保ったままさまざまな業務に対応できる設計が特徴です。
現在、同社ユーザーのうち12%が人事管理、14%が財務管理、21%がサービスチケット管理にプラットフォームを活用しています。
特にITサービスのチケット管理としての人気が高まったことを受け、同社はこの需要に応える新製品「monday Service」を開発しました。
この製品は現在ベータ版として年末まで試験運用が行われています。
主要なビジネスワークフローを支える
プラットフォーム全体で新機能を迅速に展開していることは、マンデードットコムの高い革新力を物語っています。
この背景には、自社ソフトウェアを自ら活用する「ドッグフーディング」の取り組みが一役買っています。
ワークマネジメントプラットフォームであるマンデードットコムは、その汎用性の高さから、ほぼすべての部門で利用可能であり、この実践に非常に適した製品です。
多くのSaaS企業がドッグフーディングを通じて市場の動きを迅速に把握していますが、全社員が活用できるワークマネジメントほど「ドッグフーディング」に適した分野は他にないでしょう。
例えば、CRMベンダーが自社のCRMを利用する場合、その使用範囲は主に営業部門に限定されます。
同様に、人事管理やマーケティングツールを提供するSaaSベンダーも利用範囲が特定部門にとどまるケースが一般的です。
しかし、ワークマネジメントの未来を担う存在と期待されているマンデードットコムにも、真のエンタープライズ市場での地位を確立するための重要な課題があります。
それは、「システム・オブ・レコード(SOR)」へと進化することです。
セールスフォース(CRM)やオラクル(ORCL)、SAP(SAP)、ワークデイ(WDAY)といった従来のプラットフォームがエンタープライズ市場をリードしている理由は、それらがSORとして機能している点にあります。
SORとは、信頼性が高く検証されたビジネスデータを保管する中核的なシステムを指します。
これらのシステムは、堅牢な統合機能、データ検証ルール、監査履歴によって支えられており、財務データ、営業パイプライン、従業員記録などの重要情報を正確かつ信頼性高く管理します。
一方で、現時点のマンデードットコムはSORとしての要件を満たしていません。
プロジェクトの締め切りやコスト見積もり、営業データなどの入力を手動で行う必要があるため、信頼性のある「唯一の情報源」としての役割が限定的です。
この柔軟性はマンデードットコムの大きな強みである一方、誤りが発生するリスクも伴うため、厳密で検証済みのデータを必要とするエンタープライズ市場において課題となっています。
同社が「システム・オブ・レコード(SOR)」へと進化するためには、以下の課題に取り組む必要があります。
1. より高度な統合
ERP、CRM、会計システムなどの基幹システムとシームレスに接続する機能を構築することが重要です。
これらのシステムから信頼性の高い検証済みデータを取得することで、手動入力への依存を減らし、プラットフォームの出力データに対する信頼性を向上させることが可能になります。
現在、マンデードットコムは約80,000件の統合を通じてサードパーティソフトウェアからデータを取り込んでいますが、より重要なビジネス基幹システムへの統合が求められます。
2. 自動化とAIの活用
高度なAI機能を導入することで、データの不整合を検出し、エラーを警告または修正することができます。
これにより、データの正確性と信頼性が向上します。
また、自動化技術を活用することで、データフローがさらに効率化され、人為的なミスのリスクを最小限に抑えることが可能です。
3. ワークフローの拡張
企業の基幹システムと直接連携する新しいワークフローを開発することも重要です。
これにより、すべての統合プラットフォーム間で一貫性のある更新が保証され、同社の実用性と信頼性が向上します。
このような機能の拡充により、企業にとって欠かせないSORとしての地位を築くことができます。
これらの課題をクリアすることで、マンデードットコムはさらに競争力を高め、エンタープライズ市場での存在感を強化することが期待されています。
mondayDBは、プラットフォームのバックエンドを刷新したもので、エンタープライズ規模のニーズに応えるための重要な一歩です。
ストレージと計算処理を分離する設計により、mondayDBは1つのボードで数十万件のアイテムを処理可能にします。
これにより、大規模で複雑なワークフローを扱う大企業がミッションクリティカルなシステムを管理する上で欠かせない要件を満たします。
また、このサーバー重視のアーキテクチャにより、動的なフィルタリング、集計、並べ替えといった可変データの高度な操作が可能になります。
こうした機能は、企業が信頼するSOR(システム・オブ・レコード)に求められる要件と密接に一致しており、mondayDBはスケーラビリティやパフォーマンス、柔軟性といった課題を解決するプラットフォームとして、同社が上位市場での競争力を強化するための鍵となっています。
さらに、mondayDBは同社が「ファーストパーティSOR」へ進化する可能性も示唆しています。
これは、同社がプラットフォーム内で生成されるデータの信頼性の高い主たるデータソースとして機能しつつ、外部システムとの統合を通じて企業全体の記録と整合性を保つ役割を果たすことを意味します。
このように、「システム・オブ・エンゲージメント(業務活用システム)」としての役割と「信頼できるSOR」としての役割を兼ね備えることで、同社の価値は大幅に高まり、エンタープライズ市場での地位をさらに強固なものにするでしょう。
同社がSOR(システム・オブ・レコード)へと進化すれば、セールスフォースやSAPといった老舗大手企業に挑むと同時に、その代名詞である使いやすさと柔軟性を維持することが可能になります。
mondayDBのような機能開発の進展に加え、堅調な成長率、高いフリーキャッシュフローマージン、控えめなストックベース報酬といった強みは、同社がエンタープライズソフトウェア市場に革新をもたらす潜在力を持っていることを示しています。
しかし、重要な課題は残されています。
マンデードットコムはエンタープライズ向けの取り組みを優先してこれらの課題を解消するのか、それとも「システム・オブ・エンゲージメント」(利用促進システム)としての立場を維持するのか。その方向性は、統合、自動化、ワークフローの進化にどう対応するかによって決まるでしょう。
さらに、従業員のオンボーディングといった特定の用途に対応するワークフローを導入したことは、同社がSORへの進化を目指す最初の一歩である可能性を示しています。
(出所:monday Work Management)
中でも最も成熟した製品であるmonday Work Managementは、大企業の顧客層から特に支持を集めており、年間収益10万ドル以上を生み出す顧客の増加に大きく貢献しています。
2022年の最大顧客は7,000シートを使用していましたが、2023年には25,000シート、そして現在では80,000シートに達しています。
これは、マンデードットコムがエンタープライズ市場で急速に受け入れられていることを物語っています。
他の製品が成熟し、エンタープライズ対応が進めば、その地位はさらに盤石なものとなるでしょう。
エンタープライズ(企業)顧客の増加
マンデードットコムが、ボトムアップ型のセルフサーブモデルから、エンタープライズの要求に迅速に対応するトップダウン型のGTM(Go-to-Market)モデルを併せ持つ形へと変革を遂げていることは、非常に注目すべき点です。
これは簡単なことではなく、クラウドフレア(NET)が上位市場への拡大で苦戦している事例を見ても明らかです。
プロダクト主導型成長(PLG)を採用するベンダーの場合、基本的にはセルフサーブ体験をよりスムーズでシームレスなものにすること——例えば、新規ユーザーのオンボーディングや機能探索——に注力します。
しかし、突然エンタープライズユーザーから多くの機能リクエストが寄せられるようになると、プロダクトチームがプラットフォームをシンプルで使いやすい状態に保とうとする中で、内部的な摩擦が生じることになります。
そのため、ボトムアップ型セルフサーブをDNAとする企業が、上位市場に進出し、特定のエンタープライズ要件に応えるのは非常に困難です。
さらに、SMB(中小企業)やフリーランスからの支持を維持しつつ、エンタープライズ市場の大きな機会を活用するという相反する課題を融合させるのは、なお一層難しいことです。
逆に、トップダウン型企業がボトムアップ型に対応しようとするときにも同様の課題が生じます。
これは、オクタ(OKTA)の事例でも明らかです。
この点から投資家が学ぶべきことは、マンデードットコムの経営陣(CXOチーム)が、変革や継続的なイノベーションを非常に効果的にリードしているという点です。
また、同社には、企業の成長に資するイノベーションと組織変革を積極的に受け入れる素晴らしい企業文化が根付いていることも明らかです。
以下のスクリーンショットは、マンデードットコムの「Elevate 2024」イベントでオーストラリア・マクドナルドのディレクターであるマシュー・キャリー氏が行ったプレゼンテーションから抜粋したものです。
同氏は、2023年のFIFA女子ワールドカップに関連するマクドナルドのキャンペーンを管理するプロジェクト管理ソフトウェアとしてマンデードットコムを採用しました。
このスクリーンショットに表示されているボードは、マンデードットコムが低レベルのプロセスから高レベルの視覚的統合まで、包括的なボトムアップ型の調整で優れていることを如実に示しています。
このボードは左側のサイドバーに表示された複数の低レベルのボードとシームレスに連携しており、経営者やマネージャーが高レベルの進捗状況を一目で把握しながら、サブプロジェクトやタスクの詳細にまで掘り下げて確認できる仕組みを実現しています。
(出所:monday Work Management)
2つ目の画像では、キャリー氏とそのチームが作成した低レベルのプロセス自動化が紹介されています。
この自動化によって、ワークフローの手動作業が大幅に削減されました。
具体的な成果として、月に20,000件のメール削減と1,224時間(フルタイム従業員7人分に相当)の作業時間削減が達成されています。
(出所:monday Work Management)
改めて強調したいのは、マンデードットコムのように、高度にカスタマイズされたワークフローの自動化を実現しつつ、経営者やマネージャーが全体像を直感的に把握できるような深みを持つワークマネジメントプラットフォームは他にないという点です。
このことは、同社が最終的にはサービスナウ(NOW)などと競合するSPM(戦略的ポートフォリオ管理)ツールとしての地位を築く可能性を示唆しています。
その兆候の一つが、新たに導入されたリソースプランニング機能であり、これはSPMにおいて非常に重要な要素です。
(出所:monday Work Management)
次章では、同社の注目の製品の1つであるmonday CRMについて詳しく解説していきます。
※続きは「【Part 3:テクノロジー】マンデードットコム(MNDY)のmonday CRMとは?」をご覧ください。
さらに、その他のマンデードットコム(MNDY)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、マンデードットコムのページにてご覧いただければと思います。
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