2024年第2四半期の半導体業界の振り返り: ヴァンエック半導体ETFの+14%のリターンと今後の注目の半導体銘柄を解説
ダグラス・ オローリン- 本稿では、2024年第2四半期の半導体セクター、並びに、当四半期における自身のお気に入りのアイデアとレポートを振り返っていきたい。
- 2024年第2四半期の主な記事には、エヌビディア(NVDA)に関する考察や半導体業界における設備投資の動向、仮想通貨データセンターに関する新たな投資機会等が含まれる。
- 2024年第2四半期の半導体業界では、ヴァンエック半導体ETF(SMH)が14%のリターンを記録し、特にアルファ・アンド・オメガ・セミコンダクター(AOSL)が素晴らしいパフォーマンスを上げている。
- 自動車関連の半導体銘柄のパフォーマンスは依然として厳しいが、消費者向けおよびネットワーキング関連の半導体分野には今後の改善が期待される。
はじめに
これは私の四半期ごとの記事であり、2024年第2四半期の半導体セクターを振り返りながら、お気に入りのアイデアをより具体的にまとめ、いくつかの半導体用語を解説していきたい。
2024年第2四半期の半導体業界のパフォーマンス
まずはパフォーマンスから。2024年第2四半期、ヴァンエック半導体ETF(SMH)は14%のリターンを記録し、半導体業界において歴史的に見ても最も優れた四半期の一つとなった。今四半期のトップはアルファ・アンド・オメガ・セミコンダクター(AOSL)で、エヌビディア(NVDA)のソケットを獲得したという噂がある。
テーマとして、今四半期の最大の敗者と勝者について話していきたい。今回もまた、自動車関連が注目されている。ウルフスピード(WOLF)、インディー・セミコンダクター(INDI)、モービルアイ・グローバル(MBLY)、STマイクロエレクトロニクス(STM)、オン・セミコンダクター(ON)のパフォーマンスは引き続き厳しい環境にあり、上記のグラフにおいて下位に位置しており、その原因は依然として続く自動車セクターへの悲観論にある。ただし、サイクルの反対側に目を向ける時が来ており、つまり、これから先は同セクターは悪化するのではなく、改善していくことと見ている。
そして、私が最も強気だと感じる分野は、株価がまだ反応していない消費者向けおよびネットワーキング関連である。驚くことではないが、私のアイデアのうち二つは特にネットワーキングについて論じている。
また、最近、消費者向けに強気な理由と、AIに対して慎重になり始めている理由についても執筆している。AIが終わったわけではなく、一息つく段階にあると考えている。エヌビディアや他のAIインフラ関連銘柄で静けさが見られるのはその一例である。
では、私のコンテンツの視点から今四半期を振り返ってみよう。
2024年第2四半期の半導体関連コンテンツの概要
まず初めに、今年の最高の記事はおそらく「エヌビディア / NVDA:注目の半導体銘柄が目指すシステムレベルのスケーリングへの考察と同社の強み・将来性」に関する記事であろう。この記事は話題となり、私も誇りに思っている。まだ読んでいないなら、ぜひ読んでほしい。
しかし、今四半期には全く異なる斬新なアイデア(マックスリニア:MXL)も紹介している。今後、この企業に関するアップデートと最近の私の考えについて議論する予定である。
今四半期のもう一つの重要なレポートは、設備投資に関するものであった。このハイレベルな追跡ツールは、AIエコシステムの支出状況を理解するために不可欠である。私の見解では、今四半期の設備投資ガイドラインは、基本的な進展が続くことを示している。しかし、株価の動きは別の話であろう。
一方で、今四半期の決算報告は、少し退屈な内容であったように感じる。市場は依然として同様のストーリーを好んでいるように思われる。しかし、「仮想通貨データセンターの純資産価値:AI急成長に伴うデータセンターや電力供給への影響と仮想通貨マイナーへの新たな投資機会」の記事では興味深いアイデアを紹介しており、これらのアイデアは今後も有効である可能性があると見ている。
現在、季節的に株式市場がスローになる夏のシーズンに突入している。今年は株式市場にとって良い年であり、この傾向が続くことを期待している。さて、最近目にするいくつかの半導体関連の専門用語について説明が必要だと思うので、こちらで取り上げていきたい。
半導体関連用語解説
半導体の複雑さを説明し、簡略化するために、ここではいくつかの基本的な概念について説明する。
ウルトラ・アクセラレータ・リンク(UAL:Ultra Accelerator Link)
これは、オープンコンソーシアムが提供するNVLinkへの対応策であり、GPU間の接続ソリューションで、広範なコヒーレントドメインを構築するものである。NVLinkがエヌビディア(NVDA)の成功の大きな理由であることは周知の事実であり、UALは基本的にインテル(INTC)、AMD(AMD)、およびその他のアクセラレータ向けのNVLinkといえるものである。
(原文)The UALink initiative is designed to create an open standard for AI accelerators to communicate more efficiently. The first UALink specification, version 1.0, will enable the connection of up to 1,024 accelerators within an AI computing pod in a reliable, scalable, low-latency network. This specification allows for direct data transfers between the memory attached to accelerators, such as AMD's Instinct GPUs or specialized processors like Intel's Gaudi, enhancing performance and efficiency in AI compute.
(日本語訳)UALinkイニシアチブは、AIアクセラレータがより効率的に通信できるオープンスタンダードを作成することを目的としている。最初のUALink仕様であるバージョン1.0では、AIコンピューティングポッド内で最大1,024台のアクセラレータを信頼性が高く、スケーラブルで低遅延のネットワークに接続できるようになる。この仕様により、AMDのInstinct GPUやIntelのGaudiなどの特殊プロセッサに接続されたメモリ間での直接データ転送が可能になり、AIコンピューティングにおけるパフォーマンスと効率が向上する。
スケーラブル階層型集約プロトコル(SHArP:Scalable Hierarchical Aggregation Protocol)
これはMellanox(エヌビディア)のプロトコルであり、ネットワークのルーティングにおけるCPUの必要性を減少させるものである。ネットワーク内でリダクションを実行することにより、グローバルオペレーションを最適化し、CPUに到達するまでに必要なCPUサイクルを減少させる。
これは基本的に、エヌビディアのスイッチでのみ機能する特別なヘッダーであり、ネットワークコンピュートリダクションの一例である。この論文に詳しく書かれているので、興味があればぜひ読んでほしい。
フロントエンドネットワーク(Front End Network)
GPUネットワークのファブリックタイプについて説明したい。フロントエンドファブリックは、TCPトラフィック、REST APIリクエスト、ストレージトラフィックを処理する。これは、CPU駆動のデータセンターにおけるEthernetで一般的に考えられる伝統的なファブリックである。
(出典:A Simple Introduction to Different Network Fabrics)
バックエンドネットワーク(Back-End Network)
そして、GPUのall_reduceや集団操作、GPU間の通信に専用のバックエンドファブリックがある。これがエヌビディアのGTC(GPU Technology Conference)で混乱を招いた原因であり、実際にはフロントエンドネットワークとバックエンドネットワークがあるため、トランシーバの数が少ないように見えた。NVLinkはこのバックエンドファブリックの一例である。
最後に、私のアイデアについて話していきたい。
2024年第2四半期の半導体銘柄に関する私のアイデア
まず初めに、株式について少し話をしたい。最近の記事では、半導体および半導体製造装置に対してかなり弱気であったが、今後も状況が悪化しているところに注目したいと思っている。私の投資スタイルは、ファンダメンタルズが改善しているにもかかわらず、株価がそれに反映されていない企業に焦点を当てることである。
具体的に言うと、消費者向け(改善中)と情報通信(あまり良くないがこれ以上悪くはならないであろう)である。私は引き続きマックスリニア(MXL)とマーベル・テクノロジー(MRVL)に注目している。
一方で、消費者向けおよびIoT分野では、シリコン・ラボラトリーズ(SLAB)、ノルディック・セミコンダクター(NOD.OL/NDCVF)、セムテック(SMTC)、シナプティクス(SYNA)、そしてSiタイム(SITM)に注目している。状況はあまり良くないように見えるが、最終市場がしっかりと底を打っているにもかかわらず誰も注目していないことから、今こそこの分野を検討すべき時であるように感じる。
自動車関連は引き続き自身のお気に入りの分野ではないが、STマイクロエレクトロニクス(STM)とオン・セミコンダクター(ON)については前向きに検討していきたいと思っている。ただし、基板ビジネスは役に立たなくなる可能性があることからもウルフスピード(WOLF)からは避けている。エア・テスト・システムズ(AEHR)はいつか注目されるかもしれないが、その銘柄に対してはむしろ遅れたエントリーの方がいいと思う。
また、仮想通貨データセンターの取引についても話したい。これらは毎日のように上昇しており、実際にこれを後押しするようなイベントが見られるようになっている。これらのアイデアは良いと思うが、それらの銘柄は既に上昇し始めている。そして、大きな転換を遂げる可能性があると見ていることから、ビットディア・テクノロジーズ・グループ(BTDR)もこのリストに追加したい。
これらの銘柄はバスケットで保有する必要があるだろう。なぜなら、一部の銘柄は急落する可能性があるからである。ただし、これらの銘柄の中で倍以上のリターンが期待できるものは少ないと個人的には思っている。ただし、最近、1メガワットあたり約200万ドルという新たな基準が耳に入ってくるようになっており、これは私が想定していた1メガワットあたり100万ドルから大幅な増加である。
ただし、上述の私のアイデアを踏まえると、全体的に市場の調整が避けられないと感じざるを得ないというのも本音である。私は個人的にはエヌビディア(NVDA)に引き続き注目しているが、現在の価格は非常に割高で、他のAI関連銘柄もかなり成熟している。ソフトウェア分野のAIで利益確定の動きが見られ始めており、その正常化には時間がかかるだろう。個人的には、エヌビディアが110ドル以下であればお買い得であるように見える。
その他の半導体銘柄関連レポート
1. マーベル・テクノロジー / MRVL:AI・半導体銘柄の最新の2025年1Q決算速報・財務分析と今後の株価見通し&将来性
2. エヌビディア / NVDA / 予想配当利回り0.04%: 2025年1Q決算&株式分割を受けてNVIDIAの株価は急騰(前編)
3. アプライド・マテリアルズ / AMAT:まだ上値を狙えるか、2024年第2四半期決算速報・強み分析と今後の株価見通し・将来性
また、私のその他の半導体関連銘柄のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、私のプロフィールページにアクセスしていただければと思います。
さらに、その他のエヌビディア(NVDA)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、エヌビディアのページにアクセスしていただければと思います。