やや強気パロ アルト ネットワークス【Part 1:前編】パロ・アルト・ネットワークス(PANW)の将来性:最新の2025年第1四半期決算は好調で株価上昇トレンドは継続!
コンヴェクィティ - 本稿では、注目の米国サイバーセキュリティ銘柄であるパロ・アルト・ネットワークス(PANW)の11月20日に発表された最新の2025年第1四半期(暦年:2024年度第3四半期)決算分析を通じて、同社の将来性と今後の株価見通しを詳しく解説していきます。
- パロアルトネットワークス(PANW)は、2024年に市場の変動に直面しましたが、ニケシュ・アローラCEOが率いる大胆なプラットフォーム化戦略を通じて、高い回復力と成長の可能性を示しました。
- 当初は投資家の間で懸念が広がったものの、同社はこの戦略に注力し、次世代セキュリティ(NGS)の年次経常収益(ARR)やサービス収益が大幅に伸びたことで、長期的な成功への道筋を確立しています。
- 社内でのイノベーション推進やM&Aの抑制、加えて堅調な財務状況により、同社は株主にとって高いリターンが期待できる明るい未来が見込まれているように見えます。
- さらに、プラットフォーム契約や大手企業との契約で大きく前進したことで、同社はサイバーセキュリティ市場をリードする地位を確立しつつあり、その成長軌道はサービスナウのようなテクノロジー大手を彷彿とさせます。
- 本稿Part 1では、2025年第1四半期の決算内容と全体的な考察を取り上げ、Part 2では同社の各事業部門をさらに詳しく分析していきます。
パロ・アルト・ネットワークス(PANW)の2024年の株価動向
2024年、パロ・アルト・ネットワークス(PANW)は波乱の一年を迎えました。
年初時点で私たちは、同社の株価バリュエーションがやや割高だと感じていました。
しかし、同社は数四半期にわたり好調な業績を続けており、その潜在力が徐々に市場で評価されるようになっていました。
この流れの中で、同社は主流の金融メディアでも注目されるようになり、これまであまり詳しくなかった投資家層にも認知が広がりました。
その結果、2023年には株価が大きく上昇し、その後は緩やかな上昇基調(いわゆる「メルトアップ」)に移行しました。
しかし、2024年初頭には、顕著な市場平均を上回る利益(アルファ)を得る可能性が薄れ、将来的なリターンは市場全体の動きに近づくと見られる状況になりました。
そんな中で発表された2024年第2四半期の決算は、多くの投資家にとって驚きの内容でした。
パロ・アルト・ネットワークスが他のテクノロジー大手と同様に、安定成長と利益率拡大のフェーズに入った成熟企業として認識されていたところ、CEOのニケシュ・アローラ氏は、これまで以上に大胆な方針を示しました。
同氏はプラットフォーム戦略をさらに推し進める姿勢を明確にし、同社が今後もまだ大きな成長の可能性を秘めていることを強調しました。
(出所:Seeking Alpha)
2018年からアローラ氏の戦略に慣れ親しんでいる長期のパロ・アルト・ネットワークス株の投資家にとって、この野心的な方向性は予想外のものではありませんでした。
しかし、安定性を求め、リスクを避けたいと考える新しい投資家層には、この変化が不安を引き起こしたようです。
それでも、私たちはアローラ氏のビジョンが堅実であり、かつ優れたものであると見ています。
2024年第2四半期決算発表後に起きた株価下落は、賢明な投資家にとって市場の過剰反応を利用する絶好の機会となりました。
予想通り、短い調整期間を経た後、同社の株価は再び上昇基調を取り戻しました。
その後の決算発表では、プラットフォーム戦略の進展が示され、投資家の信頼感を高めるとともに、今後の見通しがさらに明確になりました。
2024年第4四半期の決算時点で、同社の株価は2024年第2四半期決算発表後の下落からほぼ完全に回復し、同社の戦略がいかに強固であるかを実証しました。
そして現在、最近の混乱も収束した今、次に同社が進むべき道はどこなのかという問いが、注目の焦点となっています。
パロ・アルト・ネットワークス(PANW)の最新の2025年第1四半期決算発表に関して
(出所:パロ・アルト・ネットワークスの2025年度第1四半期決算資料)
パロ・アルト・ネットワークス(PANW)は、2024年11月20日に2025年度第1四半期(暦年:2024年第3四半期)決算を発表していますが、全体的に好調な業績を示しており、プラットフォーム化の成功をうかがわせる初期の成果が見られます。
特に注目すべきは、ポストコロナによる予算見直しや、AI関連投資が非AI分野の投資を圧迫する最近の傾向といった、IT支出全般の逆風にもかかわらず、サイバーセキュリティ分野の支出が堅調に推移している点です。
特に、同社は売上高と利益の両面で引き続き優れた実績を上げています。
2025年第1四半期決算の主要指標
・売上高: 21.4億ドル(前年比+14%)
・製品売上: +4%
・サービス売上: +16%(サブスクリプション: +21%、サポート: +8%)
・次世代セキュリティ年間経常収益(NGS ARR): 45.2億ドル(前年比+40%)
・残存履行義務(RPO): 126億ドル(前年比+20%)
2025年第2四半期の見通し
・NGS ARR: 47.0億〜47.5億ドル(+35%〜36%)
・RPO: 129億〜130億ドル(+20%〜21%)
・売上高: 22.2億〜22.5億ドル(+12%〜14%)
・1株当たり利益(EPS): 1.54〜1.56ドル(+5%〜6%)
2025年度通期見通し
・NGS ARR: 55.2億〜55.7億ドル(+31%〜32%、QRadar SaaSの約3700万ドルを含む)
・RPO: 152億〜153億ドル(+19%〜20%)
・売上高: 91.2億〜91.7億ドル(+14%)
・営業利益率: 27.5%〜28%
・EPS: 6.26〜6.39ドル(+10%〜13%)
・フリーキャッシュフロー(FCF)マージン: 37%〜38%
第1四半期における次世代セキュリティ分野の年間経常収益が力強い成長を記録
(出所:パロ・アルト・ネットワークスの2025年度第1四半期決算資料)
パロ・アルト・ネットワークスの次世代セキュリティ(NGS)部門は、引き続き目覚ましいスケールアップを続けています。
クラウドセキュリティの年間経常収益(ARR)を7億ドル、Cortex(AIを活用したセキュリティ運用プラットフォーム)を10億ドルと見積もると、Prisma SASE(ネットワークセキュリティ、SD-WAN、自律型デジタルエクスペリエンス管理を単一のクラウド提供型サービスに統合した、業界で最も包括的なSASEソリューション)のARRは約28億ドルに達していると計算されます。
このわずか4年間で、同社はSASE(Secure Access Service Edge:クラウド時代のネットワークセキュリティと接続性を統合した新しいアーキテクチャの概念)市場で第2位のポジションを確立しました。
セキュアブラウザ(ユーザーがインターネットにアクセスする際に、マルウェアやフィッシング攻撃から保護し、データを安全にするためのセキュリティ機能が組み込まれたブラウザ)、データセキュリティ、SD-WAN(ソフトウェアを使って広域ネットワークであるWANを効率的に管理・運用するための技術)といった成長が期待される分野でのリーダーシップや、巧みなプラットフォーム戦略の組み合わせを考えると、パロ・アルト・ネットワークスが最終的にゼットスケーラー(ZS)を抜き、首位の座を獲得すると予想されます。
一方で、ファイアウォールハードウェア(とは、ネットワークを保護するための専用機器)の売上成長率は低い一桁台(LSD: low single digits)で推移しており、この傾向はフォーティネット(FTNT)と似ています。
アローラCEOは、パロ・アルト・ネットワークスのハードウェアファイアウォールの強みを強調するとともに、市場シェアのさらなる拡大を目指す意向を示しました。
リフレッシュサイクルとプラットフォーム化戦略が相乗効果を生み、ハードウェア需要を押し上げているようです。
ただし、ハードウェア関連サービスの収益成長率はフォーティネットに及ばない状況です。
この違いは、パロ・アルト・ネットワークスが他のNGS製品ラインでより多くのサービス収益を上げていることが主な要因と考えられます。
また、パロ・アルト・ネットワークスはXSIAM(Extended Security Intelligence & Automation Management:Cortex製品群を統合し、AI駆動のセキュリティ運用を実現するプラットフォーム)やその他のNGS製品の普及を優先しているため、ハードウェアサポートサービス収益のさらなる拡大余地が限られている可能性があります。
一方で、Prisma Cloudは同社のクラウドセキュリティ事業として、その分野で揺るぎないリーダーの地位を確立しています。
これは、以前のクラウドセキュリティ分析におけるレポートでの弊社の予測通りです。
スタートアップ企業は、同社のプラットフォームの機能の広さ、性能の高さ、統合力に対抗できず、価格を武器に競争せざるを得ない状況に追い込まれています。
しかし、価格競争は通常、競争力の劣位を示す弱い戦略であり、長期的に優位に立つことは困難です。
このように、大規模な製品ラインナップと強固な収益基盤を持つ大手企業が、特化型市場で専門性の高いスタートアップとこれほど効果的に競争している例は非常に珍しいと言えます。
Cortexも順調に進展しており、いくつか注目すべき成果が見られます。
わずか2年前に一般提供(GA)を開始したXSIAMは、現在約7億ドルのARRを達成しており、さらに10億ドル規模のパイプラインを抱えていることから、その可能性は非常に大きいです。
アローラCEOが指摘するように、同社はSIEM(Security Information and Event Management:企業や組織がネットワークセキュリティを管理・監視するためのソフトウェアソリューション)市場で第3位のプレーヤーとなる可能性が高く、統合されたSIEMと自動化されたSecOps(セキュリティと IT 運用チームが連携して組織のセキュリティを強化するアプローチ)市場ではリーダーの座を獲得すると考えています。
もしCortexが1,500社の顧客を獲得できれば、そのARRは簡単に100億ドルを超える可能性があります。
また、現在XSIAMを活用している150社の顧客がすでに高い投資対効果(ROI)を実現していることを踏まえると、これらの顧客からさらなる平均販売価格(ASP)の成長も期待できます。
このような展開を考慮すると、Cortexの将来性は非常に明るいと言えるでしょう。
こうした進展があるにもかかわらず、売上全体の成長率は現在14%、請求額の成長率はわずか12%にとどまっており、一部の投資家、特にパロ・アルト・ネットワークスの変革について理解が浅い投資家にとっては失望を招いています。
特に、アローラ氏が指摘しているように、請求額はもはやパロ・アルト・ネットワークスの進捗を評価する上で最適な指標ではないという点に私たちも同意します。
同社は、従来の3年分の前払い契約から年間契約への移行を進めており、営業チームは現在、コンフルエント(CFLT)が最近採用した営業戦略のように、顧客の利用促進に重点を置いています。
決算発表後、多くのアナリストがこの視点に賛同しましたが、発表後の株価は下落しました。
この株価の不安定な動きは、パロ・アルト・ネットワークスの事業を十分に理解していない一般的な投資家や、決算前の株価にすでに過剰な期待が織り込まれていたことが主な原因と考えられます。
多くの投資家が、収益の加速やプラットフォーム化の進展がもっと早く実現すると期待し、先走った価格設定をしていた可能性があります。
現在、同社の大胆な戦略的シフトは着実に進行中ですが、このような時期尚早な価格調整が起こるのは避けられないことだったといえます。
一方、同社はNon-GAAP、および、GAAPベースでの営業利益の大幅な改善を遂げています。
次世代セキュリティ(NGS)への初期投資はほぼ完了しつつあり、NGSのスケール拡大によって期待されていた営業レバレッジが実現しつつあります。
また、株式報酬(SBC)はしっかりと管理されており、売上の13.75%に抑えられています。
製品の成熟やコスト効率の向上、さらにGCP(Google Cloud Platform)のようなハイパースケーラーとの契約条件の改善により、粗利益率は過去最高を記録しました。
さらに、高い年間契約価値(ACV)やプラットフォーム契約の増加に伴い、販売・マーケティング(S&M)費用は減少傾向にあり、営業利益率のさらなる向上が見込まれます。
最終的に、PANWはフリーキャッシュフローマージンを45%以上に達成し、SBCを売上の10%以下に抑える可能性があると考えています。
次章では、最新の決算の更なる分析を通じて、パロ・アルト・ネットワークスの特徴と強みを詳しく解説していきます。
※「【Part 1:後編】パロ・アルト・ネットワークス(PANW:強気)の特徴とは?最新の決算分析を通じて、同社の戦略と強みを徹底解説!」に続く
加えて、パロ・アルト・ネットワークスのテクノロジーに関して、下記の詳細な分析レポートも執筆しております。
そのため、同社への理解をより一層深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上より併せてご覧いただければと思います。
パロアルトネットワークスとは?
パロアルトネットワークスの強みとは?
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