03/23/2025

【Part 2】パランティア・テクノロジーズ(PLTR)とエヌビディア(NVDA)の比較:パランティアはエヌビディアの2年前?

A piece of cardboard with a keyboard appearing through itコンヴェクィティ  コンヴェクィティ
  • 本編は、注目の米国AI企業であるパランティア・テクノロジーズ(PLTR:Palantir Technologies)の将来性を詳細に分析した3つの章から成る長編レポートとなります。
  • 本稿は「Part 1:財務&バリュエーション分析とDOGE(政府効率化省)の影響」「Part 2:パランティア・テクノロジーズとエヌビディア(NVDA)の比較」「Part 3:パランティア・テクノロジーズとOpenAIの比較」の3つの章で構成されています。
  • 本稿Part 2では、注目の米国半導体銘柄であるエヌビディアとの比較、並びに、AI事業と政府関連事業における進展の詳細な分析を通じて、パランティア・テクノロジーズの将来性を詳しく解説していきます。
  • パランティア・テクノロジーズは、2年前のエヌビディアと同様に、AIを軸とした成長の初期段階にあり、今後の収益性向上とバリュエーションの正常化の可能性があると見ています。
  • 同社はAIアプリケーションだけでなく、企業が自社でAIソリューションを構築・拡張できるプラットフォームを提供しており、従来のSaaSに代わる存在として注目されています。
  • 政府案件「Advana」をはじめとした大規模プロジェクトや、AI実用化の進展により、長期的な成長余地は大きい一方で、短期的には業界全体の動向や技術進化の限界がリスク要因となっています。

※「【Part 1】パランティア・テクノロジーズ(PLTR)株価見通しは魅力的?最新の財務&バリュエーション分析を通じて将来性に迫る!」の続き

前章では、パランティア・テクノロジーズ(PLTR)の最新決算を踏まえた財務とバリュエーション分析、並びに、イーロンマスク氏率いるDOGEが同社に与え得る影響の詳細な分析を通じて、同社の今後の株価見通しに関して詳しく解説しております。

本稿の内容への理解をより深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上にて、前章も併せてご覧ください。

パランティア・テクノロジーズ(PLTR)はエヌビディア(NVDA)の2年前?

私たちは現在のパランティア・テクノロジーズ(PLTR)を、多くの点で2年前のエヌビディア(NVDA)と類似していると見ています。当時のエヌビディアは、AIを起点とする成長加速の初期兆候を見せ始めていましたが、その成長トレンドが持続可能かどうかについては、投資家の間でも意見が分かれていました。この不確実性の背景には、エヌビディアが本質的なビジネスモデルの転換期にあったことがあります。つまり、従来の景気変動に左右されやすいゲーミング向けGPU企業から、エンタープライズ市場を重視したデータセンター中心のAI向けGPGPUプロバイダーへと変貌しつつあったのです。

この変革は、顧客の購買行動に一定の循環的な傾向があるにもかかわらず、遥かに大きな収益機会と持続的な長期成長の可能性を切り拓くパラダイムシフトを意味していました。

最終的に、エヌビディアの財務実績は「爆発的な売上成長」と「大幅な利益率の拡大」という二重の追い風を受ける形となりました。半導体ビジネスは本質的に高いレバレッジ効果を持っており、知的財産への追加投資なしに増産分を販売することが可能です。エヌビディアの増分コストの主な要因は製造関連費用(売上原価)であり、これにはチップ製造を担うTSMC(TSM)や、HBMメモリを供給するSKハイニックス(000660.KS)やマイクロン・テクノロジー(MU)といった外部ベンダーが関与しています。

圧倒的な顧客需要に支えられて、エヌビディアはGPGPUの価格引き上げに成功し、粗利益率は最大で78%にまで拡大しました。

営業費用に目を向けると、エヌビディアの研究開発費(R&D)は売上成長に比例する形で拡大していきました。販売およびマーケティング費用(S&M)は比較的安定していた一方で、メディアの注目度向上と、供給を上回る顧客需要の高まりにより、営業効率は大幅に改善しました。また、一般管理費(G&A)は売上に対する比率で見ると低下しており、これはエヌビディアが、旧態依然とした官僚的な階層を抱える企業とは異なり、規律ある効率的な経営を行っていることを示しています。

その結果、エヌビディアは力強い売上成長と利益率の改善が相まって、極めて大きな利益の増加を実現しました。最終的には、エヌビディアの投資価値は非常に魅力的なものとなり、バリュー志向の投資家でさえ、同社の将来予想PERを魅力的だと評価するようになりました。これは、相対的な割安さ、財務的な強さ、そして卓越した成長見通しが絶妙に組み合わさっていたためです。

同様に、パランティア・テクノロジーズが現在のビジネスの勢いを維持した場合、「ルール・オブ・40」のスコアはおおよそ120に達すると見込まれます。この指標だけを見ても、現在のTTM(直近過去12カ月)ベースのEV/S(企業価値/売上高)倍率60倍は正当化される水準であると考えています。一般的に、成長率が40%を超えるハイパーグロース企業はEV/S倍率で約40倍の評価を受け、成長率が60%を超える場合は、それ以上のバリュエーションがつく傾向にあります。

多くのハイパーグロース企業は、IPO直後に割高な評価を受けがちですが、年間経常収益(ARR)が10億ドル未満で、かつ利益率がマイナスであることも少なくありません。これに対し、パランティア・テクノロジーズはすでに30億ドル規模のARRを有し、高い収益性を確保しています。さらに、今後数四半期にわたり、成長軌道が継続する限り、利益率のさらなる拡大も十分に見込める体制が整っています。

ただし、投資家は同社の四半期ごとの業績に一定のボラティリティ(変動性)があることにも注意を払う必要があります。これは季節要因や成長の分布に偏りがあるためです。ただし、同社が毎年のピークシーズンにおいて、ARR純増(ネット新規ARR)を前年同期比でプラスに維持している限り、四半期内の一時的な変動について過度に懸念する必要はないと考えられます。

一方で、ARRの純増がゼロを下回るような状況になった場合には、投資家は一層慎重な姿勢で臨むべきでしょう。

(出所:筆者作成

株価収益率(P/E)の観点から見ると、現在のパランティア・テクノロジーズは非常に高い倍率で取引されています。TTMベースでは約450倍、翌12か月(NTM)予想ベースでも約150倍に達しています。プロのファンドマネージャーにとって、このような高バリュエーションの水準で同社に追加資金を投じることは、評判リスクを伴う可能性が高く、追加リターンよりも下振れリスクの方が大きいと判断される場合があります。

しかしながら、このように表面的には割高に見えるバリュエーションであっても、同社の根本的な利益成長の軌道を考慮することは重要です。現在の予想PER(150倍)と実績PER(450倍)とのギャップは、今後1年以内に利益が約3倍に増加すると市場が見込んでいることを示唆しています。

これをさらに具体的に説明すると、パランティア・テクノロジーズが現在のエヌビディアのバリュエーション、すなわち実績PERが約40倍、予想PERが約25倍という水準に達するためには、現在の利益水準からおよそ11倍の利益成長が必要となります。

パランティア・テクノロジーズとエヌビディアのバリュエーション倍率にこれほど大きな差がある理由の一部は、両社の収益性指標の大きな違いにあります。エヌビディアの純利益率(直近12か月ベース)は現在56%であるのに対し、パランティア・テクノロジーズは比較的控えめな16%にとどまっています。エヌビディアがこのように高い利益率を達成している背景には、株式報酬(SBC)が非常に低水準に抑えられていることがあります。現在のエヌビディアのSBCは、売上高の約3.4%、フリーキャッシュフロー(FCF)の約8.5%にすぎません。

一方で、パランティア・テクノロジーズのSBCはこれまで歴史的に非常に高く、直近の四半期では売上高の最大34%に達し、過去数四半期の平均でも約20%前後で推移してきました。

それでもなお、フリーキャッシュフローマージン(FCFマージン)という観点に目を向けると、パランティア・テクノロジーズは力強いパフォーマンスを示しています。最新の2024年第4四半期におけるFCFマージンは約55%であり、NVDAの堅調なFCF実績に近い水準となっています。パランティア・テクノロジーズは、ソフトウェアを主軸としたビジネスモデルにより、追加的なコストがほとんどかからないという特性を持つため、構造的に優れた営業レバレッジを有しています。そのため、パランティア・テクノロジーズはエヌビディアのすでに優れたFCFマージンを上回る可能性を秘めています。

仮にパランティア・テクノロジーズが今後70%のFCFマージンを達成し、同時に株式報酬(SBC)を売上高の約10%にまで引き下げることができれば、最終的な純利益率は60%近くに達する可能性があります。このようなシナリオにおいては、同社の純利益率は現在の16%から約3.75倍に拡大することになり、収益性のプロファイルが大幅に改善され、エヌビディアとのバリュエーションギャップも大きく縮まることになります。

(出所:筆者作成

売上高の成長余地という観点では、パランティア・テクノロジーズにはエヌビディアと比較して、はるかに大きな成長余地があるという強い主張ができます。エヌビディアについては、今後も力強い需要が続くと見込まれており、特に最近発表されたハイパースケーラーによるギガワット級のデータセンター構築(例として、GB200 NVL72ラックを備えた1.25ギガワットのデータセンター1棟の建設費は約300億ドル)によって恩恵を受けることが期待されています。

しかしながら、「大数の法則」や物理的な制約を考慮すると、エヌビディアが今後さらに売上を2倍、あるいは4倍にすることは次第に困難になっていくと考えられます。

一方で、現在年間経常収益(ARR)がおよそ33億ドルのパランティア・テクノロジーズには、現状の数倍にまで売上を拡大するための余地が十分に残されています。私たちは、パランティア・テクノロジーズをAWS(Amazon Web Services)に匹敵する基盤技術プラットフォームとして位置づけています。実際、AWSはすでにARRが1,000億ドルを超えており、直近ではIT支出の減速に伴い成長率が二桁台に落ち着いてきているものの、その市場的な存在感は依然として大きいです。

パランティア・テクノロジーズの現在の事業規模を踏まえると、売上を2倍、あるいは4倍にすることは、十分に現実的な目標であると考えています。

具体的には、同社が今後2年間にわたり年率約70%の売上成長を維持し、年間経常収益(ARR)を約95.4億ドルまで引き上げることができ、かつ、前述のとおり純利益率を現在の約16%から約60%へと3.75倍に改善できた場合には、同社のバリュエーションは大きく正常化することになります。これらの前提が実現すれば、同社の直近P/E倍率は現在の約450倍から、大幅に低下して約41.5倍となり、NVDAの現在の評価水準とほぼ同等になります。

もちろん、こうした楽観的なシナリオは、同社が今後も順調に事業遂行を継続できることを前提としており、潜在的な下振れリスクや不確実性についてはまだ触れていません。それでもなお、同社が市場でリーダーシップを発揮していること、技術プラットフォームの深さと広がり、そして世界中の多様な分野で実質的な価値を提供できていることを踏まえると、ARRが100億ドルに到達するのは時間の問題であり、最終的にはAWSのように1,000億ドル規模へと拡大していく可能性もあると私たちは考えています。

その一方で、投資家は短期的に大きなボラティリティが発生する可能性があることを認識しておく必要があります。かつてのテスラ(TSLA)の軌跡に似て、同社も今後、危機、再構築、市場からの懐疑(FUD:恐れ、不確実性、疑念)といった局面を経験するかもしれません。こうした要素により、株価やバリュエーション倍率は大きく変動し、楽観と悲観の間を激しく揺れ動く可能性があります。

したがって、投資家は短期的な変動とリスクへのエクスポージャーを慎重に管理する必要があります。しかしながら、長期的な視点に立てば、ここまで述べてきた基本的な投資仮説を否定するのは非常に難しいと私たちは考えています。パランティア・テクノロジーズの戦略的なポジショニング、技術面でのリーダーシップ、そして長期的な成長ポテンシャルは、今なお非常に魅力的であると考えています。

2025年はAIアプリケーションの年でパランティア・テクノロジーズ(PLTR)にポジティブ?

「さまざまなテック業界のリーダーと話をする中で、AIがいよいよ生産性の数字として現れてくる、その一歩手前まで来ていると感じています。」 この発言は、2025年2月21日にアメリカ財務長官スコット・ベセント氏がBloombergのインタビューで語ったものです。

パランティア・テクノロジーズ(PLTR)の将来的な成長可能性やバリュエーションを考察する中で、これまで長らく期待されてきた「AIの本格的な実用化」というテーマが、いよいよ2025年に現実のものとなる可能性が高まっていることが明らかになってきました。

2年前、AI分野における主な投資テーマは、AIエコシステム全体を支えるためのインフラの構築と拡充に集中していました。しかし現在では、その基盤となるインフラの多くがすでに整備されており、注目は現実世界における実用的なアプリケーションへと移りつつあります。

このシフトには、主に2つの重要な意味があります。第一に、ユーザーにとって魅力的なアプリケーションがなければ、インフラへの追加投資を正当化することが難しくなり、将来的なインフラ投資の成長にも限界が生じます。第二に、すでに多くの業界でAI導入による実質的な投資対効果(ROI)が現れ始めているという点です。

たとえば、ソフトウェアエンジニアリングやカスタマーサポートといった分野では、実際の業務における生産性が30~40%程度向上したという具体的な事例が多数報告されています。こうした顕著な生産性の向上を踏まえれば、企業がAIの導入を他の業務プロセスやユースケースへと積極的に拡大していくのは、ごく自然な流れであると考えられます。

AIモデルの開発に関しては、特にFLOPS(演算性能)あたりの価値提供という観点で、急速な成熟が見られています。たとえば、DeepSeekのような技術は、パランティア・テクノロジーズにとって大きな恩恵をもたらす存在となっています。もっとも、PLTRの戦略的立ち位置が、一般的に中国のテクノロジー企業とは対立する方向にあるという皮肉な側面も無視できません。

それでもなお、DeepSeekやアリババのQwen、その他のオープンソースの取り組みによって、AIモデルの学習および推論にかかるコストが大幅に削減される可能性があります。場合によっては、これまでの10分の1以下にまで低下する可能性すらあります。

こうした大幅なコスト削減により、パランティア・テクノロジーズのような企業を利用するアプリケーション層の開発者たちは、これまでROI(投資対効果)の正当性が見えにくかったユースケースにおいても、より広範かつコスト効率の高い形でAIソリューションを導入できるようになります。

私たちが以前の「DeepSeekによる供給ショック」に関する分析で述べたとおり、これらの進展は、AI業界のバリューチェーンにおいて、インフラ提供者からエンドユーザー向けアプリケーションに特化したベンダーへの重心移動が迫っていることを示唆しています。

パランティア・テクノロジーズ(PLTR)の戦略的ポジショニング:AIプラットフォーム対従来型SaaS

もう一つ注目すべき説得力のある観点は、パランティア・テクノロジーズ(PLTR)が単なるAIアプリケーションのベンダーではなく、AIプラットフォームの提供企業として独自のポジショニングを確立している点です。同社は、企業が自社内でAI駆動型のアプリケーションを迅速に構築・反復・スケールできるようにするための基盤を提供しています。この違いは極めて重要であり、特に最近増えている「AIが従来のSaaSモデルを根本から破壊、あるいは消滅させるかもしれない」という著名なAI投資家たちの議論の中で、ますます注目されるテーマとなっています。

この「AIによるSaaSの破壊」という仮説の核心は非常にシンプルです。もしAIがソフトウェアエンジニアリングのコストを桁違いに削減できるようになれば、大企業は外部のSaaSプロバイダーに依存するよりも、自社内で独自にカスタマイズしたソフトウェアアプリケーションを開発・運用する方が、経済的に魅力的であると判断する可能性が高くなります。

この点を具体的に説明するために、中国の事例が参考になります。中国では、最大手企業(しばしば国有企業)におけるSaaSの導入率が依然として低い傾向にありますが、その主な理由の一つは、ソフトウェアエンジニアの労働コストが比較的安価であることです。こうした企業にとっては、高額なサブスクリプション費用を外部のSaaSプロバイダーに支払うよりも、社内にエンジニアチームを雇用して、自社に最適化されたソフトウェアソリューションを内製・保守する方が、経済合理性が高いのです。

同様に、米国においても、AIによる生産性の向上がソフトウェア開発および保守全体のコストを大幅に削減するようになれば、特に大企業にとっては、自社内でカスタマイズされたSaaSソリューションを構築することが、ますます現実的な選択肢となります。「8090 VC」といった取り組みは、このような新たな潮流を示しており、市場が実際にこの方向へシフトしつつあることを裏付けています。

とはいえ、私たちはこのトレンドを認識しながらも、それが全面的に採用され、広範に定着するかについては慎重な立場をとっています。というのも、AIによって自動生成された迅速なSaaS構築には、いくつかの重大な制約が依然として存在するからです。こうしたソリューションは、堅牢なセキュリティモデルに欠けることが多く、多様なデータソースやレガシーシステムとの統合が困難であり、企業向けの本格的な導入体制や、継続的かつ高度な機能開発にも対応できない場合が少なくありません。

興味深いことに、まさにこれらの欠点こそが、同社の戦略的な優位性を示しています。同社のAIP(Artificial Intelligence Platform)は、こうした制約を克服するために設計されています。同社のAIPは、企業が自社内で構築するAI駆動型SaaSアプリケーションを、迅速かつ安全に導入するための能力を提供しています。

具体的には、堅牢なセキュリティモデルの構築、多様なデータサイロ間でのシームレスな統合、高度な機能管理および展開の仕組みを備えており、PLTRはこうした自社開発型AIアプリケーションのエンタープライズ導入を加速させるうえで、他に類を見ない独自のポジションに立っていると言えます。

パランティア・テクノロジーズ(PLTR)の政府関連事業とAdvanaの可能性

さらに、パランティア・テクノロジーズ(PLTR)の大規模な政府関連事業は、戦略的な重要性を増しながら成長を続けています。2024年末、米国政府は国防総省(DoD)の「Advana」プロジェクトに対して、今後10年間で150億ドルの予算を割り当てるという大規模な計画を発表しました。Advanaは、国防総省全体の業務におけるデータの可視性を統合的かつ向上させることを目的とした、エンタープライズ向けデータ分析・可視化プラットフォームです。

Advanaは、もともと「Vantage」と呼ばれる国防総省の旧プロジェクトから進化したものであり、このVantageは同省の中央財務局によって、監査コンプライアンスや財務の透明性といった長年の課題に対処するために開発されたものでした。特筆すべきは、このVantageがパランティアのソフトウェアを基盤として構築されている点であり、当初の財務管理目的をはるかに超えて、現在では国防総省内の複数の部門や業務領域において広く活用されており、実質的にAdvanaプロジェクトの中核を形成する存在となっています。

政府としては、一社のベンダーが影響力を拡大しすぎることへの慎重な姿勢も見られますが、それでも国防総省の担当者は、Advanaを多様な外部ツールやソリューションと統合可能な、オープンで多様性あるプラットフォームとして維持する方針を明言しています。

とはいえ、実際のところ国防総省にとっては、同社に代わる現実的な選択肢はほとんど存在しないと私たちは考えています。従来型のレガシーソフトウェアでは、同社が提供するようなデータ統合力、セキュリティ、スケーラビリティ、使いやすさといった点において太刀打ちできないのが現実です。

加えて、トランプ政権の復帰が見込まれる状況下では、レガシーIT支出の大胆な削減を掲げる同政権の方針により、同社にとってさらに追い風となる可能性が高いと見ています。これにより、旧来のベンダーがシェアを失い、パランティアがより多くの市場シェアを獲得する展開が想定されます。

同社は、柔軟かつオープンなアーキテクチャと、あらゆるデータの統合を可能にするユニバーサルな機能を備えていることから、Advanaの基盤として理想的な立ち位置にあり、150億ドルにのぼる予算の相当部分を獲得する可能性があります。さらに、Advanaは将来的に数多く登場する可能性のある大規模な政府プロジェクトの一例に過ぎず、同社の公共分野における長期的な成長軌道を一層確かなものにする存在でもあります。

同社にとって最大のリスクは、現在のAI分野におけるモメンタムが持続可能かどうかにあります。私たちはAI分野が今後も成長を続けると概ね楽観的に見ていますが、エヌビディアが今後も一貫して成長を維持し、予想を上回る好業績を出し続けられるかどうかについては、より大きな不確実性があります。仮に、AI関連の支出に突発的なショックが発生し、たとえばエヌビディア製GPUの調達が急激に鈍化・停止し、それによって収益が循環的に減少した場合、AI関連銘柄全体に広範な調整が生じる可能性があります。

このような事態の発生時期や規模については予測困難ですが、将来的に何らかの形で確実に起こるリスクであると私たちは見ています。最大の不確実要因は、エヌビディアの売上成長がいつピークを迎えるのか、あるいはどのタイミングで落ち込むのか、という点にあります。

パランティア・テクノロジーズは、このようなイベントに対して非常に脆弱な立場にあります。というのも、同社の現在のバリュエーションは、長期的な成長性とフリーキャッシュフロー(FCF)に大きく依存しているからです。投資家は、ここでの主なリスクがパランティア固有の要因ではなく、AI業界全体のマクロ的な動向に結びついている点をしっかりと認識しておく必要があります。

もう一つの潜在的な懸念は、現在進行中のAI技術革新の波がいつピークに達するのかを正確に見極めることです。Grok-3の登場前には、主要なAI研究所が最新のフロンティアモデルのトレーニングを完了したものの、予想外に性能の向上が小さかったため、その発表を見送っているという噂が流れていました。こうした性能の低さが明らかになれば、AIの将来性に対する人々の信念や期待が揺らぎ、最近のモメンタムが失速する恐れがあるためです。

実際、こうした噂には一定の真実味があります。OpenAIが急いで発表したGPT-4.5は、その開発に2年とコスト30倍をかけたにもかかわらず、既存モデルに対する改善はわずかにとどまりました。これにより、業界が停滞する可能性も否定できません。GPT-4.5の状況は、次世代フロンティアモデルの開発に多額の資本支出をしても、満足のいく投資対効果(ROI)が得られない可能性を示唆しており、これが株式市場やAIセクター全体の大幅な売り圧力につながる可能性もあります。

しかし、最近の進展には前向きな材料も見られます。たとえば、TTT(思考・試行・検証)型の推論モデルや、DeepSeekによる効率性向上の取り組み(FLOPあたりの価値向上)などは、今後さらに2年間ほど、現在のAIブームが次の上昇局面(いわゆるSカーブ)に入る可能性を示しています。

次に訪れる重要な節目は、AIエージェントシステムが主流として実用レベルに達した時だと考えられます。インテリジェントなAIエージェントという概念は広く普及していますが、現在のところその成熟度はまだ不十分であり、主にカスタマーサポートやソフトウェア開発といった、ミッションクリティカルではない用途に限定されています。これらの領域では、依然として人間による監督が必要です。

たとえば、Grok-3の推論モデルが世界最難関レベルとされるAIME数学問題の94%を解くなど、非常に優れた能力を示しているにもかかわらず、現在の大規模言語モデル(LLM)は、複雑で持続的なタスクをこなすことにはまだ課題を抱えています。具体的には、「9.11は9.8より大きいかどうか」といった基本的な数学的比較ですら、LLMは一貫して正確に答えられないことがあり、複数のツールを用いたマルチステップのワークフロー処理中に突然動作が破綻することもあります。

現時点では、GPT-4oは中程度の一貫性しか示しておらず、中間トークンが高価なo1は若干高い信頼性を持つものの、依然として人間の監視なしでは、ミッションクリティカルな企業用途における本格展開には不十分です。

今後、エージェントツールの機能、RAG(検索拡張生成)の精度、その他の企業グレード機能が引き続き大きく進化していくのであれば、同社は今後も強力な成長モメンタムを維持できると予想しています。

(出所:Scale Inc

最近では、OpenAIもエージェントスタック領域に参入し、「Responses API」をリリースしました。このAPIは、LLMがツールを使用するための機能を提供しており、「ウェブ検索」「ファイル検索」「コンピュータ操作」という3つのバックエンドツールに対応しています。

このうち「コンピュータ操作」は、LLMが人間のように振る舞い、マウスやキーボード操作の指示を通じてブラウザなどの環境とインタラクションを行うことを可能にするものです。しかし、OpenAIはこの分野において、コンピュータ操作に特化したCUA(Computer Use Agent)モデルを開発し、SOTA(State of the Art)スコアを達成したとはいえ、そのスコアは依然としてかなり低く、全体としては2020年当時のGPT-3が自然言語タスクで示していたパフォーマンスに近いレベルにとどまっています。

(出所:OpenAI)

つまり、この分野においては、まだまだ長い道のりが残されていると言えるでしょう。

Part 2は以上となります。Part 3では、同社とOpenAIの比較に関して詳しく解説していきますのでお見逃しなく!


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