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10 - 25 - 2024

中立
フィリップ モリス インターナショナル
中立
フィリップ・モリス(PM)の現在の株価は132.8ドルで、弊社算出の一株当たり本質的価値である110.18ドルよりも高い水準にあり、安全余裕率(マージン)が-20.53%となっていることから、割高である可能性が示唆されています。
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フィリップ・モリス(PM)今後の株価見通し:配当金は1.35ドルに増加し、最新決算は好調で株価上昇も割高?

イアニス・ ゾルンパノスイアニス・ ゾルンパノス
  • 本稿では、フィリップ・モリス(PM:予想配当利回り3.99%・配当性向89%・1株当たり配当金1.35ドル)の2024年10月22日に発表された最新の2024年度第3四半期決算と配当推移に関するトレンド、さらに、同社の財務パフォーマンスを詳細に分析していきます。
  • そして、それらの分析を通じて、同社の目標株価、並びに、今後の株価見通しと将来性を詳細に解説していきます。
  • フィリップ・モリスは、過去5年間で配当成長率が2.80%、予想配当利回りが3.99%と、安定した配当成長実現する米国高配当銘柄です。 
  • 最新の第3四半期の決算では、EPSが前年同期の1.32ドルから1.97ドルに増加し、業績とコスト管理が強化されていることがわかります。 
  • 同社のROICは29.84%で、WACCを大きく上回っており、資本効率が高く、長期的な成長が期待されている一方で、足元のバリュエーションはやや割高であるようにも見えます。

フィリップ・モリス(PM)の概要


レーティング:中立

バリュエーション:割高

リスクレベル:中リスク


セクター:タバコ製品

現在の株価:132ドル

時価総額:2,064.8億ドル

弊社算出の一株当たり本質的価値:110.18ドル

安全余裕率(マージン):-20.52%

過去5年間の配当成長率:2.80%

前回配当落ち日:2024年9月26日

前回配当支払い日:2024年10月10日

予想配当利回り:3.99%

過去5年間の売上高成長率:3.40%

過去10年間の売上高成長率:1.60%


関連用語

安全マージン(Margin of Safety):株式の本質的価値(本来の価値)とその市場価格との間にある差のこと。投資家はこの差を利用して、予想が外れた場合や市場の変動によるリスクを軽減するための「安全な余裕(マージン)」を確保する。例えば、本質的価値が100円の株が市場で80円で取引されている場合、その20円の差が安全マージンとなる。この差が大きいほど、投資のリスクが低くなるとされている。

売上高成長率:企業の売上高が前年と比べてどれだけ増加したかを示す割合で、企業の成長スピードや市場での競争力を評価するための指標。一般的にプラス成長が望ましく、高いほど企業の成長力が強いと言える。


足元の株価推移

(出所:筆者作成)

フィリップ・モリス(PM:配当王・予想配当利回り3.99%・配当性向89%・1株当たり配当金1.35ドル)は、タバコ製品およびリスク低減型製品を世界中で展開するグローバル企業で、本社はニューヨークにあります。

同社は、2008年にアルトリアグループの国際事業部門から分社化され、以降、主に米国外でビジネスを展開してきました。

特に、同社は加熱式タバコ「iQOS」や電子タバコ、口腔用ニコチン製品など、従来の喫煙製品に代わるリスク低減型製品に注力しており、世界的に成長を続けています。

また、2022年にスウェーデンマッチを買収したことで、特にニコチンパウチや口腔用タバコ製品における強力な市場地位を確立しました。

この買収により、同社は従来の紙巻タバコからの多角化を進め、成長の機会をさらに広げており、特に北欧や米国における同社の市場シェア拡大に貢献しています。

一方で、同社の財務状況も堅調で、時価総額は約2,064.8億ドルに達しています。

最近の業績では、5年間の売上成長率は3.40%、10年間では1.60%と安定した成長を見せています。

また、配当株としても魅力的で、足元の予想配当利回りは3.99%となっており、配当収入を重視するインカム投資家には魅力的な投資対象となっています。

そして、同社は2024年10月22日に2024年第3四半期決算を発表しています。


フィリップ・モリス(PM)の最新の2024年度第3四半期決算発表に関して

フィリップ・モリス(PM)の2024年10月22日に発表された、最新の2024年度第3四半期決算発表では、非経常損益項目を除くベースでのEPSは1.97ドルを記録し、これは第2四半期の1.59ドルや前年同期の1.32ドルから大幅に増加しており、強力な業績と効果的なコスト管理の結果を反映しています。

また、1株当たりの売上高も前四半期の6.085ドル、前年同期の5.882ドルから6.37ドルに増加し、安定した成長が続いています。

一方で、長期的なパフォーマンスを見ると、同社株の非経常損益項目を除くベースでのEPSの過去5年間の年平均成長率(CAGR)は2.20%で、過去10年間の年平均成長率は1.70%となっており、長期的に安定した成長と財務の健全性が伺えます。

加えて、粗利益率は64.08%で、過去5年間の中央値である64.73%をやや下回っていますが、依然として歴史的な範囲内で、同社の強力な価格設定力と経営効率を示しています。

ただし、昨年の自社株買い比率は-0.20%であり、発行済株式数がわずかに増加していますが、過去5年間ベースの自社株買い比率は0.10%となっています。

この自社株買い比率は、発行済株式に対する自社株買いの割合を示しており、プラスであれば株式数の減少によるEPSの向上を意味します。

そのため、過去5年間という中長期ベースでは、わずかながら同社の発行済み株式数は減少し、EPSの上昇に貢献していることが分かります。

今後の見通しについては、市場のアナリストの予測によると、2024年の売上高は37,549.52百万ドル、2026年には42,688.43百万ドルに増加するとされています。

さらに、2025年および2026年のEPSはそれぞれ6.240ドルと6.877ドルが見込まれており、成長が継続すると予測されています。

そして、今後10年間の業界成長見通しは好調であり、同社の戦略と合致しています。

フィリップ・モリスの次の決算発表は2025年2月7日であり、同社の今後の業績や戦略についてさらなる情報が得られるでしょう。

非経常損益項目を除くベースでのEPS

(年間ベース:直近4四半期の合計値

(出所:筆者作成)


関連用語

EPS(Earnings Per Share、1株当たり利益):企業が一定期間内に得た純利益を、その期間中に発行されている株式の総数で割った値のこと。EPSは、株主が1株あたりどれだけの利益を得たかを示す指標であり、企業の収益力を評価する際によく用いられ、EPSが高いほど、一般的にはその企業が効率的に利益を上げていると判断される。

非経常損益項目を除くベースでのEPS(EPS without NRI):非経常的な収益や費用(例: 一時的な訴訟費用や災害損失)を除いた後の1株当たりの利益(EPS)。これにより、通常の業績をより正確に反映することが可能。

希薄化後EPS:既存株主にとって、潜在的に新しい株式が発行された場合(例: ストックオプションや転換社債の行使)に、1株あたりの利益(EPS)がどの程度薄まるかを考慮したもの。

1株当たり売上高:企業の総売上高を発行済株式数で割った値で、1株あたりが生み出す売上を示しており、企業の売上規模と株式の価値を評価するのに役立つ。

粗利益率:売上高に対する粗利益の割合を示す指標。企業が商品やサービスを販売した際に、売上から直接かかったコスト(売上原価)を差し引いて得られる利益の割合を計算する。粗利益率が高いほど、企業が商品やサービスから得られる利益が大きいことを意味する。

自社株買い比率:企業が自社の発行済み株式を買い戻した割合を示す指標。この比率は、過去の一定期間において企業がどれだけ自社株を買い戻したかを示しており、通常は1年間の比率として表される。具体的には、買い戻された株式数をその期間の発行済株式総数で割ることで計算される。高い比率は、企業が積極的に自社株を買い戻し、EPS(1株当たり利益)を押し上げる可能性があることを示唆している。

各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。

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フィリップ・モリス(PM)の財務パフォーマンスに関して

フィリップ・モリス(PM)の財務パフォーマンスを、投下資本利益率(ROIC)と加重平均資本コスト(WACC)の観点から分析していきます。

全体として、同社は、資本効率と価値創造において優れた実績を示しています。

過去5年間において、同社のROICは一貫してWACCを上回っており、ROICの中央値は29.84%で、WACCの中央値は6.14%となっています。

この大きな差は、同社が資本を効果的に運用し、投資に対して大きな経済的価値を生み出していることを示しています。

さらに、過去10年間においてもROICは平均19.76%、WACCは6.13%と安定しており、長期的に見ても優れた資本運用を行っています。

このROICとWACCの差から、同社がコストベースに対して高いリターンを得ていることがわかります。

一方で、ROEはマイナスであるという課題はあるものの、フィリップ・モリスの高いROICは、同社の資本管理が効果的であることを示しており、今後もステークホルダーに対して価値を提供し続ける能力があると考えられます。

投下資本利益率(ROIC)加重平均資本コスト(WACC)の比較

(出所:筆者作成)


関連用語

総資産利益率(ROA: Return on Assets):企業が保有する全ての資産を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を総資産で割ることで算出され、ROAが高いほど、企業が資産を効率的に運用していることを示す。

自己資本利益率(ROE: Return on Equity):企業が株主の出資(自己資本)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を自己資本で割ることで算出され、ROEが高いほど、株主にとって効率的な運用が行われていることを示す。

投下資本利益率(ROIC: Return on Invested Capital):企業が投下資本(株主資本+負債)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算はNOPAT(税引後営業利益)を投下資本で割ることで算出され、ROICが高いほど、企業が効率的に資本を運用していることを示す。

ジョエル・グリーンブラット氏の資本利益率(ROC: Return on Capital):株主資本と長期負債の合計である資本に対して、どれだけの利益(NOPAT)を生み出しているかを示す指標。ROICと同様に、資本の効率的な運用を評価する。

加重平均資本コスト(WACC: Weighted Average Cost of Capital):企業が資金を調達する際に必要となる平均的なコストを示す指標で、株主資本と負債のコストを加重平均して求める。WACCが低いほど、企業の資本コストが低く、投資がより利益を生む可能性が高くなる。

各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。

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フィリップ・モリス(PM)の配当に関して

下記のチャートからも分かる通り、フィリップ・モリス(PM)は、安定した配当成長を実現しており、過去5年間の配当成長率は2.80%で、過去3年間の成長率は2.70%となっています。

直近の四半期では、1株当たり配当が1.30ドルから1.35ドルに増加しており、これは株主還元への強い意欲を示しています。

また、現在の予想配当利回りは3.99%で、同業界内でも競争力のある水準です。

ただし、同社のEBITDA有利子負債倍率は3.66倍と中程度の水準にあり、追加の債務に対しては慎重であるべきです。

基本的には、EBITDA有利子負債倍率は2倍以下であれば財務リスクが低く、4倍以上であれば財務リスクが高いことを示すとされています。

加えて、配当性向は89%と高い一方で、過去10年間の中央値は100%前後にあることからも、同社は歴史的に利益のほとんどを配当として支払ってきたことが分かります。

ただし、今後の配当成長率は3.97%と予測されており、引き続き控えめな増加が見込まれます。

前回の配当権利落ち日は2024年9月26日で、次回の配当支払い日は2024年12月26日前後になる可能性が高いと見ています。

全体として、フィリップ・モリスの配当政策は堅調ですが、高い配当性向と中程度の債務水準は引き続き注意が必要でしょう

予想配当利回り:3.99%

配当性向89%

配当カバレッジ・レシオ:1.2倍

過去5年間の配当成長率2.80%

EBITDA有利子負債倍率:3.66倍

DPS(Dividend Per Share):1株当たりの配当金

(出所:筆者作成)

Dividend Yield:予想配当利回り

(出所:筆者作成)

Dividend Payout:配当性向

(出所:筆者作成)


関連用語

1株当たりの配当金:企業が株主に支払う配当金を、発行されている株式の総数で割った値。これにより、株主が保有する1株あたりに受け取ることができる配当金の金額が示される。

配当成長率:企業が過去数年間にどれだけ配当金を増加させたかを示す割合。配当成長率が高いほど、企業が株主に対して利益を還元する意欲が強いことを示す。

予想配当利回り:企業が次年度に支払うと予想される配当金を現在の株価で割った割合。投資家にとって、どれだけのリターンを配当として受け取ることができるかの見込みを示す。

配当性向:企業の純利益に対して、どれだけの割合を配当金として支払っているかを示す指標。計算は、配当金を純利益で割って算出され、配当性向が高すぎると、企業の成長投資に使える資金が減少する可能性がある。

EBITDA有利子負債倍率:EBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)に対する有利子負債の割合を示す。企業の有利子負債が利益によってどれだけカバーできるかを示す指標で、低いほど財務的な健全性が高いとされている。

配当カバレッジ・レシオ:企業の利益が、支払われる配当金をどれだけ上回っているかを示す指標。計算は、利益(通常は純利益かEBITDA)を配当金で割ることで算出され、配当カバレッジ・レシオが高いほど、配当が持続可能であると考えられている。

配当王:50年以上にわたり連続して配当を増やし続けている企業。これに該当する企業は、長期間にわたり安定した利益成長と配当支払いを維持していることを示している。

配当貴族:25年以上連続して配当を増やしている企業。これも安定した配当成長を実現している企業に与えられる称号。

各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。

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フィリップ・モリス(PM)のバリュエーションに関して

フィリップ・モリス(PMの現在の株価は132.8ドルで、弊社算出の一株当たり本質的価値である110.18ドルよりも高い水準にあり、安全余裕率(マージン)が-20.53%となっていることから、割高である可能性が示唆されています。

また、過去12カ月間の実績ベースのEV/EBITDA倍率は18.54倍で、過去10年間の最高値である18.60倍に近く、歴史的に高いバリュエーションとなっています。

さらに、過去12カ月間の実績ベースの株価売上高倍率倍は5.5倍で、過去10年間の中央値である4.62倍を上回っており、売上高に対してプレミアムが付いていることを示しています。

加えて、過去12カ月間の実績ベースの株価フリー・キャッシュフロー倍率は20.28倍で、過去10年間の中央値である17.50倍を上回り、フリーキャッシュフローを基準としたバリュエーションも高くなっていることが分かります。

しかし、予想PERは18.63倍で、過去10年間の中央値である17.89倍をやや上回っていますが、過去の最高値である28.47倍には達していません。

そして、市場のアナリストの目標株価は上昇傾向にあり、現在の目標株価の平均値は134.14ドルで、3カ月前の115.73ドルから上昇しています。

以上より、フィリップ・モリスへのアナリストの評価が慎重ながら前向きである一方で、上述の通り、バリュエーションが過去の水準と比較して割高であることを踏まえると、同社への投資を検討する際には注意が必要と言えるでしょう。

(出所:筆者作成)


上記グラフにおける関連用語

Price:現在の株価

Yiazou Value:弊社算出の一株当たり本質的価値

DCF (FCF Based):フリーキャッシュフローに基づくDCF法を用いて算出した理論株価

DCF (Earnings Based):収益に基づくDCF法を用いて算出した理論株価

Median P/S:株価売上高倍率の中央値ベースの理論株価

Perter Lynch:ピーター・リンチ氏のバリュエーション計算方法に基づく理論株価

赤線:上記の各バリュエーション手法により算出された理論株価の平均値


関連用語

実績PER(Price Earnings Ratio):過去1年間の実績ベースの1株当たり利益(EPS)に対する現在の株価の倍率。企業が過去にどれだけの利益を上げたかに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。

予想PER(Forward PER):予想される1株当たり利益(来年度のEPS予想)に対する現在の株価の倍率。将来の利益見込みに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。

PEGレシオ(Price/Earnings to Growth Ratio):PERを企業の利益成長率で割った指標。成長率を考慮した株価の割安・割高を判断するために使われ、一般的に1以下が割安とされる。

株価売上高倍率(Price to Sales Ratio, PSR):企業の売上高に対する現在の株価の倍率。売上高に対して株価がどれだけの価値を持つかを示す指標で、低いほど割安とされる。

株価フリー・キャッシュフロー倍率(Price to Free Cash Flow Ratio, P/FCF):企業がフリー・キャッシュフロー(営業キャッシュフローから資本的支出を差し引いた金額)に対する現在の株価の倍率。企業のキャッシュフロー創出能力に対して株価が割安か割高かを判断する。

EV/EBITDA倍率(Enterprise Value to EBITDA Ratio):企業価値(EV:株式時価総額+負債−現金)をEBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)で割った指標。企業全体の価値に対する収益力を評価するために用いられる。

PBR(Price to Book Ratio, 株価純資産倍率):企業の純資産(簿価)に対する現在の株価の倍率。株主資本に対して株価がどれだけの価値を持つかを示し、1倍以下だと市場での評価が純資産を下回っているとされる。

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フィリップ・モリス(PM)のリスクとリターンに関して

フィリップ・モリス(PMのリスク・リターン評価分析では、投資家が投資決定を下す前に考慮すべきいくつかのポイントを取り上げたいと思います

分析に基づくと、同社はリスクとリターンが入り混じった状況となっています。

同社は過去3年間で185億ドルの長期債務を発行しており、財務状況に照らすと許容範囲にあると言えます。

しかし、資産の成長が売上高の成長を上回っていることからも、非効率性が生じている可能性を示唆しています。

具体的には、過去5年間で資産が年平均14%増加しているのに対し、売上高の増加率はわずか3.4%に留まっています。

また、インサイダーによる株式売却も懸念されており、足元では29,000株が売却された一方で、買い付けは一切行われていません。

これは、インサイダーが自社株に対する信頼を欠いている可能性を示しているかもしれません。

加えて、配当性向が89%である点も、長期的な配当成長の持続可能性に疑問を投げかける内容と言えるでしょう。

特に、株価が10年ぶりの高水準に達し、株価売上高倍率が5年ぶりの高水準にある現状では、その懸念は一層強まるかもしれません。

さらに、予想配当利回りも5年ぶりの低水準に近づいており、株式のバリュエーションや収益性に対する懸念材料となっています。

一方でプラス面では、ベニッシュのMスコアは-2.68であり、利益操作を行っているリスクが低いことを示しています。

また、アルトマンのZスコアが3.59と高く、同社は強固な財務基盤を持ち、倒産のリスクが低いことが分かります。

全体として、フィリップ・モリスは財務的には堅調ですが、効率性の問題や高い株価バリュエーション指標から、慎重な判断が求められるでしょう。


関連用語

財務レバレッジ:企業が負債をどれだけ活用して資産を増やしているかを示す指標。高い財務レバレッジはリスクを伴うが、うまく活用すればリターンが増加する可能性もある。 目安は業界によって異なるが、一般的には2~3倍が理想とされ、高すぎると財務リスクが高まるとされている。

アルトマンのZスコア:企業の財務健全性を評価するための指標で、特に倒産リスクを予測するのに用いられる。複数の財務指標を組み合わせて計算され、Zスコアが低いほど倒産リスクが高いとされる。目安としては、3.0以上は安全、1.8未満は倒産リスクが高いとされている。

ベネッシュのMスコア:企業が財務報告において不正行為や収益の過大計上を行っている可能性を評価する指標。スコアが高いと、財務操作のリスクが高いとされ、-2.22以下で不正の可能性が低いとされている。

ピオトロスキーのFスコア:企業の財務健全性や成長性を評価するための指標で、9つの財務指標に基づいてスコアが付けられる。スコアが高いほど、財務状況が健全であると評価される。目安としては、7〜9は財務状況が非常に健全、4〜6は平均的、0〜3は財務上の懸念がある可能性が高いとされている。

インタレスト・カバレッジ・レシオ(利息カバレッジ比率):企業が稼いだ利益(通常は営業利益)が、支払わなければならない利息に対してどれだけ余裕があるかを示す指標。計算式は、営業利益 ÷ 利息費用。目安としては、2倍以上が望ましいとされ、これは企業が利息の2倍以上の利益を稼いでいることを意味し、財務的な余裕があると評価される。逆に、1倍以下だと、利息の支払いが困難になる可能性があり、財務リスクが高まる。

ベンジャミン・グレアム:現代のバリュー投資の父と呼ばれる著名な投資家であり、経済学者。「証券分析」や「賢明なる投資家」などの著書を通じて、企業の本質的価値に基づいて株を割安に買うというバリュー投資の概念を広めた人物。彼の投資哲学は、リスクを抑えつつ堅実なリターンを得ることを目指し、多くの投資家に影響を与えている。

各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。

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フィリップ・モリス(PM)のインサイダー(内部関係者)による売買に関して

フィリップ・モリス(PM)の過去1年間のインサイダー取引を見ると、インサイダーによる同社株式の売却が継続している一方で、買い付けは確認されていません。

直近3カ月間では3件の売却が行われ、過去6カ月間では4件、過去1年間では11件の売却が確認されています。

ただし、インサイダーによる同社株式の保有比率はわずか0.51%と低く、これはインサイダーがそもそも同社に対して大きな投資をしていない、或いは、むしろ持株を売却する傾向が強いことを示唆しています。

一方で、プロの機関投資家の保有比率は79.62%と非常に高く、プロの機関投資家が同社に対して長期的な視点や異なる戦略的な洞察を持っていることを示しています。

以上より、フィリップ・モリスのインサイダーによる継続的な同社株式の売却は、市場において短期的な業績に対する信頼の欠如と受け取られる可能性がある一方で、プロの機関投資家の強い支持がそれをある程度相殺している可能性があると言えるでしょう。

インサイダー(内部関係者)による売買

(出所:筆者作成)


関連用語

インサイダーによる自社株式の保有比率:企業の経営陣や役員、主要株主(一般的に10%以上の株式を保有する人)が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。インサイダーが多くの株式を保有している場合、彼らが企業の将来に自信を持っていると見なされることが多い。

機関投資家による株式の保有比率:投資ファンドや保険会社、年金基金などのプロの機関投資家が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。機関投資家の保有比率が高いと、その企業が市場で信頼されていると判断されることがある。


フィリップ・モリス(PM)の流動性に関して

フィリップ・モリス(PM)の過去2カ月間の平均出来高は5,552,487株で、投資家の関心が強いことが伺えます。

直近営業日の出来高はこれをやや下回る5,365,437株ですが、概ね安定した取引が行われていることが分かります。

さらに、同社のダークプール指数(DPI)は30.59%であり、取引の約3割がダークプール(非公開取引市場)で行われていることを示しています。

この割合は比較的高く、大規模な取引が非公開で行われることによって、価格形成の透明性が低下し、大口取引による価格変動が発生するリスクがあることを示唆しています。

総じて、同社の取引指標は十分な流動性を示しているものの、ダークプール取引の割合が高い点は、透明性や価格の安定性を重視する投資家にとって注意が必要な要素でしょう。

そのため、今後も継続して出来高やDPIの変動を注視することで、市場の動向やフィリップ・モリスに対する投資家の姿勢がより明確になる可能性があります。

さらに、その他のフィリップ・モリス(PM)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、フィリップ・モリスのページにアクセスしていただければと思います。


関連用語

ダーク・プール(私設取引所):株式などの金融商品が公開市場(例えば証券取引所)ではなく、非公開の場で取引されるプラットフォームのこと。ダーク・プールでは取引の内容(注文の価格や数量)が一般に公開されないため、大量の株式を売買する際に市場に与える影響を最小限に抑えることができる。主に機関投資家が利用し、取引の透明性が低い点が特徴。

ダーク・プール指数(DPI):ダーク・プール(私設取引所)内において、同社株式がどの程度取引されているかを示すものであり、注目すべき指標の1つである。


アナリスト紹介:イアニス・ゾルンパノス氏

📍バリュー・インカム担当

ゾルンパノス氏のその他の配当関連のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、ゾルンパノス氏のプロフィールページにアクセスしていただければと思います。


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