中立スーパー・マイクロ・コンピューターすべて表示スーパー・マイクロ(SMCI)の将来性とは?ヒンデンブルグ社の空売りレポートと年次報告書遅延で時間外から株価急落!
ジェームズ・ フォード- 本稿では、スーパー・マイクロ・コンピューター(SMCI)に関するヒンデンブルグ・リサーチによる空売りレポートと10-K報告書の提出遅延に伴う株価急落の分析を通じて、同社の今後の株価見通しと将来性に関する詳細な分析を解説していきます。
- ヒンデンブルグ・リサーチは、アメリカの投資リサーチ会社で、主に企業の不正行為や財務の不透明性を暴く空売りレポートを発表することで知られています。
- ヒンデンブルグ・リサーチは、スーパー・マイクロ・コンピューターに対して会計不正やサプライヤーとの未公開関係、ロシア制裁違反の疑いを指摘しています。
- 現時点で同社の今後の株価見通しは不確実性が高く、投資リスクが大きいため、私は同社に対するレーティングを「中立」に引き下げることにしました。
※「エヌビディア(NVDA)の株主が売却を進める一方、エヌビディアの株価は5年後も10年後も堅調か?今後の株価見通しに迫る!」の続き
スーパー・マイクロ・コンピューター(SMCI)の株価が大幅急落の理由
(出典:Trendpsider)
2024年8月28日、スーパー・マイクロ・コンピューター(SMCI)の株価は一日で25%もの大幅下落を記録し、史上最高値からは67%以上も下がっています。2024年8月6日発表された最新の2024年第4四半期決算を含め、直近のいくつかの厳しい四半期決算は、同社の利益率に課題があることを示しています。
しかし、この大幅な下落はそれだけでは説明できません。同社はまさに「完璧な嵐」の中心にいます。まず、空売りレポートが発表され、その後、10-K報告書の提出が遅れました。
これはただの悪いタイミングなのでしょうか?それとも、この2つの出来事には関連があるのでしょうか?
まずはヒンデンブルグ・リサーチの空売りレポートについて見ていきましょう。
関連用語
空売りレポート(ショートレポート):特定の企業の株価が下落する可能性があると主張するレポートのこと。このレポートを発表することで、空売り(株価が下落すると利益を得る投資手法)を促し、株価の下落を狙う。通常、財務不正や業績悪化などのリスクが指摘される。
10-K報告書:アメリカの上場企業が年に一度、証券取引委員会(SEC)に提出する詳細な財務報告書で、企業の業績や財務状況、リスク要因などを含む。
ヒンデンブルグ・リサーチ(Hindenburg Research):アメリカの投資リサーチ会社で、主に企業の不正行為や財務の不透明性を暴く空売りレポートを発表することで知られています。このレポートによって、対象企業の株価が急落することが多いため、投資家や市場に大きな影響を与えることがあります。
ヒンデンブルグ・リサーチのスーパー・マイクロ・コンピューター(SMCI)に関する空売りレポートの詳細
ヒンデンブルグ・リサーチは、多くの空売りレポートを発表していることで知られており、その内容は過大なバリュエーションへの警告から、特定の企業を完全に詐欺と断じるものまでさまざまです。直近の同社のレポートでは、スーパー・マイクロ・コンピューター(SMCI)が取り上げられましたが、残念ながら後者に該当します。
このレポートで指摘された主な問題は次の3点です。
・会計の不正
・サプライヤーとの未公開の関係
・ロシア制裁の違反
ヒンデンブルグ・リサーチによれば、スーパー・マイクロ・コンピューターは「過剰出荷」を行い、まだ発生していない売上を計上していたとのことです。この問題で、スーパー・マイクロ・コンピューターは2018年にSECから告発され、ナスダックから上場廃止となりました。
さらに、ヒンデンブルグ・リサーチは、スーパー・マイクロ・コンピューターがサプライヤーのAblecomおよびCompuwareと密接な関係にあることを明らかにしました。
2024年4月時点で、ビル・リャン氏とその直系の家族はCompuwareの株式を15.83%保有しており、兄のスティーブ・リャン氏とその家族はさらに大きな37.67%の株式を保有していたことが、同社の投資家による提出書類で明らかになっています。また、AblecomはCompuwareの株式の15%を保有していました。
(出所:ヒンデンブルグ・リサーチのレポート)
最後に、スーパー・マイクロ・コンピューターがロシアの制裁を回避し、ロシア企業に3,000万ドル相当の商品を販売した可能性があることも示唆されています。
ヒンデンブルグ・リサーチの空売りレポートの実績
ヒンデンブルグ・リサーチは、ショートの対象としてふさわしいと判断した企業をターゲットにし、ここ数年で数々の的中を記録しています。
2023年に彼らが行った予測のリストは下記の通りです。
2023年にヒンデンブルク・リサーチが注目した銘柄は、平均で31.5%も下落しています。これは、2023年にS&P 500が約25%上昇しているのとは対照的です。
(出所:breakoutpoint.com)
とはいえ、すべての分析が的中するわけではありません。以前、ヒンデンブルグ・リサーチがブロック(SQ)についての空売りレポートを出しましたが、その後、株価は実際に上昇しました。
ただ、そのレポートの内容は今回のスーパー・マイクロ・コンピューター(SMCI)に対する攻撃とは異なるものでした。
なぜスーパー・マイクロ・コンピューター(SMCI)は10-K報告書の提出を遅らせたのか?
10-K報告書の提出が遅れる理由はいくつか考えられますが、多くの場合、それは良い兆候ではありません。スーパー・マイクロ・コンピューター(SMCI)は2018年にも、SECの調査を受けて10-K報告書の提出を遅らせたことがあります。
そして、同社は下記のように発表しています。
(原文)SMCI is unable to file its Annual Report within the prescribed time period without unreasonable effort or expense.
(日本語訳)SMCIは、合理的な努力や費用をかけずに、所定の期間内に年次報告書を提出することができません。
(出所:Seeking Alpha)
この曖昧な声明は、何を意味しているのかは不明ですが、ヒンデンブルグ・リサーチの空売りレポートを踏まえると、投資家たちは何か重大なことが隠されているのではないかと考えています。
ヒンデンブルグ・リサーチのレポートが、スーパー・マイクロ・コンピューターが改訂したり、報告書で適切に対応したりする必要のある問題点を浮き彫りにした可能性が高いため、報告の遅延に繋がったのかもしれません。
問題は、これがそれほど重要でないことで、同社が慎重になっているだけなのか、それとも、より深刻な問題を隠しているのか、という点です。
企業が財務報告を遅らせた場合、どのような影響があるのでしょうか? 状況を理解するために、2024年に最近発生した遅延の事例を見てみましょう。
アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)は、CFOを突然解任した後に10-K報告書の提出を遅らせました。
ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)は、前四半期の損失を修正する必要があったため、10-K報告書の提出が遅れました。
マテル(MAT)は、「財務報告における内部統制の重大な欠陥」を理由に、2020年の年次報告書の提出を遅らせました。
(出典:Trendpsider)
そして、これら3社は2024年も苦戦しており、この財務報告を遅らせた企業における株価トレンドはすでに分析されています。
S&P Globalの調査によると、ニュースが報じられ、財務報告書が提出された後でも、これらの財務報告を遅らせた企業の株価は、引き続きパフォーマンスが振るわない傾向があることが明らかになっています。
図1: イベント日周辺の異常リターン
ラッセル3000指数: 1994年2月 - 2015年6月(原文)Companies may pre-announce intent to file form NT
(日本語訳)企業は、期限内に提出できないことを事前に発表する場合があります。
(原文)Late filers continue to underpeform after filing form NT
(日本語訳)財務報告の提出が遅れた企業は、その後も引き続きパフォーマンスが低迷する傾向があります。
(原文)Late filers are also typically companies with poor fundamental characteristics relative to peers; investors may want to consider avoiding or short-selling these firms.
(日本語訳)財務報告を遅延提出する企業は、一般的に同業他社と比べてファンダメンタルズが劣ることが多いです。投資家は、これらの企業を避けるか、空売りを検討した方が良いかもしれません。
(出所:S&P Global)
私のスーパー・マイクロ・コンピューター(SMCI)に対する考察
全体として、スーパー・マイクロ・コンピューター(SMCI)の状況はかなり厳しいように見えます。このような財務報告の遅延のニュースや空売りレポートが公表されると、企業のバリュエーションやテクニカル分析よりもこれらのニュースに関する真実が重視されます。そして、市場の投資家は、誤ったデータや仮定に基づいて、同社のバリュエーションを判断していた可能性があります。もしヒンデンブルク・リサーチの指摘が正しければ、売上や利益の減少だけでなく、企業の評判にも大きなダメージが及び、さらに深刻な影響が出るかもしれません。
とはいえ、テクニカル面では、200週移動平均線が位置する300ドルに強力なサポートがあります。
(出典:Trendpsider)
しかし、現時点では、同社株価に関する不確実性があまりにも大きいため、同社に対するレーティングを「中立」に引き下げます。最終的には、この下落を利用して利益を得るチャンスがあるかもしれませんが、そのリスクに見合うかどうかは現時点では不透明だと考えます。
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