米国債への利下げの影響とは?米国10年物国債の利回りが4.24%に上昇し米国株は下落も、影響は限定的?
ローレンス・ フラー- 本稿では、足元で米国10年物国債利回りが4.24%に上昇し米国株が下落している中で、FRBにより実施された利下げの米国債への影響を詳しく解説していきます。
- 米国株式市場は10月23日に長期金利の上昇によって主要指数が大きく下落しましたが、これは一時的な調整と見ています。
- 米国経済指標が予想を上回る結果を示しており、米国債の長期金利の上昇は経済成長の加速を反映しているため、株価が長期的に好調を維持する可能性があると考えています。
- 大統領選挙による市場への影響は限定的と予想しており、長期金利の上昇を見据えた戦略で投資を継続するべきだと見ています。
2024年10月23日の米国株式市場は、主要指数が1ヶ月以上ぶりに大きく下落しましたが、その原因は米国の長期金利の上昇です。
(出所:Finviz)
ただし、10年物米国債の利回りが4.24%に達したことを大きな逆風とは見ていません。
むしろ、1ヶ月前にFRBが短期金利を0.5%引き下げた際、10年債の利回りが3.64%にとどまり、イールドカーブが逆転していたことを考えると、今の状況は経済が当時の予想よりもはるかに強固であることを示していると考えています。
当時は、経済成長の減速が懸念されていましたが、雇用の回復や第3四半期のGDP成長率が3%を超える見込みとなった今、その心配はなくなりました。
債券利回りの上昇は、先月の行き過ぎた低金利からの調整にすぎず、イールドカーブの正常化が始まったものと見ています。
とはいえ、長期金利が急に上昇すると、株価はその逆に動く傾向があります。
これは、株式が長期的な資産であり、その価値を将来のキャッシュフローを長期金利で割り引いて評価するため、金利が上がると将来の利益に対して投資家が支払う価格が低くなるからです。
しかし、長期金利の上昇が経済成長の加速によるものであれば、株式が長期的に好調を維持する可能性は十分にあると見ています。
米国債利回り、FRBの見通しと選挙リスクで上昇
(出所:Bloomberg)
FRBが最初に利下げを行って以来、短期・長期金利が上昇していることは、もし兆候とすれば、良い方向を示していると言えます。
米国2年債と10年債の利回りが上昇している状況は、1995年とほぼ同じで、当時のFRBのグリーンスパン議長は経済の「ソフトランディング」を成功させました。
短期金利が4%に戻っているのは、投資家が経済がさらなる急激な金融緩和を必要としていないと判断しているからです。
そのため、利下げは、インフレが緩やかに進行し、経済が拡大を続ける中で、慎重かつ段階的に進められるべきだと考えます。
最新の米国債売りは、1995年のFRB利下げ後と似た動き
1995年と2024年、最初の利下げ後に2年物利回りが上昇
(出所:Bloomberg)
同様に、経済拡大が続くとの期待から、長期金利が短期金利を上回り始めています。
実際に、過去1ヶ月の経済指標は予想を上回る結果が続いています。
もし悲観的な見方をする人であれば、過去1ヶ月の米国債利回りの動きを大げさに捉えてしまうかもしれませんが、それは大きな間違いだと思います。
そのため、年末までに市場の主要指数が一時的に下落した場合、それは絶好の押し目買いの好機になると考えています。
大統領選挙が近づくにつれ、債券市場では「もしトランプ氏が勝利すれば、減税による財政赤字の拡大や、関税導入によるインフレ上昇が見込まれ、長期金利が上昇するかもしれない」という懸念が出ています。
しかし、選挙の結果が五分五分である以上、その予想に基づいて行動するのはリスクが高いです。
その時が来たら対応を考えるべきであり、今焦る必要はないと見ています。
毎回の選挙で「市場に大きな影響がある」と言われますが、実際にはそれほど大きな影響はありません。
それとは関係なく、私の米国債券市場に対する戦略は、長期金利の上昇を見据えつつ、利回りがより魅力的になるまで期間を延ばさずにヘッジを続けるというものです。
誰が選挙に勝とうとも、この方針を変える必要はないと考えています。
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アナリスト紹介:ローレンス・フラー
📍米国マクロ経済担当
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