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10 - 09 - 2024

ハードランディングとは?米国経済はハードランディングに向かっているのか?

ローレンス・ フラーローレンス・ フラー
  • 本稿では、足元で議論されている「ハードランディング」、並びに、今後の米国経済がハードランディングに向かっているのかを詳しく解説していきます。
  • 市場の投資家には常に心配事が付き物であり、最近では雇用統計の良好さがインフレ再燃の懸念を引き起こし、ハードランディングの可能性が議論されています。 
  • インフレ目標は達成されていると見られ、フェデラルファンド金利の緩やかな低下が予想され、債券利回りの上昇も正常化の一環と考えています。 
  • 市場感情による短期的な動きで利回りは一時的に4%を超えていますが、ソフトランディングの裏付けとなるデータにより再び3.5%に下がると見ています。

投資家は常に何かしら心配するものが必要で、ひとつの問題がなくなると、次の心配事が出てくるものです。

これが投資というものです。

一昨日の新たな懸念は、先週金曜日に発表された予想を上回る雇用統計を受けた債券利回りの上昇でした。

以前は、雇用の減速が大きな懸念材料でしたが、今では雇用が好調すぎることが問題視されており、特に賃金の上昇がインフレを再燃させ、FRBの金融緩和が期待通りに進まないのではないかという不安があります。

その結果、ソフトランディングではなく「ハードランディング」になるのではという懸念が広がっています。

ハードランディングとは、経済の急激な減速や景気後退により、企業業績や株価が大幅に下落する状況を指します。

通常、中央銀行がインフレを抑制するために金利を引き上げ、結果として経済活動が急激に減速することが原因となります。

これにより、投資家は景気後退のリスクや企業収益の悪化を懸念し、株式市場が大きく下落することがあります。

ジャンボ(大幅利下げ)に別れを

FRBの大幅利下げから2週間が経ち、市場は次の大幅利下げへの期待を断念

(出所:Bloomberg

経済成長が十分に減速せず、インフレ率が目標まで下がらない場合、ハードランディングが起こる可能性があります。

その結果、インフレが再び上昇し、FRBが短期金利を引き下げることが難しくなるかもしれません。

一部では、雇用や賃金の上昇に伴い、11月の利下げ予想が50ベーシスポイントから25ベーシスポイントに下がったことを懸念する声もあります。

しかし、FRBはそもそも50ベーシスポイントの利下げを示唆していたわけではなく、私が考えるソフトランディングのシナリオでは、そこまでの大幅な利下げは必要ありません。

むしろ、もしそんな大幅な利下げが行われるなら、それは成長率の減速が急激すぎることを意味し、これが本当の懸念材料になるでしょう。

予想外に強い雇用統計を受けて米国債が急落

売りが加速し、2年債の利回りは再び4%近くまで上昇

(出所:Bloomberg

投資家は、今後数ヶ月でサービス業を中心とした経済成長が落ち着くにつれて、フェデラルファンド金利が緩やかに低下していくことを見込むべきでしょう。

インフレについては、過去3ヶ月間で目標の2%に達しており、全体的にもコア指標でも大きな再燃の可能性はほとんどないため、あまり気にする必要はないと見ています。

最近の長期債利回りの上昇、特に10年物国債の利回り上昇も予想通りです。

これは、イールドカーブが正常化し、短期金利が長期金利を下回り、カーブの逆転が解消される過程にあるからです。

この動きは、経済拡大が続く兆しであり、景気後退の懸念が後退していることを示しています。

2年前に逆イールドが発生したとき、景気後退が迫っているかどうかの議論が始まったことを思い出してください。

米国2年物国債の利回り

(出所:Stockcharts

2年物国債の利回りは、FRBの政策金利が1年後にどの水準にあるかを示す指標とされていますが、現在4%まで上昇しています。

ただ、これは過去1年間に何度も見られたように、一時的な行き過ぎであり、短期的な市場の感情による動きだと思われます。

私は、この利回りが4%を大きく超えることはないと考えており、今後発表されるデータがソフトランディングを裏付けるにつれて、3.5%に向けて再び下がっていくと見込んでいます。

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アナリスト紹介:ローレンス・フラー

ローレンス・フラー氏は、1993年にメリルリンチ証券でファイナンシャル・コンサルタントとしてキャリアをスタートしました。その後、ファースト・ユニオン・ブローカレッジ、モルガン・スタンレー証券、INGグループで同職を務め、30年以上にわたり個人投資家顧客の投資ポートフォリオを管理してきました。

その後、2005年には長期的な目標であったFuller Asset Management LLCを設立し、独立を果たしました。さらに、2013年より米国金融ニュースサイトSeeking Alphaにて、米国投資家に対してマクロ経済・投資リサーチの提供を開始しており、現在では14,000人以上のフォロワーを獲得しております。

フラー氏は、ノースカロライナ大学チャペルヒル校を卒業し、政治学の学士号を取得しております。

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