02/27/2025

米国マネーマーケットファンドは遂に6兆9,100億ドルに到達!利下げ後はこれらの資金が米国株式市場を支える展開?

clear glass jar with coinsローレンス・ フラーローレンス・ フラー
  • 本稿では、足元のトランプ大統領による関税の動向、並びに、6兆9,100億ドルという規模に到達した米国のマネーマーケットファンドが今後の米国株式市場に与え得る影響に関して詳しく解説していきます。
  • 株式市場は4日連続で下落した後、一時回復を試みましたが、トランプ大統領の関税発言によって再び下落しました。市場の不透明感が増し、投資家の警戒感が高まっています。
  • エヌビディア(NVDA)は好決算を発表し、売上・利益ともに市場予想を上回りましたが、株価の割高感や成長鈍化が懸念され、今後の動向は不透明です。
  • 小型株指数のラッセル2000は下落し、大型株とのギャップが拡大しています。今後の市場の回復は、金融政策やマネーマーケットファンドにプールされている投資資金の動向に大きく左右されると見ています。

米国マネーマーケットファンドの資金が米国株式市場を支える?

4日連続で株価が下落した後、主要な市場指数は昨日、懸命に回復を試みましたが、正午ごろには急停止しました。トランプ大統領が初の閣議で関税に関する一連の混乱した発言をしたことで、市場はそれまでの上昇分をすべて失いました。大統領は、欧州連合(EU)からのすべての輸入品に対し25%の関税を課す決定を下したと発表しました。これは新たな関税措置となり、貿易摩擦をさらに激化させる可能性があります。

また、メキシコおよびカナダからの輸入品にも25%の関税を適用すると改めて表明しましたが、その実施日を当初の期限から1カ月延長し、4月2日に変更しました。この発言は、そもそも「どの品目に、どの程度の関税が、いつ、誰に対して課されるのか」という既存の不透明感をさらに増大させる結果となりました。もし混乱していると感じるなら、それはあなただけではありません。

そして、市場が終盤にかけて小幅に持ち直したのは、エヌビディア(NVDA)の決算発表への期待があったためです。

(出所:Finviz

実際に、AIの象徴的存在であるエヌビディアは驚異的な決算を発表しました。エヌビディアは売上・利益ともに市場予想を上回り、さらに4月期の業績見通しも予想を上回る強気のガイダンスを示しました。これは、通常であれば翌日の株価上昇につながる「三拍子揃った好決算」ですが、現在のマクロ経済の向かい風が強まる中で、それがどこまで通用するかは不透明です。投資家が関税を嫌うことは明白であり、昨日10年物米国債利回りが4.26%まで急落したことからも、現在の市場はインフレよりも経済成長の減速を懸念していることがうかがえます。

さらに、エヌビディアにはもう一つの課題があります。それは、依然として株価が非常に割高であることに加え、昨年のピーク時と比べて利益・売上成長率が鈍化している点です。

S&P500、上昇分を帳消しに

(出所:Bloomberg

これが、エヌビディアと「マグニフィセント7」の他の6銘柄が昨年12月の最高値から約11%下落している理由です。これらの銘柄は、高い株価収益率(PER)に見合うだけの利益成長を実現する必要があります。それが達成されれば、新たな投資対象として魅力を持つようになるでしょう。

同時に、大統領選以降、「トランプ・トレード」と呼ばれる銘柄群は大きく崩れました。これらは、貿易や規制緩和政策の恩恵を最も受けると期待されていた市場セグメントです。特に目立つのは、米国内市場に特化したラッセル2000指数です。しかし、この指数は11月に記録した史上最高値から10%調整し、大型株指数と小型株指数のギャップが拡大しています。バンク・オブ・アメリカによると、企業の決算説明会の記録を分析した結果、小型株企業の経営者たちは、大型株企業の経営者と比べて、現在の市場環境についてより悲観的な見方を示していることがわかりました。

ラッセル2000とS&P500の差が拡大

(出所:Bloomberg

結果、国内経済の「通信簿」としてのラッセル2000は、今のところ合格点には達していません。私はこれまで何度も言っていますが、トランプ政権の関係者がこの状況に無関心であるとは考えにくいです。そのため、私は依然として、貿易政策を巡る日々の騒動は、政権の「敵」と見なされる国内外の相手を動揺させることを目的としていると確信しています。

したがって、もし政府の「吠え声」が実際の「噛みつき」ほど深刻ではないとすれば、それが悪い政策であることに変わりはないものの、「よりマシな政策」さえ示されれば、リスク資産の価格は回復する可能性があります。もしこのシナリオが現実となるなら、小型株は今後最も恩恵を受けることになるでしょう。バリュエーションの観点から見ても、小型株はより魅力的です。なぜなら、ラッセル2000指数はここ4年間ほぼ横ばいの状態が続いており、黒字を計上している銘柄の利益成長率が今後加速すると見込まれているからです。ただし、最終的な動向は、どのような政策が実施されるかに大きく左右されるでしょう。

iシェアーズ ラッセル 2000 ETFの推移

(出所:Stockcharts

足元、私は現在の調整局面がどのような形で収束するのかについて考えを述べました。具体的には、財政緊縮、関税、移民政策といった向かい風がすべて織り込まれた後に、長期金利の低下、減税、そしてFRBの積極的な金融緩和が追い風となるシナリオを想定しました。現時点では、景気後退や弱気相場に突入するとは考えていません。むしろ、今後1~2カ月の間に底を形成する可能性が高い調整局面に見えます。そして、もし本当に底を打てば、市場の回復を後押しする莫大な資金が控えているはずです。

驚くべきことに、米国のマネーマーケットファンド(MMF)の総資産は月ごとに増加を続け、過去最高を更新し続けています。投資会社協会(Investment Company Institute)の最新データによると、その総額は6兆9,100億ドルに達しました。この増加ペースは非常に急激であり、下記のチャート(10月時点のもの)が最新のデータとして入手できる中で最も新しいものとなっています。

因みに、マネーマーケットファンドとは、短期金融商品を中心に運用される投資信託の一種です。主に米国財務省短期証券(T-Bills)、譲渡性預金(CD)、コマーシャルペーパー(CP)など、安全性の高い短期資産に投資することで、元本の安定性を保ちつつ、市場金利に連動した利回りを提供します。リスクが低く流動性が高いため、個人投資家や企業の資金運用手段として広く利用されています。特に市場の不透明感が高まる局面では、安全資産としての需要が高まる傾向があります。

そして、この総額のうち、2兆8,000億ドルがリテール向けファンドに分類されています。これは、FRBが政策金利を100ベーシスポイント(1%)引き下げたにもかかわらず起きている現象です。その結果、現在のマネーマーケットファンドの最高利回りは4%を少し上回る水準となっています。

仮にFRBが今年あと2回、もしくは3回利下げを実施すれば、この莫大な資金の利回りは3.5%を下回ることになります。そうなれば、投資家はより高い収益を生み出す資産へ資金を再配分する可能性が高くなります。この動きが、魅力的で持続可能な配当を提供する企業の株価を押し上げるでしょう。また、長期金利が5%を超えることを抑制する要因にもなると考えています。

このキャッシュの存在は、多くの人が忘れがちなリスク資産の「命綱」ではないでしょうか。

(出所:Bloomberg


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トランプ関税

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