04/29/2025

トランプ関税の影響をわかりやすく解説!今後数週間で経済指標が政権への圧力を一層強める展開?

man in black suit jacket with red heart on his neckローレンス・ フラーローレンス・ フラー
  • 本稿では、トランプ関税の影響をわかりやすく解説し、加えて、その影響を踏まえた今後の米国株見通しを詳しく解説していきます。
  • トランプ政権による関税政策は、物流や小売などの実体経済に影響を及ぼし始めており、特に中小企業や労働者への打撃が深刻化しています。
  • 米中間の通商合意が成立しない限り、供給網の混乱や価格上昇は避けられず、今後数週間で経済指標が政権への圧力を一層強めると見られます。
  • 現在の米国経済は一部に懸念材料があるものの、消費者の基盤は健全であり、関税による影響も一時的であると考えています。

トランプ関税による影響の兆候を読み取る

S&P500はわずかな上昇を記録し、5日連続の続伸となりました。通商や関税に関する新たなニュースはほとんどなく、当局者から「現在進行中の取り組みがある」との発言があった程度です。今週はS&P500構成銘柄のうち180社が決算を発表する予定で、その中には「マグニフィセント・セブン」のうち4社も含まれています。私は業績が引き続き市場予想を上回ると見ていますが、それは「過去の話」です。今後は決算よりも企業のガイダンス、あるいはその欠如が株価に影響を与え、市場全体に重しとなるほか、トランプ政権に対して通商合意を進める圧力を強めることになります。中国との貿易について、大統領がハト派的な姿勢に転じるまでは、先週の上昇をさらに積み増すのは難しいと私は考えています。

(出所:Finviz

米国企業から明確なガイダンスが出てこないこともトランプ政権にとってプレッシャーとなりますが、今後発表される経済指標も懸念を高め、政権の危機感を強める要因となるでしょう。今週は決算だけでなく、3月の個人消費、インフレ、雇用などに関する指標も発表されますが、これらは関税前のデータであるため、将来を占う材料としては限定的です。関税の影響はすでに港湾で表れ始めており、最終的には店頭価格にも波及してくるでしょう。

(出所:Bloomberg)

私は4月8日時点で「この混乱を解消するには30日以内が勝負」と述べました。なぜなら、中国で商品が販売され、船積みされ、海を渡り、米国の港で荷下ろしされ、店舗に配送され、棚に陳列されるまでには約8週間かかるからです。したがって、消費者は5月末頃から、在庫の減少と価格の上昇という形で関税の影響を感じ始めることになります。価格の上昇も問題ですが、在庫の不足も同様に深刻です。というのも、多くの中小企業は関税負担に耐えられないためです。

トランプ政権の関税政策によって、実体経済における最初の犠牲者となるのは、港湾、物流、トラック輸送、小売業の労働者でしょう。関税が発動された4月以降、中国から米国への貨物輸送量は最大で60%も減少しています。4月は通常、小売業者が新学期シーズンや年後半に向けて在庫を積み増す時期ですが、中国からの輸入にかかる145%の関税により、多くの注文が保留もしくはキャンセルされています。中小企業の多くは、中国以外の供給元へ切り替えるスケールメリットを持たないため、早期に中国との通商合意がまとまらなければ、第2四半期に米国経済が大きな代償を払うことになるでしょう。

(出所:Bloomberg)

もし失業保険申請件数や失業率が上昇し始めるとすれば、それはまさにこの分野からでしょう。また、通商合意が成立しても、それは供給網を一気に再稼働させる「スイッチ」ではありません。合意が成立したとしても、パンデミック時に見られたような供給網のボトルネックが再び発生し、その解消には時間がかかるでしょう。ただし、今回の回復スピードは前回よりは速いと考えています。

この夏にかけて、こうした状況が経済にとって大きな不安材料となるのは確かですが、中国との通商合意が成立せず、現在の通商封鎖が続かない限り、景気後退に至ることはないと私は見ています。私は、5月中にこの封鎖が解除されると予想しており、今後発表される経済指標が大統領に対して迅速な対応を迫ることになると考えています。

私は現在の米国経済を、多くの人が考えているよりも健全な状態だと見ています。なぜなら、現在の景況感を示す指標がどれだけ悲観的な内容であっても、消費者のファンダメンタルズはまだしっかりしているからです。在庫問題は一時的なものであり、トランプ政権の関税政策により一時的に物価が上昇したとしても、消費者はそれに耐えうる体力を持っています。家計の債務返済額が可処分所得に占める割合は、パンデミック前よりも低い11.3%にとどまっています。悲観的な人々は、債務残高の絶対額ばかりに注目しますが、本質的に重要なのは返済能力です。これは延滞率やデフォルト率、さらには消費の水準にも直結します。

(出所:FRED

実際、3月のクレジットカードに関するデータを見ると、延滞率や貸倒率は過去1年間安定しており、平均延滞率は前年同月の2.92%から今年は2.84%に低下しています。なお、購入件数の減少が見られるのは事実ですが、これは経済成長の減速や、関税への不安によって消費者心理が冷え込んでいることを反映した自然な動きです。

(出所:SeekingAlpha

私は自由貿易主義者として、大統領の通商政策を支持しているわけではありません。しかし、そのバイアスが経済指標の分析に影響しないよう自制しています。今年第1四半期の経済成長率が鈍化した主因は輸入の急増にありますが、それを踏まえても、現時点での米国経済は健全に見えます。今後6〜8週間の間には、関税による悪影響がさまざまなデータに表れてくるでしょうが、私はこれを一時的な要因と見なしており、景気拡大の流れを断ち切るとは考えていません。ただし、この前提は、トランプ大統領が現在の懲罰的な関税政策を撤回することが条件となります。ビジネス界、消費者、投資家、そして支持率の低下が、その圧力を強めていくと私は見ています。


🚀お気に入りのアナリストをフォローして最新レポートをリアルタイムでGET🚀

ローレンス・フラー氏は米国マクロ経済に関するレポートを毎週複数執筆しており、プロフィール上にてフォローをしていただくと、最新のレポートがリリースされる度にリアルタイムでメール経由でお知らせを受け取ることができます。

さらに、その他のアナリストも詳細な分析レポートを日々執筆しており、インベストリンゴのプラットフォーム上では「毎月約100件、年間で1000件以上」のレポートを提供しております。

そのため、フラー氏の最新レポートに関心がございましたら、是非、フォローしていただければと思います!


✨知識は共有することでさらに価値を増します✨

🚀この情報が役立つと感じたら、ぜひ周囲の方とシェアをお願いいたします🚀


アナリスト紹介:ローレンス・フラー

📍米国マクロ経済担当

フラー氏のその他の米国マクロ経済関連のレポートに関心がございましたら、こちらのリンクより、フラー氏のプロフィールページにてご覧いただければと思います。


インベストリンゴでは、弊社のアナリストが「高配当銘柄」から「AIや半導体関連のテクノロジー銘柄」まで、米国株個別企業に関する分析を日々日本語でアップデートしております。さらに、インベストリンゴのレポート上でカバーされている米国、及び、外国企業数は「250銘柄以上」(対象銘柄リストはこちら)となっております。米国株式市場に関心のある方は、是非、弊社プラットフォームより詳細な分析レポートをご覧いただければと思います。