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11 - 11 - 2024

トランプが大統領になったら株価はどうなる?トランプ政権の今後の政策の詳細な分析を通じて、米国株への影響を徹底解説!

ローレンス・ フラーローレンス・ フラー
  • 本稿では、「トランプが大統領になったら株価はどうなる?」という疑問に答えるべく、新トランプ陣営の今後の想定される政策の詳細な分析を通じて、今後の米国株式市場の見通しを詳しく解説していきます。​
  • トランプ氏の政策による経済成長期待から、米国株式市場は強気相場が続き、S&P 500やラッセル2000指数が大幅に上昇しました。 
  • トランプ氏の移民政策や関税方針にはインフレリスクが伴い、特に低所得層や輸入企業に大きな影響を与える可能性があります。 
  • FRBの金利引き下げなど経済データの変化に応じて、2025年の投資環境は不透明であり、防御的な投資戦略への切り替えが必要になるかもしれません。

米国大統領選挙の株価への影響と米国株の見通しとは?

大統領選後の不透明感が解消された後の、年末に向けた株価の上昇に備えるように読者の皆様にはお伝えしてきましたが、その展開が予想よりも早く訪れたようです。

S&P 500は今年最高の一週間を迎え、4.7%も上昇して2024年で50回目となる最高値を更新しました。

さらに、小型株指数のラッセル2000指数は8.7%もの急騰を見せ、2021年以来の過去最高値を超えました。

これは、この強気相場の広がりと経済成長の堅調さが市場の基盤を支えている証といえます。

また、連邦準備制度理事会(FRB)は短期金利を0.25%引き下げ、4.5〜4.75%の範囲に設定しました。

これにより企業や消費者の借入コストが下がり、FRBの目標である2%のインフレ率達成に向けた前進が期待されています。

そして、さらに、良いニュースは続きます。

(出所:Edward Jones

火曜日の選挙がスムーズに進行し、翌朝には問題なく勝者が決定したことも投資家にとっては安心材料でした。

そして、特筆すべきはドナルド・トランプ氏が当選したことです。

彼の成長重視の政策が先週の市場を大きく動かしました。

銀行株や一部のエネルギー株は規制緩和の期待から急上昇し、小型株も関税政策により国内企業が海外企業より有利な立場に立てるという見通しから上昇しました。

また、トランプ氏がビットコイン(BTCUSD)支持を表明しており、SEC委員長のゲンスラー氏に代わるより仮想通貨に友好的な新たなSEC長官が任命される可能性が高いことから、ビットコインも新たな高値を記録しました。

S&P 500が6000にわずか届かずで取引を終える

(出所:Bloomberg)

先週の株価上昇は、年初から強気姿勢を保っていた投資家にとって「追い風」となりましたが、トランプ氏の政策によるプラス面ばかりが市場に織り込まれている現状で、逆風となりうる要素も慎重に見ておくべきでしょう。

2025年には、これら両面を考慮することが重要です。

トランプ氏の政策は4つの主要な柱に分けられ、投資の観点からそれぞれについて私の見解をお伝えしたいと思います。

規制緩和について

トランプ氏は金融やエネルギーなどの業界での規制緩和を進める意向で、これにより資本投資の増加、企業の合併・買収の活性化、そして企業収益の向上が期待されます。

この結果、両業界の株価が大きく伸びる可能性があります。

一方で、銀行業界での規制緩和はシステミックリスクを高め、2008年の金融危機と同様の問題を引き起こしかねません。

また、化石燃料業界での規制撤廃は、これまで進んできた気候変動対策の妨げとなるリスクもはらんでいます。

気候変動への懸念が2025年の投資家の主要な関心事とは限りませんが、金融システムの安定性は依然として重要な課題です。

短期的には規制緩和による利益増加が期待されるものの、長期的に見れば潜在的なコストが増える可能性もあります。

それでも、2025年には規制緩和が投資家にとって強力な追い風となる見込みです。

移民政策について

トランプ氏は「アメリカ史上最大の強制送還計画」を掲げ、就任初日から実行に移す可能性があります。

これには、犯罪歴がある人や、全ての上訴プロセスが終了した約100万人が主な対象になると見られています。

しかし、初任期でも年間36万人以上の送還は達成しておらず、これを実現するには大きな困難が伴うでしょう。

投資家に影響が出る可能性が高まるのは、低賃金のサービス業に従事している約1,000万人の不法移民が対象に含まれる場合です。

彼らは農業、建設、小売業、外食産業などで働き、米国経済において重要な役割を果たしています。

例えば、アメリカ進歩センター(Center for American Progress)のデータによれば、食品供給チェーンにおいて約170万人の不法移民が働いており、その内訳は農業に30万人、食品生産に20万6,000人、食料品店やコンビニに15万4,000人、レストランには83万3,000人が従事しています。

彼らの労働力が失われれば、労働市場に供給不足が生じ、賃金が急上昇するでしょう。

これにより、食料品価格の上昇も避けられない可能性があります。

また、他の業界でも同様の影響が予想されます。

したがって、トランプ氏の移民政策はインフレを引き起こすリスクがあり、投資家にとって大きな逆風となる可能性がありますが、実際の計画の詳細はまだ明らかになっていません。

関税について

トランプ氏は、すべての輸入品に一律20%、中国からの輸入品には60%の関税を課す案を提案しています。

これにより連邦政府の収入が増え、製造業が米国に生産拠点を移すことにつながると主張しています。

しかし実際に輸入品を購入して関税を負担するのはウォルマート(WMT)やターゲット(TGT)、ホームデポ(HD)やローズ(LOW)などの米国内の企業であり、そのコストは最終的に商品価格として消費者に転嫁されます。

もちろん、外国のメーカーが関税を見越して値下げをする可能性もありますが、それが保証されているわけではありません。

さらに、ピターソン国際経済研究所の報告によると、このような関税は低所得層に大きな負担をかける「逆進的な税」として作用しがちとのことです。

トランプ氏の経済政策は99%の人々に悪影響を与える

多くのアメリカ人にとって、トランプ氏が提案する関税は、減税延長で得られる所得の増加を帳消しにしてしまうでしょう。

(出所:Bloomberg)

また、他国が報復措置として関税を引き上げると、米国の輸出が打撃を受け、国際貿易や経済活動が抑制される可能性もあります。

トランプ氏は初任期中にも特定の業界に関税をかけましたが、その平均は全輸入品の2%程度にとどまっています。

これを20%に引き上げることで、インフレが急上昇し、消費者支出の実質成長が抑えられ、現状の経済成長が危機に陥る可能性が高まります。

関税が交渉の手段として利用されることも考えられますが、すべての輸入品に一律20%の関税が実施されれば、2025年の投資環境において最も大きな逆風になるでしょう。

減税について

投資家は法人税の引き下げに期待しており、これにより企業の利益が増え、資本支出が拡大することが予想されます。

しかし実際の実施は、早くても来年末の2017年の減税・雇用法(TCJA)の期限切れのタイミングになるでしょう。

その間にも、先に述べた政策の影響が重なり、トランプ氏が追加の減税を実現するのは難しくなる可能性があります。

また、共和党内でも増大する財政赤字への懸念が強まっており、党としても減税を進めるのが難しくなるかもしれません。

減税が実現すれば、実施された年には投資家にとって追い風となりますが、現時点では実現時期が不透明で確実性も低いため、今はまだ考慮する段階にはないでしょう。

トランプ2.0投資戦略

イデオロギーや政治的な偏見に基づいた予測ではなく、2025年初頭に実際に実施される政策に注目し、それが経済活動の先行指標である高頻度データにどのように影響するかを見極めていくべきでしょう。

現在、主な経済指標は概ね良好な方向に進んでおり、今後もこの傾向が続く限り、強気相場が続くと見ています。

一時的な調整や下落も、過去2年間と同様に買い場として活用できるでしょう。

ただし、トランプ氏の経済政策には大きな矛盾がある点が気がかりです。

彼は減税を掲げつつ、政府支出は削減しないと主張していますが、支持者のイーロン・マスク氏は予算均衡のために2兆ドルの支出削減が必要と考えています。

また、バイデン政権下で問題となったインフレを抑えたいと言いつつも、関税の引き上げや不法移民の強制送還を進めようとしており、これらの政策はインフレを引き起こす可能性があります。

選挙の不透明感が解消されたかと思えば、今度はどの政策が実行されるのかという新たな不確実性に直面している状況です。

さらに、ここ2年間続いてきたインフレ鈍化の流れが終われば、FRBによる短期金利の引き下げ計画も中断される可能性があり、2025年の投資環境にとって大きな逆風となるでしょう。

トランプ氏の勝利により、FRBの利下げに対する不確実性が増大

経済学者や投資家によるFRBの利上げに関する予測

(出所:Bloomberg)

また、引き続き、経済活動の先行指標に注目します。

そして、インフレ、消費者支出、労働市場、企業利益に関するデータの変化率が悪化してきた場合は、防御的な投資戦略に切り替えるつもりです。

それまでは、強気相場に乗り続ける方針です。

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今週の注目の経済指標カレンダー

今週の注目の経済指標としては、水曜日の消費者物価指数(CPI)、木曜日の生産者物価指数(PPI)、そして金曜日の小売売上高の発表があります。

これらを通じて、消費者の購買意欲が引き続き活発かどうかを確認することが出来るでしょう。

(出所:MarketWatch


アナリスト紹介:ローレンス・フラー

📍米国マクロ経済担当

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