テスラ / TSLA:決算後に株価上昇、イーロン・マスクのEV・AI銘柄の2024年1Q決算と今後の株価見通し・将来性
ウィリアム・ キーティング- テスラ(TSLA)は2024年4月23日に2024年度第1四半期決算を発表している。
- 業績不振にもかかわらず、イーロン・マスク氏がAIと将来のテクノロジーに焦点を当てたことで、同社の株価は決算後に12%上昇した。
- イーロン・マスク氏は悲惨な業績からAIと分散コンピューティングにおけるテスラの可能性に焦点を移し、投資家の信頼を高めることに成功したように見える。
テスラ(TSLA)の2024年度第1四半期決算に関して
イーロン・マスク氏は決算説明会の大半をロボタクシーとロボットの空想に費やした一方で、マーク・ザッカーバーグ氏は会社のAI関連の取り組みを収益化するには時間がかかるという事実を語った。
そして、決算後、イーロン・マスク氏のテスラ(TSLA)は12%上昇した一方で、マーク・ザッカーバーグ氏のメタ(META)は14%下落した。
テスラについてレポートを書くのは6年ぶりであるが、当時同社について書いたレポートは、同社の自動運転技術、別名「フルセルフドライビング(FSD)」に関する内容のものであった。
ただし、私はFSDに対して感心しなかったというのが本音である。
その後、FSDに何が起こったかを考えると、私のスタンスは正しかったと言えると思う。
さて、今週の決算説明会でイーロン・マスク氏が語ったいくつかの言葉が私の関心を引いたが、まずは結果からである。
テスラの悲惨な決算は、数週間前に発表された四半期の自動車販売台数からすれば、ほとんど驚きではないだろう。
第1四半期の売上高は前年同期比9%減の213億ドルで、フリーキャッシュフローは、前四半期の20億ドルの黒字に対し、25億ドルの赤字となっている。
同社は減収の主な原因を以下のように説明している。
原文:We experienced numerous challenges in Q1, from the Red Sea conflict and the arson attack at Gigafactory Berlin, to the gradual ramp of the updated Model 3 in Fremont.
日本語訳:第1四半期は、紅海における紛争やギガファクトリー・ベルリンでの放火事件から、フリーモントでのモデル3の段階的な立ち上げに至るまで、多くの困難を経験しました。
そして、
原文:Global EV sales continue to be under pressure as many carmakers prioritize hybrids over EVs.While positive for our regulatory credits business, we prefer the industry to continue pushing EV adoption, which is in-line with our mission.
日本語訳:多くの自動車メーカーがEVよりもハイブリッド車を優先しているため、世界のEV販売は引き続き厳しい状況にあります。私たちの規制クレジット事業にとってはプラスですが、私たちは、業界がEVの普及を推進し続けることを望んでいます。
EV市場が今年、複数の逆風に直面していることは公然の秘密である。
政府補助金の打ち切りから中国発の大規模な競争まで、あらゆる面で課題が浮上している。
そのため、テスラの不振は驚きではない。
しかし、同社の株価は決算後の取引で12%以上も上昇した。
なぜだろうか?
実際には、いくつかの要因が重なっていると見ている。
まず、決算後の上昇以前に、テスラの株価は今年に入ってから40%以上下落している。
また、2021年後半の高値から60%以上下落している。
個人的には、この水準でもテスラはまだ評価されすぎていると思うが、それはまた別の話である。
つまり、この背景には、特にここ数ヶ月の株価のひどい下落がある。
そして、イーロン・マスク氏が同社のAI関連の実力について述べたコメントが実にたくさんあった。
原文:And as we've announced, we will be showcasing our purpose-built robotaxi or Cybercab in August.
日本語訳:私たちが発表したように、私たちは8月に専用のロボットタクシー、サイバーキャブを展示する予定です。
原文:As I've said before, I think Optimus will be more valuable than everything else combined. Because if you've got a sentient humanoid robots that is able to navigate reality and do tasks at request, there is no meaningful limit to the size of the economy. So, that's what's going to happen. And I think Tesla is best positioned of any humanoid robot maker to be able to reach volume production with efficient inference on the robot itself.
日本語訳:前にも言ったように、オプティマスは他のすべてを合わせたよりも価値があると思っています。というのも、現実をナビゲートし、依頼されたタスクをこなすことのできる感覚を持ったヒューマノイドロボットがあれば、経済規模に意味のある限界はないからです。そして、そのようになると見ています。テスラはヒューマノイドロボットメーカーの中で、ロボット自体で効率的な推論を行いながら大量生産に達することができる最高の位置にいると思います。
原文:I mean, this, perhaps, is a point that is worth emphasizing Tesla's AI inference efficiency is vastly better than any other company. There's no company even close to the inference efficiency of Tesla. We've had to do that because we were constrained by the inference hardware in the car. We didn't have a choice. But that will pay dividends in many ways.
日本語訳:つまり、これはおそらく、テスラのAI推論効率が他社よりも圧倒的に優れていることを強調する価値のあるポイントです。テスラの推論効率に近い企業はありません。私たちがそうせざるを得なかったのは、クルマに搭載されている推論ハードウェアに制約されていたからです。つまり、選択の余地はなかったのです。しかし、そのことはさまざまな意味で大きな利益をもたらすと考えています。
コメントの中には、特に下記のような面白いものもあった。
原文:And in my view, this will be much like elevators. Elevators used to be operated by a guy with relay switch. But sometimes, the guy would get tired or drunk or just make a mistake and send somebody in half between floors. So, we just get an elevator and press button, we don't think about it. In fact, it's kind of weird if somebody is standing there with a relay switch. And that will be how cars work. You just summon the car using your phone. You get in.
日本語訳:私の考えでは、これはエレベーターに似ています。エレベーターはかつて、リレースイッチを持った人が操作していました。でも時々、その人は疲れたり、酔っ払ったり、あるいは単にミスを犯したりして、誰かを階と階の間の半分に送ってしまうことがありました。そして、今日、私たちはエレベーターに乗ってボタンを押すだけで、何も考えません。実際、誰かがリレーのスイッチを持って立っていると、なんだか変な感じがします。自動車もそうなるでしょう。携帯電話で車を呼び出す。そして、あなたは単にその車に乗ればいいのです。
これらのAI関連のトピックについては、イーロン・マスク氏がテスラ車のプロセッサーを大規模な推論コンピューティングに活用できる可能性を示唆したものも含め、実際には他にも多くのコメントがあった。
原文:So, kind of like AWS, but distributed inference. Like it takes a lot of computers to train an AI model, but many orders of magnitude less compute to run it. So, if you can imagine future, perhaps where there's a fleet of 100 million Teslas, and on average, they've got like maybe a kilowatt of inference compute. That's 100 gigawatts of inference compute distributed all around the world.
日本語訳:つまり、AWSのようなものだが、分散型の推論です。AIモデルを学習させるには多くのコンピューターが必要ですが、それを実行するための計算量は何桁も少ない。つまり、1億台のテスラが存在し、平均して1キロワットの推論コンピュートを持っているような未来を想像してみてください。つまり、100ギガワットの推論コンピュートが世界中に分散していることになります。
原文:It's pretty hard to put together 100 gigawatts of AI compute. And even in an autonomous future where the car is, perhaps, used instead of being used 10 hours a week, it is used 50 hours a week. That still leaves over 100 hours a week where the car inference computer could be doing something else. And it seems like it will be a waste not to use it.
日本語訳:100ギガワットのAIコンピュートをまとめるのはかなり難しいです。また、自律的な未来において、自動車がおそらく週に10時間使われる代わりに、週に50時間使われるようになったとしてもです。それでも週に100時間以上は、車の推論コンピューターが別のことをしている可能性がある。そして、それを使わないのはもったいないと思っています。
要するに、マスク氏はAIを大々的に宣伝したのである。
手品師が視線を思い通りに誘導するように、彼は見事に物語を変え、悲惨な業績報告から目をそらし、代わりに彼のオプティマスロボットで満たされた世界、ロボタクシーネットワーク、そして地球上で唯一最大の計算資源へと変貌を遂げつつある彼の世界艦隊に焦点を当てた。
ただし、個人的には、これはほとんどナンセンスだと思っている。
私は今、自律走行に関するオピニオン・ピースを書いているところであり、ネタバレになってしまうが、ロボタクシーの未来は良いものではないのではないかと見ている。
ともあれ、イーロン・マスク氏は決算後の株価上昇を生み出すために並外れたパフォーマンスをやってのけたと言えるだろう。