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05 - 18 - 2024

【半導体】2024年度の半導体メモリ市場の見通し:生成AIやASP/平均販売価格の改善等の追い風を受け回復へ(後編)

ウィリアム・ キーティングウィリアム・ キーティング
  • 2024年以降、生成AIの需要が増加し、高密度SSDの需要も急増している。
  • サムスン電子とSKハイニックスは、エンタープライズ・サーバー・ストレージ向けの高密度NANDソリューションの需要増加に対応している。
  • メモリメーカー各社のASP(平均販売価格)は2024年第1四半期に一致して上昇し、メモリ・セグメントの回復が進行中である。

※「【半導体】2024年度の半導体メモリ市場の見通し:生成AIやASP/平均販売価格の改善等の追い風を受け回復へ(前編)」の続き

2024年以降のNANDのパフォーマンス

HBMに注目が集まる中、今回の決算で最大のサプライズとなったのは、NANDの好調ぶりだろう。

この予想外の需要の強さの原因は、エンタープライズ・サーバー・ストレージ向けSSDである。

以下はサムスン電子(005930.KS)のコメントである。

(原文)For server and storage, the demand for generative AI showed solid trend, and the demand for DDR5 and high-density SSDs stayed strong following the previous quarter. In particular, the high-density SSDs linked with generative AI showed additional demand growth, as customers' upside demand surged.

(日本語訳)サーバーとストレージについては、生成AIの需要は堅調なトレンドを示し、DDR5と高密度SSDの需要は前四半期に引き続き堅調でした。特に、ジェネレーティブAIと連携した高密度SSDは、顧客のアップサイド需要が急増し、さらなる需要の伸びを示しました。

また、SKハイニックス(000660.KS)の場合には、質疑応答でかなり詳細な説明があった。

(原文)Now regarding the first question about the demand for the high density eSSD, it appears that the demand spike for the high density eSSD appears to be primarily driven by the demand coming from on-prem AI data center customers as the AI market continues to expand.

(日本語訳)高密度eSSDの需要に関する最初の質問についてですが、高密度eSSDの需要急増は、AI市場の拡大が続く中、主にオンプレミスのAIデータセンターの顧客からの需要によってもたらされているようです。

(原文)To be more specific, we see that AI technology is shifting from training more to inference, with many individual companies now tapping into AI and seeking to build on-premise AI servers for reasons of technological security and customization.

(日本語訳)より具体的には、AI技術は学習から推論へとシフトしており、多くの個別企業がAIを活用し、技術的なセキュリティやカスタマイズの理由からオンプレミスのAIサーバーを構築しようとしています。

(原文)This has led to growing demand for high-density NAND solutions that are faster than existing storage solutions as they need to process heavy workload which is characteristic to unstructured data. They also consume less power which offers better TCO attractiveness.

(日本語訳)このため、非構造化データに特徴的な重い作業負荷を処理する必要があるため、既存のストレージ・ソリューションよりも高速な高密度NANDソリューションに対する需要が高まっています。また、消費電力も少ないため、TCO(総保有コスト)面でも魅力があります。

これらは理にかなっている。

DRAMとHBMはトレーニングと推論の両方のワークロードを高速化するために必要だが、生成される膨大なデータはどこかに保存しなければならない。

データセンター・ストレージではHDDが依然として大きな役割を果たしているが、SSDのスピード、フットプリントの小ささ、消費電力の低さは、今やこれまで以上に重要となっている。

この点で、SKハイニックスは中国の大連にあるインテル(INTC)のNAND施設(現在はソリディグムに改称)を買収した結果、特に有利な立場にあるように見える。

(原文)And per your question on whether SK Hynix CTF NAND is going to be used for Solidigm SSD products? What we can tell you is that since the acquisition, we have been preparing Enterprise SSD products that combine SK Hynix's unique NAND technology with Solidigm's eSSD solution capabilities. So Solidigm is expected to supply charge trap based eSSD in addition to floating gate based eSSD to flexibly respond to customer demand.

(日本語訳)ソリディグムのSSD製品にSKハイニックスのCTF NANDが使用されるかどうかというご質問ですが?買収以来、SKハイニックスのユニークなNAND技術とソリディグムのeSSDソリューション能力を組み合わせたエンタープライズSSD製品を準備しています。そのため、ソリディグムはフローティングゲートベースのeSSDだけでなく、チャージトラップベースのeSSDも供給し、顧客の需要に柔軟に対応する見込みです。

そもそも、SKハイニックスがソリディグムを買収した最大の理由は、企業向けSSD市場で足場を固めるためであった。

2年以上経ってようやく、ソリディグムはSKハイニックスにとって輝き始めたのである。

一言で言えば、最先端のDRAM/HBMの追い風に加え、エンタープライズSSDという形でNANDも追い風になっているということである。

2024年以降のASP(平均販売価格)の上昇

我々は過去10年間、マイクロン・テクノロジー(MU)、SKハイニックス(000660.KS)、サムスン電子(005930.KS)のDRAMとNANDのASP(およびビット成長率)を追跡しており、このデータには特に注意を払っている。

以下の2つの表は、2023年の各四半期と2024年の第1四半期のDRAMとNANDのASPの推移を示している。

2023年を通して、DRAMとNANDのASP(平均販売価格)の変化は、各四半期ごとに3社間で大きく異なっていることにお気づきだろうか。

これは、各社が景気後退への対応について異なるアプローチを取っているため、予想されたことである。

ただし、2024年第1四半期では、3社のASP上昇率はほぼ同じであり、これは実に稀なことである。

この驚くべき偉業を達成するために、主要プレーヤーが何らかの形で結託したのではないかと推測したくなるが、それはもちろん違法行為である。

より可能性が高いのは、メモリメーカーにとって状況が悪化したため、契約のための価格交渉をする代わりに、単に事業を継続するために必要な値上げ額を計算し、それをテイク・イット・オア・リーブ・イット・オファー(それ以上の交渉は受けないという最終提案)として伝えたということである。

この1年半で3社ともほぼ同じ割合で売上高が減少したのだから、要求される値上げ率もほぼ同じになるはずである。

実際に、これ以外に当てはまる説明を考えるのは難しいというのが本音であり、もし思い当たる節があれば、ぜひ教えていただきたい。

結論

メモリ・セグメントにおける待望の回復は、まさに進行中であり、当分の間は続くと私は予想している。

HBM、エンタープライズSSD向けNAND、そしてレガシーメモリ製品の不足はすべて追い風であり、足元加速していると言える。

そして、マイクロン・テクノロジー(MU)とSKハイニックス(000660.KS)は過去最高値を更新している。

そのため、これらの銘柄に関しては、購入したタイミングによっては、足元の局面で利益確定を行うのが適切なようにも見える。

しかし、このラリーにはまだ更なる上昇の余地があると思われるため、ロングを維持する一方で、悲劇的な急落にも備えたストップロスを設定しておくのも一つの戦略かもしれない。

そして、このことはウェスタンデジタル(WDC)にも当てはまる。

ナンヤ・テクノロジー(2408.TW)とウィンボンドは、足元の市場の回復からほとんど無視されているが、第3四半期以降に予想されるレガシー製品の供給不足と同様に、継続的なASPの上昇から大きな利益を得ることができると見ている。