02/08/2024

ユナイテッド・マイクロエレクトロニックス(UMC)の将来性:最新の決算分析を通じて今後の見通しに迫る!

a close up of a machine with some wires on itウィリアム・ キーティングウィリアム・ キーティング
  • 本稿では、注目の台湾半導体関連銘柄であるユナイテッド・マイクロエレクトロニックス(UMC)の2023年度第4四半期決算とインテルとの提携の詳細な分析を通じて、同社の今後の見通しと将来性を詳しく解説していきます。
  • ユナイテッド・マイクロエレクトロニクスはインテル(INTC)との12nmプロセス共同開発を発表し、生産能力や米国拠点へのアクセスといった大きなメリットを得る形となりました。
  • この提携により、インテルは旧オコティロ工場群を再活用できるだけでなく、UMCの特殊プロセス開発の知見を得て米国内での多様な製品製造を可能にする狙いがあります。
  • 一方で、UMCの業績は低調が続く中、インテルとの提携は長期的収益機会として期待されており、2027年の量産開始を目標にプロジェクトが進行しています。

ユナイテッド・マイクロエレクトロニックス(UMC)の概要

ユナイテッド・マイクロエレクトロニックス(UMC)は先週、最新の2023年度第4四半期決算を発表したが、決算説明会、特にQ&Aは、最近発表されたインテル(INTC)との提携に完全に支配されていたため、本稿では、決算ではなく、主にその提携に焦点を当てることにした。

一言で言えば、タワー・セミコンダクター(TSEM)との提携発表から半年も経たないうちに、インテルは2024年1月24日に台湾の同社との新たな提携を表した。

タワー・セミコンダクターとUMCの取引には類似点があるが、性質と構造において根本的に異なっている。

現時点では、インテルは2030年までに世界第2位のファウンドリー・プレイヤーになるという目標を達成するために、4つ以上の明確な戦術を展開していると考えられる。

そして、それは以下の通りである。

  1. 小規模なセカンド/サードティアのファウンドリープレーヤーを買収する(例:2023年のTowerの買収失敗)
  2. セカンド/サードティアのファウンドリ・プレーヤーと提携し、同社のプロセス技術を使用して同社に代わって製品を製造することで、既存の未使用の製造能力を活用する。
  3. UMCと提携し、共同で新しい特殊技術プロセスを開発し、その技術に基づく製品をUMCの代理として、また自社の代理としても製造する。
  4. 自社の最先端プロセス技術(18Aなど)を活用し、新規顧客に代わって製品を製造する。その際、顧客からの前払い金を活用して、生産能力やコミットメントなどを保証する。

厳密には、第5の戦術を加えることもできる。すなわち、インテルが現在メディアテックのために行っているように、自社(インテル)の22nmプロセス、別名16nmのカスタムバリアントを開発し、メディアテックに代わってそのプロセスノードで製品を製造することである。

では、UMCがファウンドリーの競争相手であると同時にファウンドリーの顧客でもあるという境界線を、またもや曖昧にしてしまったインテルの最新のファウンドリー契約をどう考えればいいのだろうか。

UMCの収益に関して

まず業績から見てみよう。

2023年度第4四半期の売上高は前四半期比3.7%減、前年同期比19%減の549.6億台湾ドル(17.9億米ドル)となっている。

当四半期のウエハー出荷量は前四半期比2.5%減少し、工場全体の稼働率は66%にわずかに低下した。

これらの数字は、ほぼ事前のガイダンス通りであった。

2023年通期の売上高は、ウエハー出荷量が27%減少したことを反映した稼働率の低下により、前年同期比20%減の2,220億台湾ドルとなった。

そして、同社のジェイソン・ワン最高経営責任者(CEO)は、今年度の業績について次のように述べている。

「全体として、2023 年は厳しい外部環境に直面しながらも 同社が財務上のレジリエンスを示した年であり、2023 年の稼働率が大幅に低下したにもかかわらず、年間34.9%の売上総利益率を達成することができた。この回復力は、技術革新による差別化、顧客との相乗効果および密着性の強化、優れた製造品質とコスト削減のたゆまぬ追求によるものである。その結果、製品ミックスと顧客ポートフォリオが改善し、2023年のASPは一桁増となった。」

UMCのガイダンスに関して

2024年度第1四半期に関して、UMCは基本的に同様の見通しを立てている。

そして、同社は下記の通り述べている。

「それでは、2024年第1四半期のガイダンスに移ろう。ウエハー出荷枚数は2%から3%増加する。売上総利益率は約30%。稼働率は 60%台前半となる見込みです。2024年の現金ベースの設備投資予算は33億ドルです。」

したがって、このガイダンスに基づけば、前四半期比で2~3%の減収、稼働率は前四半期の66%から62%程度に低下すると予想される。

興味深いのは、同社がマクロ的な逆風や在庫問題などについて語ることをほとんど控えていることである。

まるで、以前にも同じようなことを言ったと知っていて、いつになったらビジネスが実質的に改善するのか見当もつかないという事実をただ諦めているかのように見える。

同様に興味深いのは、ここ1年以上厳しい事業環境が続いているにもかかわらず、2024年の設備投資額が前年比10%増の33億ドルになるという事実である。

インテル(INTC)とユナイテッド・マイクロエレクトロニックス(UMC)の提携に関して

去る1月24日、インテルとUMCはファウンドリーパートナーシップ契約を共同で発表した。

そして、主な内容は以下の通りであった。

  • 両社は、高成長市場をターゲットとする12ナノメートルプロセス・プラットフォームの開発で協力する。
  • 今回の提携は、インテルが台湾の革新的な企業と提携することで、グローバル顧客により良いサービスを提供し、ファウンドリー顧客向けに成熟したプロセス能力を拡大することを目指すというインテルのコミットメントに基づくものである。
  • 今回の提携は、地理的に多様な半導体サプライチェーンへの顧客アクセスを拡大する。
  • 協業は、UMCにさらなる生産能力を提供し、開発ロードマップを加速させ、主導的なプロセス技術の研究開発を実証することに繋がる。

前述の通り、今回の提携は、タワー・セミコンダクターとの提携とは下記の2つの点で異なる。

  1. タワー・セミコンダクターの提携がタワー・セミコンダクター独自のプロセス技術を活用するのに対し、UMCとの提携は12nmと呼ばれる全く新しいプロセスの共同開発を伴う。
  2. タワー・セミコンダクターとの契約では、インテルがタワー・セミコンダクターのために製品を製造するのに対し、UMCとの契約では、インテルは共同開発した12nmプロセスで、自社の顧客向けに自社製品も開発できる。

このパートナーシップがどのように運営されるかについては、まだ明らかにされていない詳細がたくさんある。

例えば、価格設定、さらに、どちらかが特定の約束を守れなかった場合の違約金等が挙げられる。

しかし、UMCの決算説明会から大まかなスケジュールはわかっており、同社は下記の通り述べている。

「この12ナノメートルは、長期的なコミットメントであり、両者にとってのチャンスであると見ている。将来的な収益機会に関しては、勿論そうなることを望んでいるが、おそらく将来的なものになるだろう。もし何かアップデートがあれば、喜んで報告したいと思っている。マイルストーンについては、おっしゃるとおり、この共同開発プログラムには非常に包括的なプロジェクトのマイルストーンがある。主要なマイルストーンとしては、2025年にプロセスを凍結し、その後に顧客エンゲージメントの準備をすべて整え、できれば26年にパイロット、27年に生産(これは我々が報告したものと一致している)したいと考えている。

以上より、基本的に生産開始はまだ3年以上先のことになる。

また、プレスリリースにはもう少し詳細がある。

「12nmノードでは、インテルの米国を拠点とする大量生産能力とFinFETトランジスタ設計の経験を活用し、成熟度、性能、電力効率の強力な組み合わせを提供する。この生産には、UMCの数十年にわたるプロセス・リーダーシップと、ファウンドリ・サービスを効果的に提供するためのプロセス・デザイン・キット(PDK)と設計支援を顧客に提供してきた歴史が大きく寄与すると見ている。新しいプロセス・ノードは、アリゾナ州にあるインテルのオコティロ・テクノロジー・ファブリケーション・サイトのファブ(製造工場)12、22、32で開発・製造される。これらのファブの既存設備を活用することで、先行投資要件を大幅に削減し、稼働率を最適化できると見ている。」

UMCのファウンドリー経験をアピールしていることからも、インテルはその経験を自社のファウンドリー構想に活用する機会を重要視しているようである。

このパートナーシップ契約の製造拠点は、アリゾナ州オコティロにある3つのファブ、ファブ12、22、32である。

ちなみに、私は1996年にファブ12で働いていたことがある。

もう30年近く前のことである!

ファブ12はアイルランドのファブ14の姉妹ファブであった。

ファブ12での私の役割は、ファブ14に代わり、「オートメーション・トランスファー・マネージャー」として、つまり、すべてのファクトリー・オートメーション・システムを学び、それをシームレスにファブ14に戻す責任者であった。

その間に、ファブ22とファブ32という2つの工場がオコティロ・キャンパスに追加されている。

ここで重要なのは、これらの工場が古いということであり、かなり長い間休眠状態であった可能性が高い。

これについては後で詳しく説明したい。

この提携に関する分析を始めるにあたり、インテルとUMCのそれぞれの決算説明会での言及から始めたい。

UMCはインテルの電話会議で3回、インテルはUMCの電話会議で24回言及されている。

あなたはこれをオルタナティブデータ分析アプローチと呼ぶかもしれない。

しかし、私は妥当だと思っている。

この取引は、UMCにとって、インテルよりもはるかに大きな意味を持つ。

これについてはまた後ほど説明したい。

インテル(INTC)との提携がユナイテッド・マイクロエレクトロニックス(UMC)にもたらすメリット

ユナイテッド・マイクロエレクトロニックスUMC)の過去10年間における最大の課題は、新たな生産能力を確保するための資金を見つけることであった。

UMCはこの問題について何度も議論しており、研究開発(R&D)の方がはるかに低コストであることから、CapEx(設備投資)ではなく研究開発に注力することを強調している。

そして、この戦略はUMCにとって複雑な結果をもたらしている。

研究開発の観点からは、UMCは主に28nmおよびそれ以前のプロセス・ノードで、特殊なプロセス技術を開発することに成功した。

しかし、最先端ノードである14nmに焦点を当てた研究開発は、率直に言って惨憺たるものであった。

彼らは2015年から14nmについて話しており、2017年に立ち上げ、2018年にはわずかな成功を収め、2018年度第3四半期では14nmからの売上高が全体の売上高の5%を占めた。

そして、2018年度第4四半期以降、14nmの売上高がどの程度全体の売上高に貢献していたか想像していただきたい。

答えはゼロである。

先進ノードの研究開発努力はここまでである。

同社の14nmプロセスがいかに成功したかを語り続け、90%以上の歩留まりに達した事実を強調しているにもかかわらずである。

そして、過去数年間、このような主張が精査されることがなかったことに私は驚いている。

つまり、UMCにとって大きなプラスは、FinFETへの意欲を持つインテル(INTC)からの支援であることは明らかである。

さらに、この提携は、現在の不況下でより重要になっている。

平均販売価格はプレッシャー下にあり、遅れているノードでの中国との競争は急速に高まっている。

また、28nmではキャパシティの過剰が目前に迫っている。

そして、14nmクラスのプロセス・ノードがないことで、シェアを拡大するどころか、維持することもできないだろう。

先週、誰かが私に、なぜインテルとUMCは共同開発予定のこのプロセスを14nmと呼ぶのかと尋ねた。

理由は2つあると思う。

  1. UMCは過去に失敗した14nmの試みとの関連付けを望んでいないのであろう。
  2. インテルは、新たに共同開発するプロセスが失敗した場合に備えて、これまで開発した中で最高のものの1つであった14nmプロセスと関連付けたくないのだろう。

つまり、当プロジェクトを真新しい名前で始める方が両社にとって都合が良いということである。

UMCにとって2つ目の大きな利点は、これまで考えられなかったような量の製造能力を、おそらくバーゲン価格と思われる価格で即座に手に入れることができることであり、しかもその全能力を300mmで実現できることである。

UMCにとって3つ目の大きな利点は、その生産能力が米国にあるということである。

なぜなら、UMC単独では、米国に自社の生産能力を構築する余力はなかった可能性が高いからである。

半導体製造のリショアリング(企業が、海外に移管・委託した業務の拠点を国内に戻すこと)が世界的に推進されている現状を考えると、UMCの米国の顧客ベースは、チップの生産を米国で行うことを求め始めるだろう。

北米市場はUMCにとって非常に重要であり、実際に2022年の売上高の24%から2023年には27%に伸びている。

米国がより多くのチップの現地生産を望むと同時に、中国もそれを望んでいる。

つまり、いくつかのUMCの顧客は、SMICやHH Grace/Huahongのような中国のローカル・オプションに移行するということである。

そのため、UMCが製造の選択肢を多様化させる必要があることが分かる。

ユナイテッド・マイクロエレクトロニックス(UMC)との提携がインテル(INTC)にもたすメリット

タワー・セミコンダクターTSEM)との取引と同様、インテルにとっての大きなメリットは、そうでなければほとんど利用価値のない製造能力から何らかの価値を引き出せるという事実である。

奇妙なことに、これはインテルにとっては短所でもあるのだが、それについては後述する。

先述の3つのオコティロ工場は、かつてはインテルにとって最新鋭の工場であり、フルに活用されていたはずであるが、今はそうではない。

これらのファブで直近に稼働していたプロセス・ノードが何であったか、私ははっきりとは知らないが、14nmか、それよりも古いものであることは確かである。

なぜインテルは、(半導体共同投資プログラム「SCIP」の下、ブルックフィールドと共に)アリゾナやオハイオに新しい工場を建設する代わりに、これらの工場をアップグレードしないのか不思議に思うかもしれない。

この選択肢の最大の問題はEUVである。

これらの古い工場は巨大だが、EUVツールの規模とサイズを念頭に置いて設計されたものではない。

単刀直入に言えば、EUVツールは、少なくともファブの上部構造全体を完全に作り直さなければ収まらない。

これらの古い工場をアップグレードできない理由は他にもあるかもしれないが、EUVはその中でも上位に位置すると思う。

そして、UMCとの契約により、インテルはUMCに生産能力を事実上貸し出すことができる。

インテルにとっての2つ目の利点は、UMCの専門知識を活用して特殊ファウンドリ・プロセスを開発できることである。

UMCはこの専門知識を十分に持っているが、インテルにはない。

このことが、この提携のこの側面が、不思議なことにインテルにとってのメリットでもある理由につながる。

つまり、インテルにとっては、自社で特殊プロセスを開発できた方が、UMCと利益を分け合う必要がないことから、財務的な観点からはるかに有利なのである。

ただし、インテルのファウンダリーの野望はともかく、インテルがやりたがらないこと、やれることがないと思われることは、まさにこの点である。

実際に、UMCの援助があったとしても、この特殊なプロセス技術を稼働させるには何年もかかるだろうと見ており、 具体的には量産開始は2027年頃になるだろう。

しかし、他に良い選択肢がない以上、これはインテルにとってプラスである。

2つ目のメリットの結果として、インテルにとって3つ目の利点がある。

彼らはついに特殊なプロセスを手に入れ、関連製品を製造するための米国ベースの製造能力を手に入れた。

これらの製品の多くは、オートモーティブ、IoT、インダストリアル・セグメントに属するもので、その多くは米国内で生産する必要がある。

これによりインテルは、あと3~4年は実現しないものの、この市場を開拓することができる。

結論

私は、インテルが2030年の世界第2位の目標を達成するために展開している一連の戦術を通じて、ファウンドリー事業にさらなる複雑さを加えることの意味を懸念している。

この点に関しては別の機会に譲るが、これほど多くの異なるモデルを展開することで、複雑なロジスティクス上の課題が山積していることはすでに目に見えている。

ファクトリー・オートメーション・システム、MRP、ERPなど、異なるアプローチごとに異なるサイロを展開する必要性がすぐに思い浮かぶ。

とはいえ、工場が遊休状態にあるか、工場から何らかの価値を引き出すかの選択であれば、こうした取引・提携は理にかなっている。

私は、タワー・セミコンダクター、そして今回のケースではUMCが、ここでの真の勝者であると見ている。

米国内の半導体製造施設に対するバーゲン価格(と思われる)でのアクセス権を提供する企業は、そうそうあるものではない。

その意味で、私はタワー・セミコンダクターとUMCに対して注目している。