【半導体】ウルフスピード(WOLF)の将来性とは?最新の2024年第3四半期決算は不調で株価は30%程度の大幅下落!
ダグラス・ オローリン- 本稿では、注目の米国半導体銘柄であるウルフスピード(WOLF)の11月6日に発表された最新の2024年第3四半期決算の分析を通じて、同社の株価下落理由、並びに、今後の株価見通しと将来性を解説していきます。
- ウルフスピードは最新の決算で財務状況の厳しさが明らかになり、資本構成や経費削減に焦点を当てつつも、負債が増加し、キャッシュフローが不足しているため追加の資金調達が不可避な状態です。
- 自動車部門の業績が低調であり、特に将来的な債務返済が困難な状況にあり、無担保転換社債の満期(2026年)も迫っており、資産売却や増資などの抜本的な対応が求められています。
- ウルフスピードのSiCウェハー製造に関して、200ミリプロセスの競争力や利益性に疑問が投げかけられており、株価も既に約30%下落しているため、今後の動向には注意が必要です。
ウルフスピード(WOLF)の最新の2024年度第3四半期決算発表に関して
ウルフスピード(WOLF)は、2024年11月6日に2024年度第3四半期決算(会計年度:2025年第1四半期)を発表しています。
今回の決算を通じて感じた印象としては、正直、ダラムやJP、将来のファブ計画を聞きたい訳ではないというのが本音です。
今回の説明は資本構成についての授業のようでしたし、自動車部門は低調で、まるで破綻寸前のように見えます。
簡単に言うと、時価総額は約12.8億ドルに対し、負債は約63億ドル(純負債は約47億ドル)に上ります。
今年も来年もキャッシュはほとんど生み出せない見込みですから、この企業は毎年約10億ドルのキャッシュを消耗し続ける、50億ドルのローンを抱えたような状態です。
(出所:Bloomberg)
Current/LTM(直近過去12カ月間)の列と時価総額(Market Capitalization)・負債(Debt)・企業価値(EV)を見ていただきたいのですが、現金(Cash & Equivalents)は手元に約16億ドルしかなく、これが尽きれば、さらに借入か増資が必要になります。
しかし、追加の借入はこの企業をさらに深刻な状態に追い込む可能性が高いでしょう。
じゃあ、どうするかというと、まずは急いでキャッシュの消耗を抑えて、追加の資金調達を避けるしかないと思います。
ただ、これで問題が解決するわけではありません。
最大の無担保転換社債(Unsecured Convertible Bond)が2026年に満期を迎えますが、これが額面通りの価値で取引されているわけではありません。
(出所:Bloomberg)
転換社債の株式部分はほぼ無価値で、転換価格は約47ドルです。
この債務は2026年5月に期限を迎えますが、返済は非常に厳しい状況になるでしょう。
(出所:Bloomberg)
今回の決算説明会は、経費削減についての話がほとんどでしたが、支払いが難しい状況では当然の対応です。
同社はかなり厳しい状況に追い込まれており、抜本的な増資か資産売却以外に道は見えないという印象を受けます。
ただ、その資産も大きな収益を上げているわけではなく、買い手がつくかどうかも疑わしいところです。
2025年には同社が厳しい状況に陥るだろうと以前から思っていましたが、どうやらその予測よりも早く、厳しい現実が訪れそうです。
以前のレポートで私は下記のように述べています。
「基板需要のほとんどを自社でまかない、一部を二次市場(ウルフスピード)で調達しているため、STマイクロエレクトロニクス(STM)やオン・セミコンダクター(ON)のような企業は、巨大な生産設備を抱える企業ほどの影響を受けにくいでしょう。結局のところ、2025年後半には、この設備競争のしわ寄せが最も強くウルフスピードに押し寄せると考えられます。」
「その頃にはウルフスピードが高品質なSiCウェハー(シリコンカーバイドで作られた半導体用の基板)のトップメーカーとなっている可能性は高いですが、問題はまだ利益が出ていないことです。利益を出せるのは2020年代後半になる見込みで、そこにたどり着くまでの道のりはかなり厳しいと言えるでしょう。」
ここで率直に疑問を投げかけたいのですが、200ミリのSiCプロセスを持つ意味は本当にあるのでしょうか?
競合他社は150ミリの製品を問題なく販売し、デバイスの利益率を高めることで多少の粗利の低さをカバーしています。
実際、ウルフスピードが200ミリのSiCを本格的に立ち上げられている様子も見受けられません。
最新の決算を受けて、株価は既に30%程度下落していますが、今後の動向にも目が離せません。
その他のウルフスピード(WOLF)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、ウルフスピードのページにアクセスしていただければと思います。
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アナリスト紹介:ダグラス・ オローリン / CFA
📍半導体&テクノロジー担当
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