ヴィクトリアズ・シークレットの株価290%上昇は、本当にオゼンピックのおかげか

■株価290%上昇の7割はPERの上昇だった
利益は1.49倍になった一方、PERは7.5倍から19.6倍へと2.61倍に拡大しました。PERの上昇は一度きりで、ここから先の株価上昇は利益から出てくるしかありません。
■GLP-1の押し上げ効果は規模が合わない
按分で見た同社の取り分は年間4500万〜1億9500万ドル、思い切って3倍に重み付けしても5億8500万ドルです。同社が今年度だけで見込む売上増5億2700万ドルと同程度にすぎません。
■実際に効いたのは値引きをやめたこと
値引き度合いを示す指標は前年比85ベーシスポイント低下し、売上総利益率は240ベーシスポイント拡大しました。経営陣は営業利益見通しの引き上げ分にGLP-1を一切帰属させていません。
■決算はどちらにも大きく振れる
空売り比率14%、ベータ値2超という状態で、市場はすでに上振れ着地を前提にしています。9月3日までは中立に見ており、PER20倍で持つより15倍になった局面のほうが好みだと述べています。
ヴィクトリアズ・シークレット(VSXY)の株価はこの1年でおよそ290%上昇し、同社は9月3日に第2四半期決算を発表します。オゼンピックに代表されるGLP-1という薬の普及が理由としてよく語られ、それ自体は事実ではあるのですが、上昇の説明としては語られすぎです。
この1年で利益は1.49倍(1株当たり3.00ドルから会社予想の4.475ドルへ)になりました。一方で、その利益に対して市場が払う値段の倍率は2.61倍(7.5倍から19.6倍へ)になっています。つまり株価上昇のおよそ7割は、会社が多く稼ぐようになったからではなく、市場が同じ1ドルの利益により高い値段を払うようになったことによるものです。
1年で株価が290%上昇した銘柄の現在地
話の前提となるGLP-1
この記事ではGLP-1という言葉が繰り返し出てきます。先にこれが何を指すのかを整理しておきます。
【補足】GLP-1とは
GLP-1受容体作動薬は、もともと2型糖尿病の治療薬として開発され、その後に体重が大きく減る効果で広く使われるようになった薬の総称です。オゼンピックやウゴービといった商品名で知られています。服用した人の体型が短期間で変わるため、衣料品や下着の買い替えが発生します。これがヴィクトリアズ・シークレットの追い風になっている、というのが市場でよく語られる筋書きです。ただしこれは一度買い替えれば落ち着く需要であって、売上の水準を継続的に押し上げ続けるものではない、という点がこの記事の論点のひとつになります。
1年前はPER7.5倍の「壊れた小売株」だった
1年前、この会社は22ドル前後で取引される立て直し途上の小売企業でした。2025年度の調整後1株当たり利益3.00ドルに対して、株価収益率(PER)にしておよそ7.5倍という水準です。それが今では88ドル近辺にあります。52週間の上昇率はおよそ290%で、同じ期間のS&P500の12〜13%とは比べものになりません。

(出典: Seeking Alpha)
誰もが挙げる転機は、6月2日に発表された第1四半期決算と、それに伴う業績見通しの引き上げです。既存店売上高は13%増と4四半期連続のプラス、調整後1株当たり利益は市場予想の0.30ドル前後に対して0.60ドルでした。調整後の売上総利益率は35.2%から37.6%へ、調整後の営業
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