【Part 1:第2章】センチネルワン(S)株価予想:目標株価は40ドル?将来性と今後の株価見通しに迫る!

- 本編「Part 1」では、「Rule of X(SBC込み)」を用いて、高パフォーマンスながら低バリュエーションの銘柄を特定し、中国株、半導体、コンシューマーテクノロジーなどの分野で投資機会を探ります(市場や地政学的要因の影響も考慮しています)。
- そして、フォーティネット(FTNT)、センチネルワン(S)、パロアルトネットワークス(PANW)の初期の投資仮説を振り返り、弊社の最新のDCFバリュエーションを共有し、長期的な投資視点を解説していきます。
- 本稿「Part 1:第2章」では、注目の米国サイバーセキュリティ銘柄である「センチネルワン(S)とは?」という基礎的な内容に加えて、最新のバリュエーション分析を通じて、同社の目標株価、並びに、今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
- センチネルワンは、クラウドストライク(CRWD)と比較して市場進出戦略が遅れているものの、長期的にはより高い収益性を持つ可能性があると見ています。
- 同社の強みは、自社開発のデータアーキテクチャにあり、XDRやAI駆動のセキュリティ分野で競争力を発揮しています。
- AI SIEMやAI-SPMの導入により、企業のAIワークフロー全体のセキュリティを強化し、将来的な成長機会を拡大していると考えています。
※「【Part 1:第1章】フォーティネット(FTNT)株価予想:目標株価は131ドル?将来性と今後の株価見通しに迫る!」の続き
前章では、注目の米国サイバーセキュリティ銘柄である「フォーティネット(FTNT)とは?」という基礎的な内容に加えて、最新のバリュエーション分析を通じて、同社の目標株価、並びに、今後の株価見通しと将来性を詳しく解説しております。
本稿の内容への理解をより深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上にて、前章も併せてご覧ください。
センチネルワン(S:SentinelOne)AI駆動のサイバーセキュリティでアルファを解き放つ!
※本稿は2025年3月12日に発表された2025年第4四半期決算前日に執筆しています。
センチネルワン(S)とクラウドストライク(CRWD)のバリュエーションギャップは、現在のサイバーセキュリティ投資における最も注目すべき非効率性の一つです。両社は同様の成長軌跡を辿っており、エンドポイントセキュリティを出発点とし、MDR(マネージド・ディテクション・アンド・レスポンス)を提供しながら、クラウドセキュリティやアイデンティティ保護へと事業を拡大しています。両社の主な違いは、技術力や実行力ではなく、センチネルワンのGTM戦略(市場進出戦略)の成熟度がクラウドストライクに比べて約3年遅れている点です。
長期的には、センチネルワンの収益性はクラウドストライクと同等、あるいはそれを上回ると考えています。同社は、より自律的なソフトウェアとオートメーションを重視したセキュリティモデルを採用しているのに対し、クラウドストライクのビジネスモデルは依然として人的リソースに依存して脅威を特定・阻止する側面が強いです。これにより、センチネルワンが成熟期を迎えた際には、クラウドストライクよりも構造的に高い収益性を持ち、グロスマージンやFCF(フリーキャッシュフロー)マージンも高くなると予想されます。しかし現時点では、両社のバリュエーションは大きく異なっており、センチネルワンの長期的なコスト優位性を認識できる投資家にとっては、大きなアルファ獲得の機会が生まれていると見ています。
センチネルワンとクラウドストライクのバリュエーション比較
(出所:Koyfin)
センチネルワン(S:SentinelOne)の統合データアーキテクチャの力
センチネルワン(S)のアーキテクチャ上の優位性は、基盤となるデータレイヤーにあります。この強固な基盤により、同社は競合他社よりも効率的にセキュリティ機能を拡張することができています。多くの競合他社がサードパーティ製SIEM(例:Splunk:SPLK)やハイパースケーラーのインフラに依存しているのに対し、同社はデータの取り込み、保存、検索までのスタックを自社で保有しています。これは、AI駆動のセキュリティが膨大な量の構造化・非構造化データにシームレスにアクセスすることを求められる時代において、極めて重要な差別化要因となっています。
因みに、SIEM(Security Information and Event Management:セキュリティ情報・イベント管理)とは、企業のITシステム内で発生するセキュリティ関連のログやイベントを収集・分析し、脅威をリアルタイムで検出・対応するためのセキュリティ管理ツールです。
2022年のScalyr買収は、センチネルワンにとって転換点となりました。この買収により、同社は高性能かつ柔軟でコスト効率の高いデータレイクを手に入れ、それを「DataSet」としてリブランディングしました。この戦略的な決断によって、同社はXDR(拡張検知・対応)の分野で主導的な立場を確立することができました。具体的には、以下のようなメリットをもたらしています。
✅ サードパーティデータのシームレスな取り込み(企業全体の脅威の可視化に不可欠)
✅ 高速なクエリと分析により、対応時間を短縮
✅ 高い拡張性とAI対応基盤により、次世代のセキュリティアプリケーション(例:Purple AI)を実現
一般的なEDR(エンドポイント検知・対応)ベンダーとは異なり、センチネルワンは広範かつ統合されたデータレイヤーを構築しており、これによりセキュリティAIモデルが企業の環境全体で効果的に機能するようになっています。この点がPurple AIの優位性につながっています。Purple AIは、最小限の統合負担でサードパーティ製ツールを横断的に脅威分析できる一方で、競合他社は断片化したアーキテクチャに苦戦しています。
最終的に、この優位性は同社が創業当初から掲げていた「オープンかつ相互運用性の高いプラットフォームを目指す」という戦略的目標に起因しています。この方針により、スムーズなサードパーティ統合が可能になり、それがサードパーティデータの取り込みや互換性につながり、結果としてXDRの分野、さらにはAIを活用したセキュリティ領域においてもリードする立場を確立することができています。
センチネルワン(S:SentinelOne)のXDRを超えたAIの拡張 – 生成AIワークフロー向けのAI SIEM & AI-SPM
センチネルワン(S)は、データを最優先とする戦略を活かし、エンドポイントセキュリティを超えてフルスタックのサイバーセキュリティプラットフォームへと進化しています。その象徴的な例が、AI SIEM の導入です。AI SIEMは、既存のDataSetの機能を基盤としつつ、リアルタイム検知、ストリーミングデータ分析、自律的な調査機能を備えており、同社が自律型セキュリティオペレーションのリーダーとなるための重要な役割を担っています。
💡主な進展
✅ AI SIEMはすでにFedRAMP Highを取得し、米国政府機関への採用に向けた重要なマイルストーンを達成。
✅ MSSP(マネージド・セキュリティ・サービス・プロバイダー)がAI駆動の機能を活用し、コスト削減と可視性向上を目的にプラットフォームの導入を拡大。
✅ 企業での導入が加速しており、ある主要な連邦機関が、センチネルワンのエンドポイントセキュリティとAI SIEMを統合し、脅威の可視化を強化するために採用。
そして、SIEMを超えて、センチネルワンは、AI-SPM(Security Posture Management) を新たに発表しました。これは、生成AI(GenAI)アプリケーションやワークフローの保護に特化したセキュリティソリューションです。従来のCSPM(クラウドセキュリティポスチャ管理)やSSPM(SaaSセキュリティポスチャ管理)とは異なり、AI-SPMはAI駆動のインフラを保護することに重点を置いています。具体的には、以下の機能を提供します。
✅ 大規模言語モデル(LLM)APIや生成AIを活用したアプリケーションの監視と保護
✅ プロンプトインジェクション攻撃、不正なモデルアクセス、敵対的操作の防止
✅ ダイナミックなAIワークフロー全体にわたるガバナンス、コンプライアンス、リスク管理の強化
また、センチネルワンは最近、Purple AIをAWS Bedrock上で利用可能にしました。この統合により、Bedrockの基盤モデルを活用し、AI駆動アプリケーション向けにリアルタイムの脅威検知と対応を強化することが可能になりました。これにより、企業のAIワークフロー全体でセキュリティの可視性が向上します。
この動きにより、センチネルワンは企業のAI導入を保護する最前線に立ち、LLMやAI駆動ワークフローが業界全体に組み込まれていく中で、戦略的な優位性を確立しています。
センチネルワン(S:SentinelOne)のクラウドセキュリティの成長とクラウドストライクとの差別化
センチネルワン(S)の非エンドポイント事業は現在約2億ドル規模に成長しており、クラウドセキュリティ分野への成功した拡大を示しています。特に際立った強みは、エージェント型とエージェントレス型の両方のソリューションを提供できる点であり、企業に対してワークロードの保護方法に柔軟性をもたらしていることです。
同社がクラウドストライクに対して持つ最大の優位性の一つは、Linuxに対する深い専門知識です。同社は創業当初からLinuxを重視してきたのに対し、クラウドストライクはもともとWindows向けエージェント開発を中心に進めており、Linuxへの最適化を本格的に始めたのは比較的最近です。
このLinuxへの先行投資により、センチネルワンはeBPFベースのエージェントを開発することができました。これはクラウドネイティブなセキュリティのために設計されており、従来型のエージェントとは異なり、カーネルレベルで効率的に動作し、高い可視性、優れたパフォーマンス、軽量な制御を実現します。
この強みは、センチネルワンがクラウドワークロード保護の分野でCRWDに対して構造的な優位性を持つ要因となっています。企業のワークロードがKubernetesベースやマイクロサービスアーキテクチャへと移行する中で、この分野の重要性はますます高まっています。
MITREによるセンチネルワン(S:SentinelOne)の評価 – 自律型セキュリティの証明
センチネルワン(S)の最新のMITRE ATT&CK評価は、同社の自律型セキュリティモデルの優位性をさらに強調する結果となりました。同社は5年連続で100%の検知率を達成しており、この記録を持つベンダーは他に存在しません。
因みに、MITRE ATT&CK評価とは、MITRE社が提供するサイバーセキュリティフレームワーク「MITRE ATT&CK」に基づき、セキュリティ製品やソリューションの攻撃検知・防御・対応能力を評価する仕組みです。
MITRE ATT&CKは、実際のサイバー攻撃における戦術や技術を体系的に整理したナレッジベースであり、企業や組織が脅威の理解を深め、防御戦略を強化するために活用されています。MITRE ATT&CK評価では、標的型攻撃などのシナリオを用いて、各セキュリティ製品が攻撃をどのように検知・防御し、可視化できるかを検証します。評価結果は、特定の攻撃手法に対する各製品の有効性を比較し、組織のセキュリティ対策を強化する指標として活用されます。
さらに重要なのは、同社の検知・対応が大幅な調整や手動設定を必要としない点です(エンドポイントセキュリティベンダー向けのMITRE最新テストに関する詳細なレビューについては、下記の分析レポートをご覧ください)。
一方でクラウドストライクは手動調整やSOC(セキュリティオペレーションセンター)の専門知識に依存しており、この点が両社のモデルの大きな違いを生んでいます。
✅ センチネルワンの自律型アプローチは、人件費を削減し、すぐに利用可能な機能を提供
✅ クラウドストライクのモデルは、特にFalcon Complete MDRにおいて、人の介入が必要であり、アナリストが継続的に検知モデルを調整
セキュリティチームがより高い自動化と運用負担の軽減を求める中で、センチネルワンのアプローチはますます魅力的な選択肢となっています。
センチネルワン(S:SentinelOne)を取り巻く市場動向と収益性への道筋
センチネルワン(S)は、2025年3月12日の市場閉鎖後に2025年第4四半期(暦年:2024年第4四半期)および通期(2025年会計年度)の決算を発表予定です。2025年第3四半期の結果を見ると、同社の戦略的な実行力が財務面での改善につながり始めていることがうかがえます。
✅ 純新規ARRは前四半期比(QoQ)で22%増加し、力強い成長への回帰を示唆
✅ 長期的なイノベーションを支えるため、積極的な研究開発(R&D)投資を維持しつつ、Non-GAAPベースの損益分岐点に接近
✅ 従業員1人あたりの売上高は28.5万ドルにとどまり、パロアルトネットワークス(PANW)、フォーティネット(FTNT)、クラウドストライク(CRWD)といったサイバーセキュリティ大手と比べて依然低水準
この売上高の水準は意外な結果です。センチネルワンの基礎的なユニットエコノミクスが、一部のサイバーセキュリティ企業ほどスケーラブルではない可能性を示唆しているかもしれません。一方で、クラウドストライクとの価格競争がこの指標を押し下げている可能性も考えられます。あるいは、クラウドフレア(NET)やテナブル・ホールディングス(TENB)、マンデードットコム(MNDY)のようにプラットフォーム化を進めることで、収益性を大幅に向上させる余地があるとも考えられます。
また、2024年7月に発生したクラウドストライクのシステム障害がセンチネルワンに追い風となっています。企業顧客がクラウドストライクへの過度な依存を見直す動きを強める中、センチネルワンはMITRE ATT&CKの高評価とともに、安定したエンタープライズ向けサイバーセキュリティプラットフォームとしての地位を確立しつつあります。
そのため、2025年3月12日発表の2025年第4四半期決算において、純新規ARRの成長やマージン改善の進捗が継続するかに注目しています。また、投資家が留意すべき点として、同社は現在、経営陣の移行期にあります。2023年11月には新たな最高収益責任者(CRO)が、同年4月には新たな最高マーケティング責任者(CMO)が就任しました。この変化は、フォーティネットやクラウドフレアがSMB(中小企業)市場から大企業市場へ拡大するために営業・マーケティング(S&M)戦略を強化した際と類似しています。
両社にとって、この変革は混乱と懐疑的な見方を伴う厳しいプロセスでしたが、最終的には売上の伸びへとつながりました。同様に、センチネルワンもエンタープライズグレードのベンダーへと進化する過程にあり、その兆しはすでに見え始めています。
センチネルワン(S:SentinelOne)のエンドポイントを超えた拡大 – Lenovoとの提携
センチネルワン(S)はLenovoと提携し、今後数年間で3,000万台のPCをターゲットとしています。この契約は、同社にとって非常に重要な収益源となる可能性があります。影響の大きさはまだ不透明ですが、センチネルワンのプラットフォームをグローバル企業へ深く組み込む戦略を強化するものとなっています。
センチネルワン(S:SentinelOne)のバリュエーション – アルファの機会
センチネルワン(S)は、単一アーキテクチャのデータモデルを採用しており、レガシーセキュリティベンダーよりも優位な立場にあると考えています。これにより、AI駆動のセキュリティ時代において、競争力を大きく発揮することが可能となっています。
そして、同社の投資判断のポイントは、EBITとFCFマージンの改善スピードに加え、今後数年間にわたる20%以上の安定した成長であると見ています。同社はプラットフォームの活用によって成長率を維持しながら、高いキャッシュ創出力と収益性を実現することで、Rule of 40の閾値を安定的に超えていくと予想しています。
2027年から2030年にかけての年平均成長率(CAGR)20%、および40%の終端FCFマージンを前提にすると、理論的な本質的価値(インストリンシック・バリュエーション)は約40ドルと試算され、現在の株価の2倍に相当します。
収益性指標の改善が進む中で、クラウドストライクとのバリュエーション格差は不当に大きくなっています。こうした状況を踏まえると、センチネルワンは現在、市場で最も見過ごされているサイバーセキュリティ関連銘柄の一つと言えると考えています。
(出所:筆者作成)
次章では、パロアルトネットワークス(PANW)に関する詳細なバリュエーション分析を解説していきますので、インベストリンゴのプラットフォーム上より併せてご覧ください。
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