やや強気スノーフレークPart 3(後編)スノーフレーク(SNOW)の将来性:競合分析により、生成AIとAI PaaS業界で優位性を維持する為の戦略を探る!

- 本稿「Part 3」では、、生成AIとAI PaaS(Platform-as-a-Service)業界について取り上げ、スノーフレーク(SNOW)の潜在力を、競合分析を通じて詳細に解説していきます。
- そして、後編では、特に、スノーフレークが生成AI、並びに、AI PaaS業界において競争優位性を維持する上で考慮すべき要因、さらに、同社の将来性ついて詳しく解説しています。
- 同社は、企業が安全かつ効果的にLLMを導入できるプラットフォームを提供し、データプライバシーとガバナンスを強化しています。
- AI PaaS業界において、同社は高品質なデータと特定のユースケースに特化したコスト効率の高いソリューションを提供することが必要とされています。
- そして、同社は新CEOのリーダーシップの下で、迅速な製品開発と独自の強みを活かし、AI PaaS市場での競争力を高めています。
※「Part 3(前編):スノーフレーク(SNOW)の生成AIとAI PaaS(Platform-as-a-Service)業界における競合他社比較」の続き
スノーフレーク(SNOW)が生成AIとAI PaaS業界における競争で勝つために考慮すべき要因
AI PaaS業界における競争において最終的な勝者となるのは、以下のようなプラットフォーム価値を提供できるベンダーであると考えています。
・企業がスムーズにLLM(大規模言語モデル)を導入できるようにし、摩擦を最小限に抑えること
・多様なユースケースでLLMの効果的かつ継続的なパフォーマンス向上を実現すること
・強力なアクセス制御とデータプライバシーを通じて、責任ある安全なLLMの利用を確保すること
・企業に大幅なコスト削減と利益率の向上をもたらすこと
以下のセクションでは、これらのニーズに影響を与える重要な要素について詳しく解説します。
データプライバシー / セキュリティ / ガバナンス
顧客のセキュリティへの懸念は、生成AIの導入を阻む大きな障害です。クラウドやモバイルなどの過去の技術革新とは異なり、生成AIはまだ現在の技術パラダイムを揺るがすような破壊的な変化をもたらしていません。もしROI(投資収益率)がより明確であれば、セキュリティは二次的な問題となるかもしれませんが、生成AIのROIが不確定なため、慎重なアプローチが求められています。セキュリティが確保されていないと、生成AIの導入は大きなリスクを伴います。このリスクを管理し、生成AIを安全に展開できるプラットフォームは成功する可能性が高いでしょう。
スノーフレーク(SNOW)はIL-4認定のデータウェアハウスを備えており、データプライバシーの分野でリードしていますが、パランティア・テクノロジーズ(PLTR)のIL-5には若干劣ります。パランティア・テクノロジーズのAIPは、厳密なアクセス制御とデータ漏洩防止を活用しており、これにより強固な生成AIのROIを確保するために重要な役割を果たしています。
関連用語
IL-4とIL-5:アメリカ国防総省が定めた情報セキュリティのレベルを表す。IL-4(Impact Level 4)は、管理された未分類情報の保護に必要なセキュリティ要件を満たしており、IL-5(Impact Level 5)は、より高いレベルの機密情報を保護するための追加的なセキュリティ要件を満たしている。
AIP:パランティア・テクノロジーズの「アーキテクチャー・インテグレーション・プラットフォーム」(Architecture Integration Platform)を指し、企業や政府機関が大規模なデータ分析を行うためのプラットフォーム。特に機密情報のセキュリティ管理に強みがある。
ファウンデーションモデル
ファウンデーションモデル(FM)は、AI PaaSの議論で中心的な役割を果たしています。マイクロソフト(MSFT)、アマゾン(AMZN)、アルファベット(GOOG/GOOGL)といった大手企業は、専用のFMアクセスを確保するために数十億ドルを投資しており、スノーフレーク(SNOW)やDatabricksなどの非ハイパースケール企業にとっては大きな課題となっています。これらの小規模プレイヤーは競争力を維持するために独自のモデルを開発する可能性がありますが、先端モデルのトレーニングコストの高騰により、独自のモデルの開発は難しくなるでしょう。FMのトレーニングコストが上昇する中で、小規模プレイヤーはFM開発から撤退するか、大規模な投資をしないで独自の強みを発揮する必要があるかもしれません。
関連用語
ハイパースケール:大規模なデータセンターやクラウドサービスを提供する企業が、需要に応じて迅速かつ効率的にリソース(コンピューティング、ストレージ、ネットワーク)を拡張できる能力を指す。主にAmazon Web Services(AWS)、Google Cloud、Microsoft Azureなどの巨大クラウドプロバイダーが該当。
プレトレーニング / ファインチューニング / 評価
優れたAI PaaSは、顧客がモデルをファインチューニングし、出力を継続的に評価できるようにするべきです。しかし、これは技術的に複雑であり、90%以上の企業は自社でモデルをファインチューニングする準備ができていません。このため、技術的な課題やROIの不透明さから、これらのツールの市場は限られています。テックジャイアントを除けば、ほとんどの企業はモデルのプレトレーニングには関心を持っておらず、Databricksがこの機能を推進しているのは疑問が残ります。安全なモデル展開のためには評価ツールが重要ですが、AI PaaSのガバナンスレイヤーはまだ成熟していません。
関連用語
テックジャイアント:テクノロジー業界で支配的な地位を持つ大手企業を指す。代表的な例として、アルファベット、アマゾン、アップル、マイクロソフト、メタ・プラットフォームズ等が挙げられる。
モデルのプレトレーニング:AIモデルが特定のタスクに使われる前に、大量のデータを使って一般的なパターンや知識を学習するプロセスを指す。この段階で得られた知識を基に、その後のファインチューニングを通じて特定のタスクに最適化される。
検索拡張生成(RAG:Retrieval Augmented Generation)
企業はモデルをファインチューニングする代わりに、検索拡張生成(RAG)を活用して、特定の質問に対する適切な情報を提供することができます。しかし、RAGは一見簡単そうに見えますが、実際にはファウンデーションモデルの能力に密接に関連しています。高度なRAGソリューションは、関連するドキュメントを提案し、モデルの推論を補強するために特定のセクションを抽出することができます。
スノーフレーク(SNOW)はRAGの研究開発を迅速に進めており、企業が容易に導入できるようになっています。スノーフレークのArcticは、RAGタスクに特化してトレーニングされたモデルであり、パランティア・テクノロジーズのハイタッチなサービスとは異なるアプローチを提供しています。Databricksのこの分野での取り組みは限定的です。
関連用語
ハイタッチ:サービスやサポートにおいて、人と人との直接的な関わりが多いことを指す。高タッチなアプローチでは、顧客一人ひとりに対して個別の対応やカスタマイズされたサービスが提供されるため、きめ細かいサポートが行われる。例えば、コンサルティングや専任担当者による手厚いサポートが含まれる。
使いやすさ
AIアプリの開発には、2000年代初頭の開発者が直面した課題と同様に、コーディング以外のタスクに多くの時間を費やすという問題があります。スノーフレーク(SNOW)とアマゾン(AMZN)のAWSは、使いやすいロータッチなソリューションを提供することで、この問題を解決し、特にこの点において、スノーフレークが技術的リーダーシップを再び確立する可能性があると見ています。アップル(AAPL)と同様に、スノーフレークは初動が遅いかもしれませんが、使いやすさに注力することで、AIの分野で再び地位を確立するかもしれません。
関連用語
ロータッチ:サービスやサポートにおいて、人の関与を最小限に抑え、自動化やセルフサービスを活用して顧客対応を行うことを指す。このアプローチでは、効率的に多くの顧客に対応できる一方、個別の対応は少なくなる。例えば、オンラインヘルプやFAQ、チャットボットによるサポートがこれに該当。
データの準備 / ラベリング / 解析 / クリーニング
汎用モデルは特定のタスクでのパフォーマンスが劣ることが多いため、ドメイン固有のデータでのファインチューニングが必要です。スノーフレーク(SNOW)はこの分野で優れており、顧客がすぐに使用できる標準化された機能を製品として提供しています。データのラベリングや解析は、LLMを活用して自動化でき、高品質なデータをRAGに提供することが可能です。しかし、Databricksはこの分野で苦戦しており、従来のデータ技術に多額の投資をしています。
関連用語
汎用モデル:特定のタスクやドメインに限定されず、幅広い用途で利用できるように設計されたAIモデルのこと。たとえば、自然言語処理や画像認識など、さまざまな分野で共通して使えるモデルがこれに該当。汎用モデルは、広範なデータを使ってトレーニングされ、多様なタスクに対応できる柔軟性を持っている。
高品質なデータの重要性が増す
モデルのスケーリングが限界に達する中で、高品質なデータがますます重要になります。クラウドデータウェアハウジングのリーダーであるスノーフレーク(SNOW)は、この変化から恩恵を受ける可能性があります。エヌビディア(NVDA)のジェンセン・フアンCEOは、データが希少なリソースになると予測しており、キュレートされたデータを持つスノーフレークが再び注目を集めるかもしれません。
関連用語
クラウドデータウェアハウジング:クラウド上に構築されたデータウェアハウスを指す。データウェアハウスは、大量のデータを統合・管理し、分析のために最適化されたデータベースシステム。クラウドデータウェアハウジングでは、企業が自社のインフラを持たずに、クラウドサービスを通じてデータを保存し、分析を行うことができる。これにより、スケーラビリティや柔軟性が高く、コスト効率の良いデータ管理と分析が可能になる。
LLM / RAG / SQL
RAGは、LLMを使ってドキュメントを分類し埋め込むだけではありません。現時点では、RAGは情報検索に最適化されたSQLクエリに依存していることが多いです。スノーフレーク(SNOW)のArcticモデルはSQLを独自に生成しますが、正確性は87%にとどまっており、慎重なガバナンスが求められます。
関連用語
SQLクエリ:データベースに対してデータの検索、挿入、更新、削除などの操作を指示するための命令文のこと。SQL(Structured Query Language)は、リレーショナルデータベースを操作するための標準的なプログラミング言語であり、SQLクエリを使って、特定の条件に基づいてデータを取得したり、データベースの内容を変更したりすることができる。
FLOPあたりの価値
FLOPあたりの価値とは、コンピュータが1秒間に実行できる浮動小数点演算の回数(FLOPS: Floating Point Operations Per Second)に対して、どれだけの価値や効果を得られるかを評価する指標です。つまり、計算資源(FLOP)をどれだけ効率的に利用して、具体的なタスクや目標に貢献できるかを示す概念です。FLOPあたりの価値が高いほど、より少ない計算リソースで有用な成果を得られることを意味します。特にAIや機械学習の分野で、モデルの効率性を評価する際に使われることがあります
FLOPあたりの価値という考え方は、AIモデル開発における従来の考え方を覆すものです。特にRAGアプリケーションにおいて、タスクに特化した小さなモデルが、大規模モデルよりもFLOPあたりの価値が高いという主張があります。これらのプロセスを簡素化し、迅速にROIを提供できるAI PaaSベンダーは、初期の生成AIブームが収束する中で大きな成功を収める可能性があります。
スノーフレーク(SNOW)とAI PaaS(Platform as a Service)業界に対する結論
スノーフレーク(SNOW)の成功は、特に特化型ソリューションの提供にかかっています。汎用モデルの進化が続く中、SNOWは独自の強みを活かし、特定のユースケースに対応した高性能かつコスト効率の高いAI PaaSソリューションを提供することが重要です。新CEOのリーダーシップの下、SNOWはデータガバナンスとキュレートされたデータの優位性を強化し、簡単に導入できる製品を迅速に開発しています。このアプローチにより、SNOWは企業が安全かつ効果的にLLMを活用するための最適なプラットフォームとなり、市場での競争力を一層高めることが期待されます。
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