ソフトランディングとハードランディングとは?アメリカ経済はソフトランディングを達成?
ローレンス・ フラー- 本稿では、「ソフトランディングとハードランディングとは?」という基本的な内容から、実際にアメリカ経済が現在どちらに向かって進んでいるのかを詳しく解説していきます。
- テクノロジーセクターから他のセクターへの資金シフトが進行中で、特に「マグニフィセント7」企業の株価が過大評価から調整される動きが見られます。
- 米国経済はソフトランディングに向かっており、失業保険申請件数やPCE価格指数などのデータも安定した経済成長と低インフレを示しています。
- 今後は、市場の投資家は大手テクノロジー銘柄以外の優位セクターや債券ポートフォリオを構築することが必要となるでしょう。
ソフトランディングとハードランディングとは?
ソフトランディングとは、景気の過熱や成長が鈍化する際に、急激な経済の減速を避け、緩やかな成長減速やインフレ抑制が行われる状況を指します。
経済がソフトランディングに成功すると、失業率が大きく上がることなく、景気後退の影響を最小限に抑えながらインフレが抑制されることが期待されます。
政策当局(例えばFRB等の中央銀行など)は、金利の引き上げや引き締め政策を慎重に行うことで、ソフトランディングを目指します。
一方で、ハードランディングとは、インフレ抑制や過剰な景気加熱を急激に抑えるために、経済が急激に減速し、不況に陥る状態を指します。
ハードランディングが起こると、失業率の上昇や企業収益の悪化が見られ、景気後退が深刻になる傾向があります。
アメリカ経済はソフトランディングを達成?
2024年の米国株の投資テーマのひとつとして、テクノロジーセクター、特に「マグニフィセント7」と呼ばれる主要企業から、徐々に他のセクターに資金がシフトしていくことを期待していました。
ディスインフレの進行やFRBの利下げサイクルの開始に伴い、この動きが第3四半期から始まりましたが、今週のマイクロソフト(MSFT)とメタ・プラットフォームズ(META)の決算を受けてその流れがさらに加速しました。
中国での売上が予想を下回ったことで、アップル(AAPL)の株価も下落しています。
これらの企業が業績不振というわけではなく、企業価値が実態以上に高く評価されていたため、一時的に株価が低迷している状況です。
6月末、ナスダック100指数(QQQ)が過去最高値を更新する直前のレポートにおいて次のチャートを紹介しました。
大手テクノロジー企業の利益成長率が今年初めのピークから大幅に鈍化する見通しである一方、S&P 500全体の年率利益成長率は減少から増加に転じ、年末にはプラスになると予測されていました。
具体的な数値よりも、テクノロジーセクターの利益成長が鈍化することで、投資家が徐々に成長率がプラスに転じているセクターに資金を移す流れが生まれるだろうという点が重要です。
そして、この動きが過去4か月間で実際に見られました。
「マグニフィセント7」と「マグニフィセント7を除くS&P500」の純利益成長率比較
(出所:Bloomberg)
したがって、今週の強気相場の主要株の急落は驚くべきことではありません。
以下のチャートが示すように、7月初め以降のナスダック100(QQQ)はわずか1%の上昇にとどまっている一方で、イコールウェイト型のS&P 500指数(RSP)とラッセル2000小型株指数(IWM)は7.7%上昇しています。
市場のリーダー株が下落すると、他の市場も引きずられることが多いですが、影響はそれほど大きくありません。
この状況を受けて、悲観的な投資家が「強気相場の終焉」を示唆する可能性もありますが、ここ2年間の私の考えの通り、そうした動きに乗るのは得策ではないでしょう。
この下落も、これまでと同様に「買いのチャンス」と捉え、新たなリーダー銘柄群に注目するべきでしょう。
(出所:Stockcharts)
市場のパフォーマンスが広がるためには、経済がソフトランディングすることが重要です。
つまり、インフレが2%程度で安定しながら景気拡大が持続する必要があります。
木曜日、その方向に向けた2つの良い指標が発表されました。
週次の失業保険申請件数が3週連続で減少し、予想の23万件を下回る21万6,000件となり、労働市場の健全さを示しました。
継続受給者数も減少しています。
(出所:TradingEconomics)
インフレについては、個人消費支出(PCE)価格指数が9月に0.2%上昇し、前年同月比で2.1%増となり、FRBの目標に近づいています。
食品とエネルギーを除いたコアPCEも0.3%上昇し、前年同月比で2.7%増加と前月から変わりませんが、今後数か月でさらに目標に近づく見通しです。
(出所:TradingEconomics)
これらのデータから、米国経済はソフトランディングに成功したと私は考えています。
今後、FRBが利下げを続ける中で経済成長が緩やかに推移し、企業利益の成長も四半期ごとに加速するでしょう。
市場全体のパフォーマンスもさらに広がりを見せる(上昇する銘柄数が増える)と期待しています。
ただし、投資家がテクノロジー以外でどのセクターが優位に立つか、また債券ポートフォリオをどう構成すべきかについて自信を持てるようになるには、まず選挙の不確実性を乗り越える必要があります。
次の水曜日が待ち遠しいです!
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アナリスト紹介:ローレンス・フラー
📍米国マクロ経済担当
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