「懸念の壁」を登る強気相場:NVIDIA決算を前に、正しい理由で警戒される市場

■原油急落と金利低下が株高を後押し
ホルムズ海峡再開の協議とベッセント財務長官の穏やかな対イラン制裁を受け、WTI原油は4ドル下落。10年債・30年債利回りはともに7bp低下しました。
■消費者心理は悪化も実際の消費は堅調
消費者信頼感指数は年初来の低水準まで落ち込みましたが、Redbook小売売上高指数は前年比9.1%増と、過去1年で最強クラスの伸びを記録しています。
■PMIと増益率予想も強気を裏付ける
サービス業PMIは2024年12月以来の高い伸びとなり、大型・中型・小型株いずれでも2026年の増益率予想が上方修正されています。
■NVIDIA決算は懸念材料も本質的ではない
需要の持続性や利益率への懸念はあるものの、消費者主導の経済拡大と増益基調が続く限り、年末にかけて最高値更新が続くと見ています。
原油急落と金利低下が株高を後押し
昨日は、株価を押し上げる材料が一気にそろいました。イランとオマーンがホルムズ海峡の再開に向けて協議を進めているとの報道があり、米国も外交官を現地へ再び送り込んでいます。ベッセント財務長官が発表した新たな対イラン制裁も、中国を対象から外すなど、事前に懸念されていたほど厳しい内容ではありませんでした。WTI原油は4ドル下落して81ドルで取引を終え、ブレント原油は90ドルを割り込みました。 これでインフレへの懸念が和らぎ、長期金利も低下。10年債・30年債の利回りはそろって7ベーシスポイント下がり、それぞれ4.63%、5.16%となっています。S&P500(SPY)・NASDAQ(QQQ)・ダウ工業株30種平均(DIA)はいずれも上昇して取引を終えました。

(出典: Finviz)
「懸念の壁」を登る強気相場
強気相場というのは、登るべき「懸念の壁」があってこそ長続きするものです。そして今の相場が向き合っている壁は、かなり急勾配です。こうした懸念材料は弱気派にとって格好の武器で、「この先には悲観的な展開が待っている」と投資家に警告するために使われます。実際、連日のニュースは戦争・債務・バブル・金利上昇・インフレ・生活費の重さといった話題で埋め尽くされています。中間選挙という大きな山場を前に、政治の対立もここまで先鋭化することは滅多にありません。ウォーシュ議長率いるFRBは、パウエル前議長の時代のようなフォワードガイダンスをもう出しておらず、これも投資環境の見通しを一段と分かりにくくしています。そして何より、米国経済のエンジン役である消費者の心理が、かなり冷え込んでいます。
Conference Board(全米産業審議会)の月次調査では、消費者信頼感指数が年初来の最低水準まで落ち込みました。ガソリン価格や生活費の高さへの不満は根強く、雇用や再就職への不安も消えていません。消費支出は経済成長全体のおよそ3分の2を占めるだけに、ここまで挙げてきた懸念の中でも、これが一番気にかかるところかもしれません。ただ、投資家が見るべきは消費者の「発言」ではなく「行動」です。

(出典: Bloomberg)
消費者の行動は、発言ほど悪くない
消費の実態を最も早くつかめる指標が、週次のRedbook小売売上高指数です。開店から12か月以上が経過した総合小売店、約9,000店を対象に、前年比の売上成長率を追っています。昨日締めの週では売上が前年比9.1%増と、この1年間で見てもかなり強い伸びになりました。

(出典: MacroMicro)
【補足】Redbook小売売上高指数とは
米国の大手総合小売チェーンの売上を集計し、週単位で公表する指標です。政府統計の小売売上高より発表が早いため、消費者の実際の行動をいち早く確認する手がかりとしてよく使われます。
先週発表されたS&P Globalの8月フラッシュPMI(購買担当者景気指数)とも、この結果は符合します。サービス部門の企業活動は2024年12月以来の速いペースで拡大しており、今四半期の経済成長率が3%程度になるという見立てとも整合的です。つまり消費者心理は落ち込んでいても、経済のエンジンそのものはむしろ加速しているように見えます。同時に、今年の企業利益成長率の予想は年初と比べて大きく上振れており、その伸びはテクノロジーセクターだけに頼ったものでもありません。大型・中型・小型株のいずれの指数でも、増益率予想は上方修正されました。強気にもほどがある、というくらいの状態です。

(出典: FactSet)
【補足】PMI(購買担当者景気指数)とは
企業の購買担当者へのアンケートをもとに算出する景気指標です。50を上回れば拡大、下回れば縮小を意味します。発表までに時間のかかる政府統計と違い、月次で比較的早く出てくるため、足元の景気の温度感をつかむのに向いています。
NVIDIA決算という新たな「懸念の壁」
今日はNVIDIA(NVDA)の決算発表に、市場の目が集まります。需要の持続性、少数の大口顧客への依存、利益率の低下、部材コストの上昇——懸念材料はいくつも並んでいます。もし内容が期待外れであれば、市場全体に波及し、投資家心理の重荷になることもあり得るでしょう。「懸念の壁」にレンガがまた一つ積み上がる格好ですが、私はそれが本質的な問題になるとは考えていません。
結論:強気相場は年末にかけて続く
こうした懸念は、株価の一時的な下落や調整のきっかけにはなるかもしれません。それでも、消費者に牽引された景気拡大が続き、企業利益の伸び自体がプラス方向にある限り、強気相場は続くはずだと私は見ています。今の経済にはそれだけの勢いがあり、年末にかけて主要株価指数がさらに最高値を更新する場面が増えると考えています。