08/27/2026

NVIDIA決算で「懸念の壁」が一段低くなった

Main Imageローレンス・ フラーローレンス・ フラー
記事要約

    ■NVIDIA決算が懸念材料を後退させた
    増収率・利益ともに市場予想を上回り、2028年の収益成長ガイダンスは45%から70%へ引き上げ。AIアクセラレータ需要に減速の兆しはないと判断しています。

    ■コアPCE物価指数は前年比3.3%で横ばい
    事前予想通りの結果となり、来月には算出方法の見直しでインフレ率がさらに0.25%程度押し下げられる見込みです。

    ■実質消費支出の月次鈍化は気にしていない
    前年比では7月も2.1%増と、ここ数年のペースとほぼ変わらない水準を維持しています。

    ■強気相場は年末にかけて続く
    今年中の利上げなし、来年の利下げをより有力なシナリオとみており、9月の調整は第4四半期の最高値更新への地ならしになると見ています。

この記事は約 5 分で読むことができます。(記事文字数:約 2,300 文字)


決算前の静けさから一転

昨日の市場は、NVIDIA(NVDA)の決算発表を控えて異例なほど静かでした。AI投資というテーマの土台を揺るがす数字が出るのか、それとも裏付ける数字が出るのか、投資家が固唾を飲んで見守っていたためです。これは「懸念の壁」の中でも最大級のレンガの一つでしたが、少なくとも今のところはそうではなくなったようです。増収率・利益ともに市場予想を上回っただけでなく、同社は2028年の収益成長ガイダンスを市場予想の45%から70%へ大幅に引き上げました。 経営陣によれば、供給制約さえなければこの数字はさらに高かったはずだといいます。要するに、AIモデルの学習・稼働に使われるAIアクセラレータやメモリの需要には、減速の兆しがまったく見られないということです。

主要3指数の日中チャート

(出典: Finviz)


それでも残る懸念

S&P500(SPY)・NASDAQ(QQQ)はいずれも上昇して取引を終えました。ただ、同社の循環的な資金調達契約が抱えるリスクや、じわじわと迫る競合他社の存在は、依然として気がかりです。この決算は、AI関連テック株のさらなる大幅高を後押しするというより、下値を限定する効果の方が大きいというのが私の見立てです。景気循環に敏感な企業群は、これからも大きすぎる評価に見合うだけの成長を実現していく必要があります。

もう一つの話題は債券利回りの高止まりで、市場の関心は金曜日に予定されているウォーシュ議長のジャクソンホールでの講演に移っています。懸念されているのは、同議長が「市場にフォワードガイダンスを出さない」という姿勢をまた示すことです。ただ、昨日発表されたインフレ指標を見る限り、その懸念は和らぐはずだと私は考えています。

データがFRB利上げ観測を維持し、債券利回りが上昇

(出典: Bloomberg)


インフレはピークアウトしたという見立てが強まる


7月のコアPCEは事前予想通り

FRB(米連邦準備制度理事会)が重視するインフレ指標、7月のコア個人消費支出(PCE)物価指数は、事前予想通りの結果でした。前月比0.2%、前年比3.3%の上昇で、数字は6月から変わっていません。

コア個人消費支出価格指数の変化率

(出典: Bloomberg)

5月の時点で、私はインフレ率がすでにピークを付けたと述べましたが、今はその時よりも確信を強めています。ここまでの改善は小幅にとどまっていますが、来月にはインフレ率を押し下げる新たな材料が出てきます。米商務省経済分析局(BEA)が、ソフトウェア・アクセサリー、法律サービス、資産運用手数料など、PCEを構成するいくつかの項目について、価格算出の方法を見直すのです。この変更は来月から適用され、インフレ率をおよそ0.25%押し下げると見込まれています。コア指数は10月までに3%を下回ってくるはずです。

コアPCE物価指数年変化

(出典: Trading Economics)


【補足】コアPCE物価指数とは

コアPCE(個人消費支出)物価指数は、変動の大きい食品とエネルギーを除いた、消費支出全体の物価動向を示す指標です。FRBが金融政策を判断する際、最も重視しているインフレ指標でもあります。CPI(消費者物価指数)より対象となる消費項目の範囲が広く、消費者の実際の支出構成の変化も反映されるため、FRBはこちらを実態に近い指標とみなしています。


消費支出の月次の鈍化は気にしていない

昨日の指標で最も懸念されたのは、物価変動を調整した実質個人消費支出が先月は横ばいだった点です。これが消費の鈍化を示すサインではないかという見方も出ました。しかし私はさほど気にしていません。この月次の数字そのものに大きな意味はなく、今年1月に実質支出が減少したときも同じでした。私が見ているのは前年比の実質(インフレ調整後)個人消費支出の伸び率で、7月は2.1%増でした。パンデミック後の刺激策による急増を経た後、ここ数年続いてきたペースとほぼ変わりません。

実質個人消費支出(前年比)

(出典: FRED)


FRBは辛抱強く待てる立場にある


インフレという「遅行指標」をどう読むか

良い面もあります。7月の消費支出の鈍化は、PCEの算出方法の見直しと合わせて、FRBが金融政策で引き続き様子見できる材料になります。インフレ率はFRBの目標である2%をまだ上回っていますが、インフレは遅行指標です。FRBは今のインフレ率だけを根拠に、今の金融政策を決めることはできません。利上げの効果が経済に浸透し、望ましい結果として表れるまでには6〜9か月かかります。手元のデータが「この水準からインフレ率がさらに上がり続ける」ことを強く示しているなら、利上げは賢明な判断でしょう。しかし、データはそうは語っていません。


【補足】遅行指標とインフレ率の関係

遅行指標とは、景気の動きが実際に表れた後で、遅れて数字に反映される指標のことです。インフレ率はその代表例で、数か月前の需要や賃金の動きを映しているにすぎず、「これから先」の景気を直接示すものではありません。そのためFRBは、目先のインフレ率が高いからといってすぐに政策を動かすのではなく、利上げ・利下げの効果が実体経済に波及するまでの時間差(6〜9か月程度とされます)を踏まえて、先行きの見通しをもとに判断する必要があります。


結論:強気相場はまだ続く

今年中の政策変更はなく、来年の利下げの方が可能性が高いという見通しを、私は引き続き堅持しています。市場がこの見方を織り込んでいくにつれて、年末にかけてリスク資産価格への追い風がもう一つ加わるはずです。中間選挙が近づく9月はボラティリティが高まりやすく、歴史的にも1年で最もパフォーマンスの悪い月とされています。それでも、そこでの下落は第4四半期の最高値更新への地ならしになると見ています。強気相場は、この先も歩みを止めません。