
執筆:インベストリンゴ編集部|確認日:2026年10月16日
「以前読んだ配当銘柄の記事。その会社の配当は、今どうなっているのだろう?」
インベストリンゴに掲載してきたレポートには、配当を継続する企業の事業や財務を掘り下げた分析が蓄積されています。今回は2025年1〜3月の4本を起点に、配当額と、その配当を支えるお金の流れを編集部で確認しました。
4社とも元記事に記載された水準から配当額は増えました。ただし、増配の背景にある利益やキャッシュフローの状況は同じではありません。 消費の伸び悩み、買収に伴う支払い、訴訟関連費用などを分けると、過去の分析を今読むための手がかりが見えてきます。
1. 過去レポートの配当額は、現在どう変わったか
比較するのは、コカ・コーラ(KO)、ペプシコ(PEP)、ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)、プロクター・アンド・ギャンブル(PG)です。いずれも50年以上の連続増配実績を持つ「配当王」と呼ばれる企業で、インベストリンゴに複数の過去レポートがあります。
配当王の定義や対象銘柄については「米国配当王一覧」もご覧ください。
起点となる4本の執筆者はイアニス・ゾルンパノスです。以下の「当時」は各レポートに記載された数字を指し、「現在」は編集部が2026年10月16日に確認した数字を指します。現在の評価を元記事の筆者に帰属させるものではありません。
1-1. 1株当たりの四半期配当を比較
金額は1株当たり、税引前の米ドルです。
| 銘柄 | 元記事の公開日 | 元記事記載の四半期配当 | 現在の四半期配当 | 現在額の年率換算 |
| KO | 2025年3月25日 | 0.51ドル | 0.53ドル | 2.12ドル |
| PEP | 2025年2月8日 | 1.355ドル | 1.48ドル | 5.92ドル |
| JNJ | 2025年1月25日 | 1.24ドル | 1.34ドル | 5.36ドル |
| PG | 2025年1月26日 | 1.0065ドル | 1.0885ドル | 4.354ドル |
現在の四半期額は、Stock Clubの配当履歴で確認し、各社の増配発表と照合しました。年率換算はその額を4倍した編集部の計算です。2026年中に実際に支払われた合計額ではなく、将来の支払額を確定する数字でもありません。元記事の時点が異なるため、ここから求める変化率を各社の「2026年の増配率」として比較することもできません。
出典:Stock Clubの配当履歴 KO・PEP・JNJ・PG。当時の数字は各社の過去レポート(第2節に掲載)。

(出典: Stock Club配当履歴・Investlingo過去レポート。各社IR資料で照合し、編集部作成。金額は1株当たり四半期配当、税引前・米ドル。現在額は2026年10月16日時点)
1-2. 配当額と配当利回りを分けて読む
1株当たりの配当額が増えても、配当利回りが上がるとは限りません。配当利回りは、年間配当額を株価で割って求めるためです。元記事にある利回りは当時の株価と配当見込みに基づく数字で、そのまま現在の条件には置き換えられません。
今回の比較では、株価の変動と切り離して確認できる「1株当たりの配当額」を出発点にします。そのうえで、配当を支える利益と現金創出に変化がないかを読み直します。
2. 4社を振り返る:変わった点と、現在の確認点
各社の冒頭の図は、Stock Clubの日本語オーバービューをライトモードで撮影したものです。チャートは1年・日足で、評価の基準日は図の下に記載しています。「企業の4領域評価」は、収益性・現金創出・成長持続・財務耐久を同業種内で比較する指標です。Stock Clubによる評価として、元記事の筆者や編集部による見解と区別して掲載しています。
2-1. KO:増配は継続。買収の追加支払いを分けて見る

(出典: Stock Club。2026年10月16日撮影/評価基準日:2026-10-12)
Stock Clubでコカ・コーラのオーバービューを見る
2025年3月25日のコカ・コーラのレポートでは、ブランド管理に注力し、製造・流通をボトラーに担ってもらう事業モデルと、資本効率・キャッシュフローが配当の背景として取り上げられていました。
現在の四半期配当は0.53ドルです。元記事の0.51ドルから増え、2026年の増配は64年連続となりました。Stock Clubの配当履歴で確認できます。連続増配年数は、同社の2026年の公表資料を編集部で確認しました。
一方、Stock Clubの年間キャッシュフローでは、2025年の営業キャッシュフローは74.08億ドル、設備投資を差し引いたフリーキャッシュフローは52.96億ドルでした。この年は、fairlifeの買収に伴う追加対価61億ドルが営業キャッシュフローに含まれています。会社はその支払いを除いたフリーキャッシュフローを約114億ドルと説明しています。
追加対価を含む実際の現金支出と、支払いを除いた事業の現金創出力を、両方確認する必要があります。 調整後の数字だけでは、買収に使った現金は見えなくなります。
同社の2026年第2四半期決算によると、上期の営業キャッシュフローは75.43億ドル、フリーキャッシュフローは68.59億ドルでした。これは第2四半期だけの数字ではなく、年初から半年間の累計です。今後も、通常の事業で生む現金と、買収などに使う現金の関係が確認点になります。
2-2. PEP:配当は増加。利益成長と現金の余力は別に確認

(出典: Stock Club。2026年10月16日撮影/評価基準日:2026-10-12)
Stock Clubでペプシコのオーバービューを見る
2025年2月8日のペプシコのレポートは、飲料とスナック食品にまたがるブランド群や、配当を支える財務を分析していました。
当時記載されていた四半期配当は1.355ドル。現在は1.48ドルで、年率換算では5.92ドルです。2026年6月から適用された新しい年率配当は前年水準の5.69ドルから増えています。元記事からの増加分には2025年の増配も含まれます。Stock Clubの配当履歴
ただし、増配と利益成長の勢いは一致していません。10月8日発表の2026年第3四半期は、売上高が前年同期比5.6%増、為替や買収などの影響を除いた売上成長率が3.1%、会社の調整後1株当たり利益の伸びは2%でした。2026年通期の調整後1株当たり利益の成長見通しは2.5〜3.5%です。
2025年の営業キャッシュフローは120.87億ドル、設備投資控除後のフリーキャッシュフローは76.72億ドル。一方、同年の配当支払総額は76.38億ドルでした。この定義では、配当支払いとの差は0.34億ドルです。会社が公表するフリーキャッシュフロー82億ドルには、資産売却収入5.28億ドルも含まれます。Stock Clubのキャッシュフロー
編集部が次に確認するのは、販売数量や利益の伸びが現金創出につながり、設備投資と配当の後にどれだけ現金を残せるかです。配当の増加だけで余力が拡大したとは判断できません。
2-3. JNJ:配当の増加と、会計利益の大きな変動を切り分ける

(出典: Stock Club。2026年10月16日撮影/評価基準日:2026-10-12)
Stock Clubでジョンソン・エンド・ジョンソンのオーバービューを見る
2025年1月25日のジョンソン・エンド・ジョンソンのレポートでは、医薬品と医療機器を軸とする事業、配当や財務指標が取り上げられていました。四半期配当は当時の1.24ドルから、2025年に1.30ドル、2026年に1.34ドルへ増えています。Stock Clubの配当履歴
10月13日発表の2026年第3四半期は、売上高が前年同期比5.9%増でした。一方、会計基準に基づく1株当たり利益は0.09ドル、調整後は2.59ドルと大きく異なります。訴訟の解決案に関連する費用や買収・提携関連の影響があり、会計利益の一つの数字だけでは事業の状態を読み取りにくい四半期でした。年初からのフリーキャッシュフローは会社推定で約151億ドルです。
確定した通期実績では、2025年の営業キャッシュフローは245.30億ドル、設備投資控除後は196.98億ドルでした。Stock Clubの年間データを、同社の2025年年次報告書にある営業キャッシュフローと設備投資に照合しています。
確認点は、医薬品・医療機器が生む現金に加えて、訴訟や買収に伴う支払いが今後どの時期に生じるかです。調整後利益を見る場合も、除外した費用が現金支出を伴うかどうかを別に確認します。
2-4. PG:日用品の継続収入を、現金の伸びで確かめる

(出典: Stock Club。2026年10月16日撮影/評価基準日:2026-10-12)
Stock Clubでプロクター・アンド・ギャンブルのオーバービューを見る
2025年1月26日のプロクター・アンド・ギャンブルのレポートは、洗剤や紙製品など生活に密着するブランド群と、長年の配当実績を取り上げていました。
当時の四半期配当は1.0065ドル。現在は1.0885ドルで、2026年4月の発表で70年連続の増配となりました。Stock Clubの配当履歴
P&Gの決算年度は6月末です。2026年6月期の営業キャッシュフローは195.56億ドル、設備投資控除後は151.47億ドル、配当支払総額は102.32億ドルでした。配当支払いとの差は49.15億ドルですが、ここから自己株式の取得などにも現金を使っています。Stock Clubのキャッシュフロー
同年度の為替や買収などの影響を除いた売上成長率と、会社の調整後1株当たり利益の伸びは、いずれも1%でした。日用品の事業で現金を生み続けていても、成長のペースは別の論点です。次の決算では、販売数量や利益率の変化が、配当と設備投資を支える現金にどう表れるかを確認します。
3. 配当を支える現金は、同じ定義で比べる
3-1. 最新の通期実績をそろえて確認
営業キャッシュフローは、事業活動で実際に出入りした現金の差額です。本記事のフリーキャッシュフローは、比較のために「営業キャッシュフローから設備投資を引いた額」にそろえています。
| 銘柄 | 対象となる通期の期末日 | 営業キャッシュフロー | 設備投資控除後のフリーキャッシュフロー |
| KO | 2025年12月31日 | 74.08億ドル | 52.96億ドル |
| PEP | 2025年12月27日 | 120.87億ドル | 76.72億ドル |
| JNJ | 2025年12月28日 | 245.30億ドル | 196.98億ドル |
| PG | 2026年6月30日 | 195.56億ドル | 151.47億ドル |
出典:Stock Clubの年間キャッシュフロー KO・PEP・JNJ・PG。各社の年次資料で営業キャッシュフローと設備投資を照合。金額は億米ドル、2026年10月16日までに公表された最新の通期実績です。
P&Gだけ期末が6月のため、他の3社と対象期間が異なります。また、会社の規模も違います。金額の大小をそのまま配当の持続性の順位にはできません。
3-2. 配当性向に加えて見たい3つの点
まず、営業キャッシュフローが継続して生まれているか。 会計上の利益と現金の増減は一致しません。JNJのように一時的な費用で利益が大きく変わる場合は、費用の内容と現金への影響を併せて確認します。
次に、設備投資後の現金と配当支払総額の関係。 利益に対する配当の割合だけでなく、事業維持・成長に必要な設備投資の後に配当をどの程度まかなえているかを見ると、お金の流れが具体的になります。
最後に、配当以外の支出と、手元資金・借入の変化。 買収、訴訟、自己株式の取得、借入の返済も現金を使います。フリーキャッシュフローが配当を上回った差額すべてが、将来の増配に回せるわけではありません。貸借対照表とキャッシュフロー計算書を組み合わせて読む理由はここにあります。
【補足】フリーキャッシュフローは定義を確認する
企業によって、設備投資の控除に加え、資産売却収入や個別の支払いを調整することがあります。ペプシコの2025年の82億ドルには資産売却収入が含まれ、コカ・コーラの約114億ドルは買収の追加対価を除いた数字です。同じ名称でも中身が異なるため、本記事の比較表と企業の調整値を区別して読んでください。
4. 過去の記事を、次の決算の確認に使う
今回の振り返りで分かるのは、配当の増加が4社共通の結果であっても、確認すべき背景は各社で違うということです。KOは買収に伴う現金支出、PEPは利益成長と配当後の現金、JNJは訴訟・買収と会計利益の関係、PGは事業の成長ペースと現金創出が、それぞれの確認点になります。
過去レポートにあった見方を現在の事実に照らし、「どの点が続いていて、どの条件が変わったか」を確認すると、記事は公開時だけの情報で終わりません。
インベストリンゴのレポート一覧:コカ・コーラ・ペプシコ・ジョンソン・エンド・ジョンソン・プロクター・アンド・ギャンブル。
売上高や純利益の推移は、Stock Clubの日本語決算ページでも確認できます:KOの決算・PEPの決算・JNJの決算・PGの決算。
数字を追いかけたい場合は、本文に掲載したStock Clubの配当履歴と財務ページから、四半期額・支払日・対象年度を確認できます。本記事は2026年10月16日時点の情報を編集部で整理したもので、元記事の本文・当時の評価は変更していません。