10/29/2026

高配当4社は、その後どうなった?BTI・MO・PM・VZの配当と現金を比較【2026年10月】

高配当、その後。BTI・MO・PM・VZの4社を、コミック調のコマ割りで並べたイラストインベストリンゴ編集部  インベストリンゴ編集部
記事要約

    ■4社とも配当額は増えたが、利回りは分かれた
    BTI・MO・PM・VZの四半期配当は、2025年初の元記事に記載された額から増えました。一方でStock Clubの配当利回りは、PMが2.97%まで下がり、VZは6.40%です。利回りは株価で動くためです。

    ■「年間配当」と「連続◯年」は定義を確認する
    年間配当の表示は、過去12か月の実績の合計で、暦年の合計とは一致しません。BTIはポンドで6.0%増配した年が、ドル換算の集計では減配のように表示されていました。英国企業は宣言されたポンド建ての額で増減を確認します。

    ■一時的な支出と、事業が生む現金を分ける
    BTIの2025年の営業キャッシュフローは63.42億ポンドで、カナダでの和解に関連する25.60億ポンドの支払いを含みます。会社はこれを除いた額を89.02億ポンドとしています。両方を確認する必要があります。

    ■確認点は一社ずつ違う
    MOは配当性向が100%を超えた背景、PMは株価上昇後の位置づけ、VZは設備投資後に残る現金が確認点です。Stock Clubと各社の開示資料を照合し、過去の分析から変わった条件を整理しました。

この記事は約 13 分で読むことができます。(記事文字数:約 6,300 文字)

執筆:インベストリンゴ編集部|確認日:2026年10月29日

「以前『高配当』として読んだ銘柄。その利回りは、今どうなっているのだろう?」

インベストリンゴには、配当利回りの高い銘柄を取り上げたレポートが蓄積されています。今回は2025年1〜4月に公開した4本を起点に、配当額と利回り、そして配当を支えるお金の流れを編集部で確認しました。

結論から言えば、4社とも1株当たりの配当額は増えています。しかし配当利回りは、上がった社と下がった社に分かれました。利回りは株価で動くためです。


1. 「高配当」と紹介した4社の配当は、今いくらか

比較するのは、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BTI)、アルトリア・グループ(MO)、フィリップ モリス インターナショナル(PM)、ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)です。たばこ3社と通信1社で、いずれも配当利回りの高さを理由に取り上げられてきました。

高配当株の考え方については「米国高配当株一覧」もご覧ください。

起点となるレポートの執筆者は各記事に記載のとおりです。以下の「当時」は各レポートに記載された数字を指し、「現在」は編集部が2026年10月29日に確認した数字を指します。現在の評価を元記事の筆者に帰属させるものではありません。


1-1. 1株当たりの四半期配当を比較

金額は1株当たり、税引前の米ドルです。

銘柄元記事の公開日元記事記載の四半期配当現在の四半期配当直近12か月の配当(Stock Club表示)
BTI2025年3月8日0.749068ドル0.8348ドル3.34ドル
MO2025年2月6日1.02ドル1.11ドル4.29ドル
PM2025年2月19日1.35ドル1.60ドル6.01ドル
VZ2025年2月5日0.6775ドル0.7075ドル2.81ドル

現在の四半期額は、Stock Clubの配当履歴で確認した直近の確定額です。BTIは権利落ち2026年10月2日・支払2026年11月12日、MOは同9月15日・10月9日、PMは同10月2日・10月26日、VZは同10月9日・11月2日の回にあたります。直近12か月の配当はStock Clubの配当ページに表示された値(2026年10月29日確認)で、今後の支払額を確定するものではありません。

BTIは配当をポンドで宣言する英国企業です。米国預託証券の保有者が受け取るドル額は、会社の説明では各支払日の為替で決まります。表のBTIの値はStock Clubが換算したドル額で、実際の受取額とは一致しないことがあります(詳しくは第2節)。

出典:Stock Clubの配当履歴 BTI・MO・PM・VZ。当時の数字は各社の過去レポート(第2節に掲載)。


1-2. 利回りが上がった社と、下がった社

配当額が増えても、配当利回りが上がるとは限りません。利回りは年間配当額を株価で割って求めるため、株価が上がれば下がります。

銘柄株価直近12か月の配当配当利回り元記事に記載の利回り
BTI59.80ドル3.34ドル5.58%7.32%
MO73.50ドル4.29ドル5.84%約7%
PM202.60ドル6.01ドル2.97%記載なし(配当性向80%)
VZ43.90ドル2.81ドル6.40%6.77%

株価、直近12か月の配当、配当利回りは、2026年10月29日にStock Clubで確認した表示値です。Stock Clubは、過去12か月の実績(支払いが発表済みの回は、その額)を合計して株価で割ります。米国株は予想が直前にしか出ないことが多く、基本的には過去1年の実績にあたります。各社の公表値ではありません。元記事の利回りは当時の株価と配当見込みに基づく数字で、そのまま現在の条件には置き換えられません。

最も変化が大きいのはPMです。四半期配当は1.35ドルから1.60ドルへ増えた一方、利回りは2%台まで下がりました。配当を減らしたからではなく、株価が上がったためです。「高配当株」という分類は、株価次第で当てはまらなくなることがあります。

BTI(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ)のStock Clubオーバービュー、2026年10月29日

MO(アルトリア・グループ)のStock Clubオーバービュー、2026年10月29日

PM(フィリップ モリス インターナショナル)のStock Clubオーバービュー、2026年10月29日

VZ(ベライゾン・コミュニケーションズ)のStock Clubオーバービュー、2026年10月29日

(出典: Stock Clubのオーバービュー。2026年10月29日確認)


【補足】Stock Clubの「年間配当」は過去12か月の実績

  • 数え方: Stock Clubの年間配当と利回りは、過去12か月の実績を合計したものです。支払いが発表済みの回は、その額を使います。ある年だけ配当が突出したり落ち込んだりしても、他の回を想定で置き換えず、実際に出た額で計算するため、利回りが大きく上下することを避けられます。
  • BTIの例: 直近12か月は、2026年3月27日(0.835ドル)・7月10日・10月2日・12月29日(各0.83485ドル)の4回で、合計は約3.34ドルです。Stock Clubの表示も3.34ドルで、前年比は+0.34ドルです。12月29日の回は発表済みのため、すでに含まれています。
  • なぜ確かめるのか: 年間の表示額は、どの回までを数えるかで変わります。表示が見直されることもあるため、数字を引用するときは、確認した日付を添えてください。
  • 確認の順番: 年間の表示額を見たら、必ず配当履歴に戻って1回当たりの金額と支払日を数えてください。


2. 4社それぞれの、現在の確認点


2-1. BTI:増配は続いたが、2025年の現金は訴訟の支払いで大きく減った

2025年3月8日のブリティッシュ・アメリカン・タバコのレポートでは、配当利回り7.32%と四半期配当0.749068ドルを軸に配当推移が分析されていました。2025年2月28日のレポートもあわせて公開されています。

Stock Clubの配当履歴では、現在の四半期配当は0.8348ドルです。Stock Clubの配当履歴で確認できます。

ただし、同社が宣言している配当はポンド建てです。2026年5月から2027年2月に支払われる配当は1株あたり年245.04ペンス、1回61.26ペンスで、前年の240.24ペンスから2.0%の増配です。ドル換算では0.749ドルから0.8348ドルへと約11%増えたように見えますが、その差の大半は為替によるものです。

ドル建ての額だけを見ると、増配の大きさを読み違えます。 英国企業の配当は、会社が宣言したポンド建ての額で増減を確認してください。同社が公表する配当性向は、2025年の調整後の1株当たり利益に対して69.6%です。Stock Clubが表示する実績の配当性向85.36%とは、計算の基準が異なります。

注意が必要なのは現金の動きです。同社の2025年通期の開示によると、営業活動によるキャッシュフローは63.42億ポンドで、2024年の101.25億ポンドから減りました。この期間に、カナダでの和解に関連する25.60億ポンドの支払いが2025年下期に行われています。会社はこの支払いを除いた営業キャッシュフローを89.02億ポンドと説明しています。配当前のフリーキャッシュフローは40.48億ポンドで、2024年の79.01億ポンドから減少しました。

一時的な大型支出を除いた数字と、実際に出ていった現金の両方を確認する必要があります。 調整後の数字だけでは、和解に使った現金は見えなくなります。

なお同社はポンド建てで開示しています。米ドル表示の集計値と並べるときは、通貨と為替レートの前提をそろえてください。米国預託証券の配当額がドルで変動するのも、同じ理由によります。


2-2. MO:配当は増加。配当性向は100%を超えている

2025年2月6日のアルトリア・グループのレポートでは四半期配当1.02ドルが、2025年4月3日のレポートでは配当利回り約7%が取り上げられていました。

現在の四半期配当は1.11ドルで、2025年9月の1.06ドルからさらに増えています。Stock Clubの配当履歴

一方、Stock Clubの配当ページに表示される2025年実績の配当性向は101.22%です(2025年の確定配当4.16ドル÷2025年通期の1株当たり利益4.11ドル)。利益を上回る額を配当に回した計算になります。Stock Clubのキャッシュフローでは、2025年の営業キャッシュフローは2024年から増えています。

配当性向が100%を超えても、ただちに配当が維持できないことを意味するわけではありません。会計上の利益は一時的な評価損や持分法投資の影響で大きく動くためです。確認点は、利益の変動要因が一時的なものか、そして営業キャッシュフローが配当支払いを上回り続けているかです。


2-3. PM:配当は増えたが、利回りは「高配当」ではなくなった

2025年2月19日のフィリップ モリス インターナショナルのレポートは四半期配当1.35ドルと配当性向80%を、2025年4月30日のレポートは株価の見通しを扱っていました。

現在の四半期配当は1.60ドルです。Stock Clubの配当履歴

第1節で見たとおり、配当額は増えた一方で、Stock Clubの配当利回りは2.97%です。元記事の時点と比べて株価が大きく上がったためで、同じ銘柄が「高配当」の条件に当てはまらなくなった形です。Stock Clubの配当ページに表示される2025年実績の配当性向は77.58%(5.64ドル÷7.27ドル)で、元記事の80%から大きくは動いていません。

利回りだけで銘柄を選別していると、配当も事業も変わっていないのに対象から外れたり、逆に株価下落で対象に入ったりします。 配当額そのものと、それを支える現金を見る理由はここにあります。


2-4. VZ:増配は続く。現金の規模と使い道を分けて見る

2025年2月5日のベライゾン・コミュニケーションズのレポートは四半期配当0.6775ドルと配当利回り6.77%を、2025年2月26日のレポートは財務の健全性を取り上げていました。

現在の四半期配当は0.7075ドルで、0.6775ドル、0.6900ドルを経て増えています。Stock Clubの配当履歴

Stock Clubのキャッシュフローでは、営業キャッシュフローは2022年以降、370億ドル前後で推移しています。4社のなかでは金額の規模が最も大きい一方、通信事業は設備投資が継続的に必要です。2025年実績の配当性向は67.06%(2.7225ドル÷4.06ドル)で、4社のなかでは最も低い水準です。

確認点は、設備投資の後にどれだけ現金が残るか、そしてその残りが配当と借入の返済にどう配分されるかです。営業キャッシュフローの大きさだけでは、配当の余力は判断できません。


3. 配当を支える現金を、同じ基準で見る


3-1. 2025年実績の配当性向と営業キャッシュフロー

銘柄2025年実績の配当性向2025年の営業キャッシュフロー前年からの方向
BTI85.36%63.42億ポンド減少(2024年は101.25億ポンド)
MO101.22%93億ドル増加(2024年は88億ドル)
PM77.58%122億ドルほぼ横ばい(2024年も122億ドル)
VZ67.06%371億ドルほぼ横ばい(2024年は369億ドル)

配当性向は、Stock Clubの配当ページに表示される2025年実績(2025年の確定配当÷2025年通期の1株当たり利益)です。同社の概要ページのカードは、今年の配当(予想を含む)を直近12か月の1株当たり利益で割るため、MOは90.51%など値が異なりますが、どちらも式に当てはまる値で、期間の取り方の違いです。BTIの会社公表値は調整後の1株当たり利益に対する69.6%で、基準が異なります。営業キャッシュフローは、BTIのみ同社の2025年通期開示(ポンド建て)、他の3社はStock Clubのキャッシュフロー推移(ドル建て、億ドル単位)によります。通貨も会計期間も会社の規模も異なるため、金額の大小をそのまま配当の持続性の順位にはできません。


3-2. 配当性向に加えて見たい3つの点

まず、配当性向の分母が何かを確認する。 会計上の利益は、訴訟の引当や持分法投資の評価で大きく動きます。MOのように100%を超えた場合は、利益側に一時的な要因がないかを先に見ます。

次に、営業キャッシュフローが一時的な支出を含んでいないか。 BTIの2025年には和解の支払いが含まれています。調整後の数字と実際の支出を並べて、どちらの意味で「現金が足りている」と言えるのかを分けます。

最後に、配当以外の支出。 設備投資、自己株式の取得、借入の返済も現金を使います。VZのように設備投資が継続的に必要な事業では、営業キャッシュフローの大きさだけで余力を測ることはできません。


【補足】「連続◯年」は定義で変わる

  • 表示が一致しない: Stock Clubの配当サマリーは、BTIを「連続2年 非減配」、MOを「16年」、PMを「13年」、VZを「24年」と表示します。一方、元記事ではBTIが「連続増配年数18年」、MOが「54年間連続増配」、VZが「連続増配年数は18年」と記載されていました。
  • BTIが2年になる理由: Stock Clubの年数は、権利落ち日の暦年ごとに米ドル建ての配当を合計し、前年を下回らなかった年を数えたものです。BTIは2022年の2.96ドルに対し2023年が2.80ドルで、ここで途切れています。
  • 実際には増配していた: 会社が宣言した配当は、2022年支払い分の1回54.45ペンスから、2023年支払い分の57.72ペンスへ6.0%増えています。Stock Clubは各年の配当を一定の為替でドルに換算しており、2023年分はポンド安の時期の為替で換算されたため、減ったように表示されています。会社の開示では、預託証券のドル額は各支払日の為替で決まり、たとえば2022年5月の支払いは0.6754ドルでした(Stock Clubの表示は0.74ドル)。
  • 定義も提供元で違う: 「増配」と「非減配」の条件の違いや、集計の起点・期間も提供元によって異なります。
  • どう扱うか: 年数は、どの定義・どの通貨・どの期間での集計かを確認してから使ってください。数字だけを並べて長短を比べることはできません。
  • 一次情報に戻る: 連続年数を重視する場合は、各社が公表する株主還元の資料で定義と年数を確認するのが確実です。


4. 過去の記事を、次の決算の確認に使う

今回の振り返りで分かるのは、「高配当」という分類が時間とともに変わるということです。4社とも配当額は増えましたが、PMは株価上昇で利回りが2%台になり、BTIは増配を続けながら一時的な支出で現金が大きく減りました。MOは配当性向が100%を超え、VZは4社で最も低い配当性向を保っています。

同じ「高配当株」として並べた4社でも、現在の確認点は一社ずつ違います。過去レポートにあった見方を現在の事実に照らし、「どの点が続いていて、どの条件が変わったか」を確認すると、記事は公開時だけの情報で終わりません。

インベストリンゴのレポート一覧:ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・アルトリア・グループ・フィリップ モリス インターナショナル・ベライゾン・コミュニケーションズ。

売上高や純利益の推移は、Stock Clubの日本語決算ページでも確認できます:BTIの決算・MOの決算・PMの決算・VZの決算。

本記事は2026年10月29日時点の情報を編集部で整理したもので、元記事の本文・当時の評価は変更していません。

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