米国の金利と債券
指標の読み方から、株価に効く仕組みまで。
金利は、すべての資産価格の基準になります
金利が動くと、何が起きるのか
資産ごとに向きが異なります。どちらが良い悪いではなく、効き方が違うということです。
| 金利が上がるとき | 金利が下がるとき | |
|---|---|---|
| 既発債の価格 | 下がる | 上がる |
| グロース株の評価 | 将来利益の割引が大きくなり、逆風になりやすい | 割引が小さくなり、追い風になりやすい |
| 銀行・保険 | 運用利回りの改善が意識される | 利ざやの縮小が意識される |
| 公益・REITなど | 配当利回りの相対的な魅力が薄れる | 相対的な魅力が意識される |
| 企業の資金調達 | 借り換えコストが上がる | 借り換えコストが下がる |
| 為替(対円) | ドル高に振れやすい | ドル安に振れやすい |
一般的な傾向を整理したものです。実際には他の要因と重なって動きます。
おさえておく6つの指標
ひとつの数字だけでは判断できません。期間、インフレ、信用リスクをそれぞれ別の角度から確認します。
POLICY
政策金利(FF金利)
FRBが年8回のFOMCで決める、銀行間の翌日物取引に適用される金利の誘導目標です。短期金利の起点になります。市場は決定そのものより、声明文と参加者の金利見通し(ドットプロット)に反応します。
LONG
長期金利(10年債利回り)
米国債10年物の流通利回りです。FRBが直接決めるものではなく、市場での売買で決まります。住宅ローン金利や企業の借入コストの基準となり、株式の評価にも最も広く影響します。
CURVE
イールドカーブ
残存期間ごとの利回りを結んだ線です。通常は期間が長いほど利回りが高くなります。短期が長期を上回る状態を逆イールドと呼び、過去には景気後退に先行した例が知られています。
REAL
実質金利
名目金利から予想インフレ率を差し引いたものです。同じ4%でも、インフレが1%なら実質3%、インフレが4%なら実質0%になります。資金の借り手と貸し手にとっての実際の負担はこちらで決まります。
TERM
期間プレミアム
長期の債券を持つことに対して投資家が要求する上乗せ分です。財政赤字や国債の増発によって将来の需給に不安が生じると、この部分が拡大し、政策金利が動かなくても長期金利だけが上がることがあります。
SPREAD
クレジットスプレッド
社債の利回りと同年限の国債利回りの差です。企業の信用リスクに対する上乗せを表します。景気の不安が強まると拡大し、落ち着くと縮小するため、市場のリスク許容度を測る目安として使われます。
仕組みとして理解しておきたい2点
ここを取り違えると、ニュースの見出しが逆の意味に読めてしまいます。

債券価格と利回りは 必ず逆に動く
債券は満期に受け取る金額とその間の利息があらかじめ決まっています。そのため、市場で求められる利回りが上がれば、同じ将来のお金を得るために支払う価格は下がるしかありません。「利回りが上昇した」と「債券価格が下落した」は、同じ出来事を別の側から言い換えたものです。

金利は株価にとっての 重力として働く
株価は、その企業が将来生み出すお金を現在の価値に置き換えたものと考えられます。置き換えるときの割引に使われるのが金利です。金利が高いほど、遠い将来の利益ほど大きく割り引かれます。業績が変わらなくても、金利が上がるだけで理論上の価値が下がるのはこのためです。
長期金利は、誰が動かしているのか
政策金利を決めるのはFRBですが、長期金利はFRBだけでは決まりません。3つの主体がそれぞれ別の経路で働きかけます。
FRB(連邦準備制度)
政策金利を通じて短期金利を動かします。長期金利は直接決められませんが、将来の政策金利の見通しを通じて間接的に影響します。保有債券の圧縮や購入も長期の需給に働きかける手段です。
米財務省
国債をどの年限でどれだけ発行するかを決めます。長期債の発行が増えれば長期の需給は緩み、減れば締まります。発行済みの債券を買い戻す措置がとられることもあり、いずれも長期金利に働きかけます。
市場参加者
年金、保険、海外の中央銀行、ファンドが日々売買しています。インフレ見通し、財政への評価、他国の金利との比較によって、要求する利回りが変わります。長期金利の水準は最終的にここで決まります。
金利と債券を学ぶ
金利と債券の基本
用語と仕組みを扱った解説記事です。すべて無料で全文を読めます。
債券市場を扱った直近のレポート
長期金利と国債需給について、アナリストが書いた分析です。
FRBと金融政策
政策金利の見通しと、その根拠になる経済データの読み方です。
よくある質問
政策金利と長期金利は何が違うのですか
政策金利はFRBが年8回のFOMCで決める短期金利の誘導目標です。長期金利(米国債10年物の利回り)はFRBが直接決めるものではなく、市場での売買によって決まります。FRBが利下げしても長期金利が上がることはあります。
なぜ債券の価格と利回りは逆に動くのですか
債券は満期に受け取る金額と利息があらかじめ決まっているためです。市場で求められる利回りが上がれば、同じ将来のお金を得るために支払う価格は下がります。「利回り上昇」と「債券価格下落」は同じ出来事の言い換えです。
金利が上がるとなぜ株価が下がりやすいのですか
株価は企業が将来生み出すお金を現在の価値に置き換えたものと考えられ、その割引に金利が使われます。金利が高いほど遠い将来の利益が大きく割り引かれるため、業績が変わらなくても理論上の価値は下がります。
逆イールドとは何ですか
残存期間の短い国債の利回りが、長い国債の利回りを上回る状態です。通常は期間が長いほど利回りが高くなるため、この逆転は市場が将来の利下げを織り込んでいることを示し、過去には景気後退に先行した例が知られています。
実質金利とは何ですか
名目金利から予想インフレ率を差し引いたものです。名目が4%でもインフレが4%なら実質は0%になります。資金の借り手と貸し手にとっての実際の負担や利得は、名目ではなく実質のほうで決まります。
長期金利は誰が動かしているのですか
FRBは政策金利を通じて短期金利を決め、将来の見通しを通じて長期にも間接的に影響します。米財務省は国債をどの年限でどれだけ発行・買い戻すかを決めて需給に働きかけます。最終的な水準は、年金や海外中央銀行を含む市場参加者の売買で決まります。
金利とマクロ経済を扱うアナリスト
いずれも海外の独立系アナリストです。レポートは翻訳ではなく、日本の個人投資家が読むことを前提に再構成しています。