10/05/2026

SaaSの生存を採点する(Part 11):マンデー・ドット・コム徹底解剖②——ハーネス・AI収益・席数課金からの転換

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記事要約

    ■ハーネスはモデル訓練と別
    顧客の文脈、記憶、道具の制御、評価を組み合わせる開発はRAGを超えますが、独自の追加学習の実証とは異なります。本文はB1を2.5へ引き上げ、経路3の条件には未達とします。

    ■AI事業はなお初期段階
    筆者は純増ARRへの寄与17%と四半期の倍増から、AIのARRを約2,000万〜3,000万ドルと推計します。会社の開示額ではなく、比較対象のAI企業とも指標や範囲が異なります。

    ■席数減と成果増は両立する
    A3は2.5、A5は4.0です。管理部門の省人化が進む一方、売上に結び付く仕事は拡大し得ます。やり取りの回数ではなく、有用な成果が増え、継続課金につながるかが重要です。

    ■APIとAIクレジットは別課金
    外部AIによる通常のボード操作はAPI枠に算入され、自社AIクレジットを消費しません。自社AI機能の利用は別に課金され得ます。追加収益が席数減を上回るかは未実証です。

この記事は約 27 分で読むことができます。(記事文字数:約 13,300 文字)

※本記事は「Part 10:AI製品と業務の暗黙知」の続編です。シリーズの採点基準は「Part 3」をご覧ください。

Part 10では、製品ごとの仕事、ボードの記録と顧客の暗黙知を扱いました。今回は、その文脈をどうエージェントへ渡し、性能を改善し、有料の仕事へ変えるかを検証します。


ハーネスの構築と、文脈を扱う初期の取り組み

ハーネスは、モデルが仕事を確実に行うのを助ける、周囲のソフトウェアです。モデルがどの情報を受け取り、どの道具を使え、回答や行動が確認を通らなかったときに何をするかを決めます。開発者が誤りを調べ、改善を試す助けにもなります。有能なモデルでも、不完全な情報を受け取ったり、許されるべきでない変更の権限を持ったりすれば、うまく働けません。

マンデー・ドット・コム(MNDY)が9月に公開したFeedAgentについての技術記事は、この仕事を詳しく説明しています。固定された規則に沿ったデータの準備、エージェントが引用した記録が実在するかの確認、一貫した形式での回答の要求、道具の使用制限、重複した結果の除去が含まれます。エージェントが情報をどう記憶し、その性能をどうテストするかも説明しています。利用者が直接述べた好みは規則にできます。行動からエージェントが見つけたパターンは、確定した指示ではなく、手掛かりとして扱います。これは、情報を検索し、指示文と一緒にモデルへ渡すだけの仕組みを超えています。

ハーネスの仕事の一部は、人の好みをエージェントがどう覚え、使うかを制御することです。利用者が、あるボードは関係ないと明言したなら、その指示を将来の回答の規則として保存できます。単にそのボードの更新をクリックしなくなっただけなら、理由は不明です。仕事が終わったのか、更新が役に立たないのか、単に忙しいのかもしれません。ハーネスは、その観測を確認済みの指示と分け、エージェントがそれに基づいてどう動くかを制限できます。これにより、利用者の好みについての推測を指示だと取り違え、重要な仕事を隠してしまうのを防げます。

記録のシステムから文脈のシステムへ移ることについて、同社が7月に行った発表は、関連する問題を扱っています。提案するWorld Modelは、長く保つ文脈を扱う遅い処理と、最近の出来事と緊急性を扱う速い処理を組み合わせます。スライドは、文書を集めれば仕事を理解できると決め付けず、関係、決定、結果を論じています。古くなった文脈や、新しい利用者には履歴がないという問題も認めています。

これは、我々が指摘する問題の一部を同社が理解している証拠です。既存顧客全体で問題が解決された証拠ではありません。複雑な企業で適切な優先順位をどれほどの頻度で特定できるか、外部アシスタントに対してどれほど改善するか、外部アシスタントに同じ情報を与えた後も優位性が続くかを示す、公表された結果は見ていません。

次の段階は、より多くの文脈を検証可能にすることです。ある販売上の約束を果たすには、提供を始める前にセキュリティ審査が必要だと、エージェントが推測したとします。繰り返しその審査を行う人を特定し、規則を確認してもらい、関連する顧客と製品に結び付け、仕事を進められるようにする承認を記録できます。会社が得るのは、二つのチームの関係についてのモデルの推測以上に、信頼できるものになります。

実行の成功は、さらなる証拠を与えます。承認された変更は意図したシステムに届いたか。完了した仕事が再び未完了として扱われたか。引き継ぎを受ける人はそれを受け入れたか。顧客は約束された結果を得たか。これらの観測は完全ではありませんが、処理が完了したことと、そのもっともらしい説明とを区別できます。同社がモデルを訓練する前でも、道具と評価を改善できます。

次のClaudeの公開を待つだけよりも、大きな防御力を同社が作れると考えるのは、この部分です。競合も、同じモデルへのアクセスを購入できます。顧客固有の決定、依存関係、許可された行動を、維持された一式として再構築するには、もっと手間がかかります。優位性は、その知識のどれほどが同社だけにあり、どれほど移し替えやすく、顧客がそれを維持する役割を同社に任せ続けるかによります。

マンデー・ドット・コムは、一人の顧客の情報を全顧客向けのモデル訓練に使わずに、その顧客の環境を改善できます。エージェントは、承認された規則をそのアカウントの中で記憶し、適用できます。同社はまた、顧客の機密の業務手順を非公開に保ったまま、技術的な失敗から学び、製品全体を改善できます。したがって、顧客データを集めてモデルを訓練するより前に、置き換えにくい有用なサービスを築くことは可能です。その後、顧客のワークフローの事例を訓練に使いたいなら、適切な訓練方法とともに、情報を使う許可と、情報を守るための保護策が必要です。


モデルの周囲のソフトウェア


【補足】ハーネスとモデルの重み

ハーネスは、AIに渡す情報、使える道具、出力の確認を整える仕組みです。モデルの重みは、訓練で調整される内部の数値です。確認済みの規則を次の指示文へ加えることは、モデルそのものを追加学習することとは区別されます。


ハーネスがまだ高いB1を得られない理由

B1は、マンデー・ドット・コムがモデルを製品にどれほど深く組み込み、用途に適応させ、独自の知識とデータによって性能を改善しているかを評価します。現在の採点基準では、顧客データの検索と標準的なモデルの組み込みは、およそ2です。3には、独自の専門領域や対話のデータを用いた追加学習の実証と、それを支える評価、実際の製品で使われるモデルが必要です。独自データによる体系的な強化学習は4を支えます。5には、利用が価値ある訓練用のフィードバックを生み、そのフィードバックがモデルを改善し、改善がさらなる利用を呼ぶという、競合が再現しにくい循環が必要です。

同社のハーネスの開発は、基盤のモデルを変えるとは限らずに、製品を改善します。検索はより良い文脈を供給できます。検証は無効な回答を却下できます。記憶は、確認された好みを次の指示文へ加えられます。これらは、単独ではどれもモデルの重みを変えません。MagicとVibeのチームによる3月の技術的な説明は、新しいモデルの訓練ではなく、訓練済みモデルの周りの処理の連携、評価、文脈の仕事を述べています。

顧客がどう仕事を調整するかというデータを使って生成モデルを追加学習し、製品に組み込み、性能が改善したと示す公の証拠は、見つかっていません。AIの専門家を採用したり、AI企業を買収したりしたことは、その仕事が行われている証拠にはなりません。どのモデルを訓練し、どのデータを使い、性能がどう改善し、顧客がどこで使っているかを知る必要があります。

マンデー・ドット・コムは、非公開モデルだけに依存するという説明が示すより、すでに幅広いモデルを使っています。現在の英語版のAIのFAQには、Anthropic、OpenAI、Googleに加え、Nebiusを通じたNVIDIA Nemotronが載っています。Nemotronは公開モデルの系列です。この開示は、その系列を使っていることを示しますが、同社が追加学習したことや、顧客自身の基盤内で動く環境を提供することまでは示しません。モデルを使えることと、独自の訓練による優位性は別の事実です。

特定の形の追加学習を行うために、モデルの重みを所有したり、ダウンロードしたりする必要はありません。対応するモデルであれば、Microsoftの強化ファインチューニングの基盤のような外部サービスを利用できます。同社が適切な訓練例と結果の評価方法を用意し、Microsoftが自社の基盤で訓練を実行する仕組みです。その後、同社は調整されたモデルを試し、APIで製品につなげられます。顧客は通常どおり同社を使い、訓練は同社と外部の提供企業が行う仕事になります。これは利用可能な方法ですが、同社が使っているという証拠は見つかっていません。

どの道具を使うか、どの大きなモデルに仕事を任せるかを決める小型モデルを訓練し、大きなモデルは変えない方法もあります。研究では、強化学習を使うこの方法が実証されています。小型モデルは、自分の選択がどれほど機能したかというフィードバックから学びます。B1で同社にその評価を与えるには、そうしたシステムを訓練し、結果が改善したという証拠が必要です。エージェントに規則を設定し、記憶を与えるだけでは、強化学習にはなりません。

B1の基準では、顧客データに対するRAGは2.0、独自データによる追加学習の実証は3.0に対応します。上述の仕事から、同社はその間に位置します。ハーネスは、顧客の文脈、記憶、道具の制御、継続的な評価を組み合わせ、RAG以上のモデルの組み込みへ進んでいますが、独自の追加学習はまだ実証していません。そのため、我々はB1を2.5へ引き上げます。クラウドフレア(NET)を再検討したところ、同社もこの二つの水準の間に属すると分かりました。独自のハーネス、記憶のシステム、専門用途のアプリケーションは、モデルを稼働させるだけの仕組みを大きく超えています。したがって、同じ考え方を両社に適用し、クラウドフレアのB1も2.5へ引き上げました。

追加学習に大きく投資する前に、信頼できるエージェント製品を作ることが、適切な優先順位である場合もあります。最先端のモデルでも苦戦する仕事で、訓練を制御するためだけに能力の低いモデルへ切り替えると、製品を悪化させ、技術開発の資源を別の方向へ使ってしまうかもしれません。同社は今、エージェントに与える情報、使う道具、仕事の確認を改善する方が、大きな成果を得られる可能性があります。外部モデルへの依存は重要ですが、それは経営陣が直ちに社内のモデル訓練組織を作るべきだという意味ではありません。

経路3の条件は、B1が4以上、または圧倒的な規制上の堀があることのままです。規制上の堀は別の防御力を与えるもので、B1の点数自体を引き上げません。強い規制のある仕事では、顧客はベンダーの規制上の認可、法令遵守の統制、確立した監査手続きに依存する場合があります。モデル提供企業がその仕事を引き継ぐには、これらの能力を再現し、必要な認可を得なければなりません。AIの能力が向上するだけでは足りません。マンデー・ドット・コムには、B1の4も、その水準の規制上の保護もないため、割り当てる経路は経路2のままです。2.5への引き上げはモデルの組み込みの強化を認めつつ、経路3のより高い基準を保っています。


訓練と運用の違い


【補足】RAG・追加学習・強化学習

RAGは、必要な情報を検索してモデルに渡す仕組みです。追加学習は、訓練済みのモデルをさらに調整することです。強化学習では、行動の結果への評価を使って改善します。検索、記憶、検証を組み合わせても、それだけで追加学習や強化学習を実施したとは言えません。


経路の違い


【補足】経路2と経路3

経路2は、利用者の画面を外部AIに譲っても、業務の流れとデータを保つ姿です。経路3は、画面・業務・データの三層を保つ姿です。同社は、B1が4に届かず、圧倒的な規制上の保護もないため、経路2に位置づけられています。


Cursorとの比較から分かること、分からないこと

Cursorは、道具とハーネスをアプリケーションに用意していても、基盤モデルができることを制限する場合があると示しています。以前のSonnetで動くエージェントは、エディターとコーディングの道具を使えましたが、難しい仕事にはモデルが苦戦していました。Anthropicが2025年5月にClaude Sonnet 4を導入すると、その改善はCursorの既存製品へすぐに届きました。数日のうちに、CursorのCEOは、新モデルがより多くのコードを書き、より難しい仕事を引き受けていると報告しました。より強いモデルが、すでに作られていたアプリケーションから、追加の価値を引き出したのです。マンデー・ドット・コムも、業務の調整で同じような改善を経験する可能性があります。重要な準備は、ハーネスを作り、関連する情報を整理し、行動の規則を確立し、より良いモデルが登場したとき、すぐに有用な仕事を増やせるようにすることです。

Cursorはまた、直接の競合になるモデル供給企業に依存する戦略上の危険も示しています。Anthropicが2025年2月にClaude Codeを導入したとき、Cursorは、製品の重要な一部を供給すると同時に、顧客を奪い合う企業に直面しました。Anthropicは、モデルと自社のコーディング用アプリケーションを一緒に開発し、CursorがClaudeを利用する商業条件も決められます。これは、Cursorの立場の深刻な弱点を明らかにしました。アプリケーションとして成功しても、その成功が依存する技術を制御できるわけではなかったのです。

Cursorによる独自のComposerモデルへの投資を、この依存に対する重要な戦略的対応と捉えています。Composer 2は、重みが公開されたKimi K2.5を出発点とし、Cursorのエージェントが動く道具とコーディング環境を使って、追加学習と強化学習を加えています。Composer 2.5は、訓練を大幅に拡大して、その方法を続けています。これにより、モデルの挙動、性能、費用、開発の優先順位を、より強く制御できます。モデルとアプリケーションを一緒に改善し、自社製品に属する能力を作れます。これは競争上の地位の大きな強化です。Cursorは、直接の競合のモデルと商業条件への依存に代わる手段を作りました。マンデー・ドット・コムへの教訓は、より良いモデルを待つことにとどまりません。今作るハーネスと業務知識は、将来、自社のAI能力をより強く制御する土台になり得ます。

独自モデルの訓練では、コーディングの性質がCursorに有利です。非常に検証しやすい領域で、多くの結果を迅速に、比較的少ない費用で確認できます。コードを実行し、テストして、期待した結果を出すかを調べられます。訓練システムは、多数の解決方法を試し、テストに合格したものに報酬を与えられます。多くのコーディングの仕事について、明確で繰り返し可能な性能評価の方法を、強化学習に与えます。

業務の調整は、検証できるものとできないものが混ざり、確認しやすい手順と、判断が必要な決定を組み合わせます。エージェントが正しい人に文書を送ったか、適切な管理職に承認を求めたかは確認できます。その承認が必要だったか、遅延が妥当だったか、顧客の問題が適切に解決されたかを判断するのは、もっと難しい仕事です。結果が明らかになるまで数週間かかり、複数の人の行動に左右される場合があります。良い結果が何かについて、従業員同士の意見も異なるかもしれません。例えば、仕事を素早く終了したことで報酬を与えると、問題が解決する前に仕事を完了扱いにするよう、エージェントを学習させてしまう可能性があります。

したがって、Cursorの訓練方法を効果的に適用するには、その前に同社が、より多くの仕事を明確で確認可能なものにする必要があります。特定のワークフローから始め、規則と例外を記録し、従業員が確認した事例を集められます。ハーネスは、各手順が正しく完了したか、仕事が意図した結果を得たかを追跡できます。時間とともに、訓練に使う、より良い証拠が得られるでしょう。優先すべきは、仕事をどう行うべきかを取り込み、成功をどう評価するかを確立し、十分な改善を生む場所で追加学習を使うことです。

この仕事は、同社のAIチームをより実際的に評価する方法にもなります。公開情報からは、将来の生産性向上AIの飛躍を主導できる人材がいるかを判断できません。しかし、技術者が何を作り、顧客向けの製品が確実に動き、失敗をどう改善に使っているかは調べられます。ハーネスと顧客の文脈についての公表された仕事は、予定するAI機能の一覧以上の準備を示しています。モデルがより有能になったとき、その準備を、専門の新興企業より優れた製品へ変えられるかは、まだ実証されていません。


良い結果をどう確認するか


【補足】検証可能性の差

コードは、実行とテストによって期待どおり動くかを比較的早く確認できます。業務の優先順位は、取引先との約束や、後から分かる結果にも左右されます。完了ボタンが押されたことと、顧客の問題が解決したことを分けて評価する必要があります。


AIのARR——比較対象の先行企業に対し、まだ初期の事業

マンデー・ドット・コムは、AI製品が2026年第1四半期の純増ARRのおよそ10%、第2四半期の17%に寄与したと述べました。また、その二つの四半期の間でAIのARRが倍増したと説明しています。これらは、AI製品に顧客が対価を支払い始めていることを示しますが、金額の総額は開示していません。17%は、その四半期に追加されたARRへのAIの寄与であり、既存の事業全体に占める割合ではありません。

例示的な計算は、我々の以前の8,000万〜1億ドルという推計より、はるかに小さいAI事業を示します。同社は、全社のARRが2026年7月に15億ドルを超えたと述べました。3月末の全社ARRが約14億1,000万ドルで、その節目に達するまで一定の速さで増えたとすれば、7月のいつ15億ドルを超えたかによって、第2四半期に約6,700万〜9,000万ドルを追加したことになります。AIの17%の寄与は、その純増の約1,100万〜1,500万ドルに相当します。AIのARRは四半期中に倍増したため、期末残高はその純増額の2倍となり、6月末のAIのARRは約2,300万〜3,100万ドルと推計できます。

この計算を踏まえ、我々は第2四半期末のAIのARRを約2,000万〜3,000万ドルと推計します。小さいながらも意味のある事業であり、顧客がAI能力に対価を払っている証拠です。四半期にARRが倍増するのは好ましいものの、この出発点からなら実現しやすい面もあります。次のテストは、事業が大きくなっても、顧客が更新し、利用を追加購入し、良好な利益率を生む形で、強い成長を持続できるかどうかです。

これは、AIネイティブ企業と比較するための、より有用な出発点になります。同社が今生み出す収益、成長の速さ、比較対象として選んだ先行企業との差を縮めるため製品が何を達成する必要があるかを評価できます。Vibe、Sidekick、Blocks、エージェント別の内訳があれば、どの製品が進展を支えているかも分かるでしょう。

比較対象として選んだ次の4社が、この潜在的な節目の位置を示します。


Cognition

報告された規模:2026年9月時点で、年換算の売上ペースは10億ドル。

範囲:Windsurfを含む全社。Devin単独ではありません。


Lovable

報告された規模:2026年9月24日の報告で、年換算の売上ペースは6億ドル。

範囲:アプリ作成。


Harvey

報告された規模:2026年9月に開示されたARRは4億ドル超。

範囲:法務AI企業の収益。


Sierra

報告された規模:ARR2億ドルの節目を、2026年8月に改めて確認。

範囲:顧客体験のAI。9四半期でその節目に到達しました。

我々の2,000万〜3,000万ドルという推計では、同社のAIのARRは、比較対象に選んだAIネイティブの先行企業を大きく下回ります。Devin単独は、CognitionによるWindsurfの買収前、2025年6月に7,300万ドルに達していました。Cognitionの、より新しい全社の数字は、両方の事業を含んでいます。

HarveyとSierraは、強いAIの普及がコーディング以外にも及ぶことを示しています。法務と顧客対応に集中することで、解くべき仕事は明確になり、測る結果も具体的になります。どちらも難しい判断を含みますが、汎用の業務調整は、部門の優先順位、文書化されていない手順、顧客固有の規則という、より広い組み合わせを扱います。そのため、確実な性能を達成するのは、より難しくなります。

マンデー・ドット・コムには、既存顧客という販売上の優位性があります。人々がすでに仕事を整理している場所へ、エージェントを導入できます。そのアクセスを収益へ変えるには、顧客の既存のボード、連携、ワークフローを扱えるエージェントが必要です。専門の新興企業は、より狭い仕事から始め、その仕事をうまく行うことを中心に製品を作れます。

収益の差は大きなものです。どの程度が同社の実行力、幅広い用途の難しさ、まだ改善が必要なモデル能力によるかが、問いになります。顧客の更新、伸びる有料利用、仕事を完了する費用によって、同社が競争力のあるAI事業を築いているかが明らかになるでしょう。


比較指標の注意


【補足】ARRと年換算売上ペース

この比較にはARRと年換算の売上ペースが混在しています。後者は、ある時点の売上速度を年間に引き延ばした規模で、継続契約だけを測るとは限りません。CognitionはWindsurfを含む全社であり、Devin単独と取り違えないことも重要です。


人の生産性と仕事量——A3・A5

A3とA5は、異なる効果を測ります。A3は、エージェントの仕事量を一定としたとき、AIが一人あたりの生産性を高めると、チームや部門に必要な従業員が減るのか、同じなのか、増えるのかを問います。A5は、エージェントが行う仕事に上限があるか、つまり価値ある成果が一定数しか必要ないか、それとも事実上の上限がなく、エージェントが仕事を増やすほど、顧客がより多くの成果の恩恵を受け続けるかを問います。

マンデー・ドット・コムのA3とA5の採点は、これまで扱った企業より多くの検討を必要としました。プラットフォームは、調整を専業とする人、プロジェクトの参加者、直接売上を生み出すチームに使われます。中核の調整業務は、なお費用を管理する部門の性格が強いものです。プロジェクト管理者がより多くのプロジェクトを監督できても、会社が自動的に管理者を増員するわけではありません。財務チームが決算処理を早く終えても、報告の日程は固定されています。したがって、生産性の向上は、これらの仕事に必要な人数を減らす可能性があります。

多くの有料席は、専業の調整担当者ではなく、参加者にも割り当てられています。エージェントが更新情報を書いても、デザイナー、顧客担当者、技術者は関わり続けます。同社上で仕事に責任を持ち、決定を承認するため、その有料席は価値を保ち得ます。ボードの更新に使う時間が減っても、有料のアクセスが必要なくなるとは限りません。経営陣が報告した、大企業向け有料席数の2桁成長は、この移行中も人間の席数が増えていることを示しています。

より拡張的な可能性は、エージェントが下位の仕事を代替し、プロジェクト管理者が仮想チームの監督者として、より価値を持つことです。顧客向けの仕事を増やすために、物理的な製品の製造、保管、輸送を必要としないデジタルサービスでは、特に機能するかもしれません。制作会社は、各プロジェクト管理者にエージェントのチームを持たせ、より多くの案件を受けられます。顧客の需要があるなら、人間の従業員を同じ割合で増やさずに、事業を大きく伸ばせます。

物理的な製品を届ける企業には、追加の制約があります。調整が速くなっても、それだけで在庫が増え、倉庫の容量が広がり、配送が完了するわけではありません。商品の取り扱い、供給の管理、物理的な引き渡しには、なお人が必要です。エージェントはそれらの整理を助けますが、プロジェクト管理者一人に対して有用なエージェントの数は、物理的な業務の処理能力と成長に、より強く結び付きます。

採点のための大まかな作業上の判断では、同社の機能は、費用を管理する仕事に約60%、売上に結び付く仕事に約40%の割合で傾いています。これはプラットフォームの使われ方についての我々の評価であり、公表された売上構成ではありません。したがって、A3は2.5とします。わずかに費用管理寄りであるため、従業員の生産性が高まれば、理論上、顧客はより少人数のチームで動けるはずです。CRM、Service、売上に結び付くプロジェクトには、2を上回る点数を保つだけの拡大の機会があります。

A5の天井テストは、より強い4.0です。主要な機会は、我々が売上に結び付くと推計する、同社の仕事の約40%にあります。月次決算や年次の提出書類と異なり、暦による固定の上限はありません。需要が増えれば、事業は販売機会を追い、顧客を増やし、販促活動を続けられます。これは事実上、上限のない仕事です。整理と完了の費用が下がれば、顧客が求める価値ある成果の数が増えます。

これによって、費用管理部門の有料席への圧力があっても、同社が売上を伸ばし、さらには再加速させる経路が生まれます。A3の面では、生産性の向上が事務部門の縮小を可能にする一方、売上に結び付くチームでは、追加採用を有益にするかもしれません。A5の面では、そのチームが提供する有用な仕事量を、エージェントが増やせます。成長部門の席数の拡大と有料の消費の増加が、他の部門の席数減少を上回る可能性があります。時間とともに、売上に結び付く仕事が事業のより大きな部分になり、拡大余地の大きい機能へ構成が移るかもしれません。

その成長を収益として取り込めるかは、B3によります。エージェントを有料席として課金すれば、顧客は人間の雇用を減らしながら、総席数を増やすこともできます。消費に対する課金は、エージェントがより多くの仕事を完了するときに収益を得る、別の方法です。同社には、利用を増やす見返りを顧客が明確に理解できる価格設定が必要です。予想外に大きな請求は、拡大を損ない、別のプラットフォームへの移行を促すかもしれません。

成果は、なお価値あるものでなければなりません。10回の状態変更は、10件の顧客の仕事の完了ではありません。メッセージの増加は、同じ仕事でエージェントが苦戦していることを表す場合もあります。我々は、解決された依頼、完了した顧客案件、成功した営業の引き継ぎを確認したいと考えます。同社は、5月の提供開始から8月までに、エージェントとのやり取りが500万回を超えたと報告しました。商業上のテストは、その活動のどれほどが、顧客が支払い続ける有用な仕事になるかです。可能性はA5の4を支えますが、収益化の証拠が限られるため、B3は3にとどまります。

クラウドフレアの通信量やデータドッグ(DDOG)のテレメトリと比べ、マンデー・ドット・コムの成長は、整理している個々の仕事に、より強く依存します。一部の事務作業には上限があり、プロジェクトは終わり、物理的な業務は一部の顧客が拡大できる速さを制限します。CRMとServiceは、より継続的な仕事を加えます。大きな売上連動の機会と、これらの実務上の制約の組み合わせから、A5は5ではなく4です。


人員と成果を分ける


【補足】A3とA5の二つの問い

A3は、一定のエージェント量の下で、人の生産性が変わると必要な人員がどう変化するかを見ます。A5は、エージェントがさらに仕事をすると価値ある成果も増えるかを見ます。人の席数が減ることと、会社が提供する有用な仕事量が増えることは、同時に起こり得ます。


仕事にどう課金できるか——B3

マンデー・ドット・コムは、すでに人間の有料席だけを売る形から進んでいます。AI Work Platformは、席とクレジットを組み合わせ、顧客は利用を追加購入できます。公表されたプランにはクレジットが含まれ、既存顧客は自ら選んで移行し、AIの利用枠を購入できます。経営陣は、最初のクレジット枠を使い切り、追加購入する顧客について説明しています。継続的なAIの消費によるARRが、全体の何割かは開示していませんが、移行は商業的な現実になっています。

仕組みは、行う仕事によって異なります。Claudeに通常のボードの読み取りや更新を頼む人は、外部モデルと同社のAPIを使います。顧客はモデルの対価を外部の提供企業に払い、同社はプランの中にAPIの利用枠を含めています。MCPでのアクセスと通常のボード操作は、同社のAIクレジットを消費しませんが、APIの利用枠には算入されます。 より大きな容量が必要な顧客は、同社からAPIの追加枠を購入できます。

外部エージェントが同社自身のAI機能を使う場合、その仕事は同社のクレジットも消費し得ます。Vibeを通じたアプリの作成や修正は一例です。BYOAには現在、追加の接続料はありませんが、エージェントが使う同社のAI能力には、顧客が料金を負担する場合があります。したがって、利用者がSidekickを開かなくても、外部アシスタントが同社の収益を生むことがあります。

APIの利用枠は、高い利益率の収益を生む可能性があります。同社がデータの要求を処理し、外部の提供企業がモデルの推論を担うからです。顧客は、同社の仕事場への支払いを続け、APIの利用枠を増やし、自社のAI処理のためのクレジットを購入するかもしれません。他社がアシスタントを提供していても、仕事から収益を得られます。ただし、利益率が高いだけで席数の問題が解決するわけではありません。顧客が人間の席を減らした際、追加のAPI収益が、失われる契約収益より小さい可能性は残ります。

より大きな機会は、顧客が支払い続けるだけの価値を認める仕事を提供することです。基本的なボードの更新より、見込み顧客を確実に選別したり、複数部門にまたがるワークフローを完了したりする方が、大きな対価を支えます。競合プラットフォームもAPIのアクセスを提供でき、追加呼び出しに課せる料金には限界があります。既存の設定と連携は留まる理由になりますが、持続的な売上成長は、置き換えにくい有用な能力の提供にかかっています。

クレジットも、顧客の仕事への投入を測るもので、結果を測るとは限りません。仕事を終えるためにエージェントが何度も試すと、顧客の価値が下がる一方、クレジットの消費が増える場合があります。顧客は、外部モデルの契約と誤りを直す時間を含む総費用を、完了した仕事と比べます。推論費用の低下が同社を助けるのは、競争的な価格設定と、より難しい仕事が、その節約を使い切らない範囲に限られます。

同社にはなお保護すべき大きな席数課金の事業があるため、既存顧客の移行は重要です。付属のクレジットは試用を促しますが、枠内の利用はすぐには請求の増加につながりません。会社が消費課金寄りの契約へ転換する前に、既存顧客が新しいAI機能を採用することもあります。経営陣は、契約更新時の対立のリスクを抑えつつ、拡大を正当化するだけの価値を新製品に持たせる必要があります。

B3は3.0です。混合型の課金が実際に提供され、一部の顧客は最初の枠を超えて支払っています。4を与えるほど強い全社的な転換を示す、消費課金の比率、顧客群ごとの契約拡大、収益構成は分かりません。課金の仕組みを開示するだけでは不十分です。次に必要な証拠は、有料のAI業務が、顧客が契約を拡大する実質的な理由になっていることです。

製品ごとの報告は、特に役立つでしょう。Vibeの継続した契約収益の1ドルと、推論クレジットの一時的な急増とでは、意味が異なります。毎週ワークフローを扱う常駐のエージェントと、ときどきSidekickへ質問する利用では、採用の性質が異なります。AIのARRの合計は、これらの可能性をまとめ、どれが成長を支えているかを示しません。顧客が必要とし続ける仕事に結び付いた追加購入を実証すれば、投資の論拠は強まります。


課金の区分


【補足】APIの利用枠とAIクレジット

APIの利用枠は、データを読んだり更新したりする接続の容量です。AIクレジットは、同社自身のAI機能を動かす際の利用単位です。外部のモデル利用料も別にあります。画面を使う人の数だけでなく、どの処理に誰が対価を払うかを見る必要があります。


次のPart 12で確かめること

続く「Part 12:経路2の生存条件とバリュエーション」では、モデル提供企業との競争、プライバシーと権限、経営陣の実行力、AI提供の採算、企業価値と経路2の生存条件を整理します。

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