SaaSの生存を採点する(Part 10):マンデー・ドット・コム徹底解剖①——AI製品と業務の暗黙知

■AI製品は仕事ごとに評価
Sidekick、Vibe、AI Blocks、エージェントは用途が異なります。一部の利用者の不満や個別製品の非開示を、固定の制限やAI事業全体の失敗とは断定できません。
■外部画面への移行は撤退と別
外部アシスタントは競合であると同時に販売経路にもなります。顧客が同社のチャットを離れても、共有記録や権限、自社AI機能の利用を続ける可能性があります。
■業務記録の深さには差がある
A1は2.5、A2は2.0です。中小企業のCRMや大規模導入には定着した業務がありますが、他のSaaSをAPIでつなぐ調整は外部エージェントにも再現できます。
■差別化の鍵は確認済みの暗黙知
Palantirとの比較が示すのは、顧客へのアクセスと業務知識の構築は別だという点です。例外や承認要件を確認し、維持することが置き換えにくさを支える可能性があります。
※本記事は「Part 9:エージェント時代の需要生存とバリュエーション」の続編です。採点基準は「Part 3:VAR耐性スコアカードの採点フレームワーク」、業務知識の対比は「Part 4:Palantir徹底解剖」もあわせてご覧ください。
前回までの3回では、セキュリティ領域の経路の運命、採点、需要と評価を検証しました。今回は業務管理の領域へ移ります。マンデー・ドット・コムの検証は3回に分けてお届けします。第1回の今回は、製品と業務記録、顧客の暗黙知を扱います。
マンデー・ドット・コム(MNDY)のAI時代の生存テストは、拡大するエージェント機能が、人間の有料席数への圧力を埋め合わせるだけの収益を生み出せるかどうかです。
採点の概要
- 分類:競合するオプショナリティ
- 割り当てられた経路:経路2
- 二次的リスク:溶けゆく氷
マンデー・ドット・コムの更新された採点結果は、SaaSスコアカードでご覧いただけます。
スコアカード
- A1 システム・オブ・レコードの深さとデータ重力:2.5
- A2 ワークフロー吸収性(大脳テスト):2.0
- A3 提供職能の需要弾力性:2.5
- A4 経路の運命と経路の質:3.0
- A5 成果への貢献度(天井テスト):4.0
- B1 モデル層レバレッジ:2.5
- B2 組織の代謝:4.5
- B3 価格モデルの俊敏性:3.0
- B4 信頼・セキュリティ・ガバナンスの態勢:3.5
- B5 出荷ケイデンス:4.0
- C1 トークン経済下のマージン軌道:3.0
- C2 倍率に織り込まれたシナリオ/Rule of X:4.5
D1・D2はサイバーセキュリティ専用の付録ファクターであり、マンデー・ドット・コムには適用しません。
採点と経路の読み方
【補足】三つの経路と五つの分類
経路1は既存製品がAIによって内製に置き換わる姿、経路2は利用者の画面を外部AIに譲っても業務の流れとデータを保つ姿、経路3は画面・業務・データの三層を保つ姿です。「競合するオプショナリティ」は、成長の可能性が残る一方、その実現を競合と争う分類です。「溶けゆく氷」は、既存事業が縮むリスクを表します。
モデル層の採点の意味
【補足】RAGと追加学習の間
B1は、モデルを製品へ組み込み、独自の知識やデータで性能を改善する深さを評価します。顧客データの検索などは2、独自データを使う追加学習の実証は3が目安です。同社の2.5は、記憶、道具の制御、継続的な評価を備えるハーネスを認めた評価であり、経路3に必要な4には達していません。
より良いアシスタントを作るだけでは足りない
マンデー・ドット・コムは、AI事業を本格的に評価するに足るだけの変化を遂げています。ボードを外部エージェントに開放し、自社のエージェントとアプリ作成機能を導入し、価格設定を変え、顧客へのソフトウェア提供のあり方を再構築し始めました。それでも、これらの変化がモデル提供企業や新世代の生産性向上企業に対する持続的な優位性をもたらすとは、まだ確認できません。この組み合わせから、同社を「競合するオプショナリティ」に分類しています。
同社は異なる二つの問題に直面しています。一つは、以前なら誰かがボードを開いて行っていた入力、要約、情報の振り分けの多くを、エージェントが担えることです。もう一つは、有能なモデルであっても、企業が実際にどう仕事を進めているかを理解する必要があることです。期日を知るのは簡単です。なぜプロジェクトが止まっているのか、誰の承認が重要なのか、どの遅延に注意を向けるべきなのかを知るのは、より難しい仕事です。マンデー・ドット・コムは前者の変化にさらされる一方、後者には機会があります。
我々の中心的な関心は、顧客のワークフローの内部にいるという同社の立場を、エージェントの能力を高める知識へ変えられるかどうかです。既存顧客の基盤を通じて、人々、プロジェクトの履歴、チーム同士の関係にアクセスできます。しかし、アクセスできるだけで、それらの関係が信頼できる指示になるわけではありません。同社は関係を特定し、それが正しいと確認し、事業の変化に応じて最新の状態を保つ必要があります。最近の技術開発の一部は、この問題に取り組んでいます。現時点の証拠は、独自モデルの優位性よりも、エージェントを支えるハーネスの開発について、はるかに強いものです。
幅広い生産性向上AIが、まだ急速な普及期を迎えていない可能性も残しています。コーディング用アプリケーションは、既存の製品に大幅に優れたモデル能力が届いたとき、何が起こり得るかを示しました。マンデー・ドット・コムも、同じような改善の恩恵を受ける可能性があります。ただし、投資の論拠をそこで止めることはできません。同じ改善は競合にも届くからです。そのときまでに同社が何を用意し、その結果として行われる仕事に顧客が対価を支払うかを評価する必要があります。
周囲のしくみ
【補足】ハーネスとは
ハーネスは、AIモデルが仕事を確実に行えるよう、周囲で支えるソフトウェアです。モデルが受け取る情報、使える道具、回答や行動が確認を通らなかったときの扱いを決めます。有能なモデルでも、受け取る情報や権限が不適切なら、うまく働けません。
顧客は同社のAI製品の何に対価を払っているのか
Claudeと「マンデー・ドット・コムのAI」を一つの製品として比較すると、実際に担っている仕事の違いが見えなくなります。AI Blocks、Sidekick、Vibe、MNDY Agentsは、それぞれ用途が異なります。ある仕事ではClaudeを選び、別の仕事ではマンデー・ドット・コムに支払う顧客もあり得ます。製品にたどり着く経路も重要です。外部アシスタントはMCPを通じて同社を操作でき、それは同社が提供するすべてを置き換えることを意味しません。
AI Blocksは、ワークフローの中で繰り返される処理を担います。更新内容の要約、依頼の分類、文章から関連項目への情報の抽出などができます。魅力は、多くの場合、定期的に発生する雑務の時間を節約できる点です。新しい項目が届くたびに、別のチャットを開いて同じ仕事を説明する必要はありません。いったん処理を設定すれば、マンデー・ドット・コムは、仕事がすでに行われている場所でそれを実行できます。事業上の問いは、これらの処理が十分な信頼性と価値を保ち、顧客が追加のクレジットを購入するかどうかです。
Sidekickは、マンデー・ドット・コム内の対話型アシスタントです。利用者は仕事について質問し、要約を依頼し、変更を加えられます。MCPを通じてClaudeやChatGPTに同じことを頼む行為に、最も直接的に競合する製品です。アカウントへの理解と、すでに同社を使っている人が始めやすい体験が、その優位性になるはずです。ただし、大規模なアカウントから適切な記録を集めたり、仕事を完了させたりできなければ、製品の内部にいるだけでは不十分です。
Vibeは、指示文からアプリケーションや共有画面を作ります。標準のボードでは用意できない顧客用ポータル、承認画面、ダッシュボードを、チームが求める場合があります。出来上がったものは対話が終わった後も残り、指示を書いていない同僚も利用できます。これはアシスタントに今日の仕事の優先順位を付けてもらうこととは異なります。Vibeは他のアプリ作成ツールに加え、ソフトウェアを作れる汎用アシスタントとも、ますます競合しています。価値は、チームが継続して使う有用なアプリケーションを作れるかどうかにかかっています。
MNDY Agentsは、委任された仕事を引き受けます。チャットで人が一つひとつ質問するのを待つのではなく、仕事を割り当てられ、ワークフローの内部で動けます。BYOAでは、外部で動くエージェントをマンデー・ドット・コムに参加させられます。この仕組みでは、外部の提供企業が推論を担う一方、同社が共有の業務記録を維持し、アクセスを制御できます。BYOAは9月時点の文書でも、まだベータ版とされていました。
これらの製品は、互いを支えることもできます。外部アシスタントが問題を分析し、Vibeでチーム向けの画面を作り、その後のワークフローの一部をAI Blocksやエージェントに任せる、といった使い方です。同社の文書では、外部エージェントが自社のAI機能の一部を呼び出すことも、現在は認めています。したがって、外部の画面は競争上の脅威であると同時に、販売経路でもあります。同社のチャット画面を離れることが同社の利用をやめることだと決め付けず、顧客が何を継続して使い、何に支払うかで判断するべきです。
外部接続の仕組み
【補足】MCPとBYOAの役割
MCPは、外部AIがソフトウェアの道具や情報を使うための共通の接続方法です。BYOAは、外部で動くエージェントを同社の仕事場に参加させる仕組みです。「外部のAIを使うこと」と「記録や権限を管理する場所を移すこと」は別々に考えられます。
Sidekickと外部アシスタントの比較
独立した証拠は少ないものの、いくつかの報告は、業務管理アシスタントにとって重要な問題を明らかにしています。2026年1月のRedditのレビューで、あるボード管理者はSidekickに約2,000件の項目の分析を依頼した経験を述べています。処理したのは約200件で、残りを集計すると申し出たものの、その結果は得られませんでした。同じ利用者は、ボード単位のSidekickが項目の更新内容を読めず、該当するやり取りでは文書や画像にもアクセスできなかったと報告しています。彼はMCPを通じたChatGPTへの直接接続を好む一方、Vibeには好意的でした。
この利用者は期待外れの体験を述べ、SidekickをClaudeではなくChatGPTと比較しています。Sidekickについての、それ以前の質疑応答では、別の利用者が20を超えるボードの情報をまとめられなかったと報告しました。これらの個別の報告から、200件や20ボードという固定の上限があるとは言えません。懸念は、Sidekickが確認した範囲と確認していない範囲を、利用者に明確に伝えるかどうかです。ボードの10分の1しか確認していないのに、もっともらしい優先順位の一覧を出せば、利用者はすべての項目を考慮したと思うかもしれません。重要な仕事が抜けていると気付かず、その提案に沿って動いてしまう可能性があります。
Claudeの利用者からは、文書の準備、調査、マンデー・ドット・コムへの情報入力で、より良い体験が報告されています。4月のRedditの議論には複数の好意的な説明とともに、セキュリティやアカウントへのアクセスへの懸念もありました。同じ議論の後続コメントでは、データの読み書きに失敗した経験も述べられています。より優れた汎用モデルにつないでも、接続機能が適切な項目を提供し、モデルが道具を正しく使うとは限りません。
現在のSidekickの文書は、初期の不満とも異なります。アカウント、ボード、項目の文脈、文書やチームメンバーへの参照、ファイル、外部連携が説明されています。1月の制限を、10月にも同じ機能がない証拠として使うことはできません。同様に、サポートページに能力が記載されていても、大規模で整理の行き届いていないアカウント全体で、確実に動くことは証明されません。同じ複数ボードの優先順位付けをSidekickとClaudeに行わせる、条件をそろえた再現可能な比較は見つかっていません。
多数のボードに関わる人が、朝一番に何をすべきか尋ねる場合、処理には複数の段階があります。アシスタントは、その人に属する仕事をすべて見つけ、状況を理解し、依存関係を特定し、何に注意を向けるべきかを判断しなければなりません。重要な更新が欠けていれば、残りの記録に対する推論が優れていても、その欠落を埋めることはできません。記録がすべてそろっていても、部門ごとに「緊急」の意味が違うなら、情報の検索だけで適切な順位は付けられません。
Sidekickの弱点の一部は、基盤モデルの改善を待たずに修正できるかもしれません。すべての項目を取得できない、複数のボードの情報をまとめられない、といった問題は、ソフトウェアによるデータへのアクセスや処理の仕方に原因がある可能性があります。同社はすでに、その部分の体験を改善できるはずです。競合する優先事項のどちらを選ぶか、企業を支援するのは、もっと難しい仕事です。例えば、同社を使うソフトウェア企業が、ある顧客からの緊急の依頼を優先し、製品の提供開始を遅らせるべきか判断する場合です。その判断は、顧客への明文化されていない約束や、個々の従業員が持つ知識に左右されるかもしれません。そうした情報があっても、どちらが事業にとってより良いかを、モデルはうまく判断できない可能性があります。
すでにClaudeを使っている人は、MCPでマンデー・ドット・コムにつなぎ、複数のボードを横断して仕事と優先順位を確認したいと考えるかもしれません。報告されたSidekickの問題は、それを試す理由になります。ただし、直接比較が少ないため、その人の環境でどちらのアシスタントが優れているとは言えません。同社の内部で使えるという理由で、Sidekickを好む顧客もいるでしょう。分析ではClaudeを選ぶ人にも、AI Blocksは繰り返しの仕事を短縮できます。同社は、Sidekickが複数のボードから関連する仕事を確実に見つけ、評価できることを示し、利便性以外にも選ぶ理由を提供する必要があります。
Vibeはコーディングモデルの改善をすでに生かせるはず
Vibeは、「生産性向上モデルはまだ準備ができていない」という広い説明よりも、厳しく評価するべきです。仕事の多くはコードの生成であり、この分野ではモデル能力とAIネイティブの製品が、すでに急速に進歩しています。マンデー・ドット・コムには、既存の利用者、既存のボード、一般的な業務管理のパターンに関する知識があります。モデル提供企業から、優れたコーディング能力を借りています。我々は、これらが顧客の依頼を、顧客の既存データと連動するアプリケーションへ変える助けになると期待します。
初期の商業的な結果は好ましいものでした。2025年第4四半期を対象とした2026年2月の発表で、同社は、2025年10月中旬に課金を始めてから約2カ月半で、VibeのARRが100万ドルを超えたと述べています。3月のインタビューの導入部分には、2カ月間に4万件のアプリケーションが作られたとありましたが、どの期間を測ったかは明確に示されていませんでした。アプリの作成件数が対象とする集団は、有料顧客や、本番環境で使われ続けているアプリの集団とは異なります。
その後に我々が確認した開示には、有料アカウント数、継続利用されるアプリ数、ARRについて、比較可能なVibe単独の時系列はありません。同社は代わりに、より広いAIの採用と収益の指標を報告しています。大きな商業的成功になりつつあるなら、経営陣が目立つ形で説明すると期待する製品だけに、残念な点です。Vibeが急速に成長していると想定する姿勢は、これによって弱まります。
しかし、それは1月に成長が止まったことや、Claudeがその停止の原因だったことを証明しません。この二つは別の命題です。開示がない理由は、勢いの弱さ、報告方法の変更、会社の商業上の優先順位の変化などが考えられます。Vibeの成長が減速していたとしても、競争の影響を、低い有料転換率、製品の信頼性、試作品を実際に使われるアプリへ仕上げる手間と区別する必要があります。
それでも、競争への懸念には意味があります。より良いコーディングモデルはVibeを改善しますが、顧客がモデル提供企業や専門の作成ツールから直接購入できる代替手段も改善します。Vibeは絶対的には大きく改善しても、差別化の度合いを失う可能性があります。以前は簡単な画面の作成に同社を必要としていたチームも、特に複数のシステムのデータが必要なアプリでは、別の場所で作れるようになるかもしれません。自社の作成ツールを選ぶ理由になるだけの価値を、連携、権限、継続的な運用を通じて加えなければなりません。
Vibeを気に入っていても、Sidekickには失望する利用者はあり得ます。大きなボードの処理でSidekickを批判した管理者も、Vibeには好意的でした。他の利用者は、アプリが十分に動くまで、繰り返し指示し、誤りを直す必要があったと報告しています。これらの経験から、顧客がVibeを使い続け、支払い続けるかは分かりません。持続的な価値を判断するには、データが変わってもアプリが動き続けるか、作成者の助けなしに同僚が使えるか、顧客が契約を更新するかを知る必要があります。
AIのコーディングの改善はVibeを助けますが、実演で動くアプリでも、日常の利用では失敗するかもしれません。見た目は正しくても、違う顧客の記録を更新したり、承認権限のない人に依頼を承認させたりする場合があります。企業の業務管理に関する同社の知識は、こうした誤りを防ぐ助けになるはずです。誤りが続くなら、すべてを基盤のAIモデルのせいにするのではなく、同社が製品をどう作り、他のアプリ作成ツール以上に何を提供しているかを調べるべきです。
Vibeは初期の顧客を獲得しましたが、その顧客が支払いを続ける大きな事業へ成長できるかは、まだ分かりません。証拠なしに急成長を想定するべきではありません。同じように、最近のVibeの数字がないことは、同社のAI製品がすべて失敗していることを示しません。Sidekick、Blocks、委任型エージェント、Vibeは異なる仕事を担います。それぞれの仕事をどれだけうまく行い、顧客が利用と支払いを続けるかによって評価する必要があります。
契約収益の見方
【補足】ARRと売上継続率
ARRは、継続的な契約収益を年換算した指標で、その年に実際に計上された売上とは異なります。売上継続率は、既存顧客の契約増減などを織り込んだ継続収益の変化を示します。新しい顧客の獲得とは分けて、既存の利用が拡大しているかを見るために使います。
ボードは何を持ち、どれほど置き換えにくいのか——A1・A2
2〜3年前、我々は購読者に、マンデー・ドット・コムがシステム・オブ・レコードのベンダーになるかを注視していると伝えました。mondayDBはより大規模な導入を支えられ、同社のCRMは、顧客が正式な記録に依存する業務領域へ会社を進める可能性があります。今も、それが適切な問いです。ボードの容量と、ボードが正式な記録として認められることは、異なる性質です。
mondayDBは、ボードの下にある情報を保存し、検索します。同社の技術開発によって、対応できる規模が広がり、性能も改善しています。永続的な保存、スナップショット、先行書き込みログに関する説明は、書き込まれたものを保持し、返せるかという問題です。それらはデータベースの保証です。入力された商談段階が署名済み契約と一致するか、完了とされた仕事が実際に完了したかを保証するものではありません。
業務の調整に使う情報の多くは、他のシステムから来ます。顧客記録はセールスフォース、開発上の課題はJira、請求書は会計ソフト、文書は共有ドライブにあるかもしれません。マンデー・ドット・コムは、プロジェクトと担当者を中心に情報を集め、画面を行き来する必要を減らします。それらの元のシステムに接続したアシスタントも、進捗の要約や記録の更新はできます。ただし、記録にアクセスできても、誰が何をすることに合意したか、どの仕事が他の仕事に依存するか、なぜチームが特定の方法を選んだかまでは分からないかもしれません。その知識の一部は同社に記録されている可能性があります。したがって、外部アシスタントは定型的な要約や更新を引き継いでも、人々が仕事を整理する共有の場所として、なお同社に依存することがあり得ます。
それでも、同社上のすべての事実が複製だと言うのは誤りです。管理職による提供開始の延期の決定、チーム間で合意した引き継ぎ、担当の変更などは、そこで初めて記録される場合があります。元になる取引が他の場所にあっても、ボードがプロジェクトの正式な記録として受け入れられることもあります。その価値は、人々がこれらの約束に依存し、それを失うと周囲のワークフローが壊れるかどうかによります。
利用者が入力したデータが、自動的に信頼できないわけでもありません。セールスフォースにも、人が入力した情報があります。違いは、その周囲の手続きです。誰が記録に責任を持ち、どの確認が適用され、どの後続システムが依存し、食い違いをどう解決するかです。同社上の承認も、確認できる承認者と、承認された文書に結び付いていれば検証できます。裏付けのない状況更新では、保証は弱くなります。入力された情報をすべて低品質と分類するのではなく、これらの統制を評価するべきです。
マンデー・ドット・コムは、多くの中小企業、とりわけ同社のCRMを主要な顧客データベースとして使う企業にとって、システム・オブ・レコードになっています。2025年8月には、CRM製品のARRが1億ドルに達したと開示しました。こうした顧客は、事業記録を維持するため同社に依存しており、個々のプロジェクト管理以上の持続的な役割を与えています。大企業についての証拠は、はるかに乏しいものです。顧客記録を見積もり、請求、歩合報酬につなぐ中核システムとして、大企業が同社を採用している兆候はほとんど見られません。確立した企業向けCRMが置き換えにくく、その費用も大きいのは、これらのつながりによるものです。
大口顧客は、同社の事業にとって重要性を増しています。2026年6月末、年間5万ドル超を支払う4,834社がARRの43%を占めていました。この顧客群の売上継続率は115%で、全顧客の109%と比べて高い水準でした。同じ群のうち2,019社は年間10万ドル超を支払い、その中には50万ドル超を支払う114社が含まれます。
マンデー・ドット・コムは、顧客のシステム・オブ・レコードでなくても、置き換えにくい場合があります。大規模な導入では、複数部門が、連動するボード、自動化、ダッシュボード、アクセス規則に依存して仕事を進めているかもしれません。移行には、データを書き出すだけでは足りません。日常の業務を動かしたまま、連携を作り直し、ワークフローを再現してテストし、従業員が新しいシステムで働くための研修を行う必要があります。これらの費用と混乱のリスクは、顧客が留まる強い理由になります。元の記録が別の場所にあっても、チームが同社の周囲に築いた実際の業務手順が、価値の一部を占めています。
作業場の交代勤務表は、一部を説明する例えになります。勤務表は受注台帳の情報を繰り返しているかもしれませんが、人々は誰がどの仕事をするかを知るために、それに依存しています。名前の並んだ紙を置き換えるのは簡単です。現場責任者が覚えている例外、交代班の間の合意、それぞれの作業に必要な資格を再構築するのは、もっと難しい仕事です。この比較は、同社がさらされるリスクと機会の両方を説明します。見えているボードには、仕事を動かすのに必要な知識の一部しか含まれていないかもしれません。
A1、システム・オブ・レコードの深さとデータ重力は2.5です。特に大口顧客には、薄い画面だけの製品より大きな、運用上の移行費用があります。しかし、企業全体の重要な取引を統治するプラットフォームほどの深さはありません。この採点は、異なる顧客が混在する基盤への判断であり、43%という売上比率から導いた算術的な平均ではありません。CRM、Service、エージェントのワークフローが、大規模な導入で正式な業務基盤になっているという証拠が増えれば、より高い点数を支えるでしょう。
A2、ワークフロー吸収性の大脳テストは、別の問いを立てます。必要な道具にアクセスできるエージェントが、製品のどの程度を再現できるかという問いです。これが大脳テストです。データドッグ(DDOG)は観測対象のシステムからテレメトリを集めます。クラウドフレア(NET)はネットワークと実行基盤を運用します。パロ アルト ネットワークス(PANW)はセキュリティ方針を実施し、顧客環境からの観測を統合します。モデルは、もっともらしい説明を生成するだけでは同じサービスを生み出せません。マンデー・ドット・コムの一般的なワークフロー、例えば担当者の割り当て、状態の変更、進捗の要約は、代替ソフトウェア上で再現しやすい仕事です。
同じAIモデルを使っていても、エージェントが記憶を共有するわけではありません。例えば、Claudeで動く二つのエージェントは、互いが何を頼まれ、何をすでに完了したかを、自動的には知りません。仕事を追跡し、決定を記録し、最新の変更を見るための共有の場所が必要です。互いの仕事を上書きしたり、すでに終わった処理を繰り返したりしないよう、誰が各記録を変えられるかという規則も必要です。人がエージェントの行ったことを確認し、誤りを修正できなければなりません。エージェント自体が同社の外部で動いていても、マンデー・ドット・コムは、その共有の仕事場と統制を提供できます。
他の業務プラットフォーム、データベース、エージェントを動かすソフトウェアも、これらの機能を提供できます。同社は顧客を維持できても、価格を引き上げにくくなるかもしれません。仕事の履歴、決定、必要な規則を保ったまま、顧客がエージェントのワークフローを別のプラットフォームへ移せるなら、同社に上乗せの対価を払う理由は減ります。既存の連携と確立した仕事上の関係は移行を難しくしますが、エージェントが仕事を多く担い、人が画面を使う時間が減っても価値を保つ優位性が必要です。
A2は2.0を維持します。同社の調整業務の大部分は、APIで他のSaaSアプリケーションにつなぎ、情報を集め、更新を受け渡す仕事だからです。エージェントや競合プラットフォームも、同じAPIを使ってその多くを引き継げるため、他の製品へ比較的容易に吸収できます。より高い点数には、接続だけでは得られない価値ある知識を持つ必要があります。顧客のチームが実際にどう協働し、どの承認を必要とし、例外をどう処理するかという知識です。顧客のボードと自動化の背後にある実際の業務慣行を取り込み、確認することで、同社はその優位性を築ける可能性があります。
記録の位置づけ
【補足】データベースと正式な業務記録
データベースが確実に保存できることと、その情報を会社が正しい記録として扱うことは別です。システム・オブ・レコードは、何かが食い違った際にも拠り所となる記録の場所を指します。容量の拡大だけでなく、責任者、確認手順、後続の業務とのつながりが重要になります。
Palantirが示す、ワークフローを取り込むことの重要性
Palantir(PLTR)は、生産性向上製品のベンダーは、より良いモデルを待つしかないという考えへの、最も強い反例です。今ほど汎用モデルの能力が高くなかった2023年に、AIPの導入を始めました。既存のソフトウェアは、顧客の業務を構造化して表すものと、統制された行動の手段をモデルに与えました。初期のAIPの資料が示していたのは、雑多な文書から事業全体を推測することを期待されたアシスタントではなく、Foundryのデータとオントロジーにつながるモデルでした。
オントロジーは、異なるシステムに共通の語彙を与えます。あるシステムの顧客識別子、別のシステムの取引相手、さらに別のシステムのアカウントは、同じ組織を指すかもしれません。一台の機械について、あるアプリには保守情報があり、別のアプリには生産上の義務がある場合もあります。これらが同一の対象だと特定すれば、モデルは部門をまたいで同じ対象を扱えます。許可された操作と結び付けることで、その表現は業務に使えるものになります。モデルは、会社の規則に従う変更を要求できます。
そのためPalantirは、元の取引がERPに残っていても、運用上のシステム・オブ・レコードになれます。企業を高層ビルに例えてみましょう。地下駐車場は生のデータベース、地上階の受付は正式な記録を維持するERPなどのシステムを表します。Palantirは、その一つ上の階で、人が情報を使って判断し、仕事を実行する場所にいます。高度な連携とデータの処理経路によって、下の階で記録が変わるたびに、その階を最新に保ちます。記録同士をつなぎ、一貫した意味を与え、従業員が実行できる操作に結び付けます。顧客は、細部を確認するために毎回下の階へ戻らなくても、その階に依存して業務を動かせます。その依存によって、元の情報源の上に位置していても、Palantirは一種の運用上のシステム・オブ・レコードになります。マンデー・ドット・コムが複数ボードの情報を表示できることは、企業全体を結び付けたこのような姿を構築し、維持することと同じではありません。
この階を、事業を動かす信頼できる場所にするには、従業員が実際にどう仕事をしているかを理解する必要があります。Palantirの顧客先に入り込むエンジニアは、顧客と直接働き、業務上の問題をソフトウェアに翻訳し、導入から得た教訓をプラットフォームに戻すことで、その理解を築く助けになります。長い時間をかけて、企業が生み出すデータとともに、企業がどう動くかという知識を取り込んできました。FoundryとAIPは、各顧客に再利用可能なソフトウェアの土台を与え、Palantirは個別の必要に合わせてそれを適応させます。それぞれの導入で得た教訓は、将来の顧客向けにプラットフォームを改善する助けになります。
供給業者からの部品納入が遅れ、複数の顧客注文に支障が出そうな製造業を考えます。文書化された手順には、調達部門に遅延の解決を依頼するとしかありません。しかし、経験ある従業員は、ある顧客は代替部品を受け入れ、別の顧客は品質部門による代替品の承認が必要で、さらに別の顧客は納期遅延に多額の違約金を課すと知っています。これらの細部が、どの注文を先に扱い、製造業者が何をできるかを決めます。顧客先に入り込むエンジニアは、従業員と働きながら例外を記録し、関連する顧客と注文に結び付け、承認要件をソフトウェアに組み込めます。AIエージェントはその規則を使い、従業員の頭の中にしかなかった知識を生かして、より確実に動けるようになります。
これは、Palantirが以前の能力の低いAIモデルでも価値を提供できた理由を説明すると考えます。仕事に必要な知識の多くを、すでに取り込み、ソフトウェアに組み込んでいたからです。エージェントに明確な規則を与え、人の判断が必要な場面も特定できます。それでも人は、競合する優先事項を比較し、予測を行い、不完全な情報に基づいて動く必要があります。AIは、すべての不確実性を解消できなくても、手続きの有用な部分を担えます。AIが価値を生むために、企業のすべての仕事に、明確でテスト可能な答えがある必要はありません。
AIPは、Palantirが何年も積み重ねた顧客先でのエンジニアリングの成果に、光を当てました。既存のプラットフォームとオントロジーを土台に、整理されたデータ、確立したワークフロー、明確な権限にアクセスできるAIモデルを、顧客の業務の中で働かせます。同社が何年もかけて取り込んだ知識は、モデルが事業を理解し、有用な行動を取る助けになり、AIPを、複雑な企業環境へAIを導入する強力な手段にしています。
マンデー・ドット・コムの既製のソフトウェアは、顧客自身がボードと自動化を通じて、自分たちの手続きを説明することに依存しています。それらは顧客が入力した規則を取り込みますが、例外とその扱い方に関する知識の多くは、従業員の頭の中に残ります。2026年第2四半期の決算説明会で、経営陣は、顧客のAIアプリケーションとエージェントの作成を助けるため、顧客先に入り込むエンジニアの活用を拡大していると述べました。この取り組みは重要な不足を埋めるものですが、Palantirが何年もの直接的な顧客との仕事を通じて蓄積した知識に並ぶには、まだ大きな距離があります。
機会は、すべての顧客に長期のコンサルティングの費用を負担させずに、より多くの業務手順を見つけ出すことです。エージェントは、なぜ管理職が割り当てを覆したかを尋ね、繰り返される引き継ぎから規則を提案し、責任者に確認してもらえます。導入チームは、これらのやり取りを使い、どのパターンが複数の顧客で繰り返され、どれが一つの組織だけのものかを特定できます。再利用可能なソフトウェアがあれば、次の導入に必要な仕事を減らせます。
それは、知識を取り込む経済性を変えるでしょう。出来上がったエージェントが、会社の働き方について維持された理解に依存するなら、顧客との関係も強まるかもしれません。同社がその手続きを確実に、あるいは新規参入企業より少ない費用で提供できるかは、まだ分かりません。既存の利用者は、アクセスと販売面での出発点の優位性を与えます。Palantirの例は、利用者へのアクセスと、業務に使える事業の表現との間に、どれだけ仕事が残っているかを示しています。
業務の共通言語
【補足】オントロジーと暗黙知
オントロジーは、別々のシステムにある顧客、注文、設備などを、同じ対象として結び付ける枠組みです。暗黙知は、文書や画面に書かれていない経験上の知識を指します。誰の承認が必要か、どの例外を認めるかを確認し、操作の規則へ変えることで、AIが使える業務の文脈になります。
次のPart 11で確かめること
続く「Part 11:ハーネス・AI収益・席数課金からの転換」では、顧客の文脈を扱うハーネスとモデル訓練の違い、AI収益の規模、人間の席数と仕事量、そして課金の仕組みを検証します。


