03/26/2025

【最新】アメリカ経済の今後の見通し:2025年はトランプ政権の関税や連邦政府の歳出削減で目先は不安定も長期的には追い風?

A number of golden numbers on a black backgroundコンヴェクィティ  コンヴェクィティ
  • 本稿では、「アメリカ経済の今後の見通しとは?」、「アメリカ経済は2025年は堅調に推移するのか?」という疑問に答えるべく、トランプ政権の政策を含む、足元の米国政府の政策がアメリカ経済に与え得る影響と今後の米国経済の見通しを詳しく解説していきます。
  • トランプ氏の政策ミックスは、短期的にはマクロ経済の変動を引き起こしていますが、最終的には成長志向でテクノロジーに優しい体制の土台を築く可能性があります。
  • 製造業の米国内回帰(リショアリング)、規制緩和、財政引き締めといった政策により、テクノロジー産業全体における価値の分配が再構成されており、よりスリムでイノベーション主導の企業が恩恵を受けているように見えます。
  • 連邦取引委員会(FTC)のより寛容な姿勢が、テクノロジー業界のM&Aを再活性化させる可能性があり、過小評価されているSaaSやインフラ資産に眠る価値が引き出されるかもしれません。

2025年度のアメリカ経済の見通しとは?

現在の市場における変動は単なる雑音ではなく、投資家がトランプ大統領の2期目における政策の長期的な影響を読み解こうとする中で生じている、深い再調整を反映しています。関税の強硬な見直し、DOGE(政府効率化省:省庁主導による大規模な連邦歳出削減)、さらには投機的な税制改革が俎上に載るなか、米国債券市場では米国経済が構造的に改善へ向かうのか、それとも混乱へと進むのかの判断に苦しんでいます。

テクノロジー分野の投資家にとっては、この不確実性が極めて重大な意味を持ちます。なぜなら、長期資産の評価、設備投資サイクル、さらにはグローバルなサプライチェーンに直接的な影響を与えるからです。

米国債券市場と米国テクノロジー銘柄のバリュエーション:米国債利回り曲線の読み解き方

現在の市場の変動の根底には、財政引き締めとインフレ不確実性との綱引きがあります。もし債券投資家が、DOGEによる歳出削減を軸としたトランプ氏の財政赤字削減キャンペーンが、米国の長期的な債務の軌道を実質的に改善すると信じるようになれば、米国債の利回りはイールドカーブ全体にわたって低下するはずです。これは、高成長を見込むテクノロジー株、特に現在は利益やキャッシュフローを出していないものの、将来的に多くのキャッシュフローが見込まれる企業にとって、極めて強気のシグナルとなります。

しかし、この利回りの低下は一次的な効果にとどまる可能性もあります。もし民間部門が、政府の財政縮小によって空いたスペースに参入し、規制緩和や税制優遇、投資の追い風によって後押しされれば、実質GDPは今年後半から2026年にかけて再び加速する可能性があります。このシナリオにおいては、利回りは新たな均衡水準(例えば4〜5%)に向けて再び上昇する可能性がありますが、それはより望ましい経済体制の下でのことです。つまり、成長が持続的に高まり、財政負担が軽くなり、債務の持続可能性が改善され、テクノロジー株を含むリスク資産がサポートされるような環境です。

一部の例外的な見方では、「最高のマクロ経済シナリオ」も考慮されています。すなわち、生産性の向上によってインフレ圧力が和らぐ中での高成長です。これは市場のコンセンサスではありませんが、トランプ政権2期目のもとで生産性を高める改革が実行される場合には、現実的な長期的シナリオとも言え、テクノロジー業界にとっては極めて好ましい環境となるでしょう。

しかしながら、このイールドカーブの展開が確実というわけではありません。FRB(米連邦準備制度)は年末までに約50ベーシスポイントの利下げを示唆していますが、利回りはそれに追随していません。これは主に、債券市場がその見通しに懐疑的だからです。インフレ率は、コア財価格の鈍化や、AIによる生産性向上の可能性などにより、やや下降傾向を伴って安定しつつあります。しかし、政府が再び導入した関税――たとえば鉄鋼やアルミニウムに対する25%の関税など――は、この安定傾向を反転させる可能性があり、FRBが緩和姿勢を見せているまさにその時に、輸入インフレを再び押し上げる恐れがあります。

米国における従来の関税の使われ方は、「弾が込められた銃だが、実際には撃たれないもの」に例えられます。しかし私たちの見解では、まさにその「撃たない前提」があるために、トランプ氏は貿易相手国が空威張りを見抜いてしまうと考えており、だからこそ、最初から意図を明確に示すために即座に関税を課し、それを交渉上の強いカードとして利用する戦略に出ているのです。そして、もし相手国と良い取引が成立すれば、関税を容易に撤回できると考えていると思われます。

しかしながら、関税がインフレに与える影響について、それが粘着性のある(=しつこく残る)インフレ要因となった場合、FRBは政策の方針を急転換せざるを得なくなる可能性があります。そうなれば、ハト派的な見通しは崩れ、米国債利回りが高止まりする結果となります。この場合、特に将来の最終的な企業価値(ターミナルバリュー)に依存するテクノロジー株にとっては、引き続き大きなプレッシャーがかかることになるでしょう。

米国財政政策の転換スケジュール:短期的な痛みと長期的な期待?

投資家にとって最大の課題の一つは、「タイミング」です。関税の導入は比較的容易で、即座に米国内における下流の経済活動に影響を及ぼします。たとえば、原材料コストの上昇、報復的な貿易措置の可能性、そしてインフレ圧力の増大などが挙げられます。また、輸入業者が関税発動前に通常より多くの仕入れを行う「駆け込み輸入」が起きる可能性も高く、これによってGDPは即座に、しかも顕著に押し下げられることになります(実質GDP = 消費 + 投資 + 政府支出 +(輸出 – 輸入)であるためです)。

一方で、提案されている減税――特に、年収15万ドル未満の人々に対する所得税の全廃という最も過激な案――が実現したとしても、それが施行されるまでにはかなりの時間を要します。場合によっては、実現しない可能性すらあります。

このことは、短期的には消費者への負担が大きくなる「痛みの期間」が訪れることを意味します。関税によって物価が上昇する一方で、所得税減税という「補填策」はまだ理論上の話にとどまっているためです。この状況が消費者の支出抑制につながるかどうかは、消費者心理や家計のバランスシートの状況に大きく依存します。

しかしながら、もしこうした減税が実際に実現すれば、可処分所得が大幅に増加し、消費者関連の業種――たとえば、eコマース、デジタル広告、さらには裁量的支出を伴うSaaSプラットフォームなど――に対する下支えとなるでしょう。投資家は、この税制改革の行方に関する立法上の動きを注意深く見守る必要があります。なぜなら、それは米国の家計による支出構造そのものを大きく変える可能性があるからです。

サプライチェーンと米国国内回帰:長い道のり

インフレに関する議論において重要な変数の一つは、グローバルなサプライチェーンの国内回帰(リショアリング)にかかるタイムラインです。トランプ氏の政策は、特に半導体、医薬品、レアアースといった重要分野において、国内の産業自立を加速させることを目指しています。しかし、これは2025年に完了するような話ではなく、10年単位の長期的な変革です。

その間、グローバルな製造に依存している企業――特にアジア地域に依存する企業――は、原材料コストの上昇、規制の不確実性、そして国境を越える物流の摩擦に直面することになります。アップル(AAPL)、アマゾン(AMZN:AWSおよびEC)、デル・テクノロジー(DELL)、ヒューレット・パッカード・エンタープライズHPE)といったテクノロジー大手企業は、在庫管理をこれまで以上に厳密に行い、サプライヤーの多様化戦略を再検討する必要があるでしょう。投資家は、粗利益率に関するガイダンスを注意深く見守るべきです。なぜなら、粗利益率の見通しにおけるわずかな変化であっても、それがリショアリングに伴うコストや関税の影響を示唆している可能性があるからです。

また、理想的とされる「米国のサプライチェーンを国内に回帰させる」というビジョンが、トランプ氏の関税攻勢に対抗するかたちで貿易相手国が米国の輸出業者に対して大幅に有利な関税条件を提示することで、瓦解する可能性もあります。そうなれば、トランプ氏は関税政策を転換し、関税を撤回するという「Uターン」を選ぶ可能性があり、リショアリングの夢は早期に終わりを迎えるかもしれません。考えられるシナリオは、まさに無数に存在しています。

こうしたさまざまな可能性がある中でも、長期的な基本方針としては、米国の製造業および産業の活性化を促すことが目指されているように見受けられます。トランプ氏がOpenAIの「Stargate」構想を後押しし、アップルやTSMC(TSM)に対して数千億ドル規模の米国投資を促したことは、こうした長期的な理念を裏付けるものです。そして確かに、これらの投資は、前述のGDPの構成要素の中で「政府支出の減少」を補う役割を果たすことになるでしょう。

DOGEによる歳出削減:米国テクノロジー系ベンダーに襲いかかる緊縮の波

DOGE(連邦政府の歳出監査および効率化プログラム)による最初の歳出削減の波は、すでにさまざまな波紋を広げています。連邦監査によって、たとえばサービスナウ(NOW)のライセンスが35,000席分存在する一方で、実際のアクティブユーザーはわずか84名に過ぎないといった、著しい非効率が明らかになり、それに伴って多数のソフトウェアやサービス契約が一斉に解約されました。サービスナウ、アドビ(ADBE)、セールスフォース(CRM)といった公共部門への依存度が高いSaaSベンダーは、連邦契約が再精査される中で、収益面での逆風に直面しています。

より広い意味で見れば、これは政府によるテクノロジーの近代化に対する「冷や水」とも言える影響を及ぼしています。マイクロソフト(MSFT)、オクタ(OKTA)、セールスフォース、アトラシアン(TEAM)といった、連邦政府との関係が深く、ライセンスベースあるいは「ランディング&エクスパンド」型(小規模導入からの拡張戦略)のモデルを採用しているベンダーにとっては、各政府機関がライセンスを統合し、取引先ベンダーとの関係を見直す中で、公共部門での成長が鈍化、あるいは逆転する可能性があります。

一方、AWS、Azure、スノーフレーク(SNOW)といったクラウドインフラ系の企業は、消費ベースの課金モデルであるため、今回の歳出削減の影響を受けにくいと見られています。ここでの重要なポイントは、消費ベースのIaaSやSaaSの場合、クレジットを消費しなければ支払いが発生しないため、過剰な支出が生じにくいという点です。つまり、こうしたモデルでは、ずさんな支出が問題視される可能性が非常に低いということです。

しかし、以前のパランティア・テクノロジーズ(PLTR)に関する下記の分析レポートでも触れたように、今回の再編によって、小規模かつ革新的なソフトウェアベンダーに新たなチャンスが生まれる可能性もあります。

各機関があらゆる支出に対して明確な価値を説明することを求められるようになる中で、長年契約を維持してきたレガシーベンダーの影響力が弱まる可能性があるのです。このような動きは、技術的な優位性は持ちながらも、政治的な人脈や調達ルートを持たないためにこれまで連邦契約の獲得に苦戦していた新興企業にとって、大きなチャンスとなるでしょう。そうした意味で、DOGEによる歳出削減は、単に連邦ITの成長を鈍化させるだけでなく、政府のソフトウェア環境を刷新する起爆剤となる可能性すらあります。

以上をまとめると、既存のレガシー型でライセンス+席数ベースのビジネスモデルを採用するベンダーは、マイナスの影響を受けることが予想されます。一方、消費ベースのベンダーはほとんど影響を受けず、むしろ、トランプ政権2期目のもとでテクノロジーの近代化が加速すれば、長期的には恩恵を受ける可能性があります。別の見方をすれば、営業・マーケティング重視で政治的な影響力に依存している既存企業は、連邦収益の減少を経験し、逆に技術力を武器にするアウトサイダー企業がその恩恵を受けることになる、という構図です。


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DeepSeekとAIインフラの再考

DeepSeekの登場は、新たなインフラに対する不安の波を引き起こしています。同社のR1およびV3モデルは、GPT-4やGPT-4oに匹敵する性能を、はるかに低コストで実現しており、既存のAIプロバイダーやインフラパートナーにとって、根本的な存在意義を問い直すような状況を生み出しています。もし、これらのモデルが従来よりも少ない計算資源やメモリで学習・運用できるのであれば、ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)の設備投資見通しに影響が出る可能性があり、GPU依存度の高い企業の購買行動にも変化をもたらすかもしれません。

そして、米国株投資家にとって、これは単にエヌビディア(NVDA)の企業価値に関わる問題にとどまりません。マイクロン・テクノロジー(MU)のようなメモリメーカー、アリスタ・ネットワーク(ANET)やブロードコム(AVGO)といったネットワーク関連企業、そしてマイクロソフトやグーグル(GOOG)といったクラウドインフラプロバイダーなど、現在のAIスタック(技術構成)を前提とした事業を展開している企業全体に影響が及ぶ可能性があります。アナリストは、顧客がGPUやコンピューティングの必要度に関する想定を見直し始めている兆候がないか、注意深く見守るべきです。そうした見直しが進めば、AIインフラの整備計画が延期されたり、規模が縮小されたりする可能性もあるでしょう。

暗号資産政策とフィンテックの不透明感

トランプ政権による暗号資産(クリプト)に関する初期の動きは、突然の政策転換や規制に対する一貫性のないシグナルを通じて、デジタル資産市場にボラティリティ(変動)をもたらしています。市場は混乱していますが、私たちはトランプ政権2期目が、長期的に金融システムの再編を促す土台を築きつつあると見ています。そしてこの再編は、既存の大手金融機関よりも、イノベーションを優先する環境を生み出す可能性があります。

その重要なシグナルの一つが、スコット・ベッサント氏の財務長官任命です。ベッサント氏は、テクノロジーと小型株に対して前向きなスタンスで知られており、これまで大手既存銀行に有利に働いてきた規制の負担を軽減しようとする可能性が高いと見られています。このような政策転換により、貸付、信用インフラ、決済処理といった分野における小規模な企業が、長年「大きすぎて潰せない」大手金融機関によって支配されてきた市場で、より効果的に競争できる道が開かれるかもしれません。

特に暗号資産の分野では、より寛容な環境の兆しがすでに見え始めています。ステーブルコインに対して「静観姿勢」がとられることで、USDCやUSDTの成長が加速し、オンチェーン金融における米ドルの国際的役割が強化され、ドル建ての決済基盤に対する世界的な需要も高まる可能性があります。ただし、この移行は一様ではありません。ウォレット監視や取引制限に関する矛盾した発言が一部市場参加者を一時的に混乱させ、暗号資産価格の急激な変動を引き起こしています。

投資家にとっての重要なポイントは、「政策の実行力がすべてを左右する」ということです。FireblocksやAnchorageのようなデジタル資産インフラに関わる企業、コインベース(COIN)、Stripe、ペイパル(PYPL)、ブロック(SQ)といった消費者向け決済基盤を提供する企業は、短期的にはボラティリティにさらされるかもしれませんが、ベッサント氏の規制緩和路線が定着すれば、大きな恩恵を受ける可能性があります。

しかし、最も大きな成長の可能性を秘めているのは、アファーム・ホールディングスAFRM)、アップスタート・ホールディングスUPST)、さらにはカーバナCVNA直近執筆した下記の分析レポートをご参照ください)といった、消費者向け信用分野で競争するフィンテック企業、そして中小企業(SME)向け融資を手がける企業です。

これらの領域では、従来の規制が後退すれば、新興プラットフォームと銀行業界との間で、ようやく公平な競争環境が整う可能性があります。

世界の政策の乖離と米ドル:転換点を迎えるのか?

DXY(ドル指数、米ドルバスケット)は年初来で約4%下落しており、各国の金融政策の方向性における乖離の拡大を反映しています。FRB(米連邦準備制度)がハト派寄りに転じた一方で、ECB(欧州中央銀行)は市場の予想を裏切る形でインフレ見通しを引き上げつつ利下げを実施し、BOJ(日本銀行)は長らく続けていた超緩和政策を終了し、短期金利を引き上げ、さらなる引き締めの可能性を示唆しました。こうした金利差の縮小により、ユーロと円が強含み、米ドルには下押し圧力がかかっています。

米ドルの弱含みは、トランプ氏の関税戦略を複雑にします。米ドルが下落しているときには、輸入コストがより急激に上昇するため、関税による歳入効果が弱まり、コストプッシュ型インフレのリスクが高まります。ただし、もし米国経済が、減税・規制緩和・供給側改革によって民間部門の活性化を起点に再び加速するようであれば、米ドルは時間とともに再び強含む可能性があり、輸入コストの安定化にもつながるでしょう。

米国はM&Aの新時代到来か?FTCの方針転換と大型案件の可能性

2025年初頭における最も注目すべき動きの一つは、米連邦取引委員会(FTC)委員長であるリナ・カーン氏の辞任です。過去4年間にわたり、カーン氏は強硬な反トラスト(独占禁止)路線をとり、特にテクノロジー大手によるM&A活動を大きく冷え込ませました。彼女の指導のもとでは、多くの案件が阻止されたり遅延したりしただけでなく、高額かつ長期化するFTCとの訴訟リスクを懸念し、買収提案すら見送る企業が続出する事態となりました。

カーン氏の退任により、トランプ政権が任命する次期FTC委員長は、広範な企業統合抑制の執行方針から、より限定的で明確な詐欺的または悪質な独占行為の取り締まりに焦点を移すと広く予想されています。これは、規制姿勢における実質的な体制転換を意味し、テクノロジー業界全体における戦略的M&Aの再活性化につながる可能性があります。

このM&Aの「雪解け」を象徴する出来事として注目されているのが、グーグルによるクラウドセキュリティの有力企業Wizへの320億ドル規模の買収提案です。もしFTCがこの買収を承認すれば、AI、セキュリティ、DevOpsインフラといった分野で成長が鈍化しつつも価値ある技術を持つ中小企業を対象に、他の大手テクノロジー企業によるM&Aが再び本格化するシグナルと見なされるでしょう。

すでに、こうした流れの兆候は表れ始めています。昨年、IBM(IBM)はインフラ自動化およびシークレット管理ツールを提供するハシコープ(HCP)を64億ドルで買収しました。ハシコープは成長鈍化に直面していたものの、エンタープライズとの深いつながりを持つ高品質な資産と評価されていました。現在、多くのSaaS企業は企業価値対売上倍率(EV/S)が約6倍程度で取引されており、ピーク時を大きく下回る水準です。しかも、これらの企業の多くは隣接市場やニッチ市場に位置しており、規制面の障壁が緩和されれば、戦略的買収を目指す企業が一斉に市場に戻ってくる可能性があります。

グーグルによるWizの買収が承認されれば、これはカーン前委員長以前の時代以来となる、テクノロジー業界における大規模なM&A活性化の引き金となるかもしれません。投資家にとっては、今まさに売り込まれて割安に放置されているSaaS銘柄――特に、強力な技術基盤を持ち、顧客ロイヤルティが高く、大手プラットフォームにとって戦略的価値の高い企業――に注目する好機です。このカテゴリに該当する可能性がある銘柄としては、テナブル(TENB)、クォリスQLYS)、オクタ(OKTA)、JフロッグFROG)、そして場合によってはファストリーFSLY)などが考えられます。

結論:目先はボラティリティ、将来は追い風?

目先の投資家にとっては、トランプ政権が関税、連邦政府の歳出削減、投機的な税制改革といった経済政策を急速に展開する中で、引き続き高いボラティリティに備える必要があるでしょう。こうした政策の変化は、各国の金融政策の方向性の違い、根強いインフレの不透明感、そして地政学的な緊張の高まりと重なり、金利、為替の流れ、資本配分の方向性を見極めることが一段と難しくなっています。

テクノロジー分野においては、結果のばらつきがさらに広がっている状況です。連邦政府との関係が深く、ライセンス数に基づく従来型のソフトウェアベンダーは、DOGEによる歳出縮小の影響を直接受けて向かい風に直面しています。しかしその一方で、この厳しい監視の目が、これまで調達における政治的ハードルによって締め出されてきた、よりスリムで革新的なベンダーにとって新たなチャンスとなる可能性もるでしょう。

インフラ分野では、DeepSeekによるAI経済性の破壊が、GPU需要、クラウド設備投資、そしてより広範なLLM(大規模言語モデル)スタック全体に対する市場の期待値を大きく見直すきっかけとなる可能性があります。また、フィンテックや暗号資産の領域では、スコット・ベッサント氏の規制緩和的な姿勢が、既存大手と挑戦者の力関係を再調整し、特に消費者信用やブロックチェーン決済基盤において新たな展開をもたらすことが期待されます。

見落とされがちな重要な追い風の一つが、テクノロジー業界におけるM&Aの再活性化です。リナ・カーン氏の退任と、新たなFTC体制が「規模拡大の抑制」よりも「悪質な乱用の摘発」に重点を置く可能性が出てきたことで、戦略的なM&Aが再び本格化する道が開かれています。もしGoogleによるWizの買収が承認されれば、それは技術的基盤の強い割安なSaaS企業を対象とした統合の波を引き起こす起爆剤となる可能性があるでしょう。

そしてもし、トランプ氏の2期目が、財政赤字の削減、税制改革、規制緩和、サプライチェーンの国内回帰、AIの加速、原子力への投資、フィンテックの自由化、そして価値の低い政府機能に代わる民間部門の活性化といった政策をすべて実現できれば、米国のテクノロジーエコシステムは新たなリーダーシップの段階に突入する可能性があります。

とはいえ、そこに至るまでの過程は非常に不均一で困難な移行となるでしょう。投資家にとって今最も重要な課題は、目先の混乱と、長期的で構造的な成長機会とを見極める力を持つことであると考えています。


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