1週間前、暗号資産市場には味方がいなくなったように見えました。米上院ではCLARITY法案が頓挫し、米連邦準備制度理事会(FRB)は3年ぶりに利上げを実施。原油市場では、戦争による価格上乗せが定着するかのような動きが続いていました。
ところがビットコインは、いつものようにこうした懸念を受け流し、8カ月ぶりの高値まで急伸しました。市場は再び上昇局面に戻ったのでしょうか。ジェームズ・フード氏の答えは「ほぼそうだ」です。本稿では、現在のサイクルの位置づけと、筆者が注目する暗号資産2銘柄・関連株2銘柄を取り上げます。
米国の規制整備は法案停滞後も進む
まず悪い知らせから始めましょう。暗号資産市場の監督を米証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)に振り分けるCLARITY法案は、2026年9月15日の審議終結動議で賛成49、反対50となり、可決に必要な60票に11票届きませんでした。法案は2025年7月に下院を294対134の超党派多数で通過しており、成立に向けた勢いがありました。
法案を阻んだのは、ドナルド・トランプ大統領の暗号資産収入14億ドルをめぐる倫理条項、分散型金融の開発者責任を定める604条、ステーブルコインの利回りを制限する404条の3点です。再考動議により法案は形式上存続していますが、市場構造を包括的に定める法律の成立は2027年より前には難しくなりました。中間選挙を前に下院の多数派が変われば、さらに先送りされる可能性もあります。
一方、規制当局は議会の動きを待っていません。9月17日、SECは条件付きで5年間有効な2件の免除措置を出し、許可された環境下で、トークン化された米国株を自動マーケットメイカーや流動性プールを通じて取引することを認めました。ポール・アトキンスSEC委員長は、議会でCLARITY法案が進まないなか、既存の法的権限の範囲でSECが行動したと説明しています。
これは、SECが8月に示した「暗号資産規制」方針に続く動きであり、2025年7月に成立して決済用ステーブルコインの免許制度を設けたGENIUS法を土台としています。米国は法律ではなく規制運用を通じて暗号資産のルールを整えつつあります。制度としての安定性は法律に及ばないものの、今後2年間はより速く進む可能性があり、焦点はステーブルコインと資産のトークン化にあります。
免除措置とトークン化の用語
【補足】条件付き免除・トークン化株式・流動性プール
条件付き免除は、定められた参加者や取引条件の範囲内で、既存ルールの一部を期間限定で適用しない措置です。今回の措置は、米国株そのものの規制がなくなったことを意味しません。トークン化株式は、株式の経済的価値や権利をブロックチェーン上のトークンで表す仕組みです。自動マーケットメイカー(AMM)は、売り手と買い手を直接探す代わりに、流動性プールに預けられた資産と数式を使って取引価格を決めます。
ビットコインのサイクルはどこまで進んだか
ビットコイン(BTCUSD)は2025年10月初めに12万6,000ドルを上回りました。その後、半減期後に見られる典型的な弱気相場に入りました。

(出典: TrendSpider)
夏までに高値から約51%下落し、6万ドル近辺の200週移動平均線を一時下回ってから回復しました。

(出典: TradingView)
9月20日までの週に、ビットコインは45週ぶりに50週移動平均線を上回って引けました。翌日には価格が8万5,000ドルを抜け、約6億4,800万ドル相当のショートポジションが強制決済されました。底打ちの可能性を示す材料はいくつかあります。
- 安値圏でRSIに強気のダイバージェンスが現れた
- 筆者独自の売買シグナル指標で買いシグナルが点灯した
- 指数平滑移動平均線が強気のクロスを形成した
- 200日指数平滑移動平均線を上抜けた
- 直近の上昇後にMACDが強気のクロスを形成した
ただし、ここが最終的な底なのでしょうか。見方は二つに分かれています。カンター・フィッツジェラルドは、過去の平均では高値から384日後に底を打つとして、2026年10月下旬を目安に挙げています。

(出典: TrendSpider)
対してグレイスケールは、価格を左右する要因が4年周期より金利や経済成長に移っているとし、FRBが追加利上げを避ければ底はすでにつけた可能性があると見ています。
筆者自身は、6月の6万ドル近辺が価格面での底で、いまは「時間の底」にあると考えています。安値はつけたものの、新しい上昇トレンドが定着する前に値動きが荒くなる、サイクル後半のもみ合い局面です。50週移動平均線を回復したことは、相場の局面が変わる最初の明確な兆候だと見ています。

(出典: TrendSpider)
上昇シナリオを確認する条件は、上場投資信託(ETF)への資金需要が戻り、原油価格が落ち着いてFRBの追加利上げ観測が後退することです。反対に、週足終値で50週移動平均線を再び下回れば、10月下旬の安値再試しが視野に入ります。筆者は、価格上昇を追いかけるより、段階的にポジションを構築する局面と捉えています。
価格目標については、フィボナッチの固定比率と2021年・2025年の高値が作った抵抗帯をもとに、次のサイクルで20万ドル近辺を見込んでいます。これは安値からおよそ3倍にあたります。
チャート指標の読み方
【補足】RSI・ダイバージェンス・MACD・指数平滑移動平均線
RSIは値動きの勢いを0〜100で示す指標で、価格が安値を更新する一方でRSIが安値を切り上げる状態は「強気のダイバージェンス」と呼ばれ、下落の勢いが弱まった可能性を示します。MACDは2本の指数平滑移動平均線(EMA)の差からトレンドの勢いを測り、線の交差は勢いの変化を探る目安です。これらは価格の方向を確定するものではなく、ほかの材料と合わせて読む指標です。
イーサリアムのトークン化需要
イーサリアム(ETHUSD)への関心も高まっています。トークン化資産の取引が認められたことで、イーサリアムのブロックチェーンが大きな恩恵を受ける可能性があります。

(出典: TrendSpider)
日足のチャート構造はビットコインに似ています。

(出典: TrendSpider)
週足では過去高値をわずかに上抜けるだけでも6,000ドル近辺が視野に入ると筆者は見ています。
【補足】トークン化資産とブロックチェーン需要
トークン化では、株式や債券などの権利・価値をブロックチェーン上のデジタルトークンとして扱います。発行や移転、売買の記録にブロックチェーンが使われるため、関連ネットワーク上での取引が増えれば、そのネットワークの利用料や需要に結びつく可能性があります。ただし、どのネットワークが採用されるかは取引の設計や規制、利用者の選択に左右されます。
注目する暗号資産2銘柄と関連株2銘柄
米国が法律ではなく例外措置を通じて暗号資産を規制するなら、法的な位置づけが明確な資産や、実際の収益を生む事業が有利になると筆者は考えています。多くのアルトコインにはそのどちらもありませんが、ここで取り上げる2銘柄にはそれぞれ一つの強みがあり、市場価格にはまだ十分反映されていないという見方です。
株式では、先週のSECの免除措置が重要になります。筆者が選んだのは、米国当局が後押しするステーブルコインと資産トークン化の流れに最も近い2社です。1社は中核事業を伸ばしながら52週高値を40%以上下回り、もう1社は6月には存在しなかった市場で大きなシェアを静かに獲得しています。
XRP:規制整備の恩恵を受けるか
XRP(XRPUSD)は、規制整備をめぐる投資テーマの一つです。米国では現物XRP ETFが7本運用され、運用資産残高は合計で約20億ドルに達しました。さらに、RippleのステーブルコインRLUSDは、初めてイーサリアム上よりXRP Ledger上で多く流通するようになりました。筆者はこれを、単なる期待ではなく実利用を示す動きと捉えています。
供給面はリスクです。エスクローから毎月2億〜4億XRPが市場に流入し、ETFが吸収する量を上回る可能性があります。それでも価格がサイクル高値を64%以上下回るなか、機関投資家の資金流入が拡大すれば、焦らず待つ投資家に有利な非対称性があると筆者は見ています。

(出典: TrendSpider)
XRPは週足で約1.56ドルです。2025年7月中旬に3.67ドル近辺をつけてから下落基調が続き、現在は20週単純移動平均線(1.24ドル)を回復しつつある一方、50週線(1.56ドル)が動的な抵抗線となっています。2026年8月初めに0.99ドル近辺から2週間で急反発し、ブレイクした週の出来高は9,800万に増えましたが、50週線を明確に上回るには至っていません。
週足のRSIは57で、8月に約31まで低下した売られ過ぎの水準から戻っています。勢いは改善していますが、まだ強気圏とは言えません。1.60〜1.70ドルが50週線と過去のもみ合い水準に重なる抵抗帯であり、上抜けに失敗すれば1.30〜1.40ドルの支持帯を再び試す可能性があります。トレンド反転を確認するには、週足終値で1.70ドルを明確に上回る必要があると筆者は述べています。
【補足】エスクローと現物ETF
エスクローは、あらかじめ設定された条件や日程に沿って資産を段階的に解放する仕組みです。RippleはXRPをエスクローから定期的に解放しており、再ロックされる分を差し引いた純流通量が実際の供給増加になります。現物ETFは、投資家が証券口座を通じて保有できる上場投資信託で、運用会社が対象資産を保有する形をとります。
Hyperliquid:実物資産取引の拡大

多くの暗号資産は、事業を探している段階の構想にとどまります。Hyperliquid(HYPE)はその逆で、事業の価値が市場に十分評価されていないと筆者は見ています。2026年9月15日までの収益は4億2,900万ドルで、暗号資産業界の首位となり、その収益はトークン保有者へ還元されました。
プロトコルは年初から3億7,900万ドルを投じてHYPEを買い戻し、業界最大規模の買い戻しを実施しました。発行当初の供給量の約4.9%はすでに焼却されています。筆者が特に注目するのは成長の源泉です。株式やコモディティなどの実物資産が、7月中旬には取引量の52%を占めました。
Hyperliquidは暗号資産だけを扱う取引所ではなく、あらゆる資産を24時間取引できる場になりつつあります。取引量が増えれば手数料収入と買い戻しが増え、流通量が減るという循環が、筆者が同銘柄に注目する理由です。
【補足】無期限先物・買い戻し・トークン焼却
無期限先物は満期日を設けずに保有できるデリバティブで、現物を受け渡さず、価格差や資金調達料を通じて取引します。買い戻しは、プロトコルの収益などで市場から自らのトークンを購入することです。焼却はトークンを利用不能なアドレスへ送り、流通から恒久的に除く処理を指します。取引需要が落ちれば収益や買い戻し額も減り得るため、供給減少が価格上昇を保証するわけではありません。
Circle(CRCL):ステーブルコインの成長
Circle(CRCL)は、筆者が注目するステーブルコイン関連株です。

(出典: TrendSpider)
2026年第2四半期の売上高は7億100万ドル、USDC流通量は19%増の733億ドルとなりました。オンチェーンのUSDC取引量は151%増の14兆8,000億ドルに達しており、いずれも暗号資産市場が弱含むなかでの伸びでした。
新しいブロックチェーン「Arc」は、ブラックロック、DTCC、マスターカード、ビザなどが創設時の検証者として参加し、稼働を始めました。CRCLは2025年10月の約160ドルから下落し、現在は約93ドルです。株価は50日線(88ドル)と20日線(83ドル)を下回る状態が2025年半ばから続いていましたが、両移動平均線は横ばいになり、株価は両方を上回って初期的な安定化を示しています。
直近5週間では7月の62ドル近辺から大きく戻り、RSIは中立圏の54まで上昇しました。ただし反発は心理的節目であり、過去の支持・抵抗帯でもある100ドルの直下で足踏みしています。9月14日の週に出来高が急増しており、この動きが続くかが注目点です。
【補足】ステーブルコインとオンチェーン取引
ステーブルコインは、米ドルなどの価値に連動するよう設計された暗号資産です。USDCはCircleが発行する米ドル連動型トークンで、流通量は市場で使われている規模の目安、オンチェーン取引量はブロックチェーン上で移転・取引された累計額です。同じ資金が繰り返し動く場合も取引量に含まれるため、取引量を売上高と同一視することはできません。
Robinhood(HOOD):株式トークン化の広がり
Robinhood(HOOD)は、筆者が注目するトークン化関連株です。SECは米国株をトークン化してオンチェーンで取引するための5年間の道筋を示しました。

(出典: TrendSpider)
RobinhoodとBNB Chainは、分散型取引所におけるトークン化株式取引の約88.2%を9月初めに処理し、6月の2.3%から大きくシェアを伸ばしました。
ただし、留意すべき点が2つあります。海外向けトークンはデリバティブであり、今回の命令が定める範囲には含まれません。一方でRobinhoodは、議決権や現物での償還に対応する方針を示しています。また、ガス代補助は9月29日に終了するため、オンチェーンの取引活動が一時的に落ち込む可能性があります。終了後も利用が続けば、市場は同社を個人投資家向け証券会社だけでなく、24時間取引所として評価し始めるかもしれません。
株価は123.37ドルで、20週線(約100.64ドル)と50週線(約100.34ドル)を大きく上回っています。両移動平均線は支持線として機能する水準に収束しつつあります。2025年10〜11月に150ドル超まで上昇した後、2026年3〜4月には63〜66ドルまで約57%下落し、そこから力強く反発しました。
RSI(14)は約61で、勢いは健全ながら買われ過ぎには至っていません。3月の安値からの反発は明確ですが、上昇週の出来高は細っており、注意が必要です。調整が起きた場合、20週線と50週線が重なる100〜101ドルが重要な支持帯になります。
【補足】デリバティブ・議決権・ガス代
デリバティブは、株式などの原資産を直接持たず、その価格に連動する契約です。トークンがデリバティブ型なら、株式そのものの保有者と同じ議決権や株主権が付くとは限りません。ガス代はブロックチェーン上の取引を処理するために支払うネットワーク手数料で、補助の終了後に取引コストが利用者へ戻ると、取引量に影響することがあります。