私の見方:株価以上に利益見通しが伸びた
8月に私は「マイクロン:この計算は釣り合わない」という記事を書きました。マイクロン・テクノロジー(MU)の会社予想に基づくフリーキャッシュフローだけで、2年間に流通株式の8〜19%を消却できると論じたものです。その後、株価は823ドルから約1,045ドルに上昇し、同社は2026年度第4四半期の決算を発表しました。
決算は非常に力強く、計算上の条件はマイクロンにとって不利になるどころか、さらに有利になりました。 フリーキャッシュフローは会社予想を上回り、純現金はほぼ3倍に増加。第1四半期の会社予想は、利益がもう一段伸びることを示しています。
崩れた前提は設備投資です。以前のモデルで見込んだ400億ドル台半ばを、大きく上回ることになりました。それでも、その増加を織り込んだうえで、予想利益に対する現在の株価倍率は、私が823ドルで評価を引き上げたときより低くなっています。
決算は各項目で会社予想を上回った
マイクロンが発表した2026年度第4四半期決算では、売上高は会社予想の500億ドルに対し542.3億ドル。非GAAP基準の売上総利益率は87.0%、非GAAP基準の1株利益は予想の31ドルに対して33.42ドルでした。

(出典: MicronのSEC提出資料・2026年度第4四半期決算説明会、著者作成)
Seeking Alphaによれば、1株利益は市場予想を1.60ドル、売上高は27.2億ドル上回りました。前回の記事では、経営陣が同四半期に300億ドル超のフリーキャッシュフローを見込んでいる点を取り上げました。実績は営業キャッシュフロー439.7億ドル、純設備投資107.7億ドルに対し、フリーキャッシュフロー332億ドルでした。
2027年度第1四半期の会社予想は、さらに強い
- 売上高:615億ドル、上下15億ドルの範囲
- 非GAAP基準の売上総利益率:約86.25%
- 非GAAP基準の1株利益:38.15ドル、上下1.00ドルの範囲。希薄化後株式数は約11.5億株
これらの数字は約71%の純利益率を示唆します。経営陣は決算説明会で、第1四半期の売上総利益率が2027年度の底となり、同年度はすべての四半期で前四半期比の増収を見込むと述べました。
第4四半期から第1四半期にかけて売上総利益率が下がるのは、主に会計上の影響です。同社は第4四半期に2026年度の成果連動報酬を引き上げ、そのうち製造部門に関する費用の多くは棚卸資産に取り込まれました。その在庫が現在販売されているためです。マーク・マーフィーCFOは、第1四半期の費用への影響を合計で約10億ドルと説明しました。
最も大きく変わったのは財務内容
前回の記事を書いた時点で、マイクロンの現金・投資資産は302億ドル、有利子負債は57億ドル、純現金は244億ドルでした。第4四半期末には、現金・投資資産が735億ドル、有利子負債が52億ドルとなり、純現金は683億ドルに増えました。ただし、そのすべてを自由に株主還元へ回せるわけではなく、この点には注意が必要です。

(出典: MicronのSEC提出資料・2026年度第4四半期決算説明会、著者作成)
マイクロンは、戦略的顧客契約に伴う顧客からの現金預り金を127億ドル保有しています。これは財務活動によるキャッシュフローに計上されるため、フリーキャッシュフローを水増しするものではありません。しかし、各契約期間の後半に顧客へ返還される資金です。以下のモデルでは、私はこれを計算開始時点の現金から除き、556億ドルとしています。
戦略的顧客契約そのものも急速に増えています。締結数は前四半期の16件から26件に増え、2030年までの売上高の推定35%以上をカバーしています。残存履行義務は約1,500億ドル。経営陣は「下限価格であっても、過去のどの景気循環のピーク時の利益率より、相当に高い利益率を見込む」と改めて述べました。2027年の生産量の75%超は、すでに契約で確保されています。
顧客預り金と買戻し資金は分けて考える
【補足】純現金と、顧客へ返す資金
純現金は、現金・投資資産から有利子負債を差し引いた額です。ただし、貸借対照表にある現金がすべて株主還元へ使えるとは限りません。著者は、将来顧客へ返す預り金127億ドルを純現金683億ドルから除き、買戻し試算に使う初期資金を556億ドルとしています。 この調整は著者のモデル上の扱いです。
株主還元:開始日は決まったが、規模は未定
経営陣は、CHIPS法に基づく契約締結から2周年となる2026年12月9日以降に株主還元を増やすことを確認しました。また、2027年度第1四半期末までに、目標とする現金水準に達する見込みです。長期的には引き続き、主に自社株買戻しを通じて、余剰現金の100%を株主へ還元することを目指しています。
これまでの実際の買戻しは小規模です。2026年度には623億ドルのフリーキャッシュフローを生み出した一方、買戻しプログラムによる実施額は6.5億ドルにとどまりました。承認済み枠の残額も22億ドルしかありません。ただし、マーフィーCFOは「近いうちに」新たな承認を求めると述べました。
バンク・オブ・アメリカのヴィヴェク・アーリャ氏は説明会で、当然の疑問を投げかけました。第2〜第4四半期に1,000億ドル超の現金を生み出せるなら、投資家は2027年度に同額が還元されると期待してもよいのではないか、というものです。マーフィーCFOは金額を示しませんでしたが、12月9日から還元を増やす「能力と意図」があると述べました。
これが今後6か月の材料になります。 12月に大規模な買戻し枠が承認されれば、以下のモデルで推計することしかできない規模に、具体的な数字が与えられます。
買戻し余力を、新しい数字で再試算
8月と同じ計算を、新しいデータでやり直しました。このモデルでは、フリーキャッシュフローを、純利益に減価償却費を足して設備投資を引いた額とします。減価償却費は2027年度に約120億ドル、2028年度に約150億ドルです。
そこに、顧客預り金を除いた純現金556億ドルを加え、その全額を現在の株価1,044.56ドルでの買戻しに使うと仮定します。希薄化後株式数11.5億株に基づく時価総額は、約1.20兆ドルです。

(出典: Micronの2026年度第4四半期決算・会社予想に基づく著者試算)
※表のBは10億ドルを示します。数値は著者の仮定に基づく試算です。

(出典: 著者試算。8月モデルの株価823ドル、10月モデルの株価1,044.56ドル)
保守的なケースは、かなり厳しい前提
前提について、いくつか説明します。保守的なケースは厳しい設定です。2027年度の売上高2,550億ドルは、第1四半期の会社予想を4四半期分にした額をわずかに上回るだけです。毎四半期の前四半期比増収という経営陣の見通しには沿いません。また、純利益率66%は、売上総利益率の底とされる第1四半期の数字が示唆する純利益率の水準を下回ります。
さらに2028年度には、設備投資が増え続ける一方で、売上高は約2割減り、純利益率は48%まで下がると仮定しています。基本ケースでは、2027年度に緩やかな前四半期比増収を見込み、第1四半期の純利益率を維持。その後、2028年度には純利益率が8ポイント縮小するとしています。
株価は上がったが、予想利益はもっと増えた
8月と比べて、目立つ点は2つあります。第一に、保守的なケースでも、今の試算では流通株式の17.6%を消却できます。 これは3か月前の強気ケースに近い水準で、しかも株価は27%上がっています。このケースの2028年度の1株利益は106.40ドルで、前回の保守的なケースの56.70ドルを上回ります。
第二に、基本ケースの2028年度予想利益に対する株価利益倍率は5倍。株価823ドルのときに計算した基本ケースの9.2倍より低くなりました。株価は上がりましたが、利益の見通しはそれ以上に伸びたのです。

(出典: 著者試算。8月モデルの株価823ドル、10月モデルの株価1,044.56ドル)
このモデルは運転資本を考慮していません。2026年度には売上債権に250億ドル超の資金が吸収されました。また、現在保有する現金とは別に、現金の余裕を積み増すとは仮定していません。この2点を織り込むと、試算額は減ります。一方、買い戻すすべての株式を現在の株価で計算し、730億ドルの現金残高から得られる利息収入も考慮していません。
この表が示すのは、会社計画ではなく著者のモデル
【補足】買戻しによる1株利益の変化
同じ純利益でも、株式数が減ると1株当たりの利益は増えます。表の1株利益と株価利益倍率は、著者が仮定した資金を現在の株価で全額買戻しに使い、株式数が減るとした場合の試算です。将来の株価、運転資本、必要な現金の余力によって結果は変わります。17.6〜33.8%は会社が確定した消却計画ではありません。
市場は何を織り込んでいるのか
Seeking Alphaによると、マイクロンの予想利益に対する株価利益倍率は約6.6倍です。株価は決算にほとんど反応せず、説明会で経営陣が支出について話すと、じりじりと下落しました。つまり、市場は依然として2027年度をピークと扱っているということです。
Seeking Alphaの市場予想は、1株利益が2027年度の水準から2028年度に低下すると見込んでいます。説明会でもアーリャ氏は、2027年がメモリー価格のピークになるのかを直接質問しました。
経営陣の答えは逆でした。サンジェイ・メロートラCEOは、2027年と2028年の需給は2026年より「はるかに引き締まる」との見通しを示しました。業界のDRAM出荷量はビット数ベースで両年とも20%台前半の伸びを見込む一方、供給制約は続き、「需給がいつ均衡に戻るかは見通せない」としています。
新たなクリーンルームの建設には何年もかかり、新工場も最初のウエハー生産後にゆっくりと立ち上がります。アイダホ第1工場の生産開始は暦年2027年半ば。アイダホ第2工場と日本の増設は、2028年末ごろまで予定されていません。
この株を保有するうえで、以上の見通しをすべて信じる必要はありません。私の保守的なシナリオは、2028年度に関する弱気派の見方が正しいと仮定しても、株価利益倍率が10倍未満になります。
リスク:設備投資の増加と、将来の需要
設備投資は前回も指摘したリスクであり、その懸念は強まりました。マイクロンの会社予想は、2027年度第1四半期が約115億ドル、上半期が約250億ドルで、下半期はそれ以上です。これは2027年度の設備投資が500億ドルを大きく上回ることを示唆します。2026年度の274億ドル、前四半期に経営陣が示した400億ドル台半ばを上回ります。

(出典: MicronのSEC提出資料・2026年度第4四半期決算説明会。2027年度下半期は著者推計)
増加分の大半は、2028年末ごろ、またはそれ以降まで生産に結びつかないクリーンルームの建設費です。それ以前に需要が反転すれば、同社は景気循環の頂点で資金投入を決めたことになります。
営業費用、中国勢、契約価格の上限
営業費用も増えています。経営陣は2027年度に約25億ドルの増加を見込んでおり、主な要因は研究開発費と成果連動報酬の増加です。
中国も長期的な懸念として残ります。長鑫存儲がDRAMの生産能力を増やしているためです。決算後のアナリスト説明会で、マイクロンのスコット・デボア最高技術・製品責任者は、同社の技術は「中国の競合より少なくとも2世代先行している」と述べました。極端紫外線露光を使う同社の1ガンマ世代のDRAMは、すでに生産ビット数の過半を占めています。
最後に、戦略的顧客契約の価格帯は、上昇余地の一部をなお制限します。契約に基づく売上高の約4分の3には、定められた価格の仕組みがあり、その大半には下限と上限があります。
私の結論:設備投資増を含めても、評価を維持する
3か月前、私はマイクロンの株価が、2028年に利益が急減するかのように評価されていると論じました。その後、株価は27%上昇しましたが、会社は、その急減が近づいたのではなく、遠のいたと考える理由を投資家にさらに示しました。
純現金は1四半期で240億ドルから680億ドルへ増えました。会社予想では、第1四半期が今年度の利益率の底です。そして、12月9日の株主還元拡大開始日まで、あと2か月余りとなりました。
増額された設備投資計画は現実の負担であり、株価の反応が鈍い理由にもなっています。それを含めても、私の計算では、マイクロンは2年間で流通株式のおよそ6分の1から3分の1を消却し、それでも株価利益倍率は1桁台にとどまります。 私はマイクロンへの強気評価を維持します。