住宅市場の低迷が、米国の経済成長を支える理由

■金利の反落が株式市場を支援
米10年債利回りは一時5.34%に達した後、5.24%へ低下しました。FRB高官の慎重な姿勢も金利低下につながり、主要株価指数は寄り付き直後の下げから持ち直しました。
■2027年は景気拡大途中の減速
著者は戦争終結やAI活用への移行などから、成長率とインフレ率の鈍化を予想しています。長期金利はピーク付近と見つつ、景気拡大の終了ではなく途中の減速を想定しています。
■心理の悪化と消費の強さが併存
9月のISM製造業景況指数は54.5で回復を示す一方、消費者信頼感は低下しました。それでも総合小売店の週間売上高は前年比8.2%増え、消費の強さが続いています。
■親との同居で生まれる支出余力
パンデミック以降の大卒者の約半数が親と同居し、その約70%は就業しています。月約1,600ドルの家賃を払わずに済むことが、ほかの消費を支えているというのが著者の仮説です。
1. 米国債利回りの反落が株式市場を支えた
第4四半期の初日、株式市場は小幅な上昇で取引を終えました。米国債市場が持ち直し、利回りが数年ぶりの水準から低下したためです。10年債利回りは午前中に一時5.34%まで上昇しました。これは2002年以来の水準ですが、最終的には10ベーシスポイント低下し、5.24%となりました。これが主要な株価指数を、寄り付き直後の下げから持ち直させる助けとなりました。
市場の論者の一部は、欧州の国債が売られたことで、安全資産として米国債を求める需要が生じたと指摘しています。米財務省が利回りを抑えるため、残存期間10〜20年の米国債を約60億ドル買い戻したことも、要因の一つかもしれません。私は、複数の米連邦準備制度理事会の高官による発言も、利回りの低下に影響したと考えています。

(出典: Finviz)
FRB高官は追加利上げを急がない姿勢
フィリップ・ジェファーソンFRB副議長、クリストファー・ウォラーFRB理事、ミシェル・ボウマンFRB理事は、昨日の公の発言で足並みをそろえました。短期金利を再び引き上げる緊急性はなく、追加の利上げが必要かどうかを判断するには、もっと時間が必要だという姿勢です。私も同意します。
これを受け、投資家がFRBの政策金利の行方をどう見ているかを映す2年債利回りは、大きく低下しました。14ベーシスポイント低下し、4.93%から4.81%になったとされています。2027年の始まりにかけて、私たちが複数回の利上げを目前にしているわけではないと投資家が認識すれば、2年債利回りはさらに大きく低下すると私は考えています。
【補足】編集注:2年債利回りの原稿内不一致
原稿は「14ベーシスポイント低下」と記す一方、4.93%から4.81%への変化は計算上12ベーシスポイントです。どちらが正しいか未確認のため、本文は原稿の両記載を保持しています。

(出典: Bloomberg)
2. 2027年の成長とインフレの鈍化を見込む
長期金利はピークに近づいていると考える
先物市場は、10月の利上げを織り込まなくなりました。私は、FRBには年末まで待ち、追加の利上げが必要かどうかを判断する余裕があると思います。私は、そのころにはイランとの戦争は終わっているはずだと見ています。そうなればエネルギー価格は下がり、インフレ率の低下が再び進むでしょう。
一方、経済は、正常な水準と考えるべきところまで長期金利が上昇しても、それを吸収できるはずです。10年債利回りの5.25%という水準は、実質の経済成長率とインフレ率を合わせた名目GDP成長率のトレンドと整合的になっています。
私は2027年にその両方が鈍化すると見ているため、10年債利回りはいま、ピークを迎えつつあると考えています。それが5.34%になるのか、5.44%になるのか、あるいは別の数字になるのかは断言できません。それでも、あとから振り返ればピークだったと分かる水準の近くに、私たちはいると思います。

(出典: Trading Economics)
景気拡大の終了ではなく、途中の減速
戦争の終結以外にも、経済成長率とインフレ率を鈍化させる要因があります。AI向けインフラの構築からAIの活用への移行、ますますK字型になる経済、そして1月以降のワシントンで、政治権力が複数の党に分かれると私が予想していることです。
ただし、成長の鈍化やインフレ率の低下は、景気拡大が終わることを意味しません。私が想定しているのは、2021年に始まった景気拡大が5年を経たところで、拡大局面の途中の減速を迎えるということです。
【補足】K字型経済とは
K字型の経済とは、経済状況が改善する層と悪化する層に分かれていく状態を指します。この説明は編集部による補足です。
3. 製造業と消費の足元の強さ
製造業の回復を阻む投入価格
いまのところ、頻繁に公表される経済指標は、引き続きかなり良好です。9月のISM製造業景況指数は54.5と発表されました。新規受注、生産、雇用が力強く伸びており、製造業の回復が本格的に進んでいることを示しています。
主な逆風は投入価格です。多くの輸入品に課された関税に加え、イランとの戦争で石油関連製品の価格が急上昇しています。戦争を終わらせ、不合理な関税を引き下げられれば、回復はさらに力強くなるでしょう。来年には、少なくとも一方、あるいは両方が実現する可能性が高いと私は見ています。

(出典: Trading Economics)
消費者信頼感が低下しても、支出は伸びている
多くの市場の論者が想定しているように、景気拡大の最も重要な原動力がAIというわけではありません。最も重要なのは消費者です。
今週、コンファレンス・ボードは、消費者信頼感が2014年以来の最低水準まで落ち込んだと発表しました。その理由は明らかです。ガソリンスタンドで支払う燃料代が急増し、住宅、自動車、その他の借り入れにかかるコストも急増しています。AIが雇用、安全、経済全体にどのような影響を及ぼすかという懸念もあります。イランとの戦争も、きわめて不人気です。
それにもかかわらず、なぜ個人消費の伸びは非常に力強い水準を保っているのでしょうか。よく耳にするのは、上位10%の人々が、過去数年の金融市場で得た大きな利益を使っているという、資産効果による説明です。
しかし、それだけでは、全国の約9,000店の総合小売店で、売上高が引き続き急増していることを説明できません。火曜日までの1週間の売上高は、前年同期比で8.2%増加しました。私には、別の仮説があります。

(出典: MacroMicro)
4. 住宅費の負担が、別の消費を支えている可能性
手の届く価格の住宅が不足していることは、経済の悩みの種と見られてきました。しかし、それが現在の力強い消費を後押ししている可能性があります。
5年前のパンデミック以降に大学を卒業した人の約半数は、親と同居しています。そして、こうした若者の約70%は就業しています。この層が実家で暮らす主な理由は、一人で生活する際の経済的な負担です。
その結果、働いている若者は、家賃の中央値に相当する月約1,600ドルを払わずに済んでいます。何百万人もの若い消費者にとって、これは自由に使える所得が大幅に増えることを意味し、その分をほかの商品やサービスに回せます。私は、当面この傾向が変わるとは見ていません。


