9月は、株式市場にとって1年でもっとも成績の悪い月という評判どおりの月になりました。ただし今年は、債券市場にとってのほうがさらに厳しい月でした。
イールドカーブ全体にわたる利回りの急拡大は、金利変動の影響を相応に受ける債券を保有していた投資家に大きな損失をもたらしました。しかし私は、金利上昇を見越して、短期の金融資産で運用するファンドに現金を置いてきた人にとっては、またとない機会が現れたと考えています。
実のところ、先月の両資産の下げは、10月から始まると私が見ている年末にかけての上昇を前に、現金を動かす最後の機会になるかもしれません。 点火装置になるのはイランとの戦争の終結です。ホルムズ海峡が再び開き、エネルギー価格が下がり、それによってインフレへの懸念が和らぎます。

(出典: Finviz)
10年債5.3%でも株が崩れない理由
きわめて重要な10年国債の利回りが5.3%という重さの下で、株式市場が崩落していない理由は、経済の強さにあると私は考えています。
その成長をどこから持ってきているのかという点を、多くの投資家は好まないかもしれません。持続性への疑問も生みます。それでもいまのところ成長は成長であり、それが企業利益を支えています。
利回りの上昇は正常への回帰
さらに言えば、利回りの上昇は正常な状態への回帰です。10年債利回りは、歴史的に見て名目GDP成長率をたどってきました。
- 2025年の名目GDP成長率はおよそ5%
- 今年は6%に近い水準で推移
世界金融危機とパンデミックのあとに続いた超低金利のほうが、例外だったのです。

(出典: Bloomberg)
【補足】名目GDPと長期金利が結びつく理由
名目GDPは、実質の成長率に物価の上昇分を足したものです。経済全体が年に何%の速さで大きくなっているかを、金額ベースで表した数字だと考えてください。著者は、10年債利回りが歴史的に名目GDP成長率をたどってきたという関係を根拠に、足元の利回り上昇を正常な状態への回帰と捉えています。 名目成長が5〜6%あるなかで10年債が5%台にあることは、その見方に沿えば自然な姿ということになります。異常だったのは、危機のあとに続いたゼロ近傍の時期のほうだ、というのが著者の立場です。
景気はすべての気筒で点火している
昨日の経済指標は、景気の拡大がすべての気筒で点火していることを示唆しています。
個人消費支出は8月に0.9%増え、1年余りで最大の月間の伸びとなりました。物価変動を除いたベースでは、過去1年で2.6%増えています。これは過去4年の平均をわずかに上回る伸びです。

(出典: FRED、U.S. Bureau of Economic Analysis)
雇用の伸びを支えるのは消費
消費支出は雇用の伸びを生み出します。だからこそ、ADPが先月の民間部門で9万人の雇用増を報告したことには筋が通ります。
- 3か月にわたって減速したあと、伸びが反発
- 賃金の伸びは4.4%と堅調を維持
- 転職した人の賃金は7.3%上昇

(出典: Trading Economics、Automatic Data Processing, Inc.)
物価の改善は止まったが、悪化もしていない
PCE価格指数は8月に0.3%上昇し、年率換算は3.4%と予想を下回りました。 食品とエネルギーを除いたコアは0.2%の上昇にとどまり、前年比も3%と予想を下回っています。
改善の理由は一部の項目の計算方法の見直しによるものですが、だからといってこの数字の価値が下がるわけではありません。
だから10月が重要になる
5月からの改善は明らかに止まりました。ただし、まだ悪化はしていません。 これこそが、10月が決定的に重要である理由です。

(出典: Trading Economics、U.S. Bureau of Economic Analysis)
※この図の直近値3.0%は、本文のコア(食品とエネルギーを除く)の数値と一致します。原稿では図が総合・コアのどちらを指すか明示されていません。
【補足】PCE価格指数とは
米国の中央銀行が物価の判断にもっとも重く使う指標です。消費者が実際に買ったものの構成に合わせて計算されるため、値段が上がったものを避けて安いものに買い替えた、という行動まで反映されます。 同じ物価指標でもCPIより穏やかに出やすいのはこのためです。食品とエネルギーを除いたコアのほうが基調を映すとされ、今回はそれが前年比3%と予想を下回りました。
指数は持ちこたえても、平均的な銘柄は下げている
そうは見えないかもしれませんが、市場の全体はこの6週間で意味のある調整を経験しています。
主要な株価指数は超大型ハイテク株への資金の戻りによって支えられてきました。しかし市場の広がりは大きく悪化しています。 言い換えれば、平均的な銘柄は指数よりはるかに悪い成績だということです。
これは、S&P500で50日移動平均線を上回って取引されている銘柄の比率が崩れていることに表れています。21%という水準は深く売られすぎた領域であり、歴史的にはここが持ち高を増やす機会となってきた、というのが私の見方です。

(出典: StockCharts.com)
均等加重の指数で見ると
均等加重のS&P500指数が示す平均的な銘柄は、過去最高値から6.6%下げ、いまは長期の移動平均線のすぐ上にあります。ここでも売られすぎの水準に近づいています。

(出典: StockCharts.com)
【補足】均等加重の指数が映すもの
通常のS&P500は時価総額の大きい会社ほど指数に強く効きます。そのため上位の数社が買われるだけで指数全体が持ちこたえてしまいます。これに対して均等加重の指数は500社をすべて同じ重さで扱うため、平均的な銘柄がどうなっているかがそのまま出ます。この2つの差が開いているときは、指数の数字が市場の実態より良く見えているということです。
第4四半期の上昇に向けた土台
私はこれが第4四半期の上昇の土台になると考えています。 株式にとって季節的にもっとも強い時期に入るからです。債券もそれに続くはずです。
中間選挙の年について見ると、次のような実績があります。
- 10月のS&P500は平均3%の上昇
- 第4四半期は6.6%の上昇で、選挙のない年の3.4%のほぼ2倍
決算よりも株価を押し上げうるもの
もう一度の好調な決算以上に株価を押し上げうるのは、イランでの戦争の終結です。
ではなぜ10月に終わりうるのか。理由は単純です。 ドナルド・トランプ大統領は、その気になれば今日にでも緊張を緩和し、撤収し、交渉に入ることができます。自分が良いと思う形で勝利を宣言し、そう信じることもできます。
いずれそうせざるを得なくなりますし、民主党が議会の主導権を握れば、決める立場にいるのは彼ではなくなるかもしれません。 それなら、なぜ中間選挙のあとまで待つのでしょうか。
燃料価格と選挙の確率は連動している
予測市場では、民主党が下院と上院の主導権を握る確率がおよそ65%となっており、これはディーゼル価格の上昇と歩調を合わせて上がってきました。(この65%という数字は著者によるものです。)

(出典: Bloomberg、Polymarket)
※この図が示しているのは上院の民主党勝利確率とディーゼル平均価格です。下院を含む確率は図には含まれていません。
これが大統領に伝わっていないとは、私には思えません。
10月のサプライズ
トランプ大統領は10月のサプライズを発表するでしょう。中間選挙を前にして燃料コストを急に下げられる方法は、戦争の終結以外にないと分かっているからです。
さらに戦争の終結はインフレへの懸念を和らげ、長期金利の上昇を食い止めます。いまその長期金利が、11月3日のわずか数週間前に、住宅・自動車・クレジットカードの残高にかかるコストを驚くべき速さで押し上げています。
【補足】予測市場とは
実際のお金を賭けて、選挙などの結果に売買が行われる市場です。参加者が損得をかけて判断するため、世論調査とは別の角度から確率を映すとされます。 本文の65%という数字は、そうした取引から導かれた値として著者が挙げたものであり、投票の結果を保証するものではありません。この記事では、ディーゼル価格の動きと同じ形で上下しているという点が論点になっています。
まとめ
9月の株式と債券の下げは、第4四半期の上昇を前に、両方への持ち高を増やすまたとない機会だと私は考えています。