10/05/2026

米2年債利回り5%が分岐点:消費の底堅さと金利安定の条件

Main Imageローレンス・ フラーローレンス・ フラー
記事要約

    ■米2年債利回り5%が分岐点
    米10年国債利回りが5.34%に達する一方、2年債は4.84%で週を終えました。筆者は2年債の5%超が景気後退への懸念を強める可能性を指摘しています。

    ■雇用と賃金の鈍化が安心材料
    9月の雇用増は2万9,000人、過去3カ月平均は5万1,000人でした。賃金の前年比上昇率は3%に鈍化し、需要がインフレを押し上げる懸念は和らいでいます。

    ■親との同居が消費余力を生む
    35歳未満の約2,500万人が親と同居し、約70%は就業しています。住居費を負担せずに済むことが、実質賃金が低下しても消費が伸びる一因だと筆者は考えています。

    ■金利安定がセクター回復の条件
    筆者はAI活用による効率改善や財政赤字削減、債券需要の拡大が金利を安定させると見ています。成長が続き金利が安定すれば、金利敏感セクターの持ち直しを予想しています。

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1. 原油高と金利上昇のなかで主要指数はまちまち

先週の主要株価指数はまちまちの動きでした。地政学的な情勢を踏まえれば、私は健闘したと評価しています。イランとの戦争は終結の見通しが立たないまま続いており、ドナルド・トランプ大統領はこの地域に兵員と軍艦を追加派遣しています。私は、交渉に応じさせるための威嚇の一環だとみています。このため原油価格は高止まりしており、WTIは90ドル超、ブレントは100ドル超で推移しています。これも一因となって、幅広い年限の国債で金利が再び上昇し、米10年国債利回りは5.34%と、数十年ぶりの高水準を更新しました。投資家が予想するFRBの政策金利の水準を映すとされる米2年国債利回りは、4.95%まで上昇した後、4.84%で週を終えました。FF金利の誘導目標レンジは現在3.75~4.00%です。市場は今後1年間に少なくともあと4回の利上げを織り込んでいることになります。私は、その見方には大いに疑問を持っています。

主要株価指数の金曜日終値、週間騰落幅、年初来騰落率


2. 成長は堅調、雇用と賃金の伸びは鈍化


GDPの上方修正と10月の利上げ観測

明るい材料は、金利上昇の背景に堅調な経済成長もあることです。米経済分析局は、個人消費、設備投資、政府支出が当初の予測を上回って伸びたことを受け、第2四半期の経済成長率を0.7ポイント上方修正し、2.2%としました。アトランタ連銀は現在、第3四半期のGDP成長率を3.7%と推計しています。個人消費が2.2ポイント寄与し、成長をけん引したとみています。米供給管理協会によると、9月の製造業景況指数は9カ月連続で活動の拡大を示しました。新規受注と雇用は堅調でしたが、投入コストはなお極めて高い水準にあります。一方、8月の個人消費支出(PCE)価格指数の上昇率は予想を下回る3.4%となり、前月と同水準でした。さらに、金曜日の雇用統計が予想より弱かったことで10月の利上げ観測が消え、市場はこれを好感しました。

米国の9月の雇用者数増加と失業率の推移


【補足】図2の日本語訳

図の表題は「米国の9月の雇用者数増加はわずか2万9,000人」、副題は「労働参加率の上昇に伴い、失業率が小幅上昇」です。左図は米国の雇用者数の前月比増減で、目盛りの400Kは40万人、200は20万人、0は0人、−200は20万人減を表します。右図は失業率で、目盛りは3.5%、4.0%、4.5%です。両図の期間は2024年1月から2026年9月です。


米2年国債利回り5%を境界と見る理由

先月の雇用者数の増加はわずか2万9,000人にとどまり、過去3カ月の平均増加数は5万1,000人となりました。これは、労働市場に新たに参入する人々を吸収するには十分な水準とされています。賃金の伸びも引き続き鈍化しており、過去1年間の上昇率はわずか3%でした。需要がインフレをさらに押し上げるとの懸念は和らいでいます。こうした事情から、米2年国債利回りは5%の水準から低下しました。私は、この5%が株式の強気相場にとって越えてはならない一線だと考えています。株式市場は、米10年国債利回りが5%を超えて上昇する局面を、私の予想よりはるかにうまく乗り切りました。しかし、米2年国債利回りが5%を上回れば、FRBがインフレ目標を達成するために景気後退を引き起こさざるを得なくなるとの懸念が生じる可能性が高いでしょう。

米2年国債利回りの推移:2022年から現在までと5%の境界

(出典: 米連邦準備制度理事会(FRED経由))


【補足】図3の日本語訳

図の表題は「米2年国債利回り 2022年~現在」です。縦軸は0~6%、破線は5.0%を示します。図中の注記は「2022年3月~2023年7月、FRBは政策金利を0.25%から5.50%へ引き上げ」「2023年9~10月/2024年4月、米2年国債利回りは5%前後でピークを付け、2024年第4四半期の利下げを的確に先取り」「2022年から現在まで景気後退なし」です。赤字の注記は「米2年国債利回りは現在5%に接近」。横軸は2022年1月から2026年7月までの各年1月・7月です。出所表記は「米連邦準備制度理事会、FRED経由」です。


3. インフレの鈍化を見込む根拠と消費の底堅さ


刈り込み平均PCEは2.2%

私は、投資家の大勢よりもインフレの先行きを楽観視しています。引き続き、これは供給側の問題であり、イランとの戦争が終結すれば解消に向かうと考えているためです。さらに、直近に算出された8月の刈り込み平均PCEインフレ率は2.2%でした。これはケビン・ウォーシュFRB議長が重視する指標です。価格が極端に上昇または下落した構成項目を計算から除外するもので、インフレの中期的な基調をよりよく表すとみなされています。私は、この数値はFRBが辛抱強く様子を見ることを支持していると考えます。

刈り込み平均PCEとコアPCEのインフレ率、FRBの2%目標

(出典: Bloomberg、ダラス連邦準備銀行)


【補足】図4の日本語訳

図の表題は「インフレ懸念を切り詰める」、副題は「外れ値を除けば、米国のインフレ率はFRBの目標に近い」です。青線は刈り込み平均PCEインフレ率、黒線はコアPCEインフレ率、破線はFRBの2%目標です。縦軸は1~5%、横軸は2017~2026年を示します。出所表記は「Bloomberg、ダラス連邦準備銀行」です。


実質賃金の低下はインフレ抑制につながる

消費者がいま直面している実質賃金の低下が、大きく取り上げられています。その主な原因はエネルギー価格の急騰です。消費者物価指数(CPI)は過去1年間で3.4%上昇しました。同期間の賃金上昇率3%と比べると、消費者の購買力は低下しており、消費の重荷になるはずです。これはインフレ率の低下につながる要因と捉えるべきであり、FRBにとっては、金融引き締めが必要かどうかを辛抱強く見極める、もう一つの理由になります。

CPIインフレ率と賃金上昇率:4月以降の購買力への圧迫


【補足】図5の日本語訳

図の表題は「家計への圧迫 4月以降、インフレが賃金の上昇分を相殺」、副題は「過去1年間の賃金上昇率はわずか3%と、5年ぶりの低い伸び。インフレ率は約3.4%」です。オレンジ線はCPIインフレ率、青線は賃金上昇率。注記は「イランでの戦争によってインフレ率が大幅に上昇」「政府機関閉鎖のためインフレのデータなし」です。データは季節調整済みで、賃金上昇率は平均時給の伸び率を指します。縦軸は0~9%、横軸は2022~2026年の各1月です。図内には「Datawrapperで作成」とあります。


親との同居が生む消費余力

では、なぜ個人消費はこれほど堅調な伸びを維持しているのでしょうか。物価変動を調整した実質ベースで過去1年間に2.6%増加し、経済全体の成長率に2ポイント近く寄与しています。私は先週のブリーフで、この点について独自の仮説を示しました。Realtor.comによると、親と同居する若年成人の数は過去最多となっており、その多くは過去5年間に大学を卒業した人々です。35歳未満の成人のおよそ2,500万人が親と同居しており、この層の約70%は就業しています。こうした消費者は家賃や住宅ローンの支払いを負担せずに済むため、働いている人には自由に使える所得が相当額残ります。

私は、実質賃金が低下しても、過去の景気循環のように消費の伸びが鈍化していないのは、このことと大いに関係があると考えています。この傾向が来年を通じて続き、景気拡大を支えることは十分にあり得ます。悲観論者はこれを好ましくない動きだと指摘するでしょう。しかし彼らは、消費が持続する限り、市場はその消費がどこから生まれているかを気にしないという点を見落としています。


4. 長期金利の安定と金利敏感セクターの持ち直し


長期金利の上昇を平常時への回帰と捉える

私たちは20年以上にわたり、低成長と超低金利の時代を経験してきました。その間、経済はまず世界金融危機から、その後はパンデミックから回復しました。私は、足元の長期金利上昇を、悪い出来事ではなく平常時への回帰と捉えています。リスクが、より適切に価格に織り込まれるようになっているのです。とはいえ、ここから金利が大幅に上昇すれば、債券市場と株式市場はともに打撃を受けるでしょう。ただ、私はその可能性は高くないとみています。インフレを抑えるさまざまな力が働いており、幅広い年限の国債で金利の安定につながるはずです。AI向け設備の構築からその活用への移行は、人件費の低下と効率の改善を通じて、物価上昇を抑えると考えられます。米国の財政赤字は持続不可能な水準にあり、来年、赤字削減に再び力を入れることもインフレ抑制につながるはずです。加えて、現在の金利環境は、投資家に過去20年間には見られなかったような評価面での機会をもたらしています。債券などの確定利付き証券への需要拡大も、幅広い年限の国債で利回りの上昇余地を抑えると予想しています。

米10年国債利回りの長期推移と40年にわたる債券の強気相場の終わり


【補足】図6の日本語訳

図の表題は「40年にわたる債券の強気相場の終わり」、副題は「上昇相場をけん引した要因が逆転」です。オレンジ線は10年国債利回りです。縦軸は0%、5%、10%、15%、20%、横軸の年表示は1985、1990、1995、2000、2005、2010、2015、2020、2025年です。


金利が安定すれば、セクターの回復を見込む

経済と企業利益の成長が続く限り、これまでの利回り上昇が株式の強気相場を損なうとは限りません。公益、不動産、一般消費財、生活必需品、さらに金融といった金利動向の影響を受けやすいセクターは、年初来の上昇分のほぼすべてを失いました。投資家が、幅広い年限の国債で金利上昇が続くと想定しているためです。私は、評価倍率の低さと非常に魅力的な配当利回りの組み合わせが、投資機会を生んでいると考えています。金利が安定すれば、これらのセクターは持ち直すはずです。また、テクノロジー分野への設備投資がいずれ減速することは避けられないとみており、これらのセクターはその恩恵を受ける可能性もあります。

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