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09 - 05 - 2024

Part 1:インテル(INTC)の将来性:業績悪化とCPU不具合を受け株価暴落!集団訴訟によるリスクと足元の株価下落理由を徹底分析!

ウィリアム・ キーティングウィリアム・ キーティング
  • 本稿では、インテル(INTC:Intel)の足元の業績や直面する集団訴訟によるリスクを深掘りすることで、足元の株価下落の理由を詳しく解説していきます。
  • 同社は、最新の2024年度第2四半期の決算発表において、予想を大きく下回る業績悪化を報告し、これにより株価が暴落しました。1985年以来の最悪の日次パフォーマンスを記録し、投資家に大きな衝撃を与えた一方で、株価の下落は足元も止まっていません。
  • 同社は現在、プロセッサーの酸化問題(CPUの不具合)に関する集団訴訟や、年金信託から提起された「実際よりも会社の状況が良いように誤解させた」という訴訟に直面しています。これにより、経営陣は今後、さらに法的リスクを抱える可能性が高まっています。
  • さらに、CEOのゲルシンガー氏は、会社の再建を目指すターンアラウンド計画の一環として、従業員の大規模な解雇を示唆しており、アクティビスト投資家からの圧力や経営陣内での意見の対立にも注目が集まっています。

インテル(INTC:Intel)の最新の2024年度第2四半期決算と2件の集団訴訟に関して

2024年8月は、記録的に暑い月の一つだったようです。そして、この暑さはインテル(INTC:Intel)の経営陣にも感じられているでしょう。というのも、2024年8月1日に発表された、最新の2024年度第2四半期決算の業績と見通しが大惨事だったからです。同社の株価が今や30年以上前の水準に戻っていることに加えて、他にも数々の課題に直面しています。

まずは、新たに提起された2件の集団訴訟について説明します。1つ目は、インテル製プロセッサーで発生している酸化の問題(CPUの不具合)に関連しており、これが増え続ける不安定な動作やクラッシュの原因となっています。2つ目の訴訟は、ある年金信託が、インテルのCFOやCEOが実際よりも会社の状況が良いように誤解させた可能性があるとして起こしたものです。

さらに、4年前にサード・ポイント LLCのダニエル・ローブ氏が行ったような、アクティビスト投資家が介入してくる可能性もあります。参考までに、当時ローブ氏がインテルに送った手紙がありますが、もし彼が今回も介入するとすれば、ほぼ同じ内容の手紙を再度使うことも考えられるでしょう。この件に関して、CNBCの報道によれば、インテルはモルガン・スタンレー(MS)などを含む複数の企業のサポートを受け、アクティビスト投資家からの攻撃に備えているようです。

また、取締役のリップ・ブー・タン氏が「個人的な理由」で辞任したことも問題視されています。彼は、2年前に半導体の豊富な知識を買われて選任された非常に重要な取締役でした。インテルのプレスリリースの詳細はこちらです


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ダニエル・ローブ:アメリカの著名なアクティビスト投資家であり、ヘッジファンド「サード・ポイント LLC」の創設者兼CEOです。彼は、企業の経営に積極的に関与し、株主価値を高めるために経営改善や資本構造の変更を求めることで知られている。ローブはしばしば企業に対して手紙を送り、変革を促すアプローチを取ることでも有名。

アクティビスト投資家:企業の経営に積極的に介入して、株主価値を高めるために経営改善や戦略の変更を求める投資家のこと。主に株式を大量に購入し、株主提案や取締役会の選挙などを通じて影響力を行使し、企業の方針を変えることを目指す。


(出所:インテルのプレスリリース)

彼の突然の辞任も十分に衝撃的でしたが、彼の退任後に広まった、ゲルシンガーCEOや他の取締役会メンバーとの意見の相違に関する噂は、たとえ一部でも真実であれば非常に問題です。

さらに、先週のドイツ銀行のイベントでのゲルシンガーCEOの発言は、8月に起こったインテルの危機が彼の計画の一部だったことを示唆しているようです。実際、彼は、会社を再びプロセス技術のリーダーに戻すことが自身のターンアラウンド計画の第一目標であり、その後に15,000人の従業員を解雇する予定だったと述べています。このような彼の発言や他の修正的なコメントは、彼自身と会社をさらなる法的リスクに晒すことになります。彼は一体どうしてしまったのでしょうか?それでは詳しく見ていきましょう。

インテル(INTC:Intel)に対する集団訴訟

2024年8月7日、セントルイス建設労働者年金基金は、インテル(INTC:Intel)および同社のCEOとCFOを相手に集団訴訟を起こしました。詳細はここに記載されています。インテルは長らく年金基金にとって信頼できる存在とされてきました。安全な投資先と見なされ、その配当の信頼性(および成長)も高く評価されていました。今回の集団訴訟は、2024年1月25日から8月1日までの比較的短い期間を対象としています。2023年を通じてインテルの株価は上昇しており、ゲルシンガーCEOの経営のもとで、ほぼ2年間続いた下落傾向に悩まされていた投資家にとっては一息つける展開でした。

(出所:Yahoo Finance

直近のピークであった約51ドルから、インテルの株価は本稿執筆時点で約20ドルにまで大幅に下落しました。2024年1月初旬に投資を開始した投資家にとっては悪いニュースです。

この訴訟では、ゲルシンガーCEOとジンスナーCFOがIDM 2.0計画の下で会社の見通しをどのように宣伝したかを詳細に記録しています。しかし、2024年4月2日にジンスナーCFOが新しい財務モデルを発表したとき、そのストーリーは崩れ始めました。モデルの詳細はこちらで確認できます。その後、インテルの株価は一貫して下落を続けていますが、決定的な打撃となったのは、2024年8月1日に発表された第2四半期の業績と今後の見通しでした。

(原文)Intel further disclosed it was on track to achieve only between $12.5 billion and $13.5 billion in revenue for its third fiscal quarter of 2024, well below consensus analyst estimates of $14.4 billion, and which represented an 8% decline from the prior comparable year period at the midpoint. On this news, the price of Intel stock fell from $29.05 per share at market close on August 1, 2024 to $21.48 per share by market close on August 2, 2024, a decline of 26% on abnormally high volume of over 300 million shares traded. The decline was reportedly the worst daily performance of Intel stock since at least 1985.

(日本語訳)インテルは2024年の第3四半期の売上高が125億ドルから135億ドルになると発表しましたが、これはアナリストのコンセンサス予想である144億ドルを大きく下回っており、前年同期比で8%の減少にあたります。このニュースを受け、インテルの株価は2024年8月1日の市場終了時の29.05ドルから、8月2日には21.48ドルにまで下落しました。異常な高取引量で3億株以上が取引され、株価は1日で26%下落しました。この下落は、少なくとも1985年以来最悪の日次パフォーマンスだと言われています

このような訴訟が成功する可能性は極めて低いです。上場企業からのあらゆるアップデートには、投資家の期待通りにいかない場合のリスクを最小限にするための細かい注意書きがあるため、不満を抱いた投資家が勝訴する見込みはほぼありません。

この訴訟の本当の目的は、年金信託のパフォーマンスの悪さを影響を受けた人々に伝えることです。要するに、年金の価値がどのようにして減少していったかを逐一説明する内容です。

インテルに対するもう1つの訴訟は、13世代および14世代のCore Raptor Lakeプロセッサーに関する消費者の不満に関連しています。この問題はしばらく前から水面下で進行しており、7月31日にはTom's Hardwareがこの問題に関する詳細な報告書を公開しました。詳細はこちらです


関連用語

Core Raptor Lakeプロセッサー:インテルの第13世代および第14世代のCPUシリーズで、主にデスクトップや高性能ノートPC向けに設計されている。従来のアーキテクチャを改良し、マルチタスク処理やゲーミング、クリエイティブ作業などの高負荷な用途で優れたパフォーマンスを発揮することを目指している。高クロック速度とコア数の増加が特徴。

CPU:中央処理装置(Central Processing Unit)の略で、コンピュータの主要な処理を行う装置。コンピュータの「頭脳」に相当し、プログラムの命令を実行する。


インテルのCPUのクラッシュや不安定性に関する集団訴訟調査が開始

(出所:Tom's Hardware)

(原文)Abington Cole + Ellery, a law firm specializing in class actions and intellectual property, has begun investigating the crashing and instability issues plaguing Intel's 13th- and 14th-Generation Core 'Raptor Lake' processors, with the potential of filing a class action lawsuit on behalf of Intel's customers.

(日本語訳)インテルの第13世代および第14世代Core「Raptor Lake」プロセッサにおけるクラッシュや不安定性の問題について、集団訴訟や知的財産権を専門とする法律事務所であるAbington Cole + Elleryが調査を開始しました。インテルの顧客を代表して集団訴訟を提起する可能性があります。

(原文)Intel announced about a week ago that some 13th- and 14th-Generation Core processors can become unstable due to elevated voltages, which a patch due in mid-August should fix. The company promised to respect all RMAs, so all damaged CPUs should be replaced. The issue doesn't just impact the higher-end models — Intel says the instability bug also impacts mainstream 65W CPUs.

(日本語訳)インテルは約1週間前に、第13世代および第14世代Coreプロセッサの一部が電圧の上昇により不安定になる可能性があることを発表し、8月中旬に修正プログラムが提供される予定です。同社は、すべてのRMA(Return Merchandise Authorization:返品承認)を尊重し、損傷したCPUはすべて交換すると約束しています。この問題はハイエンドモデルに限らず、主流の65W CPUにも影響を与えるとインテルは述べています。

(原文)Intel sells its mainstream 65W CPUs in tens of millions of units quantities, so it could be an expensive replacement cycle for Intel if the company honors all replacement requests. This is where things start to get interesting for class action lawyers, who are now trying to determine whether Intel is filling all RMA claims.

(日本語訳)インテルは数千万台規模で65Wの主流CPUを販売しており、もし同社がすべての交換要求に応じた場合、非常に高額な交換費用がかかる可能性があります。この点が、集団訴訟を検討する弁護士たちにとって関心を引く部分です。彼らは現在、インテルがすべてのRMA請求に対応しているかどうかを確認しています。

なお、インテルが数週間前にリリースした「修正プログラム」は問題を十分に解決していないようです。この件については、人気のYouTubeチャンネルでも取り上げられています詳細を知りたい方は、このRedditのスレッドも参考になるかもしれません

この問題に対するインテルの対応は、多くの顧客の不満を招いているようです。インテルの保証プロセスの下で、損傷したプロセッサが交換されないという苦情が相次いでいます。また、インテルが問題の根本原因を電圧変動のせいにしているという非難もあり、多くの人が、実際の原因はプロセッサ内部で異なるレベル間の信号を垂直に伝達するインターコネクトの酸化問題だと考えています。

この状況は、1994年の「Pentium Flaw(ペンティアム欠陥)」の問題を思い起こさせます。この件については、インテルが世界トップの半導体企業に成長する過程で起きた出来事として、未公開のメモにまとめています。

Fab10から最初に出荷された製品は486の後継機「Pentium」でした。最初はすべて順調で、売上も再び好調でした。しかし、1994年後半にいわゆる「ペンティアム欠陥」が発覚しました。米国の教授が特定のまれな条件下でプロセッサがわずかに誤った結果を返すことに気づいたのです。

インテルは当初、この欠陥がほとんどのユーザーに影響を与える可能性が低いため、特に対策を取る必要はないと主張しました。この対応は多くのユーザーの怒りを買い、インテルに対応を求める初期のオンライン運動の一つとなりました。その結果、インテルは1994年12月に最終的に折れ、返品や交換を行うことを決定し、4億7500万ドルの損失処理を行うことになりました。

インテルは廃棄された数十万個のペンティアムチップをどうしたのでしょうか?それらをキーホルダーに加工し、インテルの全従業員に配布しました。この出来事を忘れないようにするためです。私も今でもそのキーホルダーを持っています。

インテルはこのペンティアム欠陥から高額な代償を払って教訓を得ましたが、どうやらその教訓は忘れられてしまったようです。さて、この集団訴訟はどうなるでしょうか。今後の展開に注目です。


関連用語

RMA(Return Merchandise Authorization:返品承認):不良品を返品・交換するためにメーカーや販売者から承認を受ける手続きや許可のこと。

65W CPU:消費電力が65ワットのCPUを指す。主に一般的なデスクトップ向けに使われる、電力効率を重視したプロセッサ。

インターコネクト:プロセッサ内部の異なる部品や層を接続するための回路や導線のこと。信号やデータのやり取りを可能にする。


インテル(INTC:Intel)に対するアクティビスト投資家の脅威

2020年、アクティビスト投資家であるダニエル・ローブ氏は、彼の会社サードポイントLLCを通じてインテル(INT:Intel)の株式を購入し始め、最終的に10億ドルを超える株式を保有するまでに至りました。この報告によると、2020年12月に当時のインテル取締役会会長であるイシュラク氏に宛てた公開書簡を送っています。

(原文)Despite its theoretical competitive advantage as the world’s leading semiconductor business, Intel’s shares have dramatically underperformed those of its peers on a one, three, and five-year basis. It has lost over $60 billion of market capitalization over the past year alone. Third Point has engaged with companies facing other versions of “rough patches” for over two decades, and we would like to suggest concrete steps the Company should take to address its pressing challenges. Considering that you have been Board Chairman for less than a year, we appreciate that many of these issues have come under your purview only recently. Still, we hope that you share our view that Intel’s substantial problems must be handled with the utmost urgency.

(日本語訳)インテルは理論上、世界最大の半導体企業として競争力のある立場にあるにもかかわらず、その株価は1年、3年、5年のいずれの期間でも同業他社と比べて著しく低迷しています。インテルは過去1年だけでも600億ドル以上の時価総額を失っています。サードポイントは過去20年以上にわたり、さまざまな困難に直面する企業と関わってきましたが、インテルが直面している差し迫った課題に対処するために、具体的な対策を提案したいと考えています。あなたが取締役会会長に就任してまだ1年に満たないことを理解しており、多くの問題が最近あなたの担当になったことも認識していますが、インテルの深刻な問題に対して最優先で対応すべきだという私たちの見解を共有していただけることを期待しています。

この公開書簡は当時、インテルにとって大きな恥辱であり、私はこの件に関して以前のレポートで下記のように見解を示しました。

(原文)A letter from an activist hedge fund is the last thing any CEO or board chairman wants to see landing on their desk. The fact that Intel has received such a letter is an embarrassment to the company and a damming indictment of the position in which it finds itself. For now, Third Point will have little say or sway on Intel's direction. The real risk is that other activist funds may follow suit and build up a block of shares sufficient to merit meaningful control and influence over the company. Intel beware, the vultures are circling!

(日本語訳)活動家ヘッジファンドからの手紙は、どのCEOや取締役会長にとっても、机に届くことを最も望まないものです。インテルがそのような手紙を受け取ったことは、会社にとって恥ずべきことであり、現在の状況を厳しく非難するものです。現時点では、サードポイントがインテルの方向性に大きな影響を与えることはほとんどありません。真のリスクは、他の活動家ファンドがこれに続き、同社に対して実質的な支配力や影響力を持つ株式を蓄積する可能性があることです。インテルは警戒すべきです。ハゲタカが回りをうろついています!

現時点では、アクティビスト投資家がサードポイントに続くことで何を得られるのかを見出すのは難しいです。取締役や投資家を含む全員が、インテルが深刻な問題に直面していることを知っています。そのため、それを指摘すること自体にはもはや「衝撃的な」価値はありません。すでに取締役会に提出される計画が噂されており、その詳細が明らかになりつつあります。詳細はこちらです

(原文)Sept 1 (Reuters) - Intel CEO Pat Gelsinger and key executives are expected to present a plan later this month to the company’s board of directors to slice off unnecessary businesses and revamp capital spending, according to a source familiar with the matter, as they try to revive the once-dominant chipmaker's fortune.

(日本語訳)9月1日(ロイター) - インテルのCEOパット・ゲルシンガー氏と主要幹部は、今月後半に不要な事業の切り離しや資本支出の見直しを目的とした計画を取締役会に提出する予定であると、この件に詳しい関係者が述べています。彼らはかつて支配的だった半導体メーカーの再生を図ろうとしています。

インテルにとってさらに緊急の問題は、敵対的買収に対する脆弱性です。現在の時価総額はわずか860億ドルで、会社の簿価を大きく下回っています。私の理解では、インテルの簿価は現在1株あたり約26ドルです。ブルックフィールドとアポロがインテルの2つのファブに対して49%の株式を取得するために行った、または行っている合計260億ドルの投資を考えてみてください。現状では、それにより会社全体の約30%の株式を購入することが可能です。

インテルには未開発の価値が明らかに存在します。もし同社がファブを完全に放棄し、全ての生産をTSMC(TSM)に移行したとしても、PC市場の約80%、サーバー市場の70%を依然として支配しています。これに対し、アドバンスト・マイクロ・デバイセズAMD)はそれぞれ20%と30%の市場シェアを持ち、現在の時価総額は2,200億ドルです。

もちろん、インテルのファブにも有形の価値があります。プロセスツールだけで約1,000億ドルの価値があり、ファブの構造自体も数百億ドルはあるでしょう。事実として、インテルの経営陣が直ちに会社の価値を引き出すことに真剣に取り組まなければ、他の誰かがその役割を担うことになります。

次章では、足元退任した取締役のリップ・ブー・タン氏の同社やCEOに対する不満、さらに、先週のドイツ銀行のイベントでのゲルシンガーCEOの発言を深掘りしていきます。

※続きは「インテル(INTC)の今後の株価見通し:取締役の突然の辞任と足元のゲルシンガーCEOの発言より株価が安い理由を徹底分析!」をご覧ください。

さらに、その他のインテル(INTC)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、インテルのページにアクセスしていただければと思います。


アナリスト紹介:ウィリアム・キーティング

📍半導体&テクノロジー担当

キーティング氏のその他の半導体関連銘柄のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、キーティング氏のプロフィールページにアクセスしていただければと思います。


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