最高値更新で夏の調整は終了:ただし9月には歴史的な前例がある


■利益成長の広がりが牽引
ナスダックが11%の調整から回復途上にある一方、小型株と均等加重S&P500が上回り、上昇の担い手がAI銘柄から広がっている。
■夏のレンジを上放れた
昨日の動きで3か月続いた取引レンジを上方向に抜け、押し目・調整の局面が終わったことが確認された。
■労働市場は低温だが壊れていない
求人件数740万件、レイオフ率1.1%、自発的離職率2%未満。ただし移民政策と退職により労働市場そのものが縮小している。
■9月の前例は分が悪い
6月・7月が連続下落した過去13年のうち11年で9月は下落。勝率15.4%、平均−4.50%と、それ以外の年と様相が異なる。
この強気相場の強さを疑ってきた方に申し上げたいのは、ナスダック総合指数が過去2か月の11%の調整からまだ回復途上にある一方で、テクノロジー以外はすでに走り出しているという事実です。
これは中東情勢とはほとんど関係がなく、利益成長の広がりによるものです。第2四半期の実績が驚異的だっただけでなく、アナリストは足元の四半期についても再び予想を引き上げています。これは極めて異例のことです。
通常、コンセンサスは先の予想を過大に見積もり、その結果として当該四半期の途中で期待を切り下げることになります。今回はその逆が起きています。

(出典: Finviz)
アナリストの利益予想には、期初は強気に置き、決算が近づくにつれて下方修正していくという一貫した癖があります。企業側が達成しやすい水準までハードルを下げる力学が働くためです。
したがって、四半期の途中で予想が引き上げられるのは、実際の企業業績が事前の想定を明確に超えているときに限られます。今回はそれが起きているということです。
下のチャートが示すとおり、ラッセル2000と均等加重のS&P500が、通常のS&P500を上回っています。強気相場の担い手が、AIの勝者に限られなくなってきたことの表れです。

(出典: Bloomberg)
通常のS&P500は時価総額の大きい銘柄ほど指数への影響が大きくなります。一方均等加重指数は500社すべてを同じ比率で組み入れるため、大型株ではなく「その他大勢」の動きを映します。
均等加重が時価総額加重を上回っている状態は、上昇が一部の巨大企業に依存していないことを意味します。ラッセル2000(小型株)が最も強いのも、同じ現象の別の表れです。
想定どおり、昨日の動きで夏の取引レンジを上方向に抜けました。指数によって押し目とも調整とも呼べる局面が終わり、強気相場が損なわれていないことが確認された形です。

(出典: StockCharts.com)
経済指標では、6月の雇用動態調査(JOLTS)が、解雇が極めて少なく、採用も同じように控えめという労働市場の姿を映しました。
求人件数は740万件とほぼ横ばい、レイオフ率は1.1%で安定、自発的離職率は2%未満にとどまっています。
唯一の留意点は、移民政策と退職者の増加によって労働市場そのものが縮小していることです。需要が上向き始めた場合、これは来年になって問題として浮上する可能性があります。

(出典: Indeed、米労働統計局)
求人件数は企業がどれだけ人を採りたいかを表します。レイオフ率は企業が人を切っているかどうか、自発的離職率(クイッツ)は働く人が「次が見つかる」と考えているかどうかを映します。
離職率が2%を下回るのは、転職に踏み切る人が少ない、つまり労働者側が慎重になっているサインです。解雇も採用も少ない「低温だが壊れていない」状態が続いていることになります。
昨日の最高値更新がこの強気相場にとって力強い材料である一方で、来月については歴史的な前例からひとつの注意喚起が得られます。
S&P500は6月と7月をともに下落で終えました。これは1950年以降では稀な出来事です。
この2か月が連続で下落した過去の年を見ると、8月のパフォーマンスは五分五分でした。今年の8月は好調な滑り出しとなっており、決算による上向きの勢いを踏まえれば上昇が見込めます。
しかし9月はより難しい局面です。6月・7月が連続下落した過去13年のうち11年で、S&P500は9月に下落しています。

左からその年の6月・7月・8月・9月の騰落率、右端が8月と9月を合わせた2か月の複利リターンです。
下段の集計に注目してください。6月・7月が連続下落した13年では、9月の勝率がわずか15.4%、平均は−4.50%です。一方それ以外の63年では9月の勝率50.8%、平均+0.17%。同じ9月でも、前段の2か月がどうだったかで様相がまったく異なることが分かります。
私はこうした歴史的な前例を、短期の戦術を組み立てる際の材料にしています。
年内の残りについては引き続き強気の見方を維持していますが、歴史は、最高値圏でこの上昇を追いかけないほうがよいと示唆しています。
実際のところ、庭の草を少し抜いておく——株式配分の中で現金をいくらか厚くし、9月により良い機会が訪れることに備えておく——のが賢明かもしれません。8月を足元の水準の上積みに費やすのであれば、その先にもう一段の保ち合いの局面が来ると見ています。